ソードアート・オンライン ~より良き未来を目指して~   作:KXkxy

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原作開始前
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 『夢』と通じて未来の知識を断片的に得た結果、協力の可能性とその後の発言力と信憑性を全て持ち合わせているのはたったの1人。稀代の天才と言われていた茅場晶彦氏だということが分かった。彼が具体的に何をした人なのかは残念ながら『夢』には無かった。精々『完全な仮想世界』を実現したという程度。けど、平行世界(パラレルワールド)などというオカルト話を聞いてくれる姿勢を見せてくれた世界があるというだけで可能性は見いだせる。彼の興味を引く事が出来れば、心強い味方となってくれるだろう。

 

「問題は、あの人にどうやって接触するか、なんだよね······」

 

 彼の気を惹けるモノの心当たりはある。『完全な仮想世界』という、『異世界』と呼んでも全く差し支えないモノを創り上げた彼にとっては、平行世界(パラレルワールド)には一定の価値を見出してもらえるだろう。だからこそ、話を聞いてくれる姿勢を見せてもらえ――――

 

「ソ~ウ!」

「うぉわ!?」

 

 背中にやや強めの衝撃を感じると同時に耳に届く、聞き慣れた幼馴染の声。咄嗟にノートを閉じる。流石にこんなのを見られたらどう思われるか······。

 

「木綿季······突然飛びかかってくるのは止めてって前にも言ったよね?」

 

 肩越しに振り返ると、目に入ったのは不機嫌さを隠そうともせずに頬を膨らませている幼馴染の顔。

 

「ソウがいつまで経っても降りてこないからじゃんか~!もうお昼だよ!?」

「······ごめんなさい」

 

 完っ全に僕が悪かった。10時から遊ぶ約束をしていたというのに、考え事に没頭していて時間を忘れていた僕に非があった。というか非しかなかった。

 

 ちなみに、我が家は2階建てで、2階は僕の部屋·父さんと母さんの共同部屋·客間の3部屋。階下はリビングやキッチンなどの共用スペースとなっている。毎週土曜日にはリビングか僕の部屋で、木綿季と藍子、それに僕の3人で遊ぶのが慣例だった。紺野家はキリスト教徒なので、日曜日にはミサに行った後、病院で検査を受けているらしい。後者はハッキリ聞いたワケじゃないけど、ミサの後の予定を訊くと決まってバツの悪そうな顔で濁されるからそうなんだと思う。

 

「本ッ当にゴメン!すぐ行くから先降りてて!」

「は~いっ♪」

 

 元気よく返事をした木綿季が部屋を出る。パタンと音を立てて扉が閉まった。

 

「ハァ······。不味ったなぁ。絶対怒ってるよね、藍子······」

 

 木綿季は性格上、ドタキャンは兎も角遅刻には割と寛容·····というか、本人も姉がいなければ割と遅刻するんだけど、藍子は別だ。木綿季の双子の姉である彼女は逆に、ドタキャンには理由次第である程度理解を示してくれるけど、遅刻にはかなり厳しい。時間ピッタリなのはギリギリ及第点、5分前行動でやっとだ。僕も人の事は言えなくなってしまったけど、2人とも小学1年とは思えない。きっと、病気という存在から大人にならざるを得なかったんだろう。

 

「っと、いけないいけない。また考え事に夢中になるところだった」

 

 身支度がちゃんとしているか、ざっと確認しながら部屋を出る。廊下を走るのは母さんに怒られるから出来ないけど、許される限りで急いで階下に降りた。

 

「あ、おそようございます、ソウさん。随分ゆっくり休んでいたんですね」

 

 リビングに入った直後、お茶を飲んでいたらしい藍子から満面の笑みで挨拶が飛んできた。目が笑ってない。怖い。ちなみに、彼女が僕に対して敬語を使ってくる時は、完全に怒髪冠を衝いている時だったりする。紛れもないお怒りモードだった。

 

「お、おはよう藍子······。えっと···遅れてごめんなさい」

 

 速やかに土下座の体勢に移行する。こういう時はヘタに言い訳すると火に油を注ぐことになるので、顔を合わせた瞬間、即座に謝るのが最適解だったりする。

 

「············」

 

 ち、沈黙が痛い···。胃がキリキリと痛む。普段は別に苦じゃない沈黙だけど、彼女を怒らせた時だけは辛くなる。まあ100%僕が悪いんだから何かを言う権利なんて無いんだけど。

