IS 蒼き宙の向こうへ   作:虚無の魔術師

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多分これが今年最後の投稿になると思います。やる気があれば明日に出せそうだけど(多分無理そう)


第五章 残響散歌編
第100話 プラント奪還作戦


学園祭の事件を経て数日、龍夜とラウラがドイツに向かった直後。いつも通りの日常を過ごそうとしていた一夏達は、理事長に呼び出されることになった。

 

 

「─────困った事態になった」

 

 

集まったばかりの代表候補生一同を呼び出した当人は、非常に申し訳無さそうな顔でそう口にした。理事長室に集まった代表候補生一同─────一夏に箒、鈴にシャルロットは理事長の対応に不思議そうにしていた。だが、彼が続けて語った話により、一気に緩んだ意識が引き締まる。

 

 

「先の会談で、『国連』の意思決定が決められた。君達代表候補生の、軍事作戦の参加されることになった」

 

「軍事作戦の参加………ってことは」

 

「恐れていた、君達の戦場への武力介入だ。『特権』を与え、IS学園に援助しているのは、ただの遊び事の為ではない、と連中は抜かしていたよ」

 

 

馬鹿にしてくれる、とIS学園の生徒よりも幼い見た目の少年は苛立ち混じりに吐き捨てた。その言葉に鈴やシャルロットはやはりか、と分かりきっていたかのように表情を険しくする。まだまだ代表候補生として未熟な一夏と箒も、そんな2人の様子に一層気を引き締めた。

 

 

「…………すまない」

 

「理事長………」

 

「学園外の何者かの圧力、IS学園の武力利用を目論む者の企みだろう。僕がそれを防げなかったのも明確な事実だ。君達に迷惑を、掛ける必要のない苦労を背負わせてしまった………私の責任だ、本当にすまない」

 

 

国連の最高評議会の一員でもある時雨理事長は、今回の決定を覆せなかったことが相当悔しく、申し訳なかったらしい。深い後悔を滲ませた少年は、一夏達に向けて深く頭を下げた。一人の大人として、責任者としての誠意を見せていると言わんばかりに。

 

 

「大丈夫です、理事長。俺達だって、こういう事になるって覚悟はありましたから!」

 

「……………そうか」

 

 

気遣う一夏の言葉に、理事長はすぐに頭を上げた。複雑そうな感情の入り交じった表情であった彼は、弱音を見せないように表情を切り替える。一連を見届けた鈴がようやく、話題を切り込んできた。

 

 

「で、その国連様が私達を必要とする理由ってナニ?わざわざIS学園の学生を引っ張り出すなんて、情けない真似するからには、重要なことなの?」

 

「………それに関しては、現地の部隊が説明する。まずは、君達に同行する二人を紹介しよう。と言っても、君達もよく知る相手だけどね」

 

「─────私等よ。知ってるだろうし、紹介の必要なんていらないわ」

 

 

そう言うのは、入口に並んでいた二人─────陸奥と長門。学園の用心棒兼理事長の配下であり、一夏と箒の師匠とも呼べる二人。刺々しくも大人のような振る舞いを隠さない陸奥とその場にいる全員に規律正しく一礼を示す長門、いつも通りの態度である二人に彼等も気を緩ませていた。

 

しかしすぐに険しい表情に切り替えた時雨理事長が口を開く。

 

 

「集合時間は一時間後、目的地はサウジアラビア諸国、アストール共和国の領内になる。詳しい話は、現地の国連軍から聞いて欲しい」

 

 

◇◆◇

 

 

IS学園から飛ばした飛行機により、サウジアラビア諸国へと辿り着いた一夏達。アストール共和国に隣する軍事基地に着いた一同は国連が保有する武装母艦─────グラシーヴァへと着艦する。

 

艦橋へと辿り着いた一夏達を出迎えたのは、二人の男女であった。

 

 

「────お待ちしておりましたわ、皆様」

 

「────遅い。どれだけ待ったと思って…………あ」

 

「げっ」

 

二人とも、長門や陸奥同様特殊なスーツを身に着けていた。しかし明確に違うのは女性のスーツはケーブルと繋がった特異なものであり、男性のスーツは長門達のように所々に装甲を備えたものである。

