世界を救った勇者は俯きながら生きている。   作:赤いUFO

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恐怖を打ち込む者

 砕け得ぬ闇が内部に居る結界の外。ユーノ・スクライアは結界の強化要員として待機していた。

 そんなユーノに同じくアルフが近寄ってくる。

 

「ユーノ。アンタは中でなのは達と一緒に戦いたかったんじゃないかい?」

 

 アルフの質問にユーノは苦笑いを浮かべた。

 

「出来ることならね。でも正直、今のなのは達について行くのはキツいよ」

 

 魔法に出逢って約1年。

 高町なのはは急速に魔導師としての実力を上げていった。

 後方からのサポートならばともかく、隣で一緒に戦うのは逆に足を引っ張りかねない。

 同じ役目ならシャマルや、未来から来た人達の方が上手く立ち回れるだろう

 淋しくないかと問われれば、やはり淋しいが。

 

「でも。だからこそ僕は僕でなのは達の力になりたいんだ」

 

 無限書庫の司書やこうした裏方ならまだ役に立てる。

 ユーノの意思を聞いてアルフも弱音を吐くように彼女らしからぬ態度で口を開く。

 

「あたしも近い内に、フェイトと一緒に任務へ出るのは苦しくなるだろうね」

 

「アルフ?」

 

 アルフらしからぬ弱気な態度にユーノは目を見開いた。

 

「闇の書事件の後から、ずっと感じてたことさ。あたしが1歩強くなるのにフェイトは3歩も4歩も強くなってる。今はまだなんとかなってるけど、いつか置いて行かれるくらい差がつく日が来るってね」

 

 なのはやシグナムなどの切磋琢磨出来るライバルが居るからか、この数ヶ月のフェイトの魔導師としての才能の伸びはとんでもない。

 アルフも強くなっている筈だが、遠くない内にその差は埋めようのない物になるだろう。

 

「隣で戦うだけならあたしよりずっと相応しい子達が居るしね」

 

 なのはもだが、未来から来た者達も知り合いのようだし、その子らもいつかフェイトの隣で飛ぶ未来もあるかもしれない。

 

「だからあたしの考えることは、どうやってフェイトの負担を減らせるかってことさ」

 

 使い魔であるアルフが存在している限り、大なり小なりフェイトの負担になる。

 なら、それを如何にして軽減するかがアルフの課題だろう。

 晴れ晴れとした顔をしているアルフにユーノが質問する。

 

「アルフは寂しくないの?」

 

「寂しいさ。でも、フェイトを守ろうとしてくれる奴があたし独りじゃなくなったんだ。これは、喜んでいいことだろ?」

 

 ニッと笑って返す。

 去年の今頃は、フェイトの味方はアルフだけだった。

 それが今では沢山の人がフェイトを守ろうとしてくれて、フェイトも誰かを守ろうと頑張っている。

 その邪魔になるのが1番怖い。

 

「ま! 守るってのは、なにも一緒に戦うだけじゃないって気付いて……」

 

「動いた!」

 

 中の状況が動いた事をユーノが知らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 膨大な魔力を纏った少女は海鳴の空で丸くなっていた。

 その様子に、少し離れた位置からはやてが話しかける。

 

「や〜み〜ちゃ〜ん。ちょい聞いてや〜!」

 

 しかし、やはりと言うべきか、向こうは反応すらしない。

 それに彩那がふむ、と顎に指を当てる。

 

「面倒だし、ちょっと1撃与えて反応を見てみましょうか」

 

 と、魔剣を構え出す。

 それを横に居たフェイトが慌てて止める。

 

「アヤナ! ダメだよそんなの! いったいなにを考えてるの!!」

 

 これから目の前の少女を助けようとしてるのに、いきなり攻撃してどうするのか。

 こちらから攻撃したら、話し合いをするチャンスを逃す事になりかねない。

 やや不満そうに魔剣を下げる。

 

「……冗談よ」

 

(嘘や! 絶対本気で攻撃する気やった!)

