雛見沢大災害なんて起こさせない 作:アンケート
ひぐらし最近見てて面白いなー、と
ひぐらしSS増えないかなー、という気持ちが重なってできたものです。
どうかお付き合い願えると嬉しいですね!
ここには何もない。何もないのだ。
太陽に照らされた昼間、俺はそう思った。
あるのは廃れた家屋と、舗装もされていない荒れた通路のみが広がっている。どこを見渡しても、人の気配はなく、どこを見渡しても、村の温かみはない。
俺が知っている雛見沢は、もっと長閑な景観が広がる村だった。道を歩けば顔見知りの老人が声を掛けてくれ、家を訪れれば満面の笑みで出迎えてくれた。
田舎と馬鹿にする者もいるかもしれない。都会の喧騒に揉まれた人間からすれば、呑気なことだと呆れるのかもしれない。
けれど、俺はそんな村の雰囲気が好きだったし、今でも時折思い出しては懐かしみに浸る。
そんな雛見沢も、少し前までは立ち入り禁止地区となっていた。
原因は遡ること20年以上も前に起きた悲劇にある。
その悲劇のことを、俗世では「雛見沢大災害」と言われている。
内容は下記の通りだ。
-記-
昭和58年6月21日深夜から25日早朝にかけて、雛見沢にある鬼ヶ淵沼より猛毒の火山性ガスが噴出。ガスは避難所であった雛見沢分校も覆いつくしてしまった。自衛隊の災害派遣要請などが大幅に遅れたため、避難中の事故死や行方不明者も含め犠牲者は1200人以上にのぼり、雛見沢の住民は全員死亡してしまった。その後政府の即時判断によって村は全域閉鎖され、上空の飛行も禁じられるなど厳戒態勢が敷かれこととなった。
以上
今では週刊誌に取り上げられたため、今日では心霊スポットなどを目的に訪れる人が多い。廃棄された村の様子は、見る人からすれば恐ろしく見えるのだろう。ちょっとした度胸試しで散策する若者も、少なからずいるそうだ。
けれど、俺が雛見沢を訪れた理由は、決して心霊スポット巡りなどではない。
誰にも言ったことはないが、俺は昔、まだ小さい頃に雛見沢に住んでいた時期がある。今回訪れた理由も、いわゆる郷愁に煽られ足を運んだ、というのが正しいのだろう。数十年ぶりに見た故郷の景色が、こうなっているのは誠に残念なことである。
誰も住まなくなった家屋を過ぎ、山をのぼって俺は鬼ヶ淵沼を目指すことにした。
大災害の概略を信じるならば、猛毒の火山生ガスが噴出したあたりだ。今は全面がコンクリに埋められているため、ガスの危険性も無いらしい。今の雛見沢について詳しく書いてあった掲示板に、そう記されていた。
沼へと行く道中、見知った神社が建っていた。
もう自分が見ることも叶わないだろうと思っていたそれは、やけに古びており、半ば倒壊しているように見える。この神社の名前は「古手神社」とであり、一年に一度の祭りの日なんかは、出店が立ち並ぶほど賑わっていた。
ふと、懐かしさのあまり神社の賽銭箱前に立つ。
たしか、ここの神主家庭には一人娘がいたはずだ。名前は「リカ」だったと記憶している。なにぶん、かなり前のことなので判然としない。雛見沢の子供ということで、昔はよく遊んでいたような気もするし、遊んでいなかったような気もする。
これも何かの縁だ——俺はそう思って黙祷を捧げた。この程度の祈りで、犠牲となった村人たちの心が休まるとも思えないが、俺は帰ってきたぞ、と報告したかった。
結局は俺のエゴなのだが、それでも心が少し軽くなった気がした。
別れを惜しみながらも俺は神社を後にし、ようやくの思いで鬼ヶ淵沼へと辿り着く。
見れば先客が2人いた。
恰幅のいい白髪の目立つ老人と、初老過ぎの中年男性だった。どちらも、心霊スポットや自殺の名所として知られるこの場所に似つかわしくない。もしかしたら、自分と同じく雛見沢の関係者だろうか? 俺は躊躇う気持ちも残しつつ、思い切って話しかけてみることにした。
「こんにちは——」
聞けば、2人は「雛見沢大災害」について調べているらしかった。
白髪の目立つ老人は大石さんと言い、初老を過ぎたであろう男性は赤坂さんというらしい。どちらも刑事関係の人だと教えられた。
「君は雛見沢の関係者なのかい?」
赤坂さんがそう尋ねてきたので、俺は生まれて初めて己の出身を他人に打ち明けることにした。
「ええ。私も小さい頃は雛見沢に住んでいたので」
「そうだったのか……じゃあ、今日は里帰りみたいなものなんだね」
「まぁ、そういうことになります。何も残っていませんでしたが」
「っ、すまない。不躾に」
