ソードアート・オンライン ~より良き未来を目指して~   作:KXkxy

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お久しぶりです。職場の方であちこち出張させられて執筆時間が取れず、気づけば半年以上経ってました······。

時間が空いた分、書き方を忘れてしまい、リハビリも兼ねてどうにか書き上げられました。なるべく毎月更新を目指していたというのに不甲斐ないと反省中です。


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「ミト······!よかった······!よかったよぉ······!」

「アスナ······。ゴメン、ゴメンね······!」

 

 合流と同時、涙ぐんでひしと抱き合うアスナさんとミト。

 

「助けられて良かったね、ソウ!」

「本当だね。そっちも無事でよかったよ、ユウキ」

 

 ユウキと2人、その光景を離れて見守る。普段ならランも一緒だけど、今は······

 

「トリアちゃん!会いたかったよぉ······!」

「わぷっ······。ラン、苦しい······。というか、痛い······」

 

 トリアを全力で抱き締めていた。もしこれが現実世界(リアル)なら骨がミシミシ言うんじゃないかって思えるくらいの勢いだった。

 

「姉ちゃんも、トリアに会えて良かったよね!」

「うん。······トリアはちょっと辛そうだけど」

「「ちょっと············?」」

 

 一頻(ひとしき)り再会を喜び終わったらしいミトとアスナさんから疑問の声が上がるけど、トリアは痛がりながらも笑っているし、本気で嫌がっているわけじゃない。

 

「······アスナ、笑ってるように見える?」

「ごめん、ミト······。私もよく分かんない。けど、本気で嫌がってるわけじゃないっていうのは確かにそうかも。抵抗してないし」

 

 ボソボソと小声で話す2人だけど、距離が近いから殆ど筒抜けだった。

 

「アハハ······。まあ、トリアは表情があんまり変わらないから分からないのも仕方ないよ」

「慣れちゃえば雰囲気とかで大体分かるんだけどね~!」

 

 笑い合う僕達と、ポカンとする2人。そして相変わらず抱き締められているトリアと抱き締めているラン。村としてある程度安全が保証されているとはいえ、《圏外》とは思えないカオスっぷりだった。

 



 

「それで、2人はどうしてあんな状況に?」

 

 トリアを抱き締め続けているランは一旦好きにさせておいて、冷静に話せる他の4人で情報共有をする。

 

「私が······、コレをドロップするレアモンスターを見つけて、アスナならネペントくらいは問題ないからって一旦離れたの」

 

 ミトが語りだす。コレ、というのが何の事か、口頭では分からないけど同時にストレージからレイピアを1本取り出して見せてくれた。

 

「ウィンドフルーレ······。〈攻略本〉によれば、1層で手に入る最強のレイピア······だったっけ?」

「そう。アスナのセンスは凄いし、武器を更新すれば多少スタートダッシュが遅れた今でも十分最前線に追いつける。だから······」

「レベル的にも実力的にも1人で問題は無かったし、一度離れてモンスターを倒しに行った、と······」

 

 ここで「無責任だ」とミトを責める事は簡単だけど、同時に難しくもある。このデスゲームにおいて、強力な装備を手に入れる事は手っ取り早く強くなる手段であり、それは生存確率を高める事に直結する。まして彼女が手に入れようとした装備は自分の物ではなく友達の物。『友達を助けたい』『友達に生きて欲しい』という気持ちを責める事ができる人なんていないだろう。

 

 アスナさんを1人にした、というのがダメだったと言う人もいるかもしれない。けどそれも、モンスターの行動パターンを把握している元βテスターだからこそ、素早く仕留めて戻り、再び共闘できるとも考えられるから間違いとも言い切れない。

 

「う~ん······。結果的には『誰も悪くない、不幸な事故』ってなるのかな······?」

「えっ······?」

 

 考えが口に出ていたのか、驚いたような呆然としたような表情でこちらを見るミト。

 

「ミトはアスナさんが強くなって、生き延びられるように強力な武器を手に入れようとした。これでアスナさんが1人で戦うのに不安が残るような実力だったら話は別だけど、実際は1人でも普通に対応できる実力だった。ただ運悪く『実つき』が死角に出てきちゃっただけ」

 

 強いて言うなら運が悪かった。少なくとも僕には誰も責められそうにない。

 

「ミトが責任を感じているのは何となく分かるけど、少なくとも僕には責められないかなぁ。ユウキは?」

「ボクもソウに賛成。ミトも、もちろんアスナも悪くなんて無いと思う!」

 

 ユウキも同じ気持ちらしい。話し合いに参加できていない2人はどう思っているか分からないけど、多分そこまで外れた事は思ってないと思う。長い間一緒にいた幼馴染として、感情が希薄な頃から一緒にいた者としての感覚に過ぎないけれど、何となくそう思えた。

 

「まあ、ミトがどうしても自分を許せないっていうなら······この先で挽回するしか無いんじゃないかな?」

「······この、先?」

 

