IS 蒼き宙の向こうへ   作:虚無の魔術師

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ちょっと文字数が多いし、所々雑なところがあるかもしれないけど一言言わせてください!


chromeって小説書きづらい(憤慨)


第10話 人魚姫の旋律

龍夜がアリーナへ乱入する数分前。

 

 

 

「────まず、俺が扉のロックを解除する。そこから生徒達を静かに避難させる」

 

 

壁際に寄り添った三人に、龍夜はそう言い切った。驚愕を隠せずにいる二人、本音なる少女はおっとりとしながらも確かに受け答えをしている。

 

 

 

「それから俺が一夏達に加勢するから、お前達は避難しろ。他の生徒達にはなるべく静かに出ていくようにいってくれ。………向こうには生徒会もいるはずだ、連絡は取れるか?」

 

「大丈夫だよ~、お姉ちゃんに何時でも連絡できるからね~」

 

「なら任せた、一分で済ませるからそう言っておけ」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

 

話は済んだ、とでも言うように人混みへと歩いていく龍夜を、少女の一人が引き留める。不安と心配の混じった表情で、どうすればいいのかも分からず、混乱しているようであった。

 

 

「ロックを解除するって!皆の話だとハッキングされてるんだよ!?生徒会も解除しようとしてるけど、上手くいってないって言ってるし!こう言うのも何だけどさ………龍夜君出来るって話じゃないでしょ!?」

 

 

「───俺には出来る。信じられないなら勝手にすればいい、邪魔はするな」

 

 

感情的になって叫ぶ少女に、龍夜は冷徹に告げる。突き放したような言い方に、少女は傷つくことはなかったが、だからって!と声を荒らげようとする。

 

 

だが、それを止める者がいた。

もう一人、龍夜の発言に呆然としているしかなかったクラスメイトの少女だ。

 

やはり不安な顔を隠さぬまま、彼女はふと切り出してきた。

 

 

「………龍夜君なら、皆を助けられるの?」

 

「だからそうだと言ってる」

 

「─────ならお願いします、皆を助けて」

 

「…………分かっている」

 

 

それだけ言うと、龍夜は今もゲートから出ようと群がる女子達の間を通り、進んでいく。途中、男のクセにとか罵声が聞こえたが、気にしない。

 

 

解除しようと必死な女子を押し退け、コンソールに接続されたパソコンに向き直る。スマホのケーブルを繋げ、カチカチ、とキーボードを叩く。

 

 

そして、この場にいない自分が信じるパートナーへと声を掛けた。

 

 

「ラミリア、プロテクトはどうだ?」

 

『うーん!凄く堅いよ!前に入り込んだ悪徳企業の何百倍は手強いね!マスターでも時間が掛かるんじゃないかなー!』

 

「────なら、一分で終わらせる」

 

 

 

間違いなく、有言実行であった。

時間にして一分未満。それだけでアリーナ全体のロックを解除し、生徒達を避難させることに成功した。龍夜が声を掛けたクラスメイト達のお陰で、彼女達は戦闘中のゼヴォドに気付かれぬまま避難することが出来た。

 

 

 

大方避難が終わったのを見計らい、龍夜も動いた。ISを一瞬で纏い、アリーナへと突っ込んだ。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

それが、龍夜が戦闘に乱入した経緯であった。

 

 

 

動くものに反応するであろう無人兵器の三体が即座に動こうとするが、ゼヴォドが軽く制すると大人しくなる。いや、彼の命令に従うようにプログラムされているのか。

 

 

 

「貴方は、蒼青龍夜。わざわざ出てくるとは都合が省けた…………と、言いたい所ですが。一つ、聞きたいことがあります」

 

 

ISを纏えない一夏や鈴は敵ではないと思っているのか、わざわざ背を向けて龍夜を睨むゼヴォド。舐められていると感じた一夏だが、ゼヴォドの剣が静かに此方へと向けられていることに気付く。

 

 

 

「アリーナから人の気配がいつの間にか消えてますが………ロックが解除されたんですか?失礼ながら、教師か誰か熟練の方がハッキングを解いたんですかね?」

 

「…………俺がやった、と言ったらどうする?」

 

 

龍夜の言葉を聞いた瞬間、ゼヴォドは長剣を地面へと振り下ろした。 ザァンッ! と、地面に綺麗な斬撃の痕が生じる。

 

 

長剣の柄を握る力は凄まじく、へし折りかねない程の握力が込められていた。瞳に劇場を宿らせ、ゼヴォドが怒りを滲ませながら、言う。

 

 

