ソードアート・オンライン ~より良き未来を目指して~   作:KXkxy

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 お待たせしました。今回はいつにも増して難産でした······。3回くらい書き直しました。

 久しぶりにユウキとラン以外の原作キャラの登場······というより、デスゲーム開始時以来の原作イベント回です。本格的な原作ブレイク開始です(紺野一家の治療の目処が立ってる段階で原作ブレイクしてるとは言わないお約束)。




019

 

 〈森の秘薬〉クエストをクリアし、報酬の《アニールブレード》を入手してからおよそ10日。僕らは村の周辺に広がる〈ホルンカの森〉を拠点にして、レベル上げの日々を送っていた。

 

「2人とも、そっちに2体行ったよ!」

「任せてソウ!せいっ!」

「えいっ!」

 

 レベル上げと言っても、同じ地域でやっているとどうしても効率は悪くなる。効率重視なら『実つき』をわざと攻撃して寄ってきたネペントを狩り尽くすという手もあるけど、流石に危険すぎるという事で却下になった。

 

「ふぅ······。お疲れ様、2人とも」

「ソウもお疲れ!姉ちゃんも!」

「お疲れ様、ユウ、ソウ」

 

 戦闘終了後、周りにモンスターがいないか警戒しつつも3人で労い合う。この数日で僕の《索敵》スキルの熟練度も上がったし、この辺りのモンスターなら100%こちらが先に見つけられるから警戒の度合いはやや引き下げているけど。

 

「······あれ?」

 

 《索敵》スキルの範囲ギリギリのラインに反応があった。それも大量に。これがプレイヤーやNPCなら複数のパーティがいるか、クエストフラグの一環かもしれないけど、実際の反応はモンスターを示す赤。しかも、ある方向に一目散に向かっている。

 

「······誰かが『実』を割っちゃったみたいだ」

 

 状況証拠でしかないけど、比較的近くで誰かが『実つき』を攻撃し、この辺りのネペントがその方向に向かっているなら辻褄(つじつま)が合う。

 

「···どうする?このままだと僕達は安全だけど」

 

 ネペントが他の方向に向かっているなら、僕達は安全に離脱できる。この辺りは森の奥に近い分、特に高レベルなネペントが出現する。経験値効率は良いけれど、実を割った時のリスクも高い。巻き込まれて無事で済む保証は無かった。

 

「けど、誰かが危ない目に遭ってるんだよね?」

「そうだね。それは間違いないと思うよ」

 

 それが過失なのか、誰かにMPKを仕掛けられたのか、或いは仕掛けたのかは分からないけど、誰かがピンチに······命の危機に(おちい)っている事に変わりは無い。

 

「それなら、ボクは助けに行きたい!姉ちゃんは?」

「私は······ユウに賛成、かな。危ない目に遭うのは怖いけど、ここで誰かを見捨てたらきっと一生後悔すると思う」

「······了解。本音を言うと避けてほしかったけど、2人がそんな事できないのは分かってたし」

 

 2人を危ない目には遭わせたくないし、僕もそんなのは御免だけど、後悔したりさせたりするのはもっと御免だった。後悔する辛さは身に染みて知っているから。

 

「じゃあ、行こっか。武器の耐久値は大丈夫?」

「ちょっと心配だけど······誰かが囲まれてるとしても、一点突破して逃げ道を作るくらいは出来ると思うよ」

「ボクは少し余裕があるけど······あんまり長くは戦えないかな」

「ん、了解。『倒す』事より『安全に逃がして、僕らも逃げる』事を優先しよっか」

 

 ユウキの物以外、武器の耐久値が心許(こころもと)ないけど、襲われている人を助けて逃げる事だけに努めればどうにかできる範囲だ。安全のために森から出て、〈はじまりの街〉方面に戻る事も考えよう。

 

「準備はいい?行くよっ!」

 

 掛け声と同時に、僕達3人はネペントを追って走り出した。

 



 

「これは······予想以上、だね······」

 

 ネペントが集まっている場所へはすぐに着いた。そもそも『実つき』の実を割ったところで、効果範囲はさほど広くない。精々(せいぜい)が半径150~200メートル。問題は······

 

「流石にこれは······多すぎない?」

 

 ランの言う通り、集まっているネペントの数は異常だった。僕らが定点狩り······殆ど場所を移動せずにモンスターを倒し続けていたにも関わらず、この場所に集まっているネペントは到底(とうてい)対処できない数だった。

 

「けど、僕達が来た方向は密度が低い。こっちから突破して、囲まれてる人を助けよう」

 

 《索敵》スキルには視界を埋め尽くす程の赤に交じって、1つだけ緑色が見えている。囲まれているプレイヤーがいるのは確実だった。

 

「ユウキ、ラン、行くよ!」

「うんっ!」「はいっ!」

 

 武器を握り直し、僕らはネペントの群れに突進する。包囲網の外周を構築していたネペントが僕達に気づいて振り返るけど、遅い。その時には既にランの剣技(ソードスキル)が発動し、射程内のネペントを薙ぎ払っていた。片手槍カテゴリの剣技(ソードスキル)"ラージア·スラスト"だ。水平方向に薙ぎ払われたネペント達はノックバックし、奥にいたネペントの動きの邪魔になる。

