雛見沢大災害なんて起こさせない 作:アンケート
次の日。
小さい頃、雛見沢から出て行ったはずの俺たちが、村に帰ってきていた理由が分かった。
どうやら曽祖母の遺産が新しく出てきたため、その整理をしに一時的に帰ってきたらしい。雛見沢に帰ってきているのは、俺と祖父だけだ。本来は祖父だけが訪れる予定だったのだが、年齢的なことも鑑みて、孫である俺が男手として同行したのである。
そこに至るまでの記憶というものを俺は持っていない。全ては家に帰った後、祖父から聞かされた経緯である。祖父も、何故今更そんなことを聞いてくるのか、と不思議そうにしていたが、そこは苦笑いで押し切らせてもらった。
俺が雛見沢に滞在できる期間、というより滞在する予定期間は三日とのこと。
曽祖母の新しく出てきた遺産と言っても、そこまで多量にあるわけじゃない。精々が、地下に眠っていた骨董品やらが数点あるくらいだ。そのため、三日も掛からず作業して、さっさと都心部に帰る予定だったと、祖父に言われた。
しかし、「雛見沢大災害」を知っている俺はそれを拒む。せめて一ヶ月は雛見沢に滞在したいと祖父に掛け合った。現在、中学生である俺だが、義務教育期間中であれば、一ヶ月くらい欠席しても大丈夫なのは知っている。少々内申点が悪くなるくらいで、優等生だったはずの俺には大した痛手にもならない些事だ。
普段からあまり我儘を言わない俺に目を剥いた祖父は、焦った様子で「大丈夫か?」「なんか嫌なことでもあったのか?」「学校で頑張りすぎるのもよくないからの」と捲し立てた後、そのまま両親に電話してくれた。何か大事なものを失ったような気がするが、まぁ大丈夫だろう。祖父の目にはきっと「都心部で疲れた孫が、田舎で癒されたい」という認識だと思う。
思ったよりもスムーズに話が進んだものだから、俺としても拍子抜けの部分はあった。ひとまず祖父からは「ここに滞在するなら、御三家には顔見せてこい」と言われている。
御三家? と思ったが、どうやら雛見沢には三家の取締役がいるそうだ。
一つ目は村長を務めている公由家。
二つ目は古手神社を切り盛りしている古手家。
最後に実質上、この雛見沢の村の実験を握っているらしい園崎家。何でも村外では黒い噂が絶えない曰く付きの家らしい。
粗相をしでかそうものなら、とてつもなく怖い目に遭うぞ。そう祖父に脅された俺は、自衛官時代の服装容儀点検を思い出しながら、持参していた制服にアイロンをかけ、菓子折りを持って園崎家へと訪れた。
「でもさ、菓子折りって普通は名前の通り外箱に入った菓子だろ……なんで焼酎?」
緑色に包装された外箱を眺めて俺は言う。
いや、確かに美味しいけどさ、とは中学生の口からは出せない。
これも田舎ならではの空気感というものなのだろうか。お酒なんて進呈する方が、粗相な気がするんだけどさ。どうぞこれで一杯やってください、とか中学生から言えるわけないぞ。
「はぁ、なるようになれだな。やばい家って聞くけど、俺の記憶ではそこまでだし」
深く眠る記憶のプールから、園崎家に関する情報をサルベージしてみるも、特に危なかっしいものは出てこなかった。祖父が大袈裟に言って脅かしてきているだけなのだろう。昔から祖父は大仰なところがある。今回もそれだろうと勝手に決めつけた。
朝からアイロンを掛けて整えた服装に気遣いながら、俺は園崎家へとお邪魔する。
出迎えてくれたのは、いかにもヤクザ兼業してますって風貌の男の人だった。もしかしたら園崎家自体がヤクザなのかもしれない。祖父は一言もそんなことは言っていなかったはずだが。
「ここで待っていろ」
案内された和室にいれられれば、案内してくれた男がどこかへと去っていく。
別に悪いことをしたわけでもないのに、唐突に悪感情が俺に襲ってきた。
本当に悪いことはしていないはずだ。祖父に渡された菓子折り(芋焼酎)だってまだ渡していないし、相手の機嫌を損ねることは何もしていない。強いていうなら、自衛隊にいた時みたいに靴の砂や泥を落とし忘れたくらいだ。でも、人の家で勝手に泥を落とすとか逆に失礼だろ。
色々な考えを頭に過らせながら、ゆったりと息を漏らす。
やましいことは何一つとしてない。閻魔さまにだって顔向けできるほど、自分は誠実に生きてきたと胸を張れる。なのになんだ、この胸のざわめきは……。
「おまんが影嗣の孫かいね」
その言葉とともに、ぬるりと顔を出したのは1人の老婆だった。襖の奥から顔を出し、日中だというのに屋敷の影が老婆の体を覆い隠している。まさに昔話に登場する山姥とは、彼女のことを指し示すための言葉なのだと思えた。
「え、えぇと……初めまして。私は翠川幸嗣と言います」