 

輝きを宿す金髪を伸ばした女性、その肌は透き通るように白かった。全身のスタイルから見てもそこいらの大人に負けないほど立派であるが、それ以上に心配になるくらいだ。全身を座席に固定したようにケーブルに繋がれた彼女は何一つ気にした素振りもなく、物腰柔らかく一夏達に微笑んでいた。当の一夏もドキッとしかけたのは内緒である(ヒロインズが冷たい目を向けていることも)

 

一方で、男性は不機嫌そうな態度を隠さずに顔をしかめていた。茶色の短髪、両耳と額にヘッドギアを備え、二メートルに匹敵する機械的な大槍を手にしている。

 

苛立たしそうに不満を口にした男性は一夏達を睨んで、思わず声を漏らした。それと同時に嫌そうな声を上げたのは鈴である。当然、、そんな鈴の対応に男の顔は更に険しくなった。

 

 

「人様の面見て『げっ』とは………随分偉くなったものだな、チビガキ」

 

「………ホント最悪。何でアンタが居るのよ………いや、国連所属だったわね」

 

「口の利き方まで忘れたか。生意気だったお前を鍛えてやった身としては嘆かわしい。先生とぐらい呼べないのか?」

 

「誰が………っ!私が先生って呼ぶのは二人だけよ!」

 

「…………そうか。良い恩師を持ったようで何よりだ」

 

 

とてもだが立場や歳が上の人間に向ける態度ではない。そういう事もちゃんとしているはずの鈴が、こうなるなんて普通ではない。男の方もだ、鈴から敵視されていながらもその顔に怒りや嫌悪は感じない。

 

そんなセカンド幼馴染の様子に当惑しながらも、一夏は鈴に問い掛けた。

 

 

「鈴。もしかしてあの人、お前の師匠なのか?」

 

「………そんなんじゃないわよ。本国で世話になってたの、軍部関係で…………思い出すだけで嫌な記憶」

 

「ホントに生意気だな、このガキは。軍部を脅して専用機を与えてやったのは俺なんだがな………少しくらいは恩人への敬意を見せて欲しいくらいだ」

 

「それ以上にボコボコにされた事を忘れてないし────他人に甘えるな、って教わったのも事実だから。感謝なんてしないわよ」

 

「────テロリスト如きに出し抜かれたと聞いた時は腑抜けたかと思ったが………なんだ、良い目をする。俺も教え甲斐があるというものだ」

 

火花を散らせ合う二人の剣幕に、居心地が悪いという話ですらない。半ば助けを乞うように陸奥を見た一夏は、彼女が呆れたように女性に目配せをしたのに気付く。その女性が未だ睨み合う男の背中を押し、落ち着かせる。

 

並び直した二人はコホン、と軽く咳き込む。まずは女性の方から、名乗り始めた。

 

 

「エリーゼ・骸・シャントライアと申します。長門さんや陸奥さんと同じ『ガーディアンズ』の一人。この超弩級機動戦艦グラシーヴァただ一人の船員もとい艦長をしております。よろしくお願いしますわ」

 

秋風影(チウ・ファンイン)だ。エリーゼと同じガーディアンズだ。名前は好きに呼べ、と言いたいが────チウとか、チーとかだけは呼ぶな。俺をそう呼んだ奴は例外なくぶち殺す」

 

 

そんな自己紹介に、思わず体を強張らせる代表候補生一同。『ガーディアンズ』という名前は知っていた。長門や陸奥の所属するグループとして、もう一つの名を。

 

『ガーディアンズ』もとい、『強化人間』。ISを使用しない、ISと同等以上の戦力の戦闘兵器。それこそがガーディアンズ、国連の作り出した非合法の強化人間であり、国連の絶対的守護者。

 

 

「さて、戦力も揃ったところだ。ミーティングを始めるぞ」

 

 

そう言ってのけた風影に呼ばれる形で、一夏達は艦橋へと入る。エリーゼが「どうぞ」と優しく微笑むと、広がった空間の中で大きな机と座席が足元の床から展開される。当惑していた一夏達を他所に陸奥と長門が先に腰掛けたことで、彼等も続いて腰を下ろした。

