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2022 6/25 蒼青龍夜の台詞の一部を修正しました。
第1話 入学初日
「全員揃ってますねー。それじゃあSHR始めますよー」
黒板の前で、このクラスの副担任の女性教師、山田真耶先生が優しい微笑みを浮かべる。
しかし、生徒からの反応はなく、教室には未だ緊張感が漂っていた。
「え、えっと………皆さん、一年間よろしくお願いしますね」
「…………」
その空気に困りながらも精一杯生徒全員に挨拶をするが、やはり誰も答えない。どうするべき狼狽える山田先生だが、こうなってしまうのも仕方ないのだ。
生徒達の意識は、既に“二人の男子生徒”に向けられていたからだ。
その一人、織斑一夏は地獄にいるような感覚であった。一人ではないとはいえ、女子校に、女子だけのクラスにいるというのは疎外感が激しい。
周囲からの興味満々な視線に、一夏はとにかく気まずさを感じていた。
対して。
もう一人の男子───蒼青龍夜は動じてすらいない。周囲の好奇心に満ちた視線に戸惑うことなく、黙々とノートに何かを書き続けている。
一夏も自分と同じように周囲から視線に晒される龍夜を気に掛けていたが、気にしてすらいないと知り、唖然としかける。この環境であれだけ平然にしているとか、どれだけ強いメンタルを持ち合わせているのか、と。
そうこうしている内に、一夏に自己紹介の順番が回ってきた。他の生徒達から見つめられてきて、余裕のない一夏は戸惑いながら前へと進んだ。
正直、他の人────自分と同じく孤立無援である龍夜の自己紹介をしてからの方がやりやすいと思う。だが、そんな甘い考えは最初から通じない。出席番号からして龍夜は一夏の後に来る。要するに、ここは素直に諦めるしかないという天命なのだ。
だが、こんな状況で自己紹介なんてちゃんと考えられてなかったのか、
「えー……えっと、
たったそれだけの言葉しか出なかった。
しかし、女子達は不満なのか、続きを望むような視線を向ける。一夏は当然だが、近くにいる山田先生も困惑していた。
ふと、一夏の視界に、手を止めた龍夜が此方を見ている姿が映った。興味、というよりも見定めるような冷酷な視線が一夏に突き刺さる。
しかし、龍夜はふんと息を吐き、あ、と目の色を変えるとすぐさま視線を外した。自分に集まる視線が一つだけ減り、安堵する一夏であったが────そこで、龍夜の態度に違和感を抱いた。
彼の態度に疑問を覚えた一夏であったが、その瞬間────
パァンッ!!
「痛ぇッ!?」
頭部に走る鈍痛に、一夏は頭を抱える。そこでようやく、自分が真後ろから叩かれたことに気付く。慌てて振り返り、その人物に気付き、驚きの声を漏らす。
「ちっ、千冬姉!?なんでここ─────ぶへっ!?」
「織斑先生と呼べ」
追撃と共に響く炸裂音に、全員が顔を反らす。龍夜は、人間が普通には出せないようなその威力に絶句していた。
そんな彼や彼女達の前で、一夏を元の席に座らせたもう一人の女性教師─────
「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は弱冠十五才を十六才までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」
その後、クラスの女子達から織斑千冬への黄色い歓声が響いてくる。一部では尊敬を越えた、心酔のようなものまで見える。
────だが、無理もないかもしれない。
織斑千冬は世界最強の名を思いのままにするとされる者だ。ISで彼女に敵うものはいないとされ、公式大会、そして世界大会まで彼女は頂点に位置する強さを示してきた。
何より────彼女は英雄だからだ。十年前に引き起こされた世界規模の大戦争、その戦火に飲まれかけた日本を救い出し、戦争の元凶である『凶悪』な男を打ち倒した英雄。
世界中の女性や子供達が、彼女を英雄として見ている。だが、それも一つの意見としてだ。彼女を脅威として敵視している者達もいるはずだ。
…………少なくとも、龍夜は彼女を英雄として、もてはやすつもりはない。
自分を讃える女子の歓声を鎮め、千冬は真耶をサポートしながら他の生徒達の自己紹介をさせていく。そして、山田先生に呼ばれた龍夜も、教卓の前に立つ。
クラス全体を見渡し、興味すら抱いていない瞳を冷徹に光らせ、彼は自身の名を告げた。
「─────蒼青龍夜。
─────以上」
沈黙が、クラスを包む。
あまりにも単直な自己紹介は、一夏のように困った末に出たものではない。最初からそうするつもりだった、という意志が丸分かりだ。
「あ、あの………それだけですか……?もっと他にも……」
「────もう終わった。これで充分だ」
淡々と言い切る龍夜に、真耶先生は困り果てたようであった。ここまで強気に言われると彼女には何も言えなくなってしまう。
青年の鋭さのある態度に、少しだけ泣きそうになる山田先生。
しかし、誰もが予想だにしない────いや、ある程度の者が予想できていた救いの手が差し伸べられた。
────パァンッ!