「何の冗談だ?ただの学生が、ジールフッグのハッキングパターンを突破した、だと?───そんな話が、有り得るかッ!」

 

「随分とそいつの実力を買っているようだな。だが、俺が簡単に解除できたのは事実だ。一分も掛からなかったからな」

 

「ッ!!……………へぇ、言うじゃないですか」

 

 

龍夜の発言を挑発と見受けたのか、笑みを深めるゼヴォド。その瞳には沸々と溢れる怒りが見てとれるのは、彼が仲間思いだからかもしれない。

 

 

信じられない、という態度のゼヴォドだが、内心では既に理解していた。蒼青龍夜、彼が仲間が作ったハッキングパターンを破ったという事実を。

 

 

 

 

どちらにしても、都合が良い事に変わりない。男性IS操縦者がわざわざ一人で来てくれたなら、やることは簡単だ。

 

 

 

 

 

「────じゃ、動かないでくださいね。貴方もお二人と同じように無力化されて貰いましょうか」

 

 

拳銃を向け、引き金に指を添える。

弾倉に込められた特殊な弾丸を装填し、ISを纏う龍夜へと照準を捉える。彼が弾丸の効力を知っていようが、知らなかろうが関係ない。

 

 

───逃げようものなら、当てさせればいいだけの事だ。

 

 

 

含んだ笑みを刻むゼヴォドの顔を見た一夏がハッと顔色を変える。奴が何を考え、何を企んでいるのか、一夏は分かってしまった。

 

 

「駄目だ龍夜!避け──────」

 

「そんな真似、させないですよ」

 

 

慌てて叫ぶ一夏の前に、長剣が突き立てられる。グリン、と手首を捻り、ゼヴォドはヴァイオリンの弓の弓毛の部位となっている強化ワイヤーを一夏達へと向ける。

 

動けずにいる二人を人質にするように、ゼヴォドは龍夜へと笑いかけた。

 

 

「避けようなんて考えないでください。もしそんな真似をすれば此方の二人が無傷では済みませんよ?殺しはしませんが、傷をつけることは出来るんですから」

 

「…………分かっている」

 

 

 

そう言い、龍夜は加速攻撃特化の《A.B(アクセルバースト)》フォームから防御重視の《N.A(ナイトアーマー)》フォームへと切り替える。しかし盾や剣を構える様子も見られず、どんな攻撃も受けるといった様子だ。

 

 

一夏は不安を隠せず、落ち着いた態度を崩さない龍夜を見つめる。

 

 

(………龍夜、何か考えがあるんだよな)

 

 

意味が無いのに、こんな真似はしないはずだ。何故なら龍夜は効率と成果を求めるタイプの人間だ。わざわざ飛び出してISを封印される弾丸を受けるなんて愚を、彼が犯すはずがない。

 

 

 

 

なのに、彼は未だ動かない。

 

 

 

 

(何で────何もしないんだよっ!?)

 

 

不安と困惑に包まれる一夏の心境も気にせず、龍夜は身動ぎすらしない。本当にISを封じられることを受け入れているが如く。

 

 

 

 

そして、引き金は引かれ、銃弾が放たれた。

直進していた弾丸は誰にも撃ち落とされる事はなく、そのまま飛来していき、龍夜の胸へと吸い込まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

続くように、ガラスの砕け散る音が鼓膜に響く。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

その一方で。

ピット内で観戦していた篠ノ之箒はすぐさま飛び出し、廊下を駆け出していた。幸い、道を覚えていたので目的の場所を探し出す必要はなかった。

 

 

箒の目的は、アリーナの状況を確認できるだけではなく言葉を伝えるが出来る唯一の場所─────放送室であった。そこに行けば、一夏達に大事なことを伝えられる。

 

 

無謀と言われればそうかもしれないが、気にしている暇はない。感情的に行動しやすいのが彼女の長所であり短所でもある。何より、危険を犯してでも、伝えねばならない話なのだ。

 

 

────一夏は気付いていない、だからこそ彼が知らなければならない。

 

 

 

そう決意し、箒は放送室に辿り着くと、扉を開け放った。ダァン! と大きすぎる音を出してしまったが、気にしている余裕はない。

 

 

だが、踏み込もうとして、箒は足を止めることになった。

 

 

 

 

 

「………?学生?何でここに」

 

 

放送室の機器のすぐ近くに立っている黒髪に混じった白い前髪が特徴的な青年。驚いていたのが一瞬、にこやかな笑顔で振る舞う。だが箒は、その服装がゼヴォドの纏っていたものと似ていることに気付き、すぐさま警戒を示す。

 

 