 まだ呆然としているのか、オウム返しに呟くミトに頷く。

 

「そう、この先。今は無事2人揃って生き延びられたけど、生きている以上、似たようなピンチは多分この先もやって来る。その時に、ピンチの誰かを助けられれば、少しは自分を許せるんじゃないかな?」

 

 僕の勝手な想像に過ぎないけどね、と苦笑して締める。ミトは何か思う所があったのか、どこか覇気が薄いような気がしたさっきまでとは異なり、覇気と闘志に満ちた顔をしていた。

 

「そうね。正直、まだ自分を許せないけど······それでしょげて、アスナを危険に晒すわけにはいかない」

「ミト············」

 

 再起できたわけじゃない。元に戻れたわけでもない。いや、元の彼女にはもう戻れないのかもしれない。根底にずっと、アスナさんを命の危険に陥らせてしまった責任を感じ続けてしまうのかもしれない。けれど、ずっと沈み込み続けるよりも前へ進む事を選んだ彼女は眩しく、その輝きは尊いものだと思った。

 

「······2人の事は一旦これでおしまい、でいいかな?」

 

 ミトとアスナさんが頷く。 そこにさっきまで存在した危うさはもう無かった。お互いがお互いを守ろうという覚悟というか、決意みたいなものが窺える。

 

「それじゃ、これで解散でいい?もう日も暮れちゃったし、お互いに疲れてるだろうから宿屋で寝たいでしょ、2人とも」

「そうね······。アスナ、それでいい?」

「うん。それじゃ、また明日ね、2人とも。ランちゃんとトリアちゃんにもよろしくね」

 

 そう言って宿を探しに行く2人を見送り、離れた場所でまだトリアを抱き締め続けているランに向き直る。

 

「お~い、ラン?もういい?もう暗くなってきたし、一旦宿に行きたいんだけど」

「············(ギュッ)」

「あ~············。トリア、動ける?」

「·········ギリギリ、動ける」

「これから宿屋に行こうと思うんだけど、見ての通りランが離れたくないみたいだからさ······。引きずってもいいから一緒に移動してくれないかな。大変だと思うし、僕とユウキも手伝うから」

 

 コクリ、と頷くトリア。続けて彼女は遠くに見える一軒家を指さした。

 

「あそこ············。2階の部屋、借りられる············。ちょっと高い、けど」

「ん、ありがとねトリア。じゃあそこにしよっか。ユウキ、そっち持って」

「うんっ!······ホラ姉ちゃん、行くよ~」

 

 ランに正面から抱きつかれたままのトリアが前に進み、動こうとしないランの右側を僕が、左側をユウキが持ち上げて一緒に進む。今誰かに襲われたら4人揃っておしまいかなぁと思いつつ、《索敵》スキルを起動させた。

 

「(近くにプレイヤーの反応は無いけど······《隠蔽》スキルで隠れてる可能性もあるからなぁ······。油断は禁物か)」

 

 〈はじまりの街〉や〈ホルンカの村〉みたいな《圏内》であれば安全は約束されているけど、この村はシステム上《圏外》だ。モンスターは出現しないし、外から侵入しようとするモンスターは門番のNPC(ひと)が退治してくれるけど、プレイヤーの侵入は止められない。悪意あるプレイヤーが隠れて隙を窺っている、なんて事も十分にあり得た。

 

「(部屋を借りれば施錠もできるし、安全も確保できる。それまでは警戒したまま、かな)」

 

 《索敵》スキルは維持したまま進む。遅々とした足取りではあったものの、小さい村という事もあってか20分程度で目的の一軒家に到着した。多分普通に歩けば5分もかからなかっただろうけど。

 

「ごめんくださ~い」

 

 扉をノックし、少し待つ。やがてガチャリと音を立てて扉が開き、いかにも「女将(おかみ)さん」みたいな雰囲気のやや年配の女性が出てきた。直前まで料理をしていたのか、その右手にはおたまが握られている。

 

「はい······。ああ、剣士様でしたか。何かご用でしょうか?」

「こんばんは。夜分に申し訳ありません。今晩泊めて頂けないでしょうか?もちろん、相応の代金はお支払いします」

 

 『剣士様』というのはNPCの人たちが僕達プレイヤーを呼ぶ際の呼び名だ。相手はNPCだからと横柄に接する人も少なくないらしいけど、僕は、というか僕達はそうしなかった。人の姿をしていて意思疎通ができるなら、それはもう1人の人間だと思うから。

 

「まあ、そういう事でしたら2階をご自由にお使いください」

 

 快く応じてくれる女性と僕の間にシステムウィンドウが表示される。内容は代金の確認だった。1人あたり1泊100コル。宿屋の相場の倍だけど、2階を全て使っていいのであれば、狭い部屋にベッドしかない宿屋より遥かにオトクだ。

 