「がッ!?」
「───教師を困らせるな、馬鹿者」
いつの間にか真後ろに立っていた千冬が問答無用と言わんばかりに出席簿を振り下ろしたのだ。あまりの威力に軽く悶絶する龍夜。
………一夏よりも堪えていないのは、ある程度手加減されていたからなのかもしれない。音も先程よりは少し小さかった。
こめかみを軽く揉んだ千冬は呆れたように龍夜を見下ろす。
「織斑といい、貴様もまともに自己紹介すら出来んのか?」
「………悪い」
爆音が、もう一度炸裂する。
今度は一夏にぶち当てたのと同じ、いやそれ以上の威力だ。頭部を押さえて崩れ落ちる青年に、生徒達の顔がひきつる。やはり、出席簿が振われただけなのに、威力が増してる。
そして当の本人────何故か爆音を生み出した出席簿を片手に、千冬は打撃の理由を告げた。
「先生にタメ口をきくな、いいな?」
「しかし効率的に────了解、です」
無言の圧力と共にゆっくりと振り上げられた出席簿によってすぐさま口調を直す龍夜。自分の意見を押し通そうとしていたが、もし続けていれば出席簿による連打を避けられないと感じ取ったのだろう。
少し痛むだけなのか頭を軽く撫でた龍夜は周りの視線に気付く。やはり不満げな視線が、何を言わんとしているのかと気付き、口を開く。
「…………身長175cm、体重65.4kg、好きな食べものはない。趣味や得意なことはプログラミング、身体能力は他人とは段違いにはあると自負してる。IS学園に入ったからには、最強を目指すつもりでいる。以上」
そう言って、スタスタと教卓から離れ、自分の席へと戻る龍夜。外界に興味すら抱かず、望まれなければ干渉すらしない態度。氷というよりも、仮面のままでいるように思えてくる。
それは本来であれば好ましくないものであった。誰もが不愉快に思い、文句は垂れるであろう。しかし、この学校の生徒は────このクラスの少女達は違った。
『──蒼青君ってクールだよね』
『そう!純粋で爽やかな織斑君も良いけど、冷静沈着な蒼青君も良いよね!』
『実はドSとかだったら、もう昇天するしかない…………』
様々な反応を密かに聞き、呆然とするしかない一夏。対して囁きの中心である青年は最早周囲に興味すら失ったのか、またもやノートを書き続けていた。
◇◆◇
授業が終わり、休み時間に入ってから。
こういう時間では女子生徒達は楽しそうに談笑する筈であるが、そんなものではないのは龍夜もすぐに理解した。
視線、視線、視線。
クラスの至るところから、いや廊下からも好奇の視線が集まっていた。なんせ女性でしか動かせなかったISを動かした男が二人もいるのだから、無理もない話だが、流石に平然としてはいられないだろう。
しかし、その男─────蒼青龍夜は違った。
彼は既に半分まで書き殴ったノートを、付箋で区切ったり、色ペンで様々な事を付け足していた。
当然、作業に集中しているので、周囲の視線に困りもしない。そんなものに一々反応する時間すら惜しいのかもしれない。
「────IS、か」
ふと、付箋の一つに色ペンで記した単語に、龍夜は思考の海に沈む。
初めてISを知った時。
世界はその代物を小馬鹿にしたようであった。当時は真の天災と呼ばれた八神博士の技術に皆が没頭していた。彼の弟子とはいえ、まだ若い少女の発明を、彼女の夢を誰もが理解しようといなかった。
しかし、自分は違った。
テレビで彼女の紹介するISのプロトタイプを見た時、彼はその真意を既に理解していた。彼女の夢に共感し、同時に憧れた。
まだまだ幼かった自分が抱いていた不完全燃焼、心に燻っていた『夢』を、はじめて知ったのだ。
ふと、龍夜は両目を伏せ、首を横に振る。空想を、淡い夢を振り払うように。
(…………馬鹿らしい、何を今更子供のような事を)
クシャリ、と付箋を握り潰す。シワシワになり、押し潰されたカラフルな色紙を見えなくなるまでクシャクシャにまとめ、席を立つ。
ジッと。
動く自分に向けられた視線を無視し、龍夜はゴミ箱に付箋だったものを放り捨てる。その間にも、自分に言い聞かせ続けていた。
(俺には『夢』を見る必要はない。叶える資格もない。俺は天才だ、天才は特別なんだ。