 

「···反省してる?」

「してる。これ以上ないってくらいしてる」

「それなら、私から言う事は別に無いかな。次からは気をつけてね?」

「ハイ······」

 

 どうにか許してもらえたらしい。何だかんだ、彼女達にこっぴどく怒られたことはあまり無かったりする。

 

「(人が好すぎるんだよねぇ······。悪い人に騙されなきゃいいんだけど)」

 

 そんな心配をしながらも、そんな人の好い彼女達が好きなので特に否定はしない。『夢』によると、人の悪意には敏感みたいだったから大丈夫だと思う。勿論、僕もできる限り目を光らせるけど。

 

「さ、ソウへのお説教はこのくらいにして······。ユウ、何して遊びたい?」

「う~ん······。本当は公園で遊びたかったけど、お昼からじゃあ遊ぶ時間あんまり無いし、ソウの部屋でゲーム!」

「ん、分かった。ソウ、お願いしてもいい?」

「勿論。遅くなったのは僕のせいなんだし、そのくらいはやらないとね」

 

 ゲームかぁ······。何が良いかな。テレビゲームもあるけど、カードゲームとかボードゲームも色々あるんだよね。主に父さんの影響で。トランプとかUNOは勿論、カタンみたいなそこそこ大型のゲームもあるから選択肢が滅茶苦茶多い。

 

「木綿季、どのゲームがいい?」

 

 というわけで、僕の部屋に行く前に、家の中でも奥まった場所にある物置部屋まで2人を連れてきた。一応家族共用の部屋だけど、殆ど父さんがゲームを置いておく用の部屋と化している。

 

「う~ん······。コレ!やったコトないし!」

 

 そう言って木綿季が指差したのは『カルカソンヌ』。僕らが生まれるより10年くらい前に発売されたボードゲームらしい。父さんがやっているのをよく見るけど、僕らはやったコトがないし、ルールも知らない。だからこそ木綿季はやってみたいと言ったんだろう。冒険心の強い彼女らしい。

 

「藍子はどう?何か、やりたいやつはある?」

「う~ん······。コレ、かなぁ」

 

 藍子が手に取ったのは『ハゲタカのえじき』。1988年に発売されたカードゲームで、各プレイヤーに配られる1から15までのカードを使って+1から+10の得点カードと、-1から-5までの減点カードを取り合い、或いは押し付け合うゲームだ。前やった時は中々白熱したゲームになったし、1回1回がかなり短いからカルカソンヌの合間にやるのにも丁度いい。これまた、堅実な彼女らしい選択だと思う。

 

「オッケー。それじゃあ早速やろうか。今日も泊まってく?」

「うん!おばさんからOKも貰ったし!」

 

 いつも通り、土曜の夜は泊まっていくらしい。もう一々許可を取る必要もないんじゃないかな。2人のことだから、言っても聞かないんだろうけど。変なところで頑固だからなぁ、2人とも······。

 



 

「また負けた······」

「相変わらず、ここぞって時の運が凄いね、ユウは」

 

 カルカソンヌは木綿季の圧勝だった。僕と藍子も善戦したと思うんだけど、最後の最後で木綿季が大量得点をして一抜け。そういえば、前に遊〇王をやった時も、手札0枚·フィールドがら空きの状態から、たった1枚のドローで逆転されたっけなぁ······。

 

「エヘヘッ。このゲーム面白いね♪」

 

 そりゃ、大量得点して大勝利したら楽しいでしょ。いや、木綿季はこの3人で一緒にいられれば何をしてても楽しいんだってことは知ってるけど。別のゲームでボロ負けしてるのに滅茶苦茶楽しんでることもあったし。

 

「それにしても、コレ本当に面白いね。タイルの配置なんて何パターンあるんだろ?」

 

 タイルの枚数は膨大。それに描かれた地形もそれぞれ違い、「草原」に「道」「都市」「修道院」が描かれている。それぞれの形が違ったり、都市には紋章が付いていたりいなかったり。地形ごとに完成条件があって、その条件を満たすと得点になる。それぞれの形はどのタイルにどのタイルをどう繋げるかで変わってくるから、最終的な地形も毎回変わる。計算したわけじゃないけど、無限と言っていいくらいのパターンがありそうだ。

 

「やっぱり、ちょっと疲れちゃうけどね······」

 

