世界を救った勇者は俯きながら生きている。   作:赤いUFO

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フェイト・T・ハラオウン執務官ストーカー被害事件。

 それは、彩那達が小学校の最終学年になって夏休みが半分過ぎた時だった。

 ミッドチルダでの仕事を終えた彩那は地球に戻り、翠屋とは違う喫茶店でフェイトと話をしていた。

 

「つけられてる?」

 

「う、うん……気の所為じゃないと思う……」

 

 先月執務官試験を突破し、各種の手続きを終えてようやく執務官として活動を出発させたフェイト。

 まだ執務官としては新米で覚える事がたくさんあり、勉強は一生とはよく言ったものだ。

 

「ちなみに直接的な被害はなにか遭った? 気になったのは?」

 

 彩那の質問にフェイトは答える。

 1:こっちで仕事をする際に消耗品の私物が僅かに減っているような気がする。

 2:お昼などの休憩中に視線を感じる事が増えたし、帰宅する為に転送場所へと歩いていると、誰かに付けられてるように感じる。

 3:極めつけは知らないアドレスから明らかに詐欺メールとは違う、フェイト個人の情報を聞き出そうとするようなメールが送られる。

 

「ちょっと、怖くて……彩那?」

 

 テーブルに突っ伏す彩那にフェイトが首をかしげる。

 

(そういえば、テスタロッサさんが私を名前を呼ぶ発音が良くなったわね)

 

 前まではちょっとだけ発音がおかしかったが、今は完璧だ。

 きっとフェイトは気にして努力したのだろう。

 などと現実逃避している場合ではない。

 

「確認するけど、地球(こっち)ではそうした気配は感じないのね?」

 

「うん。だからこっちで相談してる」

 

「なるほど」

 

 飲んでいたアイスコーヒーのグラスから手を放し、腕を組んで考える。

 

「と言っても、現状は現行犯でもない限り、動いてくれないでしょう」

 

 日本もそうだが、ストーカー事件という物に対して警察組織は判り易い被害が出ない限り積極的には動いてくれない。

 精々パトロールを強化してくれるくらいだ。

 

「だよね。だから困ってて……」

 

 悩むフェイトに彩那が質問する。

 

「それよりテスタロッサさん。今、仕事空いてる?」

 

「大きな仕事は先日終わったけど……」

 

「なら、交換条件といきましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という理由で、しばらくうちの捜査に加わってくれることとなったフェイト・T・ハラオウン執務官です。皆さん、ちゃんと協力するように」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

『うおぉおおおぉおおおおおおおおぉぉおおおおおっ!!』

 

 彩那がフェイトを紹介すると、部隊の面々、特に若い男性局員から歓声が上がる。

 それを聞いてフェイトがビクッと肩が動いた。

 興奮している野郎共に対して彩那が手をパンパンと叩いて律する。

 

「はいはい。皆さん落ち着いてください。仕事に専念して」

 

『ウース!』

 

 全員から気持ちの良い返事が返ってきた。

 それから各隊員から報告が彩那に届く。

 

「姐御! 奴らが運んでる麻薬(ヤク)のルートがもうすぐ割れそうッス!」

 

「引き続き特定をお願いします」

 

「二尉殿! これが昨日の調書です!」

 

「もう少しここの情報の精度を上げてください」

 

「姐さん! 今から他部署との連携の為に調整に行ってきます!」

 

「捜査線が重ならないようにお願いします。それと情報共有はしっかりと」

 

 局員達の報告を捌きながら書類に目を通していく彩那。

 それを見ていたフェイトがポツリと呟く。

 

「すごい、ね……」

 

 階級は彩那の方が上なのだろうが、それでもここまで慕われているのは珍しい。

 どれだけ功績があろうと階級が上だろうと、子供だからと侮られるのはそれなりにある。

 

「そう? まぁ、最初は多少嫌がらせもされてたけどね。私だけ重要な情報を共有されてなかったりとか」

 

 彩那の言葉に身に覚えがあるのだろう者達が気不味そうに視線を逸らして自分の仕事に集中する。

 

「そうなんだ。参考までに聞きたいんだけど、どうやって打ち解けたの?」

 

 フェイトの質問に対して彩那は少しの間、考える素振りを見せる。

 

「暴力よ」

 

「へ?」

 

 意外な回答にフェイトは目を丸くする。

 

