IS 蒼き宙の向こうへ   作:虚無の魔術師

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第二章 臨海学校編
第21話 IS学園の理事長


「─────朝か」

 

 

布団の中で目覚めた龍夜が、天井を見て一言呟く。窓から差す光はほのかに暗い、どうやらもうそろそろ夜明けらしい。時間帯としては四時か五時の間か。

 

 

 

眠気が優っているのか、布団から上手く出れない。体が重く感じるのは布団に固執しているからか。寝惚けた瞳だけを動かし、ふと部屋の中を見渡す。

 

 

作業中の机。制作中の武器やアイテム、完成したガジェットが置かれている棚。そこでようやく昨日の事を思い出す。確か夜中まで開発途中であった銃器や改修を行っていたのだ。その最中意識が落ちたのか、そこから記憶が途切れて───

 

 

 

 

 

(────待て、おかしいぞ?)

 

 

記憶が正しければ、自分は寝落ちしていたはずだ。それが何故ベッドで寝ているのか。

 

 

そう思うと、眠気が明らかに覚めていく。単に布団から離れたくないという感覚が抜け落ち、重さが確かに感じられる。それも、腰辺りに。

 

 

 

「…………」

 

 

嫌な予感がする。最近こんな感覚ばかり感じ取っている気がするのは、気のせいではないだろう。

 

乗せていた布団を静かにめくり─────頭を抱える。あまりのことに頭痛かと思われるだろうが、仕方ないはずだ。

 

 

 

 

 

なんせ布団の中で、自分の腹の上で銀髪の少女───ラウラ・ボーデヴィッヒが熟睡しているのだ。それも生まれたままの姿で。

 

 

 

「────」

 

 

把握した途端、行動は早かった。ラウラを起こさないように布団から抜け出す。地道な動きでかつ五分もかかっただけはある。危ないところはあったが、彼女は普通に眠りに落ちている。

 

 

それから起こさないように気を配りながら布団を丸める。ラウラを中心にするように巻き付け、巻物のようにした後に、担いで部屋から出る。

 

 

周りに悟られないように静かに、腕に抱える布団の中で眠るラウラを起こさないように気を配りながら、ある部屋の前に立ち、ゆっくりと扉を叩く。

 

 

 

 

『…………う、うん……いま出るよ………』

 

 

寝起きらしい声が扉の向こうから聞こえる。まだ朝というには早すぎる時間に申し訳ないが、此方としても事情が事情だ。眠そうな目を擦りながら扉を開けてきた少女───シャルロットが龍夜の姿を、そして彼に担がれた布団に巻かれるラウラを見る。

 

 

「りゅ、龍夜!?そ、それにラウラも何で───」

 

「………静かに。この馬鹿が起きる」

 

「…………あ、ごめん。それで、何でラウラが布団に巻かれてるの?」

 

 

大声で起こさないように諫めながら言うと、慌ててシャルロットも静かに話し出す。龍夜は傍らに担ぐ銀髪少女を指差し、告げる。

 

 

「俺の部屋に入ってきた挙げ句に布団の中に入り込んでてな………悪いがお前に任せていいな?」

 

「悪いって言うより、ルームメイトだから問題ないよ」

 

「すまん、助かる」

 

 

眠るラウラを(布団ごと)預けて部屋に戻る龍夜。扉を閉めた途端に倦怠感が押しかかってくる。

 

まさか今がここまで大変になるとは思わなかった。賑やかというか、退屈しない日になった。独りの方が良かったと思う自分がいる一方で、こういうのも悪くないと思う自分もいる。

 

 

 

一時間くらい寝るか、と考えた直後───ラウラごと引き渡した事を思い出す。天井を見上げて少し考えた後に、

 

 

 

「…………なんか造るか」

 

 

そう言って、作業用の机へと向き合った。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「─────ってのが今日の朝の話だ」

 

 

大盛りのカレーライスと牛丼という、一回の食事にして多すぎる量を前に話し終えた龍夜。彼の話を食事がてらに聞いていた、一同は沈黙する。

 

 

その内の一人、一夏がどこか迷った様子で口を開く。

 

 

「………龍夜」

 

「何だ」

 

「その………大変だったな」

 

「他人事みたいな言い方だが、今回だけは有り難く受け取っておく」

 

 

牛丼を軽くかきこみながら、龍夜は言う。同情されるのは不本意だが、馬鹿にされたり憐憫されたりするよりははるかにマシだ。

 

 

一夏の隣、その隣の鈴が中華料理を食べながら聞き出した。

 

 

「ってか、ホントに災難ね………アンタ、今回が初めてなの?」

 

 

「ああいう事はな。だが何度か面倒なことはしてきてる」

 

 

「面倒?やはり何かあったか?」

 

 

「────人の部屋に勝手に入ってきたり、シャワー中に素っ裸で入ってきたり………」

 