赤坂さんや大石さんは、俺の反応を見て悪いことを聞いた、という表情をする。気を使わせてしまって申し訳ない気持ちになった。他人にこのような話をするのは初めてのことなので、どうも反応の仕方が定まらないのだ。
「お二人は、どうして大災害の調査に?」
話を逸らすためにも、ひとまず気になったことを尋ねた。
大災害が起きたのは、今から20年以上も前の話である。今更調べたところで何も分からないだろう。そもそも、刑事関係の人が自然災害について調査するのはどうなのかと思った。そういうのは研究者の分野なのではないだろうか。
俺からの疑念に少し困った様子を見せる赤坂さんだったが、隣にいた大石さんが代わりに開口した。
「実はですねぇ、私たちはこの大災害の裏に大きな闇が隠れていると思っているんですよ」
「大きな闇ですか? 一体どのような」
「それを説明するためには、まずこの災害の不明点をお話しする必要がありますねぇ」
大石さんは「失礼」と言いながら、その場で腰掛ける。話が長くなるぞ、という意思表示なのだろう。俺は普段立つことには慣れているため、「お構いなく」と話を続けるようにお願いした。赤坂さんも腹を決めたらしく、立ったまま説明を始めてくれた。
大石さんと赤坂さんが挙げた不明点は、素人が聞いても不可解に思う事柄ばかりであった。
・災害には県知事や臨時の本部長を務める環境本部長の対応が揃って遅れていた事
・住民のほぼ全員が雛見沢分校へ避難したはずにも拘わらず行方不明者が20人以上いる
・不自然な弾痕が残されている
・オヤシロ様の生まれ変わりとされる古手梨花のみ他殺体で見つかった
ただの火山ガスによる災害にしては、おかしな情報ばかりが錯綜している。不自然な弾痕や、古手梨花の他殺体については、完全に人工的な意図が感じられた。
「じゃあ、災害に乗じて誰かが殺しをしていたということでしょうか」
「それがそうでもないんですよねぇ」大石さんはそう言って頭を掻いた。
「ここから先は内密にお願いしますよ。貴方が元々、雛見沢の人だからお話するのです……実はですね、あの災害自体が誰かが仕組んだものじゃないのかと考えているんです」
俺は咄嗟に赤坂さんの方も見てみる。
赤坂さんは俺の意図を察したらしく、重く頷いた。どうやら、老人の嫌な戯れではないらしい。今ここで話されている内容は、刑事関係の2人が真剣に調べた結果のことなのだろう。俺の握り拳が少しだけ強められた。
「では、あれは事故ではなく、事件ということですか」
「私はそう睨んでますよ」
「っ」
言い知れぬ感情が胸中に渦巻いた。
今ではもう顔も思い出せないほど色褪せてしまった記憶だが、それでもあの村の温かさを俺は覚えている。
友達がいたことを、優しくしてくれた大人がいたことを、可愛がった後輩がいたことを、古ぼけた家の内装を、ひぐらしが鳴いている田園風景を、俺は覚えている。
あの平穏を誰かが壊したのだ。それはきっと許されていいことじゃない。
「誰がやったんですか」
自分でも驚くほど冷たい声が漏れ出した。
「分からない。今日は私たちもそれを調べに来たんが……」
ちらりと赤坂さんが沼をみた。
現場となったであろう場所は、既に全面コンクリで埋められている。これでは、災害が本当に起きていたのかも、調べることはできない。
そもそも20年も立ち入り区域に指定されていたのだ。今調べたところで、何が出てくるというのか。公訴時効だって、5年も前にきている。
「私も赤坂さんも、事件解明のため全力を尽くしてはいますが、今のところ真実が明らかになるとは思えませんね」
「……」
「それこそ、時を遡ることでもできたら、不可能じゃ無くなるんでしょうが」
懐から取り出した扇子で顔を扇ぎ、大石さんは苦々しい面持ちを浮かべた。
時を遡ること——俗に言う「タイムスリップ」というやつだろうか。
馬鹿馬鹿しい。本当にそんなものがあるなら、今すぐにでも当時の雛見沢に飛んでいってやりたいくらいだ。
「失礼。そう言えば、まだ貴方の名前を聞いていませんでしたね」
大石さんは鋭い眼光で俺を見た。
多分、情報漏洩を防ぐために個人情報を把握しておきたいのだろう。いくら20年前の事件を個人的に追っているとは言え、無闇やたらと口外してほしくない情報ばかりだ。俺がここに住んでいたというから、同情半分話してくれたに違いない。
俺は大石さんの目を見返しながら、静かに身分証明書を取り出した。
「陸上自衛隊、