しどろもどろになりながらも、なんとか自己紹介の言葉を口に出せた。いきなり山姥らしき女性が現れたら、誰だってこうなってしまうだろう。正直、一度も噛まずに名乗れた自分を、手放しで褒めてやりたいくらいだ。
老婆は俺の顔から下半身までを往復で眺めると、ふっと鼻で笑った。年齢がすごく離れているとはいえ、異性の人に身だしなみで笑われるのはキツいものがある。
何とかショックを顔に出さず俺が鉄仮面を装っていると、老婆の方から先に口が開かれた。
「んで、孫がなんの用ね」
「一ヶ月ほど滞在するので挨拶に来させていただきました。これはささやかですが」
差し出しのは緑色の外箱をした、菓子折り(芋焼酎)である。
老婆はそれをしげしげと眺めると、少し懐かしむような声色をした。
「ほぅ、翡翠の包装紙とは懐かしいのう」
目を細めながら告げる老婆。どこか優しげな表情を浮かべているため、多分あの色に思い入れでもあるのだろう。菓子折りを選ぶ際、祖父が「これに包んでいけ」と言われたため、その指示に従っただけなのだが、思いのほか好感触である。
老婆は眺めていた菓子折りを手に持ち、すーっと綺麗に包装紙を破れば、くしゃくしゃと丸めて壁に放り投げる。斎藤雅樹もびっくりな美しいサイドスローだった…………え?
「はぁ、はぁ……いつ見ても心の底からイライラするん……昔からアイツのことは気に食わんかったがや」
「え、えぇ!? 急にどうされました!?」
「あああああああああああああ! おまんも影嗣に顔が似とんね! ムカつく顔つき晒しおって、孫もじじいも!」
最後に箱の中に残っていた一升瓶を取り出して、老婆は俺に向かって放り投げてきた。
流石にかわさないと命の危険を感じる。俺は座ったまま上体をのけぞることで回避すれば、当てる対象を見失った一升瓶が背後の壁に当たって割れる。物が詰まっているため、そう簡単に割れないはずなのだが、今完全に俺を殺すつもりで投げたよね、このおばあちゃん!
「ちょ。ちょっと! 落ち着いてくださいよ!」
「やっかんよう言うんね! 雛見沢に戻ってきたからには、殺してんでもあの時の恥を返上しちゃる!」
髪を振り乱しながら老婆が次に取り出したのは大きな日本刀。それを鞘から抜き取ると、太陽光に当ててギラギラと光らせる。
抜き身の状態で見たからこそ分かるのだが、老婆の持っている日本刀は完全に刃引きがされていない物だった。普通に斬りつけられたら、そのままバッサリと何かが持っていかれる。比喩表現なんてなしに、血はドバドバと出て、多分見えてはいけないものまで見えてしまう。
これは洒落にならない! と思い、俺は一心不乱に園崎の家から飛び出すことにした。呑気に挨拶なんてしていたら、脳天から刀を振り下ろされてしまう。その証拠に、老婆は俺を殺すべく、縦横無尽に刃を迸らせた。
全くもってどこが平穏な村なのか。
少し前まで楽観視していた自分を、整形するまで殴ってやりたくなる。折角アイロンで綺麗にしたYシャツをぐしゃぐしゃにしながら、俺は転がるように園崎家をでた。
これは後日聞くことになる話なのだが、園崎の老婆は祖父の元カノだったらしい。
別れ方がとんでもなかったのだとか。
ろくな死に方をしないぞ、と思った俺だが、本当に祖父はろくな死に方をしなかったため笑えなかった。
午前中パートというものか、短く仕上がってしまった。
一応、一度交流を持てば確定で出会えるアンケート項目が出現します。
そのため、おりょうも確定で出会えるようになりました。
おりょう好感度0 ⇨ −5(?)
酷い目にあったな、昼からはどこに行こう?
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雛見沢分校か、サトコちゃんいるのかな?
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ダム建設跡地(ゴミ山)か。すごいな。
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もう一回、古手神社に行っておこう。
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もう一つの御三家(村長)も挨拶しとくか。
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隣町に言って情報収集だ!
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今日はもう家に帰ろう。明日頑張る。
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園崎家でやり残したことがある。