 

 長い付き合いとは言えないが、それくらいは判る。

 転生機能の疑いから抑えているが、彩那はとにかく砕け得ぬ闇を早く排除したがっている。

 ここ数日の騒ぎで自分の過去の再現が今の仲間を傷つけている事態。

 過去やら未来やらが交錯している状況に強いストレスを覚えているのだ。

 そんな彩那の心情など関係ないマテリアル組が釘を刺す。

 

「おい貴様、もしも余計なことをするならば、我らが黙ってないことを忘れるなよ」

 

「そうだぞー! ボク達が許さないからな!」

 

「好きになさい」

 

 互いに歩み寄る気はなく、一触即発の空気が場を支配した。

 そこでクロノが考える。

 

「しかし、なにかしらアクションが欲しいのも事実だ。向こうが動くまでずっとこの場に留まっている訳にもいかないからな」

 

 管理局員として自分から攻撃する真似はしたくないが、このまま立ち往生してても仕方ない。

 そこでシャマルが案を出す。

 

「なら、先ずはバインドで拘束してみましょう。そのまま拘束して、連れて行ければ良し、です」

 

「それが今打てる手だな。それじゃあ僕とシャマル。それから────」

 

「未来から来た、ルシエさんにお願いしましょう。三重にバインドをかけて。抵抗したなら、先ずはシグナムのカートリッジの中の術式を打ち込んで様子見、ですね」

 

 どれくらい効果があるのか今のところ不明なカートリッジだ。

 先ず様子見で使いたい。

 クロノが念話でキャロに指示を送る。

 

「目標が抵抗した場合、私がハラオウン執務官、ザフィーラがシャマルを。ヴィータがルシエさんのフォローに当たりましょう」

 

「その組み合わせの理由は?」

 

「身長の近さ」

 

 はやての質問に彩那はそう返す。

 別に誰が誰のフォローをしても良いが、咄嗟だと全員が同じ人物を守る可能性もあり、予め守る対象を決めておきたかった。

 特に未来から来たキャロは無意識に優先順位が下がる可能性がある。

 

「そこからテスタロッサさんとフローリアンさんが足留めの為に牽制を。マテリアル達はこちらに攻撃しないなら好きに動いて構わないわ。どうせ、こっちの指示に従うつもりはないのでしょう?」

 

「当然だ。我らの目的は砕け得ぬ闇を手中に収めることぞ。必要以上に馴れ合うつもりはない」

 

 目的が微妙に異なる以上、互いに邪魔にならない、という協定さえ守るのなら文句はない。

 そもそも彩那はマテリアル達を戦力として換算していなかった。

 念話でティアナに連絡を取る。

 

『ランスターさん。ナカジマさんを砕け得ぬ闇に接触させるタイミングの見極めは貴女に任せます。モンディアル君と一緒に彼女の援護を』

 

『あ、あたしですか!?』

 

『はい。流石にそっちの指示まで手が回らない可能性があるので』

 

 先日の戦闘で、ティアナの指揮能力を評価しての事。

 彩那自身、まだ未来組の能力を把握し切れてないという理由もある。

 ヴィヴィオとアインハルトは結界の外で待機してもらっている。

 闇の書事件の時の暴走体のような巨大な敵ならともかく、子供サイズの敵にこの人数で既に多過ぎるくらい手が足りている為だ。

 

「わたしとはやてちゃんは?」

 

「私達が死なないように遠距離から援護を。高町さんがカートリッジを使うタイミングは私かハラオウン執務官が指示を出すわ。で、いいかしら?」

 

「あぁ。それで構わない」

 

 彩那がクロノに確認を取ると彼も頷く。

 なのはは少し不満そうだ。

 彼女のこれまでの戦い方から前に出られないのが落ち着かないのだろう。

 普段のなのはの戦闘スタイルから忘れがちだが、遠距離型とは本来そういう物だ。

 今回はこれだけ数を揃えているのだから、なのはが前に出る必要はない。

 

「それじゃあ、いくぞ!」

 

 クロノの合図にシャマルとキャロの3人でバインドで拘束する。

 シャマルとキャロが片腕ずつ。クロノが胴体と両足首を。

 バインドをかけられても動く様子を見せない少女。それに訝しむが

 

(動く必要もないと判断してるのか? どちらにせよ、このまま連行して……!)

 

 念話でシャマルに指示を出し、砕け得ぬ闇を転移させようとする。

 しかし、僅かに身動ぎすると三重にかけられたバインドが簡単に破壊された。

 ゆらりと自然体の体勢となり、こちらに警告してくる。

 

「無駄です。あなた達ではわたしを捕まえることは出────」

 

 そこで喋ってる最中の砕け得ぬ闇に彩那が正面から霊剣の突きを心臓の位置に放った。

 だが、彩那の突きは貫く事はなく、刃が止まる。

 

「ちっ。思った以上に頑丈ね」

 

 瞬発的最大魔力を込めた霊剣の突き。

 それがノーダメージな事に苛立ちを見せる。

 

「やはり、あなたが最大の脅威。でもあなたにわたしを止める事は出来ない」

 

「そう。まぁ好きなだけマウント取ってなさい」

 