扉の隣に立て掛けてあった棒、何かの作業に使うであろうそれに手を伸ばす。その気になれば掴み取り、戦うことが出来るように気構える。

 

 

 

「何者だ…………貴様は」

 

「─────オレはシルディ。今織斑一夏達と戦っているゼヴォドの仲間さ」

 

 

誤魔化しすらしなかった。

その返答を聞いた箒は棒を掴み、すぐさま目の前へと構えた。竹刀のような使いなれたものは残念ながら持ち合わせていない。

 

 

「───動くな、両手を挙げてこの部屋から出ろ」

 

「そういう訳にはいかないな。俺もゼヴォドの戦いを観戦をしてたいからね」

 

 

一瞬にも警戒を緩めない箒に対して、青年 シルディはあくでも落ち着ききった態度であった。武器を持った自分すら、恐れること等ないと暗に言ってるようだ。

 

 

箒本人も、この状況は好ましいものではない。男とはいえ、無抵抗の人間に武器を向けているというのは慣れないし、好きではない。

 

 

「まぁまぁ、落ち着いて。俺も女性と戦うのは好きじゃないから、穏便にさぁ……………」

 

 

「ッ!馬鹿にして───────」

 

 

 

「頼むよ、篠ノ之さん」

 

「………ッ!?」

 

 

思わず息を飲み込む。

その名字で呼ばれることを好まない怒りと、何故知っているのかという困惑が、渦となって脳裏を巡る。そのせいで、思考が目の前から反れてしまう。

 

 

 

 

それが、最大のミスであった。

 

 

 

「───隙有り」

 

「っ!く………ッ!」

 

 

スパァン!と武器として持ち合わせていた棒が横へと弾かれる。いつの間にか動いたシルディが勢いよく棒を蹴り飛ばしたのだ。吹き飛ばされた棒が壁に打ち付けられた直後には、シルディは箒の真後ろへと回り込み、両腕で抑え込んだ。

 

 

「う………ッ!ぐぅ!?」

 

「甘いねぇ、篠ノ之さん。相手の言葉に動揺したら駄目ってのは常識だろ?………………アンタに恨みはない、だから意識を落とすだけで済ませるよ」

 

 

申し訳なさそうに言う青年に、箒は必死に抵抗する。だが、シルディの絞め技は上手く、箒には引き剥がす事は難しかった。喉を押さえつけられ、呼吸が難しくなった箒は、絞め落とされると直感的に察するが、徐々に意識が遠くなっていくのを感じ───────

 

 

 

 

「───離れろッ!!」

 

「ぐ、があッ!?」

 

 

振り上げた肘を後ろへと打ち込むと、腹部に直撃した鈍い感覚を感じると共に、青年の力が弱まる。その隙を狙い、自分の首を締め上げていた腕を掴み、シルディを床へと放り投げた。

 

 

地面に叩きつけられたシルディは相当ダメージを受けたらしく、ゴホゴホと苦しそうに咳き込む。その好機を逃さず、腕を押さえ地面に組み伏せる箒。

 

 

呼吸を続け、息を整えながら、彼女は言い切った。

 

 

「これで終わりだ………学生だからと甘く見たな」

 

「────どっちもどっち、だと思うけど」

 

 

シルディの言葉の意味を理解できずにいると、箒の首元に鋭い刃が突き付けられた。シルディ以外にもう一人隠れていたのか、と思ったが、違った。

 

 

 

 

『キュルル…………』

 

 

そう鳴くのは、金属の蜥蜴……いや、ドラゴンだった。大きさとしては手で持つ武器のようなサイズ。翼と脚を持ち合わせたその小型のドラゴンは尖った尻尾の先を箒の首へと差し向けていた。

 

 

思わず困惑する箒だが、瞬間動いたシルディが箒を払い除ける。距離を取った彼は箒に襲いかかる訳でもなく、自らの腕に小型のドラゴンを乗せて、彼女に語りかけた。

 

 

「オレの相棒。困った時にはいつも頼りきりなんだ」

 

 

そんな彼は、再び棒を掴み直した箒を宥めるように口を開く。

 

 

「あのさ、篠ノ之さん。もう止めにしない?」

 

「………何を」

 

「君さ、放送でも使いたいんじゃない? 別にオレは放送室を使う気はないし構わないけど、用は済んだからいいけどね。ここでやりあったとしても意味がないだけだと思うからさ」

 

 

最初は疑り深く警戒していたが、シルディ本人も抵抗しないとでも言うように放送室の機器から離れていくのを理解し、そこでようやく箒も嘘ではないと理解した。

 

 