「訓練と称してどっちの立場が上か徹底的に身体へ叩き込んだの。そうしたら、気付いた時にはこうなっていたわ」

 

 なんでかしらね、と言わんばかりに首を傾げる彩那。

 え〜、と顔を引き攣らせているフェイトに1人の局員が話しかけてくる。

 

「勘弁してくださいよ姐御。あの時はホント悪かったって俺らも反省してますから。それに、魔導師としての実力だけじゃなくて、姐御の仕事に対する優秀さはマジで尊敬してるんすから」

 

「初耳ですね」

 

 実際彩那は事務関係の資格を多く保有しており、そのおかげで部隊の効率化や予算の増額に寄与してたりする。

 必要なデータを纏めて立ち上がる。

 

「とりあえず、テスタロッサ執務官はしばらく私と一緒に行動してもらいます。私1人だと難しい捜査も、貴女が協力してくれれば円滑に進むと思いますので」

 

「わかった。それでなにをすればいい?」

 

 自分のストーカーもそうだが、捜査と言われて表情を引き締める。

 

「先ずはシャマル医務官の所に顔を出しましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よく来てくれました、2人とも。紅茶で良いですか?」

 

 シャマルの勤務する部署の近くの部屋を借りていた。

 紅茶と茶菓子を出されて早速本題に入る。

 

「送っておいた最近出回っている薬物と使用者の症状に関する報告書には目を通してくれた?」

 

「はい。魔力光を後天的に変化させる薬ですね。書類には目を通しました」

 

 彩那の所属する部署が追っているのは、現在十代から二十代を中心に出回っている薬物だ。

 魔法が生活に根付いている管理世界。

 魔力光の色で嫌がらせやからかいのネタ。イジメに発展するケースもある。

 とにかく自分の魔力光に不満のある人間が薬物に手を出すのが確認されていた。

 

「一応、病院などでも似たような薬は処方されますけど、その場合は医師の許可書と、未成年なら保護者の同意書が必ず必要になります。生来のリンカーコアに手を加える訳ですから。薬が合わなかったりしたらリンカーコアを通じて神経や内臓機能に異常が起こる可能性もあります。それにこの薬の問題はそこではありません」

 

「それってどういう……」

 

 フェイトの疑問にシャマルが険しい表情で答える。

 

「おそらく、魔力光の変化は副次的な症状……いえ、客を呼び寄せる為のリップサービスなんだと思います。この薬にはそれなりに強い興奮作用や薬物依存の成分も検出されています」

 

「つまり、自分の魔力光に不満のある人間に薬を売る。で、効果が表れて魔力光が変化した頃には、その薬から抜け出せなくなってるって寸法ね」

 

「はい。薬が切れたら強い不安によるストレスから来る幻覚。身体も手の震えや目眩や動悸が激しくなって、それを抑える為にまた薬を買う。おそらくは買う回数を重ねていくと前より強い薬を売られるんだと思います」

 

 酷い悪循環に、フェイトの中で強い憤りが芽生える。

 同時に被害者に対する憐憫も。

 

「被害者の人達はどうなるの?」

 

「……長期的な治療に専念してもらうしかありません。ですが、薬物依存は完治したように見えてふとしたことでフラッシュバックすることも珍しくありませんから。そう言った意味では、一生の戦いになります」

 

 話を聞き終えると、彩那は椅子から立ち上がる。

 

「ありがとう。参考になったわ」

 

「いえ。お役に立てたなら良かったです。ただ私見ですが、この手の事件は結局蜥蜴の尻尾切りで終わると思います。1つのルートを潰しても、新しいルートを開拓するでしょうから」

 

「同感ね。でも黙って薬の売買を放っておく訳にもいかないでしょう。ミッドチルダを麻薬大国にする理由にはならないわ」

 

 一時的なその場しのぎでも被害が広がるよりはずっと良い。

 結局は長い時間をかけて違法薬物が出回らない体制を整えて行くしかないのだ。

 

 シャマルと別れ、彩那が次の指示を出す。

 

「次は何件か薬物使用者とその家族に話を聞きに行きましょう。アポイントは取ってあるから。悪いのだけど、テスタロッサ執務官は使用者の子供から話を聞いてくれる? 私は御家族から話を聞くから」

 

「うん。いいけど、別々に話を聞く理由は?」

 