 

「……………うわぁ」

 

 

言葉を失う一夏。他の面子もそこまで出来るのか、と愕然とした様子であった。他の女子達からしても、ラウラは少々積極的らしい。

 

 

チラリ、と。視線だけが動く。龍夜の隣で朝食のパンを食べ終えたラウラ。彼女は腕を組み、感心したように呟く。

 

 

「うむ、私としてもバレずに上手くいくと思ってはいたが、流石は我が婿。そう簡単にはいかんか」

 

 

「…………図太っ」

 

 

そんな風に一言漏らした一夏も、おおよそ間違ってはいないのかもしれない。鋼のメンタルなのか彼女は基本的なことでめげることも折れることもなく、素直に応対する。ハッキリ言って厄介すぎる。

 

 

あと、龍夜として悩むのはラウラが間違った知識を覚えていることだ。話を聞いたところ、自分の部下、副隊長に助言を受けたらしい。この時点で龍夜にとって副隊長なる人物は借りを返すべき相手と記憶した。

 

 

色んな知識を正してはいるが、龍夜を婿とするのだけは直らない。いや、直せないというべきか。自分に惚れているらしい彼女にとってこれだけ否定できないらしい。なので、龍夜も訂正することを諦めていた。

 

 

 

「婿って…………まぁいい。それよりも、上手くいくって何だ。まさか添い寝でもするのが目的だったのか」

 

 

「添い寝……?───なるほど、アレは添い寝というのか。勉強になったぞ」

 

 

「………?添い寝のつもりじゃなかったのか?」

 

 

「あぁ、当然ながら夜這いだ」

 

 

ブーッ!! と喉に入れた筈のコーヒーが吹き出された。幸いなことは、一夏達に当たらないように調整したことか。口から流れる黒い液体を手の甲で拭い、困惑と怒りの滲ませた瞳でラウラを睨んだ。

 

 

「お前……ッ、お前ェ………ッ!!」

 

 

「………?夜這いとはそういうものではないのか」

 

 

「─────よし、一夏!シャルロット!説明任せた!」

 

 

半ば思考放棄した龍夜がそれだけ言う。対応するのが疲れたように見えるが、擦り付けようとしているのも明白だ。流石に反論したい一夏だが露骨に疲弊している龍夜に強く出れず、諦めたのか二人でラウラの誤った知識を正そうとしていた。

 

 

真面目に話を聞くラウラ。かつての彼女ならば誰の話も聞かず、自分の考えだけを通そうとしているプライドの高い奴だったが、数日の間でここまで変わるとは思わなかった。

 

 

 

「…………ったく、本当に疲れる」

 

「まぁ、前よりは良いんでしょ」

 

「………お前らはいいのか?」

 

「?何がよ」

 

「ラウラだ。因縁があるんじゃなかったか?アイツにやられた事を許せるのか?」

 

 

呆れたように見ていた鈴に龍夜がそう聞き返す。鈴、そしてセシリアはラウラとの因縁がある。二人の私闘に乱入したラウラに一方的にいたぶられ、トーナメントに参加することも出来ない結果になった。

 

彼女達自身やる気があっただけではなく、その際に自分や一夏の事を馬鹿にされたのが戦いの原因らしい。いくらラウラが前より変わったといえど、そう簡単に済まされる問題なのか、と思っていた。

 

 

鈴はアッサリと答えた。既に決まりきった事のように大して気にしていない素振りで。

 

 

 

「あぁ、その問題はもういいのよ。私達で話し合って無事に解決した訳だしね」

 

 

「そうか────じゃあセシリアのアレは関係ないということか」

 

 

は?と怪訝そうな顔の女子に、隣を指差す龍夜。ラウラの座っていた方とは反対の右側。そこに座って優雅に食事していたセシリアは凄まじい怒りを滲ませながらサンドイッチを握り潰さんとしている。

 

 

ブツブツと呟きが聞こえてくるが、聞きたくないので遮断している。わざわざ逆鱗に触れるほど馬鹿ではない。ていうか普通に怖い。

 

 

「………おそらく、龍夜の話が原因だろうな」

 

「いや、俺というよりアレはラウラが悪いだろ」

 

「ま、たしかに。龍夜よりもラウラの方にキレてそうだけど」

 

 

そんな風に話していると、突如鐘がなった。その音に騒がしかった食堂が一気に静かになる。それが放送であると全員が認知していたからだ。

 

 

『────呼び出しの連絡です、次の生徒達は理事長室まで来てください。織斑一夏さん、篠ノ之箒さん、シャルロット・デュノアさん、セシリア・オルコットさん、蒼青龍夜さん、凰鈴音さん、ラウラ・ボーデヴィッヒさん、以上の七名です。繰り返します─────』

 

 

 

 