 背中の翼が動くタイミングで彩那は砕け得ぬ闇の胸を蹴って後退する。

 追撃をされそうになるが、そこで少女が自分の違和感に気付いた。

 不可視だった鎖のバインドが、彩那が左手に持つ王剣の切っ先から伸びている。

 

「チェーンボム」

 

 砕け得ぬ闇の翼に巻き付いた鎖が連鎖爆発を起こした。

 殺すつもりの攻撃にディアーチェが怒りの表情になる。

 

「貴様……!」

 

「まだよ!」

 

 それを遮る彩那。

 爆煙が消えると同時にヴィータとザフィーラが仕掛ける。

 

「オラァアアッ!!」

 

 突起物に変形させた槌を振るい、地上へと叩き落とす。

 砕け得ぬ闇が体勢を立て直す前にザフィーラが拳を叩きつける。

 

「ウオォオオオオッ!!」

 

 獣のように吠え、何度も拳を叩き込む。

 

「どうだ。少しは────つっ!?」

 

 ダメージが通ったか確認をしようとするが、本能的に危機を察知したザフィーラが回避を選択した。

 しかしコンマの差で遅く、騎士甲冑の籠手の部分が破壊されて彼の体が吹き飛んだ。

 

「ザフィーラ!?」

 

 はやてが心配の声を上げるが、それを無視する形で彩那とシャマルが再び砕け得ぬ闇をバウンドで拘束する。

 

「砲撃魔法を撃てる人は、砕け得ぬ闇に撃ち込んで!」

 

「でも彩那ちゃん!」

 

「早く!」

 

 なのはが異議を申し立てようとするが、鬼気迫る彩那の様子に反射的に従う。

 

「ごめんな、やみちゃん……!」

 

 元々砕け得ぬ闇を消耗させるのが作戦の内というのもある。

 なのはとフェイト。はやてとクロノが僅かな時間差で砲撃魔法を撃つ。

 殆ど動く様子のない砕け得ぬ闇に直撃する。

 現代でも上位に入るだろう魔力資質を持つ4人の砲撃。

 その砲撃を凌ぎ、移動した先にはシグナムが控えていた。

 渡されたカートリッジの薬莢がレヴァンティンから排出される。

 

「紫電、一閃っ!!」

 

 炎を纏った剣を全力で振り下ろす。

 直に叩き込んだ炎の斬撃周囲にまで影響に及ぶ。

 誰もがカートリッジの効果に期待するが、肝心の敵に変化が見られない。

 

「闇の書の騎士。邪魔をするなら、あなた達も破壊します」

 

 反撃に移ろうとする砕け得ぬ闇。

 剣を構え直すシグナムだが、その前にアミティエが前に出た。

 

「させませんっ!」

 

「すまない!」

 

 両手の銃の射撃で足留めを試みるがやはり効果は確認されない。

 アミティエの援護から砕け得ぬ闇と距離を取るシグナム。

 

「これだけの攻撃を受けて無傷ね。確かに化物だわ」

 

 戦いながら砕け得ぬ闇の行動を観察していたが、少女自身に攻撃の意思は殆ど感じられない。

 恐らくは反撃や防御自体がシステムに依る自動行動なのではないかと推測。

 故に受動的。動きが単調なのはそのせいだろう。

 

「とはいえ、防御の鉄壁さは厄介ね」

 

 今のところこちらの攻撃が全く通っていない。

 あれだけの攻撃を叩き込んで無傷。

 

「だぁ!! 大人しくしてったら!」

 

 レヴィとフェイトが砕け得ぬ闇に攻撃を仕掛けている。

 レヴィの動きにフェイトが合わせる形だ。

 相手側は簡単な迎撃や防御を展開しているだけ。

 なのに、砕け得ぬ闇は顔色1つ変えていない。

 この人数全員でかかるのは不可能な為、3、4人交代で向かって行くが、精々注意を逸らしての時間稼ぎが程度。

 

「本人の技術は大したことないくせに」

 

 そんな風にぼやいていると、砕け得ぬ闇が射撃魔法の雨を()としてくる。

 

 彩那は後方に居るなのはとはやての防御に回った。

 

(意外に攻撃が重い……!)