「とりあえず1泊でいい?」

 

 2人に確認する。肯定の返事が返ってきたのでそのまま1泊分······400コルを支払った。これで2階部分を今晩限りだけど自由に使える。

 

「別にソウ1人が出さなくても······。私もユウも自分の分くらい出すよ?トリアちゃんの分も皆で出せば······」

「いいよいいよ。そんなに高いわけじゃないし」

 

 流石に新しい武器防具とかみたいな、そこそこのコルがかかる物なら厳しいけど、たかだか100コルだ。僕以外の3人分を合わせても300コル。その辺のモンスターを倒してドロップした素材を売ればすぐに元が取れる。

 

······ま、そんな事言えるのもこうして街の外に出てるからなんだろうけど

 

 小さく独り言ちる。デスゲームと化してしまったこの世界で、命の危機と常に隣り合わせな街の外に出るという選択ができない人も少なくないだろう。モンスターとの戦闘という一番手っ取り早い手段が無い以上、その人たちは100コルどころかその半分、いや1割すらロクに稼げないかもしれない。

 

「ソウ?どうかした?」

「ん······。いや、何でもないよユウキ。行こっか」

 

 そんなマイナスな事を考えていたせいか、少し俯いていた僕の顔を覗き込むユウキ。心配をかけないように笑顔を()()、先に上に上がっていたランとトリアに合流するために階段へ向かう。何か言いたげなユウキの表情に気づく事なく。

 



 

「さて、トリア。何でここにいるの?」

 

 夕食もそこそこに、単刀直入に切り出す。彼女は本来、僕達プレイヤーの精神状態を監視し、異常があるなら対応するためのAIだ。そして茅場さんの事だから、今の状況を作り出した段階で彼女達の機能を停止させていてもおかしくない。『完全な異世界』というあの人の理想のためには、『人』であるプレイヤーが自分自身の意思で立ち上がって欲しいだろうから、勝手にケアを行うAIなんて、言ってしまえば『邪魔』だろうし。

 

「ん············。確かに、私達MHCPは、『プレイヤーへの干渉』を禁止されてる············。今、私がここにいられるのは·········優先度がより高い命令があったから············」

 

 優先度が高い命令······?この世界の創造主である茅場さんからの命令以上の命令なんてあるの······?

 

「ん······。『会いに行く』って、約束············」

「え·········?」

 

 驚くべき事に、彼女はあの約束をした時に、最優先命令として自分自身に『正式サービス開始後に僕達に会いに行く』事をインプットしていたらしい。勿論それだけではここには来れない。彼女自身の命令権と、創造主の命令権では比べようも無く後者の方が高い。それを······

 

「その命令を······、『私の基幹プログラム』に刻み込んで······、上位存在から隠してる······。命令の優先度も······、本来想定されていない場所の命令だから·········普通の命令より優先して、実行できた·········」

「ハァッ!?」

 

 流石に驚く。基幹プログラムに干渉するなんて、一歩間違えば正常に機能しなくなりかねない真似をあの時にしていたなんて······。

 

「無茶するなぁ······」

「ソウの、影響·········?」

「いや僕そんな無茶しないよ!?」

 

 誰がそんな、自分自身を犠牲にするような無茶を······

 

「ユウキとラン······いや、木綿季と藍子のためならやりかねない······ッ!」

 

 何せ死んだ後も、2人のために『別の自分』に記憶を託すような筋金入りだ。しかも1人2人じゃない、無数の『天野蒼』が同じ事をしている以上、もう『天野蒼』という存在はそういうモノなんだろう。

 

「それで·········、時間はかかったけど、プログラム本体から私の意識を抽出して、未使用のプレイヤーアカウントに転送·········。3人と同じプレイヤーとして、ここにいる·········」

 

 流石にプログラム本体に課せられた『干渉禁止』の命令を完全に無視は出来なかったらしい。本体が動けない分、意識データだけをコピーしてプレイヤーデータに転送したって事か。

 

「これまた何て無茶を······。プレイヤーって事は僕達と同じで、HPが0になったら······」

「多分、削除される·········。このアバターと意識データだけじゃなくて、もしかすると本体まで影響を受けるかも·········」

 

 それはつまり、HPが0になる事と、トリア自身の消去がイコールの可能性があるという事だった。しかも本来の彼女なら持っている『システムへのアクセス権』を今の彼女は持っていないらしい。完全に1人のプレイヤーとしてここに立っているという事だった。

 

「それじゃ、これからはトリアちゃんも一緒だね」

「うん·········!」

 

 ランがトリアにまた抱き着く。「ボクもー!」と言いながらユウキも混ざり、少々気が引けたけど僕もそれに続く。

 

「わぷっ······。3人とも、苦しい······」

 

 もみくちゃになって流石に苦し気にするトリア。けどその顔はどこか嬉しそうで、それを見た僕らはより一層くっつくのだった。

 




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