同じ国家の公務員として、俺はそう名乗りを上げた。
-!-
「どこだ、ここ……」
あのあと大石さんと赤坂さんと別れた俺は、当てもなく歩いていた。
大石さんと赤坂さんは、雛見沢大災害の関係者である「少女A」に会いにいくらしい。俺も同伴するか聞かれたか、遠慮しておいた。
気がつけば、見知らぬ社が目の前にある。山の奥を歩いてきたはずなのに、その社は古手神社にそっくりだった。
俺は考えるのも面倒になり、石段に腰掛けた。
さっき聞いた話を全て鵜呑みにしていいものか、頭の中ではそれだけが渦巻いている。答えが出るはずもないのに、なんと愚かしいことだろう。自分が自分で嫌になってくる。
「どうして村の人たちが死ななきゃいけなかったんだ……」
唇を噛み締めれば、口内で鉄の味が広がった。
まずい。ただただ不味い。苦い味だけが脳に情報として伝達される。
現実はいつだって不条理なことで溢れている。訳も分からず怒られることもあるし、誰かしらのミスで自分が損害を被ることだってある。残酷なんて言葉で片付けられればマシな方で、「雛見沢大災害」のような惨劇は決してあっていいことではない。
理不尽な不幸から、不条理な世界から、残酷な現実から、そんな環境から1人でも多くを助け出したいという気持ちで、俺は陸上自衛官になった。
そう思うきっかけなんて言わなくても分かるだろう。「雛見沢大災害」が俺の人生を大きく定めたのだ。
「もし、本当に……」
そこから先は言葉に出さなかった。
大石さんが言っていた「もし時を遡れるなら」。あんなもの、ただの妄言だと理解しておきながらも、やはり心のどこかでは切望してしまう。
もし仮に、本当に一抹の期待でもいいから、俺の意思が、力が、体が、時を遡れるのだとしたら。
「誰かを助けてあげられるだろうか」
その瞬間だった。昼間だったというのに、太陽光をも塗り潰すほど眩いが光が、視界を覆い尽くしたのは。
「————っ」
あまりの唐突さに、俺は目が潰れたのではないかと錯覚する。手で両瞼を押さえ、じんじんと痛む感覚に堪えた。
暫くすれば痛みも引いた。俺は何が起こったのか確認するべく、ゆっくりと目を開けた。
広がるのは、さっきと変わらない山並みの風景。緑が生い茂っており、今の季節が夏に近いことを体感させられる。
けれど、おかしなことがあった。
「いつの間に夕方に?」
木々に降り注ぐ夕焼け特有の
さっきまで、太陽が真上に昇っている時間帯だったはずだ。いくらなんでも、一瞬であそこまで日は沈まないだろう。科学的にありえないことが目の前で起きたため、俺は軽いパニック状態になった。
「いや、待て、それよりももっと可笑しい……」
自身の体を見る。
俺が雛見沢に訪れた時の服装は、ジーパンに黒いTシャツ、それに自衛官の癖で帽子を被っていた。それなのに、今の俺の服装は紺色の短パンにオレンジ色のTシャツだ。流石に30代の男が着るようなセンスじゃない。
さらに言えば、俺の体の線があまりにも細すぎた。
日々、訓練で鍛えられているはずの肉体が嘘のように、一般人くらいの肉厚となっている。決して、太っているわけでも痩せすぎているわけでもないが、明らかに筋肉量が減っていた。
異常だ、これは異常すぎる。
俺は愕然とした容態を隠そうともせず、ノロノロと腰を上げた。
まさか、まさか、まさか、まさか……。
ありえないはずのことが頭の中で浮かび上がる。
そう、それはさっきまで自分が自嘲していたはずの事象だ。本来、現実に起こりうるはずがない事柄だ。
それなのに、それが起こったという予感が俺の中にある。
確認しなければ!
俺は急いで石段を降りるため、一歩足を踏み出した。
刹那、履き慣れていない下駄のせいで転びかける。
それでもなんとか持ち前の運動神経で持ち堪え、俺は兎のように駆け出した。
ここから一体どのような物語が待っているのか。
それはきっと、誰も知らない。
大体、アンケートは2、3日で締め切る予定で行こうかなー、と考え中。
主人公が目についた場所は?
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なんでゴミ山なんか……
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ここは古手神社だよな
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自分の家、なのか……?