 

それと同時に、机────もとい大型のディスプレイが起動し、空中にあらゆる情報が映し出される。それを指先で動かしながら、風影が淡々と説明する。

 

 

「────今回我々の目的地は旧アストール共和国保有のプラント『21』。この作戦はアナグラムにより奪い返されたプラントを再び奪い返すことにある」

 

「奪い返された………?」

 

 

その一夏の疑問は、目の前に映し出された写真と3次元的な立体で映し出された建造物を見ながら溢れたものだった。そこいらの軍事施設よりも大きくはない城塞のような砦。しかし、地下空間に膨大な施設と工場を有したその施設は、八神博士が遺した遺産の一つ。無人機というISの次に求められた兵器を無尽蔵に作り出せる、究極の神秘。

 

正直に言うのなら、アストール共和国がサウジアラビア諸国に負けずに成り立てたのは、自国の領地内で『プラント』を見つけ出せたからだろう。無人機の開発を行うだけではなく、僅かな燃料で半永久的に動く『プラント』はアストール共和国が他国や大国に負けずに発展してこれるほどの繁栄を齎すほどのものだった。

 

────だが、だからこそ、今回狙われたと言うべきか。

 

 

「………一週間前、アストール共和国内で大規模なテロが発生した。政権転覆を企てる不穏因子による工作により、アストール共和国は完全に掌握された。これを危険視した国連は軍を派遣、これを制圧した後に、共和国はサウジアラビアと合併することになった」

 

 

身元不明のテロリストによる犯行。それにより瓦解したアストール共和国に自治は厳しいとして、国連は共和国を解体させた。たった数日で収まったこの件は、あまりにもアッサリとしていた。陰謀論を提唱する者もいたが────強ち間違いではなかった。

 

 

「国連はその際、不穏因子が狙ったとされる『プラント21』を危険視し、国連が管理することに決定した。………これが、表向きに国連が世界に伝えた内容だ」

 

「あの………さっきから気になってたんですけど、奪い返されたとか、表向きとか、一体どういう意味ですか?」

 

 

そう問いかける一夏の顔には、信じたくないという感情が浮かんでいた。彼としても、おおよそ考えがあるのかもしれない。だが、信じたくない。そんな非道なことありえない。そんな理不尽を世界が、平和を謳う国連がするはすがない、と。 

 

そんな一夏の淡い期待は、彼の師によって打ち砕かれた。

 

 

「国連の目的は、最初から『プラント21』だった。それが真実でしょ」

 

「…………え」

 

「そうだ。アストール共和国で起きたテロも、実行した不穏因子も、国連の仕込みだ。『プラント21』を手に入れる為の大義名分を得るために、こんな遠回しな真似をしたわけだ」

 

 

ろくでもない連中だ、と風影は肩を竦めるのだった。信じたくはなかったが、やはりこれが国連の現状なのだろうか。………正直、分かってはいた。八神博士を悪魔にし、彼の息子という重責をシルディに背負わせた国連の腐敗を、目の当たりにしたことへのショックは少なからずあった。

 

心配する箒やシャルロットの視線を受け、一夏はいらぬ迷惑をかけた、と気丈に振る舞う。恩師からは足を踏みつけられ、喝を入れられたことで何とか不満に思う気持ちは呑み込むことにした。

 

話を続けるぞ、と風影は新たにディスプレイに写真を映し出す。軍服を身に纏った屈強な軍人の写真を基に、話は進んでいった。

 

 

「これに気付き、反発したのはアストール共和国軍所属のヴァロン・デギム大尉だ。奴は国連と協定を結んでいた上官を粛清後、部下を引き連れ────アナグラムに亡命した」

 

「っ!」

 

「その後、ヴァロン・デギムの救援に応える形でアナグラムが『プラント21』を奪還した。無論、国連軍は奪い返すべく戦力を派遣したが、全て打ち負かされたというわけだ────よりによって、たった二人相手にな」

 

 

そして、ディスプレイに映像が映し出された。内容は派遣された無人機が撮った記録。先の戦いが、如何に圧倒的であったのか証明するものであった。

 

 

『────有象無象!塵芥に等しく!南無三!』

 