「その子が部屋に引き籠もってて、御家族ともあんまり顔を合わせない人も居るらしいのよ。私は顔に包帯巻いてるから警戒されるでしょう? 年齢も近いテスタロッサ執務官の方が心の内を明かしやすいかもしれないし」

 

「……それは彩那が包帯取ればいい話じゃ────っ!?」

 

 そこで彩那が突然フェイトの腰に手を回して引き寄せてきた。

 顔が触れそうな程に密着してくる。

 

「ちょっと彩那……!?」

 

 いきなりのボディタッチに戸惑うフェイト。

 数分そのままの状態が続くとパッと手を離した。

 

「ごめんなさいね」

 

「い、いいけど。ビックリしたよ。どうしたの?」

 

「ちょっと餌巻きを。引っかかってくれたら御の字ってところかしら? これからちょくちょくこういうことをするから合わせてくれると助かるわ」

 

「う、うん……?」

 

 よく分かってない表情で頷いた。

 

 

 

 

 

 

 それから数日、彩那は自分が使っているロッカーを確認する。

 

「んー。ここまで簡単に引っかかると逆に罠を疑いたくなるわね」

 

「どうしたの?」

 

「これ」

 

 彩那が見せたのは、ビリビリに破かれた私服。

 それと、血文字(おそらくパソコンで打った)が印刷された紙には"フェイト様に近付くなバケモノ"と書かれている。

 それを見たフェイトは流石に危機感を覚えたのか、顔を引き攣らせて自分の身体を抱く。

 

「しかし、テスタロッサさんから話を聞いた時はお目が高いと思ってたけど、頭は悪かったみたいね」

 

 私物を壊されても特に気にした様子もなくロッカーを調べる彩那。

 少しして端末で連絡を取る。

 

「クルーソー二曹。少し良いですか? ちょっと調べて欲しいことがありまして。今データを送るので、この人物のことを調べてください。たぶん局の人間だと思うので。はい。はい。お礼は後日に……」

 

 そこで通話を切り、携帯端末をポケットに仕舞う。

 あまりの衝撃から頭がフリーズしていたフェイトが慌てて切り出す。

 

「あ、彩那! 服の弁償を……!」

 

 今回の件、フェイトが巻き込んだような物だ。

 罪悪感から弁償を申し出るが、彩那は手を左右に振って拒否する。

 

「これくらいは予想の範囲内。テスタロッサさんが捜査を手伝ってくれたから充分おつりがくるわ」

 

「でも!」

 

「それに、請求するなら犯人にするわよ」

 

 それでもなにかしなければと思って口を開こうとすると、彩那の携帯端末が鳴る。

 

「はい」

 

 連絡を受けて報告を聞いていると、彩那の視線が鋭くなる。

 再び通話を切ると、フェイトの方を見た。

 

「もしかしたら、今回の件とテスタロッサさんの件。両方同時に片が付くかも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、深くフードを被った十代半ば程の少女がフードをあまり人の通らない裏路地を通り、寂れたカフェに入る。 

 

「いらっしゃいませ。御注文は何にしましょう」

 

 中で待っていたのは私服にエプロンという簡素な服装の三十代の男性店員。

 客も端のテーブルで向かいあって座っている男女だけ。

 注文に対して少女が答える。

 

「季節のフルーツケーキセットで飲み物は特製ブレンド紅茶を……」

 

 それを聞いた店員はコクンと頷いた。

 

「少々お待ち下さい」

 

 奥に引っ込んでいく店員。

 足をカタカタと揺すりながら少々は注文を待つ。

 数分後に店員がトレーを運んでくる。

 

「お待たせしました。季節のフルーツケーキセットと特製ブレンド紅茶です」

 

 そう言って注文の品を並べる。

 最後には、握ったら隠れてしまいそうな小瓶が置かれ、少女はそれに手を伸ばした。

 小瓶を手にする直前に、手首を掴まれる。

 

「そこまでです」

 

 少し離れた位置に居た客。

 少女がその人物を見ると、目を大きく見開いた。

 黒かった長髪は輝くような金髪に変わる。いや戻ると言った方が正確か。

 

「時空管理局執務官、フェイト・T・ハラオウンです。この店は現在、薬物取締法に反した違法な売買をしている疑いがあります。抵抗しないで」

 

「クソッ!!」

 

 お決まりの警告を口にするとさっきまで穏和な態度だった店員が逃げようと動く。

 それをフェイトと一緒に中で見張っていた局員が取り押さえる。

 