俺にだけしか出来ない使命を果たす。それが俺の、天才として生まれた理由であり、使命だからだ)
「──────な、なぁ、少しいいか?」
席に戻った瞬間、突然声を掛けられた。
すぐさま現実へと意識を戻した龍夜は声の主へと目線を配る。
自分に接触してきたのは、織斑一夏だった。
「…………何か?」
「いやぁ、さ。俺達二人だけの男だから、仲良くできないかと思ってさ………」
「そうか」
それだけ言い、龍夜は会話を終わらせる。あまりにも興味のない無関心な様子に一夏は困ったように笑うしかない。
「俺のことは一夏って呼んでくれ、織斑って言うと千冬姉と被るしな」
「────十秒」
「………え?」
溜め息と共に吐き出された一言に、一夏は硬直する。嫌悪とか軽蔑とかそんな感情は見えない。ただ淡々と、ノートを仕舞った龍夜は一夏に振り返り、話し始める。
「たった今、お前との会話をする際の時間だ。その間、どれだけの時間を浪費したと思う?この時間がどれだけ有限で、価値があるものか、お前には理解できるかはどうでもいい─────非礼ではあることは謝罪するが、俺も自分の目的がある」
だから邪魔をするな、と存外に釘を刺す。
彼自身も、ここが学校であることはよく理解している。ここは他の学校とは違い、専門的な知識や技術を身に付ける重要な場所でもある。当然ながら、それだけに準ずるのではなく、他の生徒とも仲良くして、互いを高め合う事も必要とされている。
だが、蒼青龍夜は違う。この学校で青春を楽しむつもりも、他の生徒と競争などしていくつもりはない。
自分の目的、それを果たすためだけに彼はこの学園に入ることを決意したのだ。
「お前との世間話をするよりも俺はISによる知識を磨く方が大事だ。それはお前も同じだろ、ISを上手く使いこなせる為に俺達はこの学校にいる。今この時間も有限、故にISの使い方を学ぶ、その定義を忘れたか?」
「………え、えっと」
「それに、お前に用のある女子がいるみたいだが?俺に構う暇があるとでも?」
そう龍夜が言うと、一夏は自分達の近くに来ていた少女の存在に気付いた。知り合いなのか、アッと思い出したように驚く一夏の前で、その少女─────篠ノ之箒は龍夜に声をかけた。
「すまない、一夏と話の最中だったか?」
「いや、此方としても用はない。織斑を連れてくれて構わない」
「あぁ、感謝する」
龍夜に頭を下げ、一夏の手を引きながら廊下の外へと連れていく箒。そんな彼女、或いは連れていかれた一夏に何を思ったのか見つめていた。すぐさまどうでもいいのか、思考から消し去ったが。
◇◆◇
そして、昼時になり。
食堂で元気そうな喧騒が響く中、蒼青龍夜は独りで静かにノートにペンで何かを書き続けていた。
他の女子達の好奇の視線を向けられることを理解し、龍夜は誰にも気付かれないようにひっそりと隅へと移動していた。無論、誰も気付いていないので騒ぎにすらならない。
「………なぁ、ちょっといいか?」
「……………ん」
そう思っていたが、どうやら気付かれていたらしい。
声をかけてきたのはやはり一夏であった。食事を乗せたトレーを持ちながら、彼は聞いてきた。
「ここの席、座ってもいいか?」
「………少なくとも、誰かが座る予定はないな」
「そっか、ありがとうな!」
無愛想な返しに対して、一夏は満面な笑みで返してきた。少し予想外だったのか、龍夜は困惑したような目で彼を見る。
ふと、視線を横に移動させると、一夏に付き添った少女の姿が見えた。全く知らない訳ではない、むしろ記憶に新しいまである。一度はクラスでの自己紹介の際、そして少し前の休み時間の時。
「………篠ノ之か、また行動を共にしてるとはな」
「あぁ、幼馴染なんだ」
(幼馴染────そういう事か)
彼女が一夏を連れ出したのも、子供の頃からの久しぶりの再会であったからだろう。そんな風に心から友と呼べる存在がいるのは、多少羨ましいとは思う。
だが、望むかと言えば迷わず否定する。そんなものは何度も求めてきた。心から理解し合え、互いに笑い合えるような相手を。