「俺達の呼び出しか?………何か覚えはあるか?」

 

「い、いや………俺は知らないぞ?」

 

「俺もだ」

 

 

互いに聞き返すが、答えは出ない。全員が食事が終わった頃合いであり、食事を片付けて食堂から出る。途端、気になってたであろう事を一夏は聞いた。

 

 

 

「あの………理事長室って、そもそも何処なんだ?」

 

 

純粋な疑問に突っ込む者はいなかった。当然、龍夜はおろか全員は知らない。校内説明で理事長の存在はあったが、理事長室の存在までは語られたことすらなかった。意図的に隠されていたのは、きっと厳重な意味合いもあるのだろう。

 

 

 

「あ、見つけた!」

 

 

ふと、真後ろから声がした。振り返った一夏達の目の前にいたのは、慌てたように駆け寄ってくる長門だった。

 

 

「長門さん?何でここに───」

 

「ほら、理事長から君達を連れてくるように言われましたから。全員揃ってるようで良かった!さ、着いてきてください!」

 

 

有無を言わさないといったように、進めてくる長門。反論の余地すらなく、彼等は長門に連れていかれるように歩いていく。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

「ここまでが理事長室へ行く道ですが、通路について他の子に説明しちゃダメですからね。情報漏洩があった場合、軽く問題になりますから」

 

 

人気の無くなった廊下から、エレベーターを通り、果てに一本道の廊下を歩きながら説明する長門。仕草の一つ一つが洗礼されたものであり、現役軍人のラウラですら感心するものらしい。

 

 

「………しかし、凄いもんだなぁ」

 

「?何か質問でもありますか?」

 

「あ、いや。IS学園の校舎って三階建てじゃないですか。けど、俺達が移動した階って明らかに三階より上だったなぁ、って思ったんですけど………」

 

「はい、織斑さんの言う通りです。ここは表向きには存在しないことにされている塔『バベル・トロヌス』。特殊な物質を組み込まれており、目視はおろか索敵やセンサー等ではほぼ確実に捉えられません。理事長は常にそこで学園の運営等を務めています」

 

 

彼の言葉通り、廊下の先は見えない。暗闇や扉で遮蔽されているのではなく、本当に見えないのだ。まるで存在そのものが透明なのか、実在してないとでも言うように。

 

 

だが、校舎を繋ぐ廊下を歩いてようやく、その実体がようやく形として浮かぶ。半透明なガラスらしき材質の壁で張り巡らせた大型の塔。スカイツリー程の高さは無いにしろ、高層ビルに並ぶような大きさのソレは溶け込んでいた景色から分離するように現れた。

 

 

 

 

どれだけ目を凝らしても形らしきものが見えなかったに、全員が驚きを浮かべる。少し感心したような龍夜の近くで一夏が思うところがあるのか呟きを漏らす。

 

 

「安全なところに一人だけで隠れてるのか………理事長だからってのは分かるけど、なんか腑に落ちねぇなぁ」

 

「………お前なぁ」

 

 

耳にした龍夜が呆れたように返す。

 

 

「立場を考えろ、理事長は国連の議員の一人。要するに世界のトップの一人だぞ。そんな偉い奴が普通のところにいて暗殺されたらどうする」

 

 

国連を総括するメンバーの一員、それはきっと大統領レベルで必要とされている人材であり、同時に暗殺を回避するために立ち回る必要がある。

 

 

地下シェルターを拠点としていたり、常に厳重な警備で囲まれているのだろう。ならば、IS学園を総括し、政治的立場でも動くために自分の身を守らなければいけない。

 

 

まぁ、単に我が身が可愛いだけの為政者と言われればそれまでだが。

 

 

塔の内部に入ると、無機質な材質で覆われた廊下へと切り替わった。大型エレベーターを通り過ぎてすぐ、扉の前で長門は足を止めた。

 

 

「ここが理事長室です」

 

 

振り返り、親しげな声音で長門は言葉を続ける。声とは裏腹に、気を引き締めた態度を取りながら。

 

 

「理事長は皆さんをお待ちしてます。自分はここで任務に戻らせていただきますが、問題はあまり起こさないようにお願いします」

 

 

走るような勢いで立ち去る長門から視線を戻し、大きな扉の前に立つ一同。彼等が扉をノックしようとした途端、扉が四方に割れた。綺麗に開かれた扉は壁の中へと収納され、一つの部屋が明かされる。

 

 

 

 

 

あまりにも、変化の無い。

一夏が思い浮かべていたのは、装飾ばかりある豪華そうな一室だ。学園で一番偉い人間がそういう部屋に常にいるという常識を覚えていたからこそ、意外だった。

 

 

あるのは、真ん中にテーブルと左右に配置された二つのソファー。部屋の端には大型のコンピューターの塊が十も並んでいる。今も光を激しく点滅させながら稼働しているそれらは、床に組み込まれた装置に繋がっていた。