 

 1発1発は大した事はないが、連続して放たれる射撃魔法は確実にシールドを削っていく。

 降り注ぐ射撃魔法の雨に何人かが傷を負う。

 そこでなのはが飛び込もうとするが、彩那がそれを止めた。

 

「高町さんはもっと下がって! カートリッジを撃ち込むタイミングを!」

 

「でもみんなが!」

 

「私に任せればいいから!」

 

 告げると砕け得ぬ闇に向かっていく彩那。

 その短いやり取りになのははレイジングハートを強く握った。

 この戦いの前に、アインハルトが言っていた事が頭に甦る。

 戦いで綾瀬彩那は誰も信じていない、と。

 その言葉が強くなのはの中で思い起こされていた。

 

「なのはちゃん?」

 

 話しかけてきたはやてになのははその考えを振り払う。

 今はカートリッジを撃ち込む事だけに集中すべきだ。

 余計な事を考えるべきではない。

 

「はやてちゃん。カートリッジを撃ち込むタイミングで援護をお願い」

 

「了解や! リインちゃんと一緒に頑張るよ!」

 

『はいです!』

 

 はやてとユニゾンしているツヴァイも念話でやる気を伝えてくる。

 なのはも微笑んでから砕け得ぬ闇に視線を移した。

 彩那が周囲を守りながら砕け得ぬ闇を引き離す。

 そこでなにか話してる様子だが、なのは達には聞こえない。

 何度か彩那の剣と砕け得ぬ闇の翼が衝突する。

 押し負ける様子だが、後ろに下がったと同時に王剣から伸びた鎖のバインドが砕け得ぬ闇の翼を絡め取ると同時に彩那が背後を取り、羽交い締めにしつつ自分ごとバインドを巻き付けた。

 

『高町さん! 例のカートリッジ使って撃ちなさい!』

 

「えっ!? でも!!」

 

 突然の念話での指示になのはは混乱する。

 

『早く! そう長くは拘束しておけない!』

 

 思った以上に砕け得ぬ闇の力は強く、今すぐにでも拘束を破壊されそうだった。

 それでも仲間を撃つ事に抵抗を感じるなのは。

 

『やりなさい! 非殺傷設定があるでしょう!』

 

 その機能を過信する訳ではないが、なのはの砲撃でも最悪死にはしないという思惑で指示を飛ばす。

 

「ごめん、彩那ちゃん……!」

 

 唇を噛んでなのははカートリッジの弾丸を使い、狙いを付ける。

 模擬戦の時とは違う。実戦で味方を撃つという行為になのは自身に精神的な負担が大きくかかる。

 それでも砕け得ぬ闇に狙いを付け、砲撃魔法を撃つ。

 発射された桜色の砲撃が密着している2人に向かって直進する。

 しかし、直撃するギリギリに砕け得ぬ闇がバインドを破壊し、彩那の羽交い締めを弾いて強制的に解く。

 その反動で移動した結果、砕け得ぬ闇に掠ったものの、直撃を回避された。

 

「あ……」

 

 託された役割を全う出来なかった事実になのはは一瞬茫然となった。

 反撃するように砕け得ぬ闇から射撃魔法が飛ぶ。

 

「なのはちゃん! 危ない!?」

 

 間に入ったはやてがシールドを展開してなのはを守る。

 

「はやてちゃん!?」

 

「大丈夫や! それより、集中し────っ!?」

 

 なのはが硬直している間に、砕け得ぬ闇がこれまでと違い、自らの意思で彩那に接近する。

 

「やはり、あなたは最も排除すべき危険な存在……」

 

 砕け得ぬ闇が空に手をかざすと、魔力を圧縮し始める。

 それが物体に見える程に固まり、巨大な剣を生み出す。

 

「エンシェント・マトリクス……!」

 

 投げられた巨大な剣。

 そんな物が結界に直撃すれば間違いなく貫通するのを察した彩那は聖剣に魔力を込め、自身の最硬のシールドを展開して受け止めた。

 

「くっ!?」

 

 直線上にある2つのビルを貫通し、3つ目のビルに到達しようとしていた。

 

「オラァッ!!」

 

 そこでヴィータがギガントシュラークで上から彩那を襲っている剣の破壊を試みる。

 

「硬ぇ……! けど、こんなモンでなぁ!!」

 

 カートリッジの弾丸を全て排出させ、威力を上げた攻撃で剣を破壊した。

 巨大な剣の形を失った魔力が暴走し、爆発を引き起こす。

 

「ヴィータッ!?」

 

「彩那ちゃんっ!?」

 

 その爆発に巻き込まれた2人を心配して声を上げる。

 なのはは、自分の失敗で引き起こしてしまった事態に体を震わせる。

 

(わたしが外したせいで……!)