 

「ユウ!」

「分かってる!行って、ソウ!」

 

 ランの冷却時間(クールタイム)をカバーするように、ユウキが前に出る。単発水平斬り"ホリゾンタル"で斬り込み、範囲ではランに劣るものの、道を切り拓いていく。

 

「ありがとう、2人と······もッ!」

 

 射程でも威力でも2人に劣る僕には、2人のように道を切り拓く事はできない。けど小回りとすばしっこさなら僕が一番だ。包囲網を縫っていち早く救出するには、僕が突っ込むのが妥当だった。

 

「見えたッ!」

 

 血路を維持してくれている2人を横目に、襲い来るネペントを時に斬り伏せ、時にやり過ごす。そうする内に、目的の救出対象が見えてきた。

 

「って、アスナさん!?」

「えっ······!?ソウ君!?って事は、ユウキちゃんとランちゃんもいるの!?」

 

 なんと、その人物はアスナさんだった。幸い、彼女も僕らの事を覚えていてくれたみたいだ。

 

「はい!2人が脱出路を確保してくれてます!って、ミトは!?」

 

 ほぼ怒鳴るようにして話し合う。その間もお互いの得物は閃き、襲い掛かってくるネペントの攻撃を弾き、隙を見て反撃を撃ち込んでいる。その手つきに淀みは無く、初心者(ニュービー)だった彼女がこの20日間で経験を繰り返した事が窺えた。

 

「ミトは······あの崖の下に······。まだHPは残ってるから、落下ダメージで死んじゃったりはしてないみたい!」

「了解です!僕は下に行くので、アスナさんは早く向こうに!」

 

 言いながら、腰のポーチから回復ポーションを3本ほど取り出し、半ば無理やり握らせる。

 

「あ、ありがとうソウ君!」

「2人と合流したら、とにかく森を出てネペントから逃げる事を優先するように伝えてください!合流場所はまたメッセージで、って!」

「分かった!」

 

 アスナさんが手早くポーションを飲んでHPを回復させるのを確認して、ミトさんが落ちたという崖から飛び降りる。幸い、足場になりそうな出っ張りがいくつかあったため、それを経由して落下ダメージをやり過ごす事ができた。

 

「いた······!ミト!」

「えっ······?ソウ!?」

 

 がむしゃらに鎌を振るってネペントを倒し続けていたミトさんが上を向き、落下中の僕を見て驚愕の表情を浮かべる。その隙を突こうとするネペントに投げナイフを投げつけて牽制(けんせい)しつつ、ミトさんの隣に着地した。

 

「余裕が無さそうだから手短に。アスナさんはユウキとランに任せてる。今は無事に逃げ始めている筈!合流場所はまだ決めてないけど、2人とはフレンド登録しているから後でメッセージで決める予定。ミトも早くここから離脱を!」

「り、了解!ありがとう、ソウ!」

 

 アスナさんが上の2人と一緒という事を聞いて安堵の表情を見せるミト。僕から見える2人のHPバーは殆ど変化を見せないし、無事に撤退できているのは間違いない。2人の性格上、アスナさんを見捨てるとも思えないから彼女も一緒の筈だ。

 

「とは言っても······どこに逃げたものかな」

 

 合流場所を後から決めるとはいえ、完全に反対方向へ逃げてしまうと合流が難しくなってしまう。せめて逃げる方向だけは決めておくべきだったかと後悔するけど、今となってはどうしようもない。

 

「ソウ、こっち······!」

「えっ······?」

 

 ネペントの層が薄くなっている後方······ミトさんが切り開いてきた方から小さな、けれどよく通る、耳に馴染んだ声がした。

 

「トリア!?何でここに!?」

「説明は、後······!今は、逃げる······!」

「う、うん!ミト、こっちに!」

 

 彼女にしては珍しく、声を荒げるトリアについていく。その手に武器は無く、彼女は()()()()()()()()()()

 

「って、何で!?」

「ちょっと、あの子何考えてるの!?」

 

 ミトさんと2人、思わずツッコむ。現実世界(リアル)なら鈍器として使える盾だけど、この世界では盾に攻撃判定は付いていない。攻撃手段を完全に捨てたその装備は、誰がどう見ても正気とは思えなかった。

 

「その説明も、後······。こっち······」

 

 引っかかるものを覚えつつも、彼女の案内に従って森を駆け抜けていく。振り向く余裕は無いけど、もし振り向いたら大量のネペントがついてくるのが見えただろう。

 

「嘘でしょ······?」

 

 ドン引きしたようなミト。気持ちは痛いほど分かった。両手の盾を巧みに使い、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とか、常人には絶対不可能だし。システムに従って硬直したネペントの脇を走り抜け、硬直が解ける頃には距離を取る。それの繰り返しが僕らの逃走劇だった。

 



 

「ん······。ここまで来たら、大丈夫······」

 

 どれくらいの間、そうして走り続けたのか。気がつけば森を抜けていた。ネペント達の気配も無い。パーティを組んだままの2人のHPも健在。どうやら全員無事に逃げられたようだった。