 

 

そして、その部屋の最奥。

 

 

 

 

 

「待っていたよ。僕の生徒諸君」

 

 

大きな金属の机、そしてその向こう側にある椅子に腰掛けた人物。彼は外を見ていたにも関わらず、一夏達をそう呼びながらクルリと椅子を回転させながら向き直る。

 

 

 

 

十分に歳を取った男────ではなく、少年だった。見た目からして年齢は十六か十五。少なくとも、この場の誰よりも若いのは明確だった。にも関わらず、その立ち振舞いは大人びたものが感じられる。

 

光に照らされて光を反射させた黒髪を一本にまとめ、結われたポニーテールは背中にまで届く。全てを理解したような凍り付いた瞳とは裏腹に、口元に不適な笑みを浮かべ、少年は続ける。

 

 

 

 

「僕はIS学園の理事長、時雨。初対面だと思うけど、君達を護る大人の一人だよ。これからもよろしく頼むね」

 

 

学園の支配者たる少年は冷徹に、かつ穏やかに告げる。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「理事長………?アンタが?」

 

 

純粋な疑問を指摘する者はいなかった。当然だ、誰もが半信半疑であった。時雨と名乗った少年は一夏達よりも幼い。顔立ちもまだ子供らしさが残っている。

 

 

そんな子供が、世界最高峰の教育機関であるIS学園のトップであるといわれて、そう簡単に信じられようか。否、出来ない。世界がどれだけ広かったとしても、自分達より若い少年が大人の一人だと、どうして納得できようか。

 

 

そんな不安と疑惑に包まれた空気を切り替えたのは、一つの音であった。

 

 

 

────スパァンッ!!

 

 

「痛ッ!?」

 

「………言葉遣いに気を付けろ。仮にもお前達の理事長だぞ」

 

「ち───織斑、先生。何時から居たんですか!?」

 

「お前達が部屋に入る前から居たさ、少し気が緩んでいるようだな」

 

 

一夏の発言を正すように言う千冬。出席簿を手に彼の頭を打ち付けた彼女は呆れたように鼻をならし、愕然とする一同を見渡す。

 

 

次の言葉が口に出される前に、時雨が笑い出した。

 

 

「別にいいさ、織斑先生。僕が理事長と疑われるのは慣れてる。というか、統計学的に一般人一万人に聞いて一万人は疑うからね。むしろ予想通りの反応で面白いよ」

 

 

千冬にそう声をかける時雨。まるで対等に接するような口振りに全員が驚く。世界最強であれど一教師である以上、立場的には理事長の方が格上のはずだ。なのに、どうしてここまで距離が近いのか。

 

 

 

「────君達の聞きたいことは分かる。僕が何故織斑先生と普通に話せているのか、それか何故君達よりも年下の僕が理事長をしているのか、だろう?」

 

 

椅子をクルリと回転させ、天井から一夏達へと視線を戻す。ニヤリ、と小さな笑みを溢しながら。

 

 

 

「まぁ織斑先生とは腐れ縁って話だけど………後者について話しとくよ。僕の家は古臭い皇族の分家でね、国連では一族の人間が所属するような習わしになっているんだ。『楽園の実(エデン・シード)』の議員になったのは旧家のコネと、僕自身の実力だね。兄ほどではないけど、僕も少しは立ち回れるんだよ?」

 

 

子供らしい顔と体で、親しむような言葉だが、ヒシヒシと感じさせる感覚は別物だった。それは全員が実感しており、否定しがたいものである。

 

 

学園の理事長という事実を疑い、侮っていた何人かは再認識させられた現実を噛み締める。この少年が学園のトップであり、世界中の政治家や権力者に拮抗する実力者の一人であることに。

 

 

「さて────織斑一夏くん、蒼青龍夜くん、君達の話はよく聞くよ。代表候補生に打ち勝ったり、アナグラムの構成員を打倒したという成果。『楽園の実』では君達を高く評価する声も多い」

 

「あ、はい……ありがとうございます」

 

「────どうも」

 

「無論、二人だけじゃない。セシリア・オルコットさん、凰鈴音(ファンリンイン)さん、シャルロット・デュノアさん、ラウラ・ボーデヴィッヒさん。君達の評価も低くはない。僕個人としても、代表候補生である君達には伸び代があり、この世代を担うに相応しいと僕は思ってる。

 

 

 

 

 

 

 

 

当然、君もさ。篠ノ之箒ちゃん」

 

 

最後の、箒を呼ぶ言い方は含んだものだった。彼女だけ、複雑な感情を込めたその声には、一体何が存在しているのか。

 

 

それを感じさせないように、時雨は表情を切り換える。余裕綽々から一転、困ったような顔で、口を開く。

 

 