────結局、そんな都合の良いものなんてなかった。そう想い知らされたからこそ、自分から諦めたのだ。
一夏の隣に座った少女、篠ノ之箒は少しだけ目元を険しくする。だが、その変化を幼馴染に悟られぬように気を張りながら、口を開く。
「すまない、箒と呼んで欲しい。篠ノ之と言われるのは、あまり好きではないんだ」
「あ、そうだ。俺も一夏って呼んでくれ」
「───そうか、ならそうさせて貰う」
視線を向けるだけで、龍夜は顔を向けることすらしない。意識はちゃんと一夏達を認識しているが、それでも彼等と仲良くすることを不要な行為と割り切っているのだろう。
そんな様子に箒は不満を隠そうとしない。彼の態度は褒められたものではない。人付き合いというものを優先しろ、という事ではないが、蒼青龍夜は他者との接触を何処か蔑ろにしているように思える。
それでも、一夏は思い悩みながら声をかける。
「あー………蒼青はなんて呼べば良いんだ?」
「好きに呼べ。どの呼び方でも異論はない」
淡々とした調子に、一夏と箒は互いを見合ってしまう。一夏としては同じ男子として仲良くしたかったが、ここまで淡白な反応をされると返しようもない。
対応に困り果てる二人であったが、ふと妙な声が耳元に入ってきた。
『────もう、そんな態度だと友達できないよ?ご主人様』
「…………ん?」
「え?」
それは、少女の声。龍夜を諭すような言葉に、一夏と箒は声の方に顔を向ける。
だが、声の主と思われる者は誰一人としていない。距離からして遠くはない、むしろ龍夜のすぐ隣から聞こえたような感じだった。にも関わらず、彼の周囲にはそれらしき声の主はいない。
困惑する二人を他所に、彼は机に置いたスマートフォンを指で叩く。小さな息を吐き、龍夜は言う。
「───余計なお世話だ。それと、勝手に出てくるなと言っただろ」
何度かの応答に、スマートフォンが明らかな変化を示した。画面から浮かび上がるホログラムの紋様。まるで花弁の舞のように吹き荒れる電子の風の中央から────妖精が、飛び出した。
『自分で考えて、自分で行動するように教えたのはご主人様でしょ?』
スマートフォンから浮かび、少し眉をしかめた龍夜の鼻を軽くつつく妖精の少女。無論、彼女の身体は電子で構成されたホログラムらしく、触れられる訳ではない。
「────え、え?…………ええっ!?」
「待て、待て!蒼青!一体どういう事なんだ!?その子は何なのだ!?説明をしてくれ!」
そんな状況に、訳が分からないと困惑するお二人。いや、観客は彼等だけではない。食事に集中していた他の生徒達も大声で騒いだせいもあり、龍夜と一夏達の出来事も認知していた。
自分に集まる興味と好奇心ばかりの視線、そして未だ目の前の現象に戸惑うしかない二人に、龍夜は騒動の原因と化した妖精の少女に声をかける。
「………ラミリア」
『なぁに?ご主人様』
「その呼び方は止めろ。あと、自己紹介くらい自分でしろ」
りょーかい、と少女はにこやかな笑顔で応える。そんな天真爛漫とも言える妖精の様子に、呆れる龍夜だが───一瞬だけ、見たこともない表情を浮かべる。
少女は彼の変化に気付いたのか、軽く手を振る。そして、
背を向け────今度は一夏達を見返す。
ふわり、と。
空中でその身を翻すように、背中に広がる紋様の羽を大きく広げる。ホログラムの鱗粉を周囲に散らしながら、妖精はピースと共に笑顔を、そして己の名を投げ掛けた。
『どうも皆さん!知ってる人はこんにちは!知らない人も初めまして!ご主人様が開発した超高性能自律学習人工知能!世界にたった一人しかいない
「人工………知能!?」
「サイバー、フェアリー……?」
……半ば肩書きを誇張した妖精 ラミリアの自己紹介に、やはり二人や他の生徒達の困惑は消えることはない。だが、分かることだけはある。
『
「………ラミリアは俺が造った自己学習型のAIだ。ネットワークに自在に入り込み、情報や技術を吸収して成長する特徴があるんだが─────その結果、こんな風な性格になった」
電子妖精に説明を投げた筈なのに、自分に向けられる説明を求める視線に折れたのか龍夜がそう語り始める。