それでも油断することはなく身構えながら、シルディへと宣告する。

 

 

「何かしようとするなら、容赦はせんぞ」

 

「しないから」

 

 

そう言い手を振る青年に、箒は放送機器へと近寄る。その際にも会話は続いていた。

 

 

「………確か審判やナレーターを任された生徒達がいたはずだが、どうした?」

 

「ついさっき別の場所に移動させたばかりだよ。オレ達も大勢に危害を加えるつもりはないからね」

 

 

ならいい、と若干安堵する。

そんな彼女に、少し思うところがあるらしいシルディが声をかけてきた。

 

 

「あのさ、篠ノ之さん」

 

「………何だ?」

 

「俺達、どっかで会ったかな?」

 

「………悪いが、ナンパに付き合う気はない」

 

「いや!いやいや!そんな訳じゃないんだって!ただ、篠ノ之さんの名前に覚えがあって………昔からの知り合いだったかもなって…………」

 

「────新手のナンパ」

 

「だから違うって!!」

 

 

 

必死に弁明しようとするシルディを冷たい眼で見据え、箒は放送室のマイクを手に取った。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

ゼヴォドの対IS用武装 A.I.S弾は炸裂した。龍夜のIS、銀鎧の装甲へと直撃し、霧散するように弾け飛んだ。光の粒子が生じ、龍夜の目の前で発光していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、それだけだった。

 

 

「──────え?」

 

 

声の主は一夏か鈴か、或いはゼヴォドか。その声は純粋な疑問によるものだった。それは無理もないだろう。

 

 

 

龍夜に何も変化は起こっていない。ISを無効化し、封印する弾丸が直撃し、その効果が発動したにも関わらず、彼の全身をISが包んでいた。

 

 

静かに自分の姿を確認した龍夜は納得したように、一言。

 

 

「───やはりか」

 

「…………………は?え?……は?」

 

 

ゼヴォドは困惑しながら拳銃と龍夜を見返す。何が起こっているのか、分からずにいるようだった。理解が追い付かないのか、混乱するしかないゼヴォドだが────彼にも、この場の全員にも予想だにしない事が起きた。

 

 

 

 

 

 

『一夏ぁっ!!』

 

 

アリーナのスピーカーから大声が響き渡る。キィィィン! と尾を引くハウリング。その場の全員、声の主に気付いた三人が反応を示す。

 

 

 

 

「え、は!?」

 

「ちょ!?嘘でしょ!?」

 

「………何を考えている」

 

 

一夏と鈴は驚愕を隠しきれないという様子で、龍夜は頭が痛いというように額を押さえる。アリーナのスピーカーから聞こえたということは、彼女は放送室にいることになる。アリーナからも見える位置にある放送室にだ。巻き込まれたらどうするつもりなのか、と半ば呆れる。

 

 

対し、ゼヴォドの方も明らかに戸惑っていた。だが、箒の事を気にしているのではないらしい。

 

 

「ッ!?放送室!?馬鹿な!あそこにはシルディが───」

 

 

そんなゼヴォドの発言は、途中で止まった。続いて叫んだ箒の言葉を耳にしたからだ。

 

 

『一夏!ISは完全に封印された訳じゃない!時限式だ!』

 

「っ!?本当か!?」

 

『奴が戦いの合間にも時間を気にしていただろう!それが理由だ!もしかしたら、時間が過ぎているかもしれん!』

 

「あ、あれだけの事でA.I.S弾の特性を───!?」

 

 

 

事実らしく、明らかに狼狽するゼヴォド。自分が見せた少しのミスからここまで読み解かれるなんて思わなかったのか。

 

 

しかし、ゼヴォドはISを纏えるかもしれないと言う可能性を見出だした一夏達に対応する事は出来なかった。

 

 

 

 

理由は単純、少し離れた場所に配備していた無人機の一体が突然動いたのだ。両肩の砲身を動かし、放送室の箒へと狙いを定める。

 

 

動いたものを自動的に撃つように組み込んでいたのかと思ったが、それでは他の機体が反応していないのがおかしい。何より、それでは観客席の小さな動きに反応して攻撃を開始してしまう。

 

 

 

「何をしている!?非戦闘員を攻撃するな!これは命令だ!止めろ!」

 

 

ゼヴォドも意図しない行為だったのか、慌てて声を荒らげて引き留めようとする。声に反応して行動するらしく、さっきまで声であの兵器を止めていた。

 

 

にも関わらず、その兵器は止まらなかった。

 

 

 

『───不味い!篠ノ之さん!逃げ────』

 

 