「───だが、それが理由であるのか、少々望ましくない事が起き始めた」

 

「望ましくないこと、ですか?」

 

「つい先日『エデン・シード』の会合で一つの議案が提出された。君達代表候補生、一部除く特別な生徒に、特権を与えるという話だ。ISの使用を、特例でほぼ自由に扱うことができるというものだ」

 

「え?むしろ良いことだと思うんですけど………何が問題なんですか?」

 

 

思わず一夏は疑問を浮かべる。一部限定されているとはいえ、ISの使用が許されるのは悪い話ではないはずだ。通常の学生は校内とはいえ、私的なISの展開すら許されない。許可があればその限りではないが、緊急事態を除く事でその一例は滅多にない。

 

 

だからこそ、特別にISを扱えるのはむしろ良い情報ではないのか。そう考えていた一夏だが、黙って聞いていた龍夜が重い口を開いた。

 

 

 

「────学生の兵士化」

 

「………え?」

 

「特権を与えることで、学生が戦場に出る理由を正当化させる。つまり、国連の奴等は俺達を是が非でも戦場に出して、戦わせたいんだろう。もしこの考えが正しければ俺達以外の学生にも特権を与え、実戦に送り込むとかいうやり方も立案しているかもしれない」

 

「……………彼の言う通りだ。連中は必死に言い訳していたが、実際はそういう事だろうね」

 

 

学生にISの使用を許すことを条件に、戦場に出す。世界中から集められた学生をISに乗せ、戦わせることを正当化したいのだろう。学生が死んだらどうする、という反論はあるだろうが、ISという兵器がそれを覆す事ができる。

 

 

絶対防御という、搭乗者を比較的安全に保護するシステムこそが、彼等にとっては都合が良い。学生を兵士として扱うには、大義名分となる。

 

 

 

「で、でも何でだよ?今までそんなこと一度なかったんだろ!?じゃあ何で今回だけそんなふざけた事を────」

 

「───アナグラムの襲撃、それが理由だよ」

 

 

椅子に全身を預けた時雨が呟く。達観したように天上を見つめながら、沈黙に包まれた少年少女達に向けて語りかける。

 

 

「アナグラムは国連も手を焼いている。規模や組織の影響力もあるが、真の理由は彼等の持つ新兵器だ。ISにも傷を届かせる兵器がある以上、国連は好きに手出しができなかった。IS操縦者が何人も倒された、その事実が大きかったからだ。

 

 

 

 

 

 

そこで、君達がアナグラムと戦い、勝ってしまった。この事実を知った連中は思ったんだろうね、新しい世代である彼等ならばアナグラムに対抗できる戦力になる、と」

 

 

今の世代の人間が自分達より優れてるのを理解したにも関わらず、彼等の判断は利用する方に傾いた。子供を守る側の人間であるはずなのに、そこまで腐り果てたのだろうか。

 

 

「アナグラムは強大だ。彼等が握る切り札の存在が、国連を及び腰にさせる。だから、自分達の兵士達は極力消費したくないんだ。アナグラムへの戦力、自分達を守る盾として残したいから。だから、君達の方が都合がいいんだ。学生であろうが、連中には関係ない。どうせ、君達の安全や生活のこととすら考えていないだろうさ」

 

「そんな───仮にも世界を束ねる組織じゃないですか!?どうして─────」

 

「それが、今の国連なんだ。世界の平和とは聞こえは良いが、守りたいのは自分達に都合の良い世界だ。誰かが犠牲になっても、平和のための礎と吐き捨てる…………つくづく、腐りきっているよ」

 

 

吐き捨てる時雨の言葉に嘘はない。彼は本気でこのやり方に否定的であり、立案した国連の議員達を嫌悪している。人の命を簡単に切り捨てられる同胞達が、信じられないのだ。

 

 

 

誰もが言葉を発することができない。当然だろう、それだけで時雨理事長の言わんとする事が読み解けたのだ。

 

 

学生でありながら、死の危険のある戦場に踏み込む『特権』を受け入れるか。無言の問いかけに答えを出す者はいない。その沈黙こそが、一つの迷いであった。

 

 

 

 

「────理事長としてなら断固反対するべきだろう。だが、僕は君達自身に決断を託したいと思う」

 

 

椅子から立ち上がった時雨が、そう言葉に出す。振り返り、照らし出された学園、広がる青い海を見渡して、呟いた。

 

 

 

「─────僕の兄は、十年前に死んだ」

 

「…………」

 

「兄は、正義感の強い人間だった。僕と同じ歳で『エデン・シード』に入り、世界から争いと悲劇を減らそうと奮発していた。

 

 

 

 

 

 

だけど、兄は壊れた。とある任務に失敗し、第三次世界大戦を起こさせてしまったこと。それでまだ幼かった僕が重傷を負ったことで、兄は手段を選ばなくなった。そのせいで、兄は天災の怒りを受けて死んだ」