それらの説明以上の疑問を投げ掛けられ、それに対応していく。龍夜が様々な質問の雨から解放された時には、ラミリアは多くの女子生徒達と楽しそうに戯れていた。
そんな様子を止めるのは無粋と感じたのか、呆れ果てるように溜め息を吐き捨てる龍夜。
「…………ったく、時間が掛かる」
「…………なぁ、龍夜。聞いていいか?」
そんな彼に、一夏がそう言って声をかける。視線だけを向けてきた龍夜に、問い掛けた。
「どうして、そこまで強くなろうとしてるんだ?」
「───話す必要があるか?」
「知りたくなった、って理由じゃ駄目か?」
そんな一夏の言葉に、龍夜は静かな沈黙を貫いていた。しかし、それも少しの間。
「─────世界を変える、それが俺の強くなりたい理由だ」
ようやっと口を開いた龍夜の発言に、一夏は思わず息を飲み込む。突然規模の大きくなった理由だから、無理もないだろう。
それから龍夜は話を続ける。
「俺は産まれた頃から天才だった。常人とは欠け離れた才能を持つ俺は周囲から疎外され、俺もそれを受け入れた。天才とは、常に周りに疎外されるもの。真の天才は凡人如きに理解されないとな」
「………自分で言うのか」
「天才だからな。自覚はできてる」
少し前のような冷徹な態度から一転し、自信に満ちたような優等生に似た感じになった事に、不安しかない一夏。しかし同時に、先程までの仮面で覆い隠したような違和感は消え去り、ほんの少しだけ彼の人柄が分かるようであった。
「その俺からしても、今の世界の在り方は異質だった。ISを使える女性が偉い、そんな理由でIS適合者でない女性達すら好き勝手にする世の中。そのせいでどれだけの人が傷ついているのか、どれだけの人間がこの世界を呪ったのか。想像に容易かった」
「…………」
「俺もその在り方に大切なものを奪われた。だから俺はより良い方に世界を変える。天才とは、何か重要な使命を果たすべく産まれたものだと思う。なら俺が産まれた理由は、この世界を変えるというものなんだろう。この世界のふざけた社会性をぶち壊して、もっと素晴らしいものに変える。
少なくとも、それが両親に出来る最後の恩返しだ」
その発言を聞いてた一夏は思わず感心する一方で、ある疑問が思い浮かんだ。
「もしかして、龍夜は家族はいないのか?」
「…………両親は死んでる。姉と二人で過ごしていたが、今は病院から出れない状態だ。一番上の姉と義兄さんは行方不明だ、今も生きてると思いたいが────可能性は低いな」
「…………………悪い」
「気にするな。別に問題はない」
触れてはいけない事情だと悟り、申し訳無いと頭を下げる一夏。龍夜は本気で気にしてすらいないようであった。
それでも何処か思い詰めるような一夏に、龍夜はコホンと喉を鳴らした。
「─────織斑、いや一夏」
呼び方を改めた青年は、髪を軽くかきながら話し始めた。
「俺は仲良くなるということは分からない。俺は俺自身の目的を果たすつもりだが、俺も出来る限りは仲良くしていこうとは思う」
実際には、本気でそうは思っていない。
本心はただ一つ。己の果たすべき目的───強くなることを優先させるだけに過ぎない。なら、何故こんな事を言い出したのか。
「これからも…………よろしく、頼むぞ」
「……………おう、こっちこそよろしくな!」
─────期待してるぞ、一夏。俺の強さを高めるライバルとしてな
蒼青龍夜は心を開かない。
ただ己の果たすべき使命のために心を殺し、他者の心を利用しようと画策する。
全ては、世界を変える─────それと同じく叶えるべき、
キャラ設定
蒼青龍夜
自称天才。他者との関り合いを拒絶しており、進んで他人と仲良くなろうとしない。だが、現在は自分の力を高めるために他人と関係を保とうと画策している。
ある二つの目的を果たすためにIS学園や世界での最強を目指している。
ラミリア
蒼青龍夜が開発した自己学習型のAI。本来は通常の人工知能のようになる予定であったが、龍夜の予測を越えて感情を手に入れた。
今も龍夜のパートナーを自負しており、龍夜本人も家族のように心から受け入れている。
文章力がないと言われたら泣くしかないから許して(切実)