男らしき声が響くが、それを無視して無人機は放送室にレーザー砲撃を撃ち込んだ。直後、放送室は爆炎に飲み込まれ、爆発を轟かせる。

 

 

 

「箒ィ────ッ!!」

 

「シルディ!!クソッ!何でこんな事に!?」

 

 

そんな彼らの前で、その無人機が砲身を此方へと向けてきた。操作してるであろうゼヴォドすら射線上に入っているのは、彼も標的すら見据えているからか。

 

 

再びレーザーによる攻撃を行おうとした無人機だが、

 

 

 

「させるか!」

 

 

前へと飛び出した龍夜が『銀光盾』を顕現させ、レーザー砲撃を防ぐ。エネルギーを分解し、盾のエネルギーへと吸収しながら、砲撃を容赦なく受け止めていく。

 

 

予想外の事が起きすぎて苛立ちを募らせたであろうゼヴォドは頭をかきむしる。自分の髪が乱れるのも気にせず、両腕をふ振り上げた。

 

 

「クソッ!どうしてこうも…………こうなれば、まとめて叩き潰して─────」

 

 

「させるかァァーーーーッ!!」

 

 

そんなゼヴォドへと、一夏は突っ込む。彼が箒を攻撃したとか思っていない、怒りは止まらないが、まずは自分に出来ることを優先させるしかないと考えていた。

 

 

最初は声に反応し長剣を身構え、生身の一夏に呆れ払い除けようとした彼だったが────目の前で起きた変化に、眼を見開くことになった。

 

 

 

瞬間、一夏の全身が目映い光に包まれる。思わず顔を背けそうになるゼヴォドが見たのは、『白式』を展開した一夏の姿だった。

 

 

一夏の雪片弐型とゼヴォドの長剣が衝突する。互いの刃を受け止め、拮抗していく間、未だ疑惑を拭えないゼヴォドが叫ぶ。

 

 

「馬鹿な!?早すぎる!第三世代なら十分の間は封印できると聞いていたのに─────いや、まさか!第四世代か!?」

 

 

A.I.S弾のISの封印は、コアやISのシステムに作用する。世代が古い一世代なら三十分、第二世代なら二十分、第三世代なら十分────一夏のISが封印から十分も経っていないということは、それが答えになる。

 

 

協力者から教えられた言葉を噛み締め、ゼヴォドは腕を振るう。ドォンッ!! と音を収束させた一撃を一夏へと撃ち込む。軽々と回避した一夏の回線に、龍夜からの連絡が届く。

 

 

『一夏、奴の使役する無人兵器は俺が破壊する。お前の方はどうする?手助けはいるか?』

 

「いや、()()でアイツを倒す。龍夜はそっちに集中してくれ」

 

 

一夏の宣言に文句を言う事はなかった。分かった、と短く応じ、回線を切る。話を黙って聞いていたゼヴォドが馬鹿にするように嘲笑う。

 

 

 

「私を倒す?貴方が?…………笑わせる、自分が圧倒されていたことも忘れたんですか?」

 

「いいや、勝てるさ」

 

 

ある種の自信を胸に、その理由を口にした。

 

 

「お前、戦い慣れてないんだろ?俺と同じで」

 

「………………」

 

「箒やセシリア、鈴のように鍛えてるって訳でもない。自分の持つ力を振り回してるだけだ。心身鍛えてる子達が多いから、アンタの戦い方が目立ってんだよ」

 

 

返答はなかった。

ガコン、と背中の翼がクルリと此方へと向けられる。異変に気付こうとした瞬間、キィィィン─────と高い周波数の音波が一夏の鼓膜に響いてくる。

 

 

不味い、と焦る一夏だが、全身がピタリと動かなくなる。IS自体も、動かない。いや、自分の体が硬直させられているのだ。

 

 

「…………で?何て言いました?この期に及んで、私に勝てるとでも? この程度の事にも対応できない貴方が」

 

 

不気味に笑うゼヴォドから凄まじい程の敵意が感じられる。先程の発言が彼にとってそこまで地雷となるものだったのか、沸々と煮え滾るような怒りが滲み出していた。

 

 

だが、一夏は笑い返した。自分の言った言葉を呑み込めてないゼヴォドに。

 

 

「勘違いすんなよ、確かに俺だけじゃ勝てないかもしれないさ」

 

「…………?」

 

「だけど、言ったろ。()()()()()()()()()()だって」

 

 

何を、と聞き返そうとしたゼヴォドだが、突然吹き飛ばされた。悲鳴や絶叫をあげることはなかったが壁に打ち付けられた彼は地面に転がる。ゆっくりと首を上げたゼヴォドが見たのは、