 

 

身内の死を明かすその言葉は冷淡そのものであった。吐き捨てるような、噛み締めるようなその言葉はあまりにも重く響いていた。

 

 

「兄の死は自業自得だ。少なくとも、僕はそう思っている。けれど、この世界を守ろうとしていたことは事実だ。僕も兄の志は継ぎ、この世界を守っていきたい。それはIS学園も、君達に関しても同じだ」

 

 

振り返る時雨は、慈愛と悲嘆に染まった瞳で一同を見つめる。そうして、彼等に答えを問うために、言葉を紡ぎ出す。こんな事を言いたくない、そんな感情を抑え込むように、唇が裂けるまでに噛みながら。

 

 

「無論、君達の選択だ。僕は止めることも口を出すことはしない。特権を拒否して立ち去るのも当然の権利だ。

 

 

 

 

 

 

だがもし、君達に覚悟があるのなら、君達の命を僕に預けて欲しい。誰一人無意味に死なせない、僕はこの世界も、君達も護りたい! 僕みたいな卑怯な大人に許されないと思う、でも頼ませてくれ!どうか、君達の力を、命を、僕達に貸して欲しい!!」

 

 

言い終わるや否や、深く頭を下げる時雨。息を呑む一同に緊張が走る。端から見ていた千冬も眉を動かすが、止めようとする姿勢すら見えない。

 

 

理事長でありながら生徒に頭を下げて頼み込む。普通に考えれば相当の事だろう。だが、時雨には迷いはなくても覚悟はある。たとえどんな答えであろうと受け入れ、全力を尽くすという意思が感じられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな沈黙を破ったのは、唐突だった。

 

 

 

「俺はやらせて貰います」

 

 

静寂から一転、全員の視線が一人に集まる。腕を組みながら、何の躊躇いもなく答えを出したのは、龍夜だった。

 

 

「………龍夜」

 

「正直、俺はこの世界なんてどうでもいい。国連の奴等が何を考えていようが知ったことじゃない。たとえ顔も知らないヤツが死のうが────だが、俺にも約束がある。両親と交わした約束を、俺は果たす義務が、理由がある。その為には特権は都合がいい。奴等が俺を理由するつもりなら、俺だって利用してやる。いずれ奴等を引きずり落とす為にもな」

 

 

ふと、強い眼差しを下に落とす。自らの手を見つめた龍夜が、低い声で呟いた。

 

 

「………………何より、奴を見つけ出すことができる」

 

 

そこに映し出された感情の正体は、やはり掴めなかった。すぐさま普通の顔でひた隠す龍夜は、仮面をつけたように尻尾を見せようとしない。

 

 

だが、答えを決めた龍夜に続く者もいた。

 

 

「俺も、やります」

 

「………いいのかい。強制ではないんだよ」

 

「アナグラムを止めることが出来るのなら、他の誰かを守ることが出来るなら、俺はやります。『やらなきゃいけない』んじゃなくて、『やりたいからやる』んです。やる必要がないからって理由で引いたら、俺はもう俺じゃない」

 

「────君達も、同じかい?」

 

 

一夏の覚悟を受け止めた時雨が全員に確認する。答えは全員同じであった。彼女達の無言の覚悟に、時雨は深く両目を伏せた後に、

 

 

「すまない────そして、ありがとう」

 

 

そう言って、頭を下げた。彼本人としても、こんな形を望まなかったのだろう。前者の謝罪もそれが理由だと思われる。後者の感謝は、彼等の意思に応えるための礼儀でもある。

 

 

 

 

 

 

 

 

「理事長、もう時間はよろしいだろう?」

 

 

「あぁ、そうだね。早速だが、説明を頼むよ」

 

 

口を開いた千冬が、そう言う。時雨がそれに応えると、千冬はあるタブレットと小型機械を取り出した。それを理事長の机に並べながら、話し始めた。

 

 

「お前達が特権を手にするということは、アナグラムとの戦いはほぼ間違いなく起こるだろう。そのために、基本的な情報を共有しておく」

 

「情報………もしや、噂されているアナグラムの新兵器ですか?」

 

「そうだ。だが、これは国連内で最重要機密と定義されている。情報が漏洩した場合、諸君には数年の拘束及び監視措置が取られることを覚えておけ」

 

 

ラウラの疑問に答えながら、鋭く釘を刺す。全員の沈黙を了承と受け取った千冬は、近くの機械を操作した。

 

 

 

「まず、これを見て貰おう」

 

 

ホログラムとして映し出されたのは、一ヶ月前の戦いの映像であった。一度それを見た者達は気にせず観察を続け、初めて見たであろうシャルルとラウラは瞳に映る光景に絶句していた。

 

 

