SAOと言うゲームの世界で行われるデュエルに置いて…ほんの僅かな時間だとしても、普通こうしてインターバルが挟まれるなんて事は先ず無い…まぁ実を言うと…武器が無くなった時点でアスナさんが降参してくれないかな、が…その、半分本気だったり…最もこうして予備の武器を出してまでやる、と言うのなら特に否は無い。それにしても…
「……煩い…」
精神統一をしていた私は、余りの喧騒の激しさについ、悪態を吐きながら目を開く…私はソードスキルをまともに使えない上、予定外の空白の時間を挟んだにも関わらず…何故かヒートアップし続ける外野にウンザリする…
「ん?何か言った?」
メニューウィンドウを弄っていたアスナさんが、手を止めてこちらを見ている…(小声で言ったのに聞こえたみたい…内容までは分からなかったみたいだけど)
「…どう考えても盛り上がりに欠ける試合なのに…どうしてこうも騒がしいのかと思いまして…」
それもこれも…やっぱり目の前にいるとにかく目立つ容姿のこの人のせい、か…とか思っていたら、私を見るアスナさんに呆れの表情が浮かんでいるのが見えた。
「……何ですか…?」
「今…私のせいで要らない注目されてる、とか思ったでしょ。」
……大体合ってる。何でバレたのか、とか深く考えても仕方無いので取り敢えず不満をそのまま漏らす事にする…(八つ当たりにはなるんだろうけど…やっぱり文句は口にしたいから…)
「…アスナさんの場合、この世界でもトップクラスの美女ですからね…そのせいでとばっちり受けてるな、とかは…さすがに思っちゃいますよ…」
「…色んな人に私、そう思われてるみたいだし…今更一々否定しないけど…貴女がそれを言うのはどうかしらね…」
否定、しないんだ…
「…それは…どういう意味ですか…?」
「…貴女も美人だって事よ。…同性の私から見ても相当の…ね。」
「はぁ…?」
「やっぱり自覚無いのね…誇れ、とは言わないけど…貴女はね、本当に美人なの…それもとびっきりの。」
今度は恥ずかしくて…こっちが直視するのを躊躇う様な顔でそれを言うアスナさんに複雑な気分になる…
「…照れるくらいなら…最初から言わなきゃ良いじゃないですか…」
「貴女の顔も…今相当に赤いけどね…」
そう言ってアスナさんは顔をウィンドウに戻し、また操作をし始める…
……私が美人、ね…レコン… 伸一にしかリアルではまともなアプローチかけられた事無いから、てっきりそうでも無いかと思ってた(レコンが変わり者なのかと…)
…と言うか、昔から割と童顔なのがコンプレックスで…この顔が美人に見えるなんて考えた事も無かった…何か意識してしまうと…途端に恥ずかしくなって来る…
「…リーファちゃん?」
「!…はっ、ハイ!?」
「…こっちはもう準備出来たけど…貴女大丈夫…?」
「……アスナさんのせいじゃないですか…」
「…貴女が自覚無かっただけじゃない…それでどうするの?降参する?」
「…まさか。」
私は正座から足をもつれさせつつも…何とか立ち上がり、その場で目を閉じる…切り替えないと…色々考えるのは後にする…!
意識して鼻から息を吸うようにして、口から吐き出し深呼吸をする…この世界では意味が無いと言われる動作だけど…もつれた思考を解し、クリアにするには"コレ"が…私にとっては昔から一番合っていた…錯覚かも知れないけど二度、三度と繰り返すごとに頭が冷える様な感じがして来る……良し。
目を開く……今、私の目に映るのは敵であるアスナさんだけで良い…余計な情報は…一切、必要無い。
「…お待たせしました…行きます…!」
「っ!」
空いた距離を一気に詰める…!……いつもより明らかに速く動く私の身体…見た目が同じなだけで…この身体は所詮アバターかも知れないけど、もう二年の付き合いだ…既にもうほぼリアルのソレと何も変わらない…制御は…出来る!
そして…私の構えた剣は光を帯びていた…
「ハァァ…!」
突き出した私の剣はアスナさんの胴を…穿つ事は出来ずに、右にズレたアスナさんに躱される…!
「…ごめんね、リーファちゃん…ふっ!」
光を纏うアスナさんのレイピアが棒立ちの私に向かって突き出され、技後硬直により動けない私の胴を貫く…私のHPが少し減り、すぐに止まる…
「……負けました。」
「…うん、私の勝ちね。」
さっきの一撃はリアルではまず出せないだろう…乾坤一擲と言っても過言では無い、私の最大にして最高の一撃だ…悔しくない訳じゃないけど、コレで負けるなら……悔いは、無い。
…勝敗が確定した事で一際大きく響く、この大きな歓声が許せるくらいには今…きっと私は機嫌が良いと思う…
「リーファちゃん。」
WINNER表示がされているアスナさんが、私に向けて右手を伸ばす…私はアスナさんの方を向き、その手を掴んだ。…うん、本当に心地良いな…負けたのは当然初めてじゃないけど…こんなに気持ち良く負けたのは初めてかも。
「…アスナさん。」
「ん?何?」
「…この後、屋台の物何か買って食べません?」
「……いきなり食べ物の話?勝利の余韻が台無しなんだけど…」
「何か、お腹空いちゃって…」
「…ま、良いわよ…付き合うわ。」
「…じゃ、もちろんアスナさんの奢りで。」
「……何で私が勝ったのにそうなるの…?」
「…アスナさん、今…歳、幾つですか…?」
「…何よ…いきなり…多分、今年で17だと思うけど…」
「私は確か…今年で16なんで、私はアスナさんの後輩になりますね…ここは、やっぱり先輩が奢る場面でしょう?」
「…一歳しか違わないじゃない…まぁ別に奢るのは良いけど…」
「決まりですね…じゃあ、今すぐ行きましょうアスナ先輩。キリト君の試合…始まっちゃいますから。」
「え…ちょ、ちょっと!引っ張らないで!リーファちゃん!?」
私はアスナさんの手を掴んだまま…出口に向かって走り出した。