 

 

「────少しは効いた?」

 

 

不適な笑みを刻み、ISを纏った鈴の姿。先程のはISに搭載された衝撃砲なのだろう、打ち付けられた衝撃が頭を揺らす感覚が消えないゼヴォドはそこでようやく気付いた。

 

 

自分が最初から織斑一夏達に踊らされていたことに。

 

 

 

 

 

 

瞬間、脳が激しく沸騰するのを感じた。

ずっと抑え込んでいた怒りが爆発し、ゼヴォドの思考を完全に支配する。

 

 

 

「─────ふざけるなァッ!!どいつもこいつも嘗めた真似をしやがってェ!!」

 

 

感情的になったゼヴォドが胸元のカオステクターを強い力で叩く。ギュイン、とカオステクターのラインが発光した途端、ゼヴォドの背中の翼が勢いよく破裂した。いや、翼から強化ワイヤーよりも頑丈な弦が周囲へと放たれたのだ。

 

 

周囲一帯に放たれた弦の糸は地面や壁へと突き刺さり、その場に強く固定される。間一髪糸の雨を避けた一夏達だったが、攻撃は終わりですらなく、むしろ始まりを迎えようとしていた。

 

 

 

「使命や目的など関係ない!私を侮った貴様らに思い知らせてやる!アナグラムの、私の強さを!」

 

『────セイレーン、カオス・オーバー・ブレイク!』

 

 

ゼヴォドが剣を突き立て、両腕を広げる。腹の底から響かせるような咆哮を轟かせるゼヴォドの足元から、水が溢れ出す。本来、水など生じないであろう筈なのに、彼の左右に水が集まり、人魚の姿を作っていく。

 

 

『『「─────La─────♪」』』

 

 

水の人魚姫に囲まれながら、ゼヴォドは歌う。人魚姫と合わさった声は女性のように高く、男であることを忘れさせるようであった。

 

 

三人の歌が合わさる中で、ゼヴォドの胸元には凄まじい程の音が集まっていた。直視はできないが、ハイパーセンサーがそれを認識していた。

 

 

鈴が肩を押し出すように衝撃砲を構える。そんな彼女を見て、歌う口を止めたゼヴォドが叫ぶ。

 

 

「甘く見るな!その程度の攻撃で私の技を止めることも防ぐことも出来ない!やったとしても、このまま貴様ごと消し飛ばすだけだ!」

 

「………ッ!?」

 

「鈴!良いから、やってくれ!」

 

「分かってるわよ────って、ちょっと!?何してんのよ!?」

 

 

応じてすぐに、衝撃砲を構えた鈴の前に一夏が躍り出てきたのだ。それも衝撃砲を直撃するであろう射線上に。

 

 

思わず射撃を止めてしまう鈴だが、一夏が強い声で叫んだ。

 

 

「いいから撃て!」

 

 

「ああもう!どうなっても知らないわよ!」

 

 

衝撃を直に受けた一夏の体が勢いよく飛ぶ。だがそれは衝撃弾の直撃に吹き飛ばされた訳ではない。ISに存在する技能の一つ、『瞬時加速』を発動したことによるものだ。

 

 

瞬時加速とは、翼からエネルギーを放出し、再度取り込んで圧縮して解き放つ。その際に発生する慣性エネルギーをして爆発した加速力を得る。だが、一つだけ分かる事実がある。一度外部へ放ったエネルギーを再び吸収する、つまりISの翼にはエネルギーを吸収する機構が存在する。

 

 

そして、取り込めるのは自機のISによる放出エネルギーだけではない。鈴の衝撃砲も外部出力として利用すれば、瞬時加速の出力は並外れたものとなる。

 

 

 

「───な、何ッ!?」

 

 

凄まじい速度で接近してくる一夏に、焦り出すゼヴォド。ISの加速如きで距離を詰められる筈がない、そう嘲笑おうとしていた彼だが、一夏がここまでの加速力を引き出せるとは予想もできなかった。

 

 

 

「だが!狙いやすい的だ!!」

 

 

直進してくるのなら当てやすいことこの上ない。ゼヴォドは増幅させていた音の塊を砲弾のように構える。威力も射程も充分、何より一夏のISのエネルギー残量も僅かに等しい。それだけならエネルギーを無効化する能力は一度しか使えない。回避などにエネルギーは使用できない。実質的に、自分の勝ちだ。そう確信したゼヴォドは音の塊を一夏へと放とうとする。

 

 

だが、そんなゼヴォドの予想は反転することになった。

 

 

 