──禍々しい液体と、突如発生した水から姿を現した青年。彼の纏う、ISでもない正体不明の装備を。

 

 

 

「一ヵ月前、IS学園を襲撃してきた『アナグラム』。その一構成員が使った武装だ。奴曰く、銘を『セイレーン』」

 

 

「『セイレーン』、神話上の人魚姫ですか。確かに、この男の装備はそれを模しているようですが、これは────」

 

 

「────『幻想武装(ファンタシス)』。そう名称されたこの兵器は八神博士の立案していた計画の一つ、その副産物だった」

 

 

ピクリ、と龍夜が反応する。目の前に提示されたのは、千冬の説明を証明するかのようなデータ。企画書や精密に記録された設計図に、龍夜は平然を装いながらも、ウズウズしているのか足で床を叩いている。

 

 

その間にも、説明は続く。

 

 

「科学の力で神秘を、幻想(ファンタジー)を再現する『エンシェント・ギア=プロジェクト』。八神博士を主体としたその計画は実行段階にいくその直前で凍結された」

 

 

ほぉ………と感心する龍夜。何か思い付いたのか提示される無数の設計図に視線を向けながら、ブツブツと考え込む彼に苦笑いしていた一夏はふと、引っ掛かった所があった。

 

 

「…………八神博士、か」

 

「何よ、一夏。アンタまさか博士のことも知らないとは言わないでしょうね?」

 

「そんな訳ないだろ。八神博士のこと、小学生でも知ってるぞ」

 

 

馬鹿にされてると感じたのか、ムッ、と不満を覚えた様子の一夏。否定するように、自分が覚えている八神博士についての情報を口に出した。

 

 

「────世界トップの兵器開発者であり、世界中に宣戦布告をし、第三次世界大戦を引き起こした大罪人。数億の人間の命を奪った戦争犯罪者、だろ?」

 

 

実際、それが世間一般の常識だ。八神博士は単独で第三次世界大戦を起こした歴史上類を見ない凶悪な犯罪者。その凶悪から八神博士のことを擁護する意見を出した者は世界中からバッシングを受け、炎上するまでである。

 

 

一夏が言った通り、小学生でも授業で教わる程の人物だ。彼の悪名は何百年経とうと消えることはない、とまで言われている。

 

 

 

なのに、だ。

 

 

 

 

「………戦争犯罪者、か。どうだろうな」

 

 

達観したような龍夜がそう呟く。すぐに興味なくしたように設計図を見続けるその顔は、あまりにも冷たいものであった。

 

 

「……………」

 

「───────、………」

 

 

沈黙を貫く二人。腕を組んで黙っている千冬は何も言うつもりはないのか無言、両目を閉ざして意識を外しているようにも思える。その割には意図しない怒気が微かに滲んでおり、ピリピリとした空気が出来ている。

 

 

対して、時雨は複雑そのものであった。激しい罪悪感と後悔、何かへの怒りに身を委ねかけている彼だが、正気を保っているらしく、悟られぬようにその顔にはポーカーフェイスを刻んでいる。

 

 

どこか申し訳なさそうに時雨が千冬に小さな声で呼び掛けると、彼女は伏せていた両目を静かに開けた。

 

 

「話を戻す。…………今映された二つのアイテム、『カオステクター』と『メモリアルチップ』、これが幻想武装(ファンタシス)の鍵となるアイテムだ」

 

 

操作された機械が照らし出した画像に、二つのアイテムが存在していた。小型の装甲らしきガジェットと、マイクロチップを大きくさせた形のアイテム。

 

片方を凝視していたシャルロットが疑問を投げ掛ける。

 

 

「織斑先生、メモリアルチップとはどのようなものですか?」

 

「ファンタシスの装備のデータを内蔵した小型メモリ。アレにはISのコア同様、膨大な情報が蓄積している。各々のメモリに適応した武装、能力、仮想神秘を実現させる構築式。

 

 

 

 

 

その名は全て、神話や空想、幻想にあるとされた存在から取られている」

 

 

だからこそ、『セイレーン』と呼称されたのだろう。『水』と『音』という自然現象の力を、武器として扱い、自らの能力として振るう。ISでいうなら、あのメモリは待機状態と同じなのだろう。

 

 

「そして、『カオステクター』は『メモリアルチップ』に内蔵された『幻想武装(ファンタシス)』を構築・展開を行うガジェットだ。

 

 

 

 

ガジェット内部の、スライドパーツに隠れるようにあるコネクタに『チップ』を差し込むことで、チップ内の構築式のデータを演算し、実体を作り出すという機能になっている」

 

 

メモリアルチップがフィルムなら、カオステクターは映写機である。チップ内に組み込まれた装備のデータを読み取り、投影させる。

 

 

軍隊を一人で相手に出来る程の強大な兵器。それもIS同様、一人の人間が持ち込める代物。アナグラムの組織としても、千冬の見せたデータからしても、ファンタシスは十以上存在していることになる。