『国連の鉄屑どもが、オレ達に勝てるわけねぇだろ!』

 

 

それは、あまりにも一方的すぎる戦い────最早蹂躙であった。無数にも等しい無人機の軍勢が、たった二人の青年によって薙ぎ払われ、殲滅されていた。

 

 

一人は、忍びのような装束を纏っていた。忍者のように機敏に動き回り、背中から伸びた三尾の鎌が無人機を切り裂いていく。辻斬りのように、綺麗に両断された残骸の山が並ぶごとに、風の刃が音を立てて炸裂する。

 

もう一人は、それ以上の爆炎と破壊を巻き起こしていた。苛立たしそうな声と共に響き渡るミサイルの弾幕。右腕に担いだ砲身から放つ弾頭が炸裂し、多くの無人機へ破片の雨を浴びせる。飛び上がった少年は左腕の砲身から閃光を、高出力のレーザーで地表ごと無人機群を焼き尽くす。終いには両肩や背中に積んでいた鉄の塊から無数のミサイルを放射し、戦場を纏めて硝煙と爆発で覆い尽くしていく。

 

背を並べ戦う二人、そして少年の手にした砲身から光が放たれてようやく、映像は途切れた。新たに写し出されたデータには、2人の少年と彼等の戦闘データが記載されていた。

 

 

「【半蔵】と【ジード】、アナグラムの幹部とされる主力メンバーだ。この二人だけで国連軍の無人機五千体の部隊も殲滅された。これが、現時点での奴等のデータだ」

 

「あの忍者モドキ、厄介ね。攻撃と機動力は前に見たアメリカのIS以上よ。特に武装、どういう仕組みであそこまでの切れ味を出してんの?」

 

「………もう一人の方も、手強いね。砲撃主体で威力が強過ぎて、下手に近付けない。防御パッケージでゴリ押し出来るかもだけど、ビーム兵器と実弾を兼用されるのは厳しいなぁ」

 

「…………一夏、分かっているか?」

 

「ほ、箒こそ、ついていけてるのか?」

 

 

まだまだ代表候補生として未熟だからか、他二人よりもついていけていない一夏と箒。そんな二人に陸奥は露骨に呆れながらも、長門と共に情報を交換する。

 

 

「何より厄介なのは、奴等の連携よ。あの二人、互いの持ち味を活かしきってる。もし相手をするにしても、引き離さないと面倒ね」

 

「…………自分も同感です。ですが、それ以上にまずは他の戦力を排除するのが最優先だと思います」

 

「長門の言う通りだ。あの二人が『プラント21』に居座っている以上、我々の勝率は低い……………故に、まずはこの二人を『プラント』から引き剥がす」

 

 

そう言って、風影はディスプレイに投影した地図に光点を示す。プラントから大きく離れた位置にある無人基地。本来は軍人などが配備しておくべきだが、エリーゼによる遠隔操作により無人でも問題無く稼働する。その基地からミサイルや砲撃の軌道ラインを写しながら、彼は一夏たちに向けて告げた。

 

 

「これから、我々はプラント地上部へのミサイルや自走砲を使用した砲撃を開始する。奴等によって阻止されるだろうが、そこ自体はどうでもいい。奴等はミサイルや自走砲による砲撃を阻止するべく、軍事基地を制圧するだろう。あの二人が軍事基地の制圧を行っている間、お前達代表候補生には『プラント』の制圧及び奪還をしてもらう」

 

「制圧って………戦力が他にいるわけ?」

 

「『プラント』にはアナグラムが量産した無人機、何よりデギム大尉率いる反乱因子が合流している。あの二人の相手をする前に、戦力を減らしておくのが最善という話だ」

 

 

要は、主戦力を引き離している間に一夏達に『プラント21』を制圧させる、というのが一連の作戦らしい。プラント制圧後の命令は即時伝えるとのことであり、風影は淡々と口を開く。

 

 

「主力二人を引き離す為の攻撃は五分後に行われる。お前達には専用の飛行ユニットを用意してある。この戦艦のカタパルトに配置してある。時間までにそこに集まっておけ────タイミングは此方で伝える」

 

「…………陸奥さんや長門さんは、一緒じゃないですか?」

 