 

 あと少し早く撃っていれば。

 大切なカートリッジを無駄にしてしまった。

 それを悔やむより前に、砕け得ぬ闇の攻撃が少しずつ苛烈さが増していく。

 

「あなた達の脅威度を修正。迎撃システムのレベルを引き上げます」

 

 幼い少女の声でありながらまるで熱を感じられない機械的な声音。

 それと同時に、砕け得ぬ闇の顔に刺青のような紋様が浮かび、白と紫を基調としていたバリアジャケットが赤と黒に変化する。

 そして、その翼が炎のような物へと変わっていた。

 

「行きます」

 

 積極的な攻撃行動を開始した砕け得ぬ闇は先ずクロノに襲いかかる。

 その暴力的な魔力でクロノの腹を裂く。

 

「クロノッ!? この、いい加減、大人しく!」

 

 クロノに追撃をかけようとする砕け得ぬ闇にフェイトがやめさせようと動く。

 それに合わせる形でシグナムが連携を取る。

 

「飛竜一閃!!」

 

 砕け得ぬ闇を切り刻むように鞭状の刃が動き、注意を引き付けている間に接近したフェイトがザンバーモードとなったバルディッシュを振り下ろす。

 

「くっ!!」

 

 それでも砕け得ぬ闇に直接ダメージは与えられず、逆に翼を薙いでフェイトを弾いた。

 吹き飛んだフェイトをなのはが受け止める。

 

「なのは!?」

 

「もう、やめてったらっ!!」

 

 砲撃魔法を撃つ。

 押し出された先に、両手の銃を構えたアミティエが2つの砲口から巨大なエネルギーの球を作り出していた。

 

「貴女は、ここで私が止めます!!」

 

 発射された巨大な球体が砕け得ぬ闇に撃ち込まれると同時に爆発した。

 

「どうです。これで少しは……っ!?」

 

 気を緩めた瞬間に、無数の刃が見え、咄嗟に銃で庇う。

 

「しまっ!?」

 

 左手の銃を落としてしまい、気を取られてしまうと、肩に刃が刺さる。

 トドメとばかりに彩那を襲ったのと同じ魔力を固めた剣がアミティエに投げられた。

 その刃が、アミティエの体を今にも貫こうとする。

 

「なにボケッとしてんのよアミタッ!!」

 

 突然現れたキリエ・フローリアンが姉に抱きついて無理やり回避させる。

 

「イッた〜。背中切られちゃったじゃない!」

 

「キリエ……どうしてここに」

 

 予想外にも乱入してきた妹に、アミティエは茫然とする。

 しかし、そんな事に構っている余裕はなく、まだ飛んでいる巨大な剣を破壊しないと結界を破壊してしまう。

 そこで、これまで機を見ていたディアーチェが魔法を撃つ事で破壊した。

 

「やるなぁ、王様。タイミングバッチリや」

 

「ふん! この程度造作もないわ! しかし……」

 

 砕け得ぬ闇を止める戦いが進んでいるのか無駄なのか。いまいち判断出来ない。

 このままでは全員が全滅する恐れすらある。

 ディアーチェが奥歯を噛むと、砕け得ぬ闇が口を開いた。

 

「全て無駄なのです。わたしが解放された以上、この(せかい)は……」

 

 そこで、無表情だった砕け得ぬ闇の表情が驚愕のそれに変わる。

 

神剣(これ)ならなんとか攻撃が通じそうね」

 

 闇の書事件で使った純白の剣を手にした彩那が砕け得ぬ闇の背中を斬った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 砕け得ぬ闇と呼ばれる少女は困惑していた。

 背中を斬られた痛み。

 それに思わず苦痛の表情になり、背後を見る。

 そこには純白の剣を手にしたホーランドの勇者が居た。

 

「どう、して……」

 

 その疑問に答えず、勇者は純白の剣を振り下ろす。

 咄嗟に翼で防御するが、勇者の剣はそのエネルギーを斬り裂いて少女の腕を斬った。

 右腕から流れる血。初めての熱と痛みに少女は困惑する。

 勇者は構え、なおも少女の体を斬り刻もうと迫る。

 

「ヒ、ヤ……ッ!?」

 

 痛みからくる恐怖で逃げを選択。

 少女は困惑していた。

 あの剣には、オーバーSランク4人分のリンカーコア。そして勇者本人のリンカーコアにより、5人分のオーバーSランクの力を独りで振るえる。

 それは確かに大きな力だろう。

 しかし、所詮はそれだけだ。

 永遠結晶をもつ砕け得ぬ闇(わたし)に勝てる訳がない。

 傷付ける事すら不可能な筈。

 なのになのになのに! 

 システムU-D(わたし)の計測計算を全て、斬り伏せてくる! 

 

「掴まえたわ」

 

 少女の腕を掴んだ勇者は、その胸に刃を突き立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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