音の砲弾の前に、一際大きな鉄屑が飛んできたのだ。無人兵器。コアを破壊され、沈黙した大型兵器が。

 

 

そして、音の爆弾と兵器の残骸が接触し、凄まじい爆音と風圧を周囲に引き起こす。それはすぐ近くにいたゼヴォドを巻き込み、大ダメージを与えた。

 

 

音と破片に曝され、ファンタシスもボロボロとなったゼヴォドは無人兵器の飛んできた場所に目を向ける。全ての機体を破壊した龍夜が冷徹な表情を浮かべていた。そこでようやく、確信する。龍夜が破壊した無人兵器をゼヴォドの技の直前に投げ飛ばし、誘爆へと導いたのだ。

 

 

 

「────ぁぁぁあああああぁぁぁァッ!!」

 

 

 

雪片弐型を振り上げた一夏が、ゼヴォドの眼の前へと突き進む。ブレードは彼の必殺の能力を解き放つように青白く発光していく。ファンタシスという、自分達の武装を無力化できる刃が迫る。

 

 

だが、ゼヴォドもこんな所では終わらない。

 

 

 

「─────負ァけるかァァァァァァァァぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

長剣を掴み、一夏へと斬りかかる。最後の意地というべきか、ゼヴォドの一撃は一夏の攻撃と衝突した。だが、光を伴った刃は長剣を両断し──────ゼヴォドの纏う幻想の鎧に一閃を浴びせた。

 

 

一夏が、地面へと降り立つ。ISのエネルギーを使いきった彼は力なく膝をつく。対して、ゼヴォドはファンタシスに生じた青いプラズマに呑まれながら────

 

 

 

「ぐ、アアアぁぁぁあああああああ──────ッ!!?」

 

 

エネルギーによる爆発を引き起こす。爆炎からはファンタシスから分離されたゼヴォドとカオステクターが転がる。ゼヴォドは苦痛に呻きながら起き上がろうとするが、上手くいかずに倒れ込む。

 

 

 

 

 

 

 

「…………終わった、のか?」

 

「多分な」

 

 

息切れの激しい一夏の疑問に、近寄ってきた龍夜が答える。怪我一つもなく、無人兵器の相手は楽だったらしい。

 

 

 

「鈴、無事か?」

 

「私は大丈夫、それより一夏は?」

 

「俺は何とも」

 

 

軽く答える二人だが、その一方で龍夜は何かを考えていた。その表情はいつもよりも深刻で、重要なことを考えているようであった。

 

 

 

 

 

 

だが、その瞬間。

 

 

三人のセンサーに、ある通告が表示された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『─────ゼヴォドを倒すなんて、流石だな』

 

 

 

反応は一つ、上空から高速で飛来してきたもの。それが黙視で確認できたのは、すぐだった。

 

 

飛来してきたそれはアリーナに再び展開されたシールドを破壊し、アリーナ内部へと現れた。姿を見せた『ソレ』は、先程からアリーナを上空から狙撃していた鋼鉄の飛龍だった。

 

 

 

「な、何だよ………アレ────!?」

 

 

そう言う一夏だが、初めて見たという反応ではない。一度ハイパーセンサーで認知はしていたが、それでも一体どんな仕組みや構造をしているのかが分からない。あの兵器を造れるかと聞いて答えられる国が果たしてあるだろうか。

 

 

 

だが、もう一つ懸念すべき事がある。先程の声、アレは鋼の龍が出したものではない。一夏はすぐに気付いた、あの声は放送室が吹き飛ばされる直前に聞こえたものだと。

 

 

 

タン……! と足音が聞こえる。

地面に降り立ったような音の方を振り替えると、白い前髪のある黒髪の青年がいた。

 

 

誰だ、と思った一夏だが、すぐにその考えが消し飛んだ。その青年が抱き抱えていた誰かの姿を認知し、すぐに理解したからだった。

 

 

 

 

「────箒ィ!!」

 

「動かないでくれ」

 

 

思わず近寄りそうになる一夏を、青年────シルディが止めた。同じように武器を構えた鈴と龍夜の動きも止まるしかない。

 

 

相手は箒を人質にしている。手の出しようがない。

 

 

「彼女は無事だ。気を失っているだけだから安心してくれ……………だが、今ここで、戦いを始めれば最初に死ぬのは彼女だ」

 

 

しかし、青年の頭からは血が流れていた。箒は爆発に巻き込まれたにしては無傷で、青年の方が怪我をしているまである。

 

 

まさか、と一夏が思う。

青年は箒を人質として捕らえたのではなく、あの爆発から守ってくれたのではないかと。

 