「私達にも事情があるのよ。アンタ達が掃討を終えたら、すぐに合流するわ。ほら、さっさと行く」

 

 

そう急かした陸奥に、一夏は慌てて先に出た箒達の後を追いかけた。ようやく静かになった艦橋の中で、陸奥は苛立たしそうに机に足をかけるのだった。

 

 

「…………随分、気が立っているな。陸奥」

 

「当たり前でしょ。国連の連中、ふざけた真似してくれる………理事長も理事長よ。IS学園を主力にした作戦ですって?舐めんじゃないわよ」

 

────一夏は知らずとも、他の少女達は薄々気づいているのだろう。この作戦は、IS学園の代表候補生を軸とした計画であり、負担を背負うのは彼等である。そう言う作戦で進めろと立案したのは国連のトップを仕切る組織であり、理事長もそれを受け入れた。

 

その事に、未だ陸奥は苛立って仕方ない。子供を戦場に出す為に、自分達は軍人になったわけではない。そんな事の為に、肉体を切り刻まれ、改造されることを受け入れたわけではないのだ。

 

 

「────彼奴等に情でも湧いたか?自分の立場を思い出せよ、陸奥」

 

「……………」

 

「俺達『ガーディアンズ』は国連の、世界の平和の為の強化人間だ。場合によっては、女子供であろうと排除する。それがIS学園であろうとも、命令があれば排除する。それが俺達の存在意義だろ」 

 

「分かってるわよ、そんくらい」

 

「────あらあら、陰鬱とした空気ですわね」

 

 

は、と風影と陸奥の表情が変わった。不味い、と狼狽した風影を尻目に陸奥は即座に距離を取る。割って入ったエリーゼはそれそれ楽しそうに口元を緩ませながら、微笑んでいた。

 

 

「さて、皆様の空気を切り替えるべく、私も腹を括りましょう。────さて、皆様。性知識のお勉強をしましょう」

 

「────いらない。必要ない。お前が腹を括ることも、しなくていい。お前は黙って座ってろ、何も喋るな」

 

「喋るな?では、喋らなければ何をしても宜しいのですね?喋らなくても出来ることはありますよ?」

 

「宜しいわけあるか。余計なことをするなと言って────ぬああああっ!!?お前!言っているそばから!ゴミみたいな情報を流し込むな!」

 

 

強化人間 エリーゼ。戦艦を単独で動かす生体ユニット兼ブレインの役割を担う彼女には、致命的な欠点が存在してていた。清楚染みた立ち振舞いとは裏腹に、その脳内にはピンクな妄想や猥談の話が渦巻いている。

 

その被害を一番被っているのは、彼女の相棒もといお目付け役の風影である。事あるごとに彼の体内に組み込まれた装置を介して、卑猥な性知識の情報を叩き込まれていた。最も、彼女がそういうことをするのは基本的に他人に配慮しない物言いをする風影を叱るためでもあるのだが(本人の趣向が関係しているとは言わない)

 

 

「おい陸奥!この女止めろ!俺の頭に余計なもんを流すなと言え!」

 

「…………アンタのコンビでしょ。手綱くらい握ってなさいよ」

 

「うふふ、陸奥さんも良いこといいますね。手綱、手綱ですか。私、そういうプレイにも興味が…………ふふっ、ちょっと下の方が滾ってきましたわ」

 

「ぐああああッっ!!おい、発情するな!このエロボケ女!止めろ!クソみたいな内容の十八禁を俺の頭に炸裂させるなァ!!」

 

 

◇◆◇

 

 

『────聞こえるか、代表候補生諸君。目の前に並んでいるものがあるだろう。お前達にはそれでプラントまで移動してもらう』

 

カタパルトに集まった一夏達に、心底疲れたような声で風影が呼び掛ける。彼等は風影に言われるがままに目の前に並んだ四機の飛行ユニットを目にした。

 

 

『それは国連所属の研究機関が開発した特殊外装「カミカゼ」だ。ISのエネルギー充電パックも備えてある。制圧完了後、それを補充してから待機するように』

 

「カミカゼって、嫌な予感しかしないのですが………」

 