 藍子の声には疲労の色が濃い。元々時間がかかる大型ゲームな上に、ルールを逐一(ちくいち)確認しながらだから猶更(なおさら)疲れたんだろう。特にルールを確認して説明してくれた藍子は特に疲れてると思う。

 

「頭の休憩も兼ねて、こっちやろうか」

 

 ハゲタカのえじきは前にもやったゲームだし、ルールも単純だから覚えやすい。頭を使うか使わないかで言ったら使うけど、軽い駆け引き程度だからカルカソンヌに比べればマシだろう。

 



 

「勝負つかないね······」

「ユウと私が被ったり、ユウとソウが被ったり······」

「姉ちゃんとソウも結構被ったよね······。みんな同じ時もあったし······」

 

 まさか、全員減得点ほぼゼロになるとは思わなかった。ハゲタカのえじきは各プレイヤーが持つ1から15までの数字カードを出し合い、得点カードは最も数字の大きい人が、減点カードは最も数字の小さい人が獲得するんだけど、誰かと数字カードが被った場合、被った人は全員その減得点カードを得る権利を失う。一応、誰も取れないカードは次以降と合わせた減得点になるんだけど、根本的に似たような考え方の人がやると最後まで被りまくって誰も点数が取れなくなったりするんだよね······。

 

「ねえソウ、前にやった時もこうならなかった?」

「言われてみれば······。まあ、藍子がやりたがってた訳だし、本人も楽しそうだからいいんじゃないかな?」

 

 何だかんだで楽しかったし。一番楽しんでたのは間違いなく藍子だったけど。

 

「ソウは何かないの?やりたいゲーム」

「いわれてみれば、いつもユウと私に選ばせてくれるけど、ソウの意見を聞いたことないね」

 

 2人の言葉を聞いて改めて考えると、確かに僕は2人に選んでもらってばかりで自分のやりたいゲームを選んだことは無かったように思う。けど······

 

「う~ん······。正直、2人と遊べるなら何でもいいんだよね、僕としては。強いて言うなら······コレかな?」

 

 ベッドの下から『カタン』を取り出す。ちなみに、僕の部屋は入って正面に勉強机、左側にベッドと僕らの体がギリギリ通るくらいのサイズの窓があり、右側には小さめのモニターと本棚が置いてある。一応、入り口の横にはクローゼットもあるものの、僕はあまり服に頓着しないのでガラガラだったりする。中学校や高校になったら、制服とかが入って埋まるだろうけど。

 

「ま、結局コレも木綿季の一人勝ちだけどさ」

「いや、偶にソウも勝ってるからね?確かにユウが勝つことが多いけど」

 

 こと勝負勘と運命力で木綿季に勝とうと思うのが間違いなんじゃないかな?僕、カタンだけは父さんから叩き込まれて自信あったんだけど、それでも木綿季とやると6割くらいの確率で負けるんだけど。他のゲームなら9割方負けるから比較的マシではあるけどさ。

 



 

「ここを『都市』にして······発展カードのポイントを合わせて10ポイント!」

「あ~!今日はソウに負けちゃったぁ!」

「わ、私、まだ4点くらいなんだけど······。2人共早すぎない······?」

 

 大体1時間で無事10ポイントに到達し、今日のところは何とか勝つことが出来た。ちなみに、最終的なポイントは僕が10ポイント、木綿季が8ポイント、藍子が4ポイント。仮に木綿季があと1枚『騎士』のカードを使った場合、僕が持っていた『最大騎士力』のボーナス2点も奪われて負けていた。相変わらず頭のおかしい(誉め言葉)運命力だ。藍子は······何故かは分からないけど、サイコロとの相性が絶望的なんだよね。カードとかならそんなことないんだけど。

 

「···っと、そろそろいい時間かな。下に行って母さんを手伝おっか」

「え、もうそんな時間!?」

「全然気づかなかった······。ユウ、早く行こう?」

 

 パパッと後片付けをして階下に降り、2人は夕飯の用意をする母さんを手伝いに、僕はお風呂掃除に向かう。去年に結んだ僕たち3人の約束事として、『お互いの家に泊まる場合、必ず何かお手伝いをすること』というものがあるからだ。まあ僕は致命的に包丁が使えないから、母さんの手伝いは2人に任せっきりなんだけど。

 

「よし······!今日も頑張って磨きますか!」

 

 気合いを入れ直してお風呂場に向かう。料理で貢献出来ない分、気分良く入浴してもらえるように全力を尽くす事にしよう。

 

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