 

 

ISという規格外がなければ、兵器としての評価は高いものであっただろう。

 

 

 

「────流石は篠ノ之博士に並ぶとされた天才だ。設計図だけとはいえ、これだけの武装をデータとして作るとは。流石は俺が尊敬する科学者の一人、天才の片鱗がヒシヒシと感じられる」

 

 

本気の賞賛を口にする龍夜。武器やアイテムを造る側の人間として、常人から理解されないであろう天才は自分にとって格上に位置する憧れであると。自らの才能を理解し、周りから気味悪がられてきた天才だからこそ、だろう。

 

 

 

故に、彼は一つの疑問を呈示した。

 

 

 

()()()()()()()()()()()

 

「………え?」

 

「ISにはエネルギーが存在している。ISのコアがそのエネルギーにより装甲や武器、絶対防御を形成している以上、エネルギーの存在は不可欠であるはず。それはファンタシスも同じであるなら、これのエネルギー源は何処にある?」

 

 

先程の例え、フィルムと映写機でも説明は出来る。これら二つが揃っていても、動力となる電気が無ければ動かない。

 

 

車が動くにはガソリンや電気がいるように、人間が生きるには血液や酸素が必要であるように。

 

エネルギー無しで動く兵器は存在しない。それは古来の事象から証明されている事実だ。

 

 

「お前の読み通りだ、蒼青。データを内包するチップ、チップから読み取った装備を投影するガジェット。それらにはエネルギーを増幅させる機能はない。

 

 

 

 

その役割を担うものこそが、これだ」

 

 

言葉に応じて画面が転化する。何らかの計画書であった。事細かく記されたデータの一番上には全ての文章の意味となる単語。

 

 

 

───UROBOROS・NANOMACHINE

 

 

「ウロボロス、ナノマシン?」

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

時は数日前に戻る。

織斑千冬がエレクトロニクス機社日本支部に在中していたアレックス・エレクトロニクスと対談していた。アレックスが話したのは、『幻想武装』の話をしている最中、その単語が唐突に出てきたのだ。

 

 

「ウロボロス・ナノマシン………?何だそれは」

 

「まぁ、お前が知らなくても当然だ。このオレが独自に作り、『幻想武装(ファンタシス)』に補強したのだからな。無論、トップシークレットだ」

 

 

そう言いながら若手社長が取り出したのは、一つのビン。中に入っている黒い液体が、揺れに応じて波打っている。

 

 

だが、千冬はすぐに察知した。その液体の異変、『それ』が液体ですらなくなってることに。動く度に、霧上になったり、砂粒のように固化していることに。

 

 

「ウロボロス・ナノマシンは、エネルギーでもあり、物質でもある」

 

「………何?」

 

「言い方を変えよう。ウロボロス・ナノマシンは全ての物質、エネルギーになれる可能性の塊だ。ナノマシンを操る人間の意思に応じて、な」

 

 

ビンの蓋を開けるアレックス、その手に黒い液体が落ちる。ポト………ッと、液体は掌に溢れた。なのに、流れ出さない。手の中ではその液体は固まっており、アレックスは力を込めて握り潰す。

 

 

指と指の間から、黒い原子の塊が意思を持った蛇のようにのたうち回る。アレックスの意思により変化させていくウロボロス・ナノマシンは、一つのキューブへと変わった。

 

 

その四方体を前に、アレックスは高揚の笑みを刻み、言葉を紡ぐ。

 

 

「粒子と粒子の結合、他物質の粒子の複製、素粒子への強制的な作用、これら全てを意識によって制御する。それこそがウロボロス・ナノマシン。世界の常識を塗り替える力であり、無限(インフィニット)を越えるためにオレが作り出した力だ!」

 

 

 

 

 

 

「成る程な、お前が先生の一番弟子である事を実感させられた。経営者以前に、科学者としての才もあるとはな」

 

「そうやってエレクトロニクスを大きくしてきた。どんな敵も潰し、接収してきた」

 

 

昔馴染みなのか、気安く語り合う二人。だが、二人の間には確かな壁があった。お互いが拒絶しあってるというものではなく、相容れないものであるという空気が。

 

 

世界を守ろうとする守護者と、破滅を望む破壊者のように。

 

 

「────お前が開発した全ての『作品』のデータは確かに受け取った。私はもう帰らせてもらう」

 

「ふん、ならとっとと帰れ。こっちは今日の予定を全部弾いたんだ。後で予定の練り直しを───」

 

「────その前に、一つだけ聞かせろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は、何を企んでいる」

 

 

「答えは十年前、あの日に出したはずだが?」

 

 

かつて一人の先生の教え子であった二人。それぞれの道を歩む彼等の見据える未来は全くの別のものであった。

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