「──であるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は、刑法で罰せられ──」
すらすらと、教科書を読んでいく山田先生。その様子は前見た時のような小動物を連想させる気弱さもおどおどした態度も見えない。
全員が何も言わず、黙々と先生の話を聞き、ノートに板書をしている。ただ一人─────授業の内容について行けず、周りをチラチラと見る織斑を除き。
教科書の一つを開き、ジッと睨んでいた一夏だが────静かに閉じた。そして、密かに頭を抱えそうな勢いだ。
一方で、
織斑一夏と同じく、男である蒼青龍夜はというと。
「───────」
他の女子達と同じく、黙々とノートにペンを走らせていた。しかし指の動きは他とは桁違いであり、彼女の話した内容と教科書の本文、そして端にまとめられた短い文も丁寧に書き分けていた。
それだけに過ぎず、山田先生の話が少しだけ落ち着き、生徒達に板書の時間を与えている間、
(───ISのエネルギーを頼ることない武装、ISのように粒子変換させることない装備。それが一応の目標か)
もう一つのノートを重ね、全く別のものを書きながら頭を悩ませていた。1ページに大きく書かれているのは小型の拳銃と思われる装備。しかし、実際彼が想定しているものとは欠け離れているらしく、様々な部品と構造が緻密に並べられていく。
「織斑くん、何かわからないところがありますか?」
だが、未だ内容が分からずにいた一夏に気付いたのか、山田先生がそう声を掛ける。
「わからないところがあったら訊いてくださいね。なにせ私は先生ですから」
えっへん、と自信あり気に胸を張る山田先生。その様子に龍夜の脳裏に多くの情報が過る。そんな大したことないというか、本人も特に気にしたことではないのだが…………流石に発言は止めておく。
なんせ教室の端には、静かにクラスを睥睨する関羽────どちらかと言うと、呂布がその場に君臨しているからだ。何故そんな事を考えたのかは、何処かの世界の電波を受け取ったとしか言いようがない。
その龍夜の考えを読み取ったのか、織斑千冬の視線が龍夜に定まる。咄嗟に思考を打ち切り、目の前の出来事に意識を向ける。
ふと、期待に満ちた顔で一夏が顔を上げる。
「───先生!」
「はい!織斑くん!」
「…………ほとんど全部わかりません」
自信満々の宣言に、山田先生が明らかに困り顔でひきつった。龍夜は正直納得はしていた。授業の内容にある程度追いつけないのは予想できたが、全部わからないのは意外過ぎた。
だが、疑問が浮かぶ。
全然分からない者の為に、参考書が出されていた筈であったが──────、
「…………織斑、入学前の参考書は読んだか?」
「古い電話帳と間違えて捨てました」
即答に応じるように、爆音が響く。
これには龍夜も呆れるしかない。道理で分からない訳だ。頭を抱える同級生から視線を反らし、溜め息を漏らすしかなかった。
「………イテテ、やりすぎだろ。千冬姉」
「あれに関しては自業自得だと思うがな」
休み時間。
再発行された参考書を手にしながら、頭を擦る一夏。そんな彼の愚痴に龍夜は呆れながら言う。一夏も素直にそう思ってるのか、「仰る通りです……」と返していた。
「なぁ、龍夜。頼みたい事があるけど、良いか?」
「…………わからない点を、教えて欲しいのか」
意図を見抜いた龍夜がそう聞く。僅かに驚いた一夏だが、すぐさま頭を下げる。
「迷惑かもしれないけど………お前にしか頼めないんだ!」
「あぁ、迷惑だな。俺にはやることがある」
「っ、そうだよな………ごめん」
あっさりと言い切る龍夜に、一夏は申し訳なさそうに引き下がる。落ち込んだ様子で悪かったと離れようとする一夏に、
「───ただ、このノートは今日は使わないな」