 

 

「無論、彼女は引き渡す─────だが、オレ達の事も変わりに見逃して貰えないか。大切な仲間を巻き添えにするつもりはないだろ?」

 

「…………分かった」

 

 

後ろの二人も、一夏の意見に反論はないらしい。箒を抱え近寄ってくる青年に一夏はISを解除し、静かに待ち構える。

 

 

そして、一夏とシルディが相対する。

不安を隠せない一夏にシルディは安堵させるような笑みを浮かべ、箒を一夏へと引き渡した。放り出すわけでもなく、ゆっくりと意識の無い彼女を労るように。

 

 

箒を受け止め、彼女が無事であることに安心した一夏は腹の底からの息を吐き出す。そんな一夏からシルディは離れ、飛龍とその近くにいるゼヴォドへと駆け寄った。

 

 

 

「大丈夫か?ゼヴォド」

 

「っ、平気ですよシルディ様。この程度大したものではありません。………ですが、謝罪を。私の力量不足でこのような敗北を」

 

「生きてるならいいさ。死ぬよりはマシだよ…………さ、そろそろ帰ろう。目的は達成したし、皆が待ってる」

 

「………えぇ、分かりました。………ですがその前に」

 

「?」

 

「シルディ様。彼等に教えてあげてはよろしいのでは?貴方様が何者かを」

 

「そうだなぁ、そうするか」

 

 

振り返り、一夏達へと振り返るシルディ。ロングコートを翻す彼は口を開いた。

 

 

 

「織斑一夏、蒼青龍夜、凰鈴音。改めて、オレの仲間を打ち倒した君達にオレの真名()を名乗ろう」

 

 

鋼の龍が翼を大きく広げる。二本の大きな腕でゼヴォドとシルディを持ち上げ、シルディを背中に乗せ、ゼヴォドを両手で包み込む。

 

 

龍の背中に乗り上げたシルディは何一つ躊躇いもなく、一夏達へと自分の名を告げた。

 

 

 

 

 

「─────オレはシルディ、シルディ・アナグラム。リベリオンのリーダーにして頭領であるリセリア・アナグラムの息子だ」

 

 

 

 

「シルディ………アナグラム!?」

 

 

愕然したまま噛み締める一夏。鈴も、果てには龍夜すらも驚きを隠せずにいる。

 

 

アナグラムの頭領は、創設者であるリセリア・アナグラムただ一人。組織の名前は彼女の性から取られている。つまりシルディはアナグラムの次期リーダーと呼ぶべき存在であり、アナグラムの中核を担う重要人物ということになる。

 

 

 

「それじゃあ、さよならだ。また近い内に会うかもしれないから、その時はよろしくな」

 

 

そう言うと、鋼の龍は上空へと飛び、空の向こうへと消え去っていく。雲を一刀両断し、青空に翡翠の軌跡を刻んだ龍の姿は見えなくなった。

 

 

 

そしてようやく、アナグラムによるIS学園襲撃事件が幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(今回の事件、ある意味では幸運だったな。お陰で重要なことに気付けた)

 

 

数日が経ち、クラス対抗戦は中止となった。それと同時に厳しい情報統制も行われた。龍夜が外のニュースを調べた際にはIS学園の襲撃の件も、アナグラムの名前すらも出なかった。世界中のニュースにも。

 

 

まるで多くの国々が協力して情報を隠している。アナグラムがISに対抗する武装を持ち合わせているのを広めたくないのか、そもそも刺激したくないのか。龍夜としてはこの件にそこまでの興味はない。

 

 

逆に、彼が気に掛けているのはただ一つのこと。

 

 

(『甲龍』や『白式』は、A.I.S弾の効果を受けた。なのに、『プラチナ・キャリバー』は封印すらされなかった。これで

確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コイツはI()S()()()()()、他のISとは違う全く別のナニカだ)

 

 

傍らの、鞘に収まった銀剣を見て、ふと龍夜は言葉を溢した。

 

 

「────なぁ、お前は何なんだ?」

 

 

────────

 

 

「何のために造られた?何のために俺を選んだ?一体、お前は何をしたいんだ?」

 

 

聖剣は何一つ答えなかった。ただ妖しく、組み込まれている宝玉を輝かせるだけだった。

 




アナグラム襲撃編、及び原作一巻のストーリーの区切りは終わりました。次回からは二巻の話に、行く前に少しオリジナルを組み込みます。


次回もよろしくお願いします!それでは!




あと少し─────評価やお気に入りも嬉しいですけど、どうか感想もください!お願いします!(必死)
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