「動くなっつってんだろ。散々手こずらせやがって。この店はうちの(モン)が既に囲ってんだよ。下手な抵抗は裁判で不利になるぜ?」

 

 店員を押さえながら、少女の方を睨む。

 

「テメェもだ。ローゼ・ローラ三曹。フェイト執務官だけじゃなく、姐御にまで迷惑かけやがって! それも局員が違法薬物の売買の補助と来た。覚悟は出来てんだろうなぁ、あぁっ!!」

 

 殺さんばかりにフェイトが押さえているローゼに怒鳴るクルーソー二曹。

 この少女が、最近フェイトをストーカーし、彩那のロッカーも荒らした犯人だった。

 店内に緊張が支配していると、店の奥から彩那と、他の仲間を取り押さえている局員数名が現れる。

 

「姐御!」

 

「なんて声を出しているのですか。奥まで聞こえましたよ」

 

 言いながら先程店内が出したのと同じ小瓶を見せる。

 

「ここで売られていた薬を押収します。販売場所はここだけではないのでしょうが、それはこれからじっくり吐いてもらいましょうか。連れて行ってください」

 

 彩那が指示を出すと、店内に居た売人達は汚い言葉を吐きながら次々と連行されて行く。

 そして店内には彩那とフェイト。そしてローゼ三曹だけが店内に残っている。

 

「さて。テスタロッサ執務官へのストーカー行為及び、この薬の売人達への協力行為に関して話があります。特に、売人への協力行為は時空管理局の信頼を貶める重度の裏切りとして厳しく追及するつもりです。決して抵抗はしないように」

 

 彩那がそう告げるが、ローゼの目には彩那は映っておらず、彼女の視線はフェイトにだけ向けられている。

 

「フェイト、様ぁ……」

 

 その熱っぽい視線と声にフェイトは手を掴んだまま後退る。

 

「もうすぐなんです。わたし、もう少しで貴女と同じ光を手に入れられる……」

 

 魔力光の事だろう。

 報告でローゼが最近、微妙に魔力光が変化し始めていると聞いている。

 無視して拘束し、このまま連行すれば良いだけだが、フェイトにはそれが出来ない。

 かつて高町なのはは仲良くなりたいからと敵対しつつも気にかけてくれた。

 その温かさを知っているフェイトは無下に突き放すような真似はしない。

 困っている誰かを助けたい。力になりたいというのが、フェイトが管理局員として働く理由でもあるからだ。

 

「どうして……私に執着したの?」

 

「覚えて、ませんか? 2ヶ月の災害で、フェイト様がわた、しを助けてくれたのを……」

 

 2ヶ月前に、ミッドチルダの東側で大きな地震が発生した。

 慣れない現場で右往左往していたローゼを助けてくれたのがフェイトだと言う。

 

「それ、から……わたしは、フェイト様、みたいになりたくて……」

 

 呼吸が荒く、動悸が速い。おそらくは薬物の効果で滑舌にも影響が出始めている。

 

「それなの、に……それ名、のにぃ……!」

 

 ちょっとヤバい目つきで彩那へと視線が移る。

 

「そのおん、なはぁ……! フェイト様にペタペッタ、と馴れ馴れしくさわってぇ……! 許せないゆるせない! 醜いバケ、モノのくせにぃ……!!」

 

 視線で射殺さんばかりに睨んでくるローゼ。

 聞くに堪えない言いがかりにそろそろ連行しようかと彩那が動く。

 しかし。

 パシッと小さな音が店内に響く。

 それはフェイトがローゼの頬を叩いた音だった。

 叩かれたローゼは信じられないとばかりに叩かれた頬を撫でる。

 静かに。しかし重くフェイトが呟く。

 

「訂正してください」

 

 だが、ローゼは茫然としているだけ。

 

「許しません。彩那はとても強い、尊敬出来る私の大切な友達です。それを醜いバケモノなんて、酷いことを言った貴女を私は絶対に許しません!」

 

 大切な友達を傷つけられたり侮辱されたりするのはフェイトにとって逆鱗だ。

 そこで売人達を連行し終えたクルーソー二曹が戻って来る。

 

「あ〜。取り込み中っすか? 姐御」

 

「いえ。問題ありません。ローラ三曹も連行してください」

 

「あいよっと。おら行くぞ! たっぷり絞ってやるからな!」

 