『ああそれと、「カミカゼ」による移動でプラントに着いた後にはトリガーのスイッチを押してから、離れろ。巻き込まれたいという奴は、そのまま掴んでいればいいがな』

 

 

やはり名前通りのやつだ、と誰もが察したのだろう。まぁ飛行ユニットという割には翼の部分に並んだミサイルなどの武装も豊富である。

 

 

『それでは、────攻撃開始。プラント21への砲撃を開始します』

 

 

機械的に電脳と繋がったエリーゼの意識により、作戦開始の引き金は引かれた。無人基地から放たれる砲撃とミサイルの一斉掃射。地上の砦一帯を焼き払うはずの一撃は────不発に終わった。

 

 

『────不発。いえ、防がれました。やはり、対応力が早いようです。…………両二名、動きました。前線基地へと向かっています』

 

『チッ、全部落とすか………主力というのも当然か。聞いたな?奴等が無人基地へ突入した瞬間、最大戦力で時間を稼ぐ。戦闘データ上での時間は十分、いや最低でも五分が限界だ。プラントに戻るまでに数分は掛かることを考慮して動くように────カウントダウンを開始する。配置につけ』

 

モニタリングされる立体の地図。攻撃を行う無人基地へ向かう熱源が二つ、これがアナグラムの主力二人であることは間違いない。彼等がそのままプラントから離れてようやく、一夏達の出番であった。

 

長いカウントダウンを受けながら、一夏は飛行ユニットを掴み息を整える。覚悟は出来ている、今更弱音を吐くつもりはない。及び腰である自身を奮い立たせながら、開かれたカタパルトの先の景色を見据えた。

 

 

『3、2、1────総員、発艦ッ!』

 

 

直後、四人は飛行ユニットと共に射出された。一瞬の浮遊感と共に、『カミカゼ』が凄まじい速度で翔び立つ。かつて紅椿で飛翔した時のことを思い出しながらも、一夏達は風影からの通信を聞いていた。

 

 

『────聞こえているか。目視で見えるだろう。プラントまでの距離は数える必要はない、此方で観測してから伝える。合図したら、トリガーを押してから飛び降りろ。戦力の掃討は各々の判断に任せる』

 

 

数秒後に、目的地は見えた。

────広大な荒野の中で、厳重な守りを強いられた鋼鉄の砦。大きな壁と呼ぶべきサイズの建造物の周囲には全方位に敷かれたバリケードと、対空砲の数々が鎮座していた。恐らく、『カミカゼ』が用意されたのも、この為なのだろう。

 

バリケード付近を漂っていたドローンが此方に気付き、警鐘を鳴らすよりも先に、迅速な指示が下された。

 

 

『今だ、総員────作戦開始せよ』

 

 

取っ手の横にあるトリガーを押し込み、一夏達は飛行ユニットから手を離した。次の瞬間、四機の『カミカゼ』が搭載したミサイルを撒き散らし、機体自体も地上に激突し、爆散していった。

 

プラントを防衛していたバリケードは破壊し尽くされ、その場に降り立つ一夏達。そんな彼等のISの『オープン・チャンネル』が、慌てふためく声を汲み取る。

 

────このプラントを防衛するアナグラム、彼等に合流したアストール共和国の離反兵たちであった。

 

 

『て、敵襲!敵襲だぁ!!』

 

『国連軍か!?お二方がいない間を狙うなど、卑劣な!』

 

『「無人戦車兵(ノーグ)」に、『無人戦闘機(ゼッペル)』を出せ!お二方が戻るまで、このプラントを死守するんだ!!』

 

 

その声に応じるように、巨大なプラントの砦が一気に武装されていく。ゲートを開いて現れる無人機の戦車、壁から展開されていく砲台、射出され空中を飛び回る小型戦闘機。一気に戦力が展開されていく中、各々の武装を展開する。苦々しく、悔しそうな顔で一夏は決意を再確認した上で、叫んだ。

 

 

「────やるぞ!皆!」

 

 

そうして、代表候補生達は戦火に身を投じる。無数の弾幕と飛翔する小型の機鳥の群れを突き抜け、少年少女達は引き金を引く。プラント攻略戦、IS学園でも初の武力介入は、こうして始まった。

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