 

「助かったよ、ありがとうトリア。どうしてここに?······って訊きたいところだけど、それはみんな合流してからにした方がいいのかな」

「そうしてくれると、助かる······。自己紹介も、その時に······」

「了解。というわけで、ごめんミト。紹介したいけど、それはアスナさん達と合流してからにしよう」

「ええ。分かったわ。それで、合流はどこにするの?」

「ちょっと待って。いまメッセージで2人の場所を「大丈夫······」って、え?」

 

 メニューを開き、メッセージを作ろうとした手が止まる。トリアは迷いのない足取りで歩き始めた。

 

「トリア、もしかして3人がどこにいるのか分かるの?」

「正確な場所までは、分からない······。けど、大まかな方向は、分かる······。その方向にある村は、1つだけ······。そこなら、合流しやすい······」

「そっか」

 

 フィールドで何か目印を探すというのは難しいし、どこかの街か村に入ってしまった方が合流はラクというトリアの言は正論だった。

 

「ねえ。えっと······トリア、ちゃん?」

「何······?」

「アスナ達······ソウの友達ならユウキとランの2人って言った方がいいのかな?どっちの方向に行ったか教えてもらってもいい?」

「ん······。あの場所から、大体南西方向······」

「南西······?そっちに村なんて······あぁ!」

 

 納得したような声を上げるミトさん。

 

「〈レーゼルの村〉ね!犯罪防止コードが無い『圏外村』!」

「名前は、知らないけど······多分、そう」

「『圏外村』······?犯罪防止コードが無いって、大丈夫なの?」

 

 犯罪防止コードが働かないという事は、普通にHPが減るし状態異常にもかかるし、モンスターが入ってこれるという事じゃ······?

 

「大丈夫よ。モンスターが入ってくるって言っても稀に、だし、それも入口にいるNPCの衛兵が退治してくれるから。村にいる分には普通の街や村と変わらないわ」

 

 ミトさんはそう言うけれど、僕の懸念はモンスターだけじゃない。人の悪意もだ。流石に直接危害を加えるような真似をするような人は少ないだろうけど、意図的にモンスターを集めてきて、衛兵が対処しきれない規模のモンスターを(けしか)ける、みたいな事だってあり得る。警戒は解かない方が良さそうだ。

 

「アスナにメッセージ送るわね。『〈レーゼルの村〉で合流しよう』って」

「あ、僕も2人に伝えなきゃ」

 

 歩き始めた時に閉じたメッセージ作成画面を再び開き、歩きながらメッセージを打ち込む。フレンド·メッセージは電子メールと同じように一斉送信できるのはこういう時には有難(ありがた)い仕様だった。

 

「これでよし、と。ミト、ここから村までどれくらい?」

「〈ホルンカの森〉からは直線距離で大体2キロくらいね。余裕を見て、1時間くらいってところかしら」

「ありがとう。それも付け加えて······送信、っと」

 

 メッセージを送信する。隣で操作していたミトさんもほぼ同時に送り終えたらしく、ウィンドウを閉じたのは同じタイミングだった。

 

「警戒ありがとね、トリア」

「ん······」

 

 歩きながら、メッセージを打っていた僕達の代わりに周囲を警戒してくれていたトリアにお礼を言う。返事は素っ気ないものの、その口元は綻んでいた。

 

「さて、それじゃあ急ぎますか。案内するわ。最短ルートで突っ切るわよ」

 

 ミトさんが元βテスターという利点を活かして案内を買って出てくれた。トリアに変わって彼女が先頭に立つ。

 

「モンスターと遭遇した場合は速攻で片付けるわ。〈ホルンカの森〉よりもワンランク下のエリアだし、大丈夫よね?」

「僕は大丈夫。トリアは······」

「大丈夫······。攻撃は、全部弾くから······」

「うん。隙を作ってもらえれば、僕が斬り込んで倒すから」

 

 隙をついて接近する必要がある短剣(ダガー)を使う僕と、攻撃を的確に弾いて隙を作るトリア。相性は抜群だった。

 

「それじゃ、行くわよ!」

 

 ミトさんの声と同時に走り出す。100メートルくらい先にモンスターの出現エフェクトが出たのを確認した僕達は、それぞれの得物を握り直した。

 




 フレンド·メッセージが一斉送信可能というのは(多分)独自設定です。原作にそんな描写は無かったと思いますが、フレンドやギルドメンバーを集めたい時にイチイチ1人ずつにメッセージを作成するよりは、一斉送信という形になっている方が現実的かな、と思いました。

 学校の連絡網みたいになっている可能性もありますが、血盟騎士団みたいな大規模ギルドなんかだと伝言ゲームのように途中で内容が変わってしまいかねないですしね。

また、ミトはアスナとのパーティを解消しようとする前にアスナのHPが回復した(ソウが渡したポーションで回復した)ためパーティを解消するという選択肢は頭をよぎってすらいません。純粋にアスナの所へ向かおうと戦っている最中にソウが飛び降りてきた形になります。ポーションを渡すのがあと少し遅かったら多分原作通りになっていたと思われます。



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