 茫然としているローゼを連れて行くクルーソー。

 フェイトは人を叩いた不快感に息を吐く。

 相手が悪かったと思っても、人を叩く感触はやはり後味が悪かった。

 そんなフェイトの肩に彩那が手を置く。

 

「まさか、あそこまで怒るとは思わなかったわ」

 

「……からかわないで」

 

「そんなつもりはないけど。純粋に嬉しかったから。ありがとうね、()()()()

 

「……え?」

 

 初めてフェイトと名前で呼ばれた。

 その事にフェイトは少しの間、茫然として足が動かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 後日、学校帰りに喫茶翠屋で集まったなのは、はやて、アリサ、すずか。そしてフェイトの5人。

 しかし、高町なのははとても不機嫌そうにフェイトを見ている。

 それが鬱陶しくてアリサが切り出す。

 

「いつまでそんな態度で居るのよアンタは」

 

「だって、フェイトちゃんが大変だって全然教えてくれなかったんだもん」

 

 フェイトがストーカー被害に遭っていたと知ったのは、全てが終わって今日の事だった。

 なのはは何にも相談してくれなかったフェイトに不貞腐れている。

 

「ほ、ほら! なのはも最近忙しくしてたし」

 

「ま。なのはと彩那、どっちにストーカーの相談する? って訊かれたら、あたしだって彩那に相談するわ」

 

「アリサちゃん!」

 

 まさかの追撃になのはが恨めしそうにアリサを見る。

 すると、ストローでメロンソーダを飲んでいたはやてが口を挟む。

 

「それにしても、フェイトちゃんをストーカーとは。その人もお目が高いなぁ」

 

「怒るよ、はやて」

 

 フェイトからすれば、軽度とはいえストーカー被害に遭った時は気が気じゃなかったのだ。

 彩那まで巻き込んでしまった時は本当に申し訳なかった。

 ごめんなぁ、とはやてが謝ったところですずかが外に気付く。

 

「彩那ちゃん、来たよ」

 

 彩那が店内に入るとなのはの父である士郎が話しかけてきた。

 

「こんにちは、彩那ちゃん。なに飲む?」

 

「アイスコーヒーをお願いします」

 

 注文を聞くと分かった、と飲み物の準備する士郎。

 

「待たせたかしら?」

 

「ううん。わたし達も10分くらい前に来たばかりだよ」

 

 すずかがそう言うと、席を詰めて彩那が座るスペースを作ってくれて、そこに座る。

 アリサが質問する。

 

「ねぇ。フェイトをストーカーしてた奴ってどうなったの? あ、もちろん話せる範囲でいいわよ」

 

「今は薬物の治療中。ただ、テスタロッサさんに対しては接近禁止命令が出されたし、まだ決定事項じゃないけど、管理局は懲戒解雇になると思う。裁判次第だけど、牢屋行きの可能性が高いから」

 

「ん〜。まぁ、そんなところか?」

 

 処遇を聞いて、はやてが納得したように頷く。

 とりあえず、今後フェイトがストーカーに悩まされる事は無いのだ。

 

「良かったね、フェイトちゃん! ……フェイトちゃん?」

 

 何故か知らないが、今度はフェイトが不機嫌そうに彩那を見ている。

 彩那がフェイトと呼んでくれた時、寝不足になるくらい嬉しかったのだ。

 仕事中はともかく、プライベートでは今後名前で呼んでくれると思ったのだ。

 それがテスタロッサ呼びに戻っている。

 期待を一気に落とされて視線が鋭くなるのもやむなしだ。

 

「彩那、判ってるよね? わざと?」

 

「なにが?」

 

 本当に判らないとばかりの態度の彩那にフェイトが拗ねる。

 その様子にアリサが口を挟む。

 

「ちょっと彩那! アンタ、フェイトになにしたの!」

 

「なにもしてないわよ。言いがかりだわ」

 

「いやいや。フェイトちゃんがこない拗ねるなんてよっぽどのことやで?」

 

「フェイトちゃんもなんで怒ってるの〜?」

 

「別に怒ってない……」

 

「それは別にって態度じゃないよ、フェイトちゃん」

 

 そんなやり取りがありつつも、彼女達の時間は穏やかに流れていった。

 

 

 




次回は、八神はやて、初めての指揮。
既に1/3は書き上がってるので、少し早く投稿出来るかも?
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