スッと、二冊のノートを彼の前に差し出した。呆然とするしかない一夏へ、龍夜は話を続ける。
「青いノートは板書、先生の話や教科書の内容、黒板の内容を全部書いたやつだ。そしてこの白いノートが俺が重要な部分や分かりにくいところをまとめたものだ。参考書を見ながらなら、ある程度は分かるだろ」
そう言いながら、短く『丸書き用』『まとめ用』と書いた付箋をノートに張り付け、一夏に手渡しながら説明をする。目をぱちぱちさせながら、顔を見返す彼の前で、龍夜は言い切る。
「もし今日だけで覚えきれないなら、職員にコピー機を貸して貰え。コピーしたのはお前のだから、ずっと使えるだろうしな」
「ッ!────ありがとな!龍夜!それじゃあ行ってくる!」
二冊のノートを受け取った一夏は満面の笑顔を浮かべ、深く頭を下げると教室から飛び出していく。駆け出していく一夏の姿を見つめることなく、頬杖を書いてスマホを起動させる。
「…………ふん」
退屈そうに鼻を鳴らし、龍夜は意識を外からスマホへと戻した。
◇◆◇
「ちょっとよろしくて?」
スマホを弄りながら休み時間を終えようと思っていた時、突然声を掛けられた。
凛とした少女の声に、龍夜は手を止めて相手に視線を向ける。鮮やかな金髪に、綺麗に透き通ったブルーの瞳。どちらかと言うと、貴族のような風格も感じられる。
────いや、貴族なのは間違いないな、と思いながら、龍夜は少女を見返す。冷たさを宿した瞳を向けたまま、龍夜は問うた。
「何の用だ?イギリス代表候補生、セシリア・オルコット」
「あら、わたくしの事をご存知ですのね。もう一人の男の方はわたくしの事を知りもしませんでしたが…………態度はなっていませんが、まぁいいでしょう」
代表候補生。
国家代表IS操縦者、その候補生として選び抜かれた者達。彼女達にとってそれは国を背負う事であり、謂わば将来を期待されたエリートという事でもある。
………少女にとって、それは何よりの誇りなのだろう。それ自体意味がないものと切って捨てるつもりはないが、此方としても言いたいことがある。
「それで?代表候補生様が自習もせずに一体何の用だ?」
「聞きたいことが、ありますの」
此方を見下ろしながら、セシリアは怪訝そうに聞いてきた。
「───貴方が入学試験で教官に倒しただけではなく、首席であるというのは本当なのですか?」
「あぁ、その話か」
否定するもない、事実だ。
そうでも言うように、龍夜はあっさりと頷く。本当にそうなのかと疑惑を向けていた少女の顔が驚きに変わる。そんな様子をどうでも良さそうに、龍夜は語り出す。
「最初は慣れなかったが、パターンを把握して倒した。軽く手加減されていたのは、やはりまだ未熟という訳だろう。だが、お陰でやり方はある程度掴めた」
それだけ言い終えると、唖然とした様子で聞いていたセシリアに目線を向ける。当然とでもいうように言葉を紡ぐ。
「もしかして、自分がトップになれなくて悔しかったのか。残念だがこれも結果だ、大人しく諦めろ」
「っ!悔しい!?わたしが!?笑わせないでくれます!?いくら入試での順位が上と言っても、実力が上と決まった訳ではありませんの!」
「ま、それはそうだ。………だが、今更言ったところで意味すら無いと思うがな」
それ以上何か言わんとしたセシリアだったが、次の時間を示すチャイムが鳴り響いた。言い淀んでいたセシリアは何も言わず、席へと戻っていく。
その後ろ姿を見て、溜め息と共に吐き捨てる。
「…………面倒だな」
それは、限り無く現在の心境を示した言葉であった。
◇◆◇
その次の授業は、山田先生ではなく、千冬が教卓に立っていた。学んでおいて損はないのか、山田先生までもがノートを開こうとしている。
だが、実際にその内容の授業が始まることはなかった。その前に、思い出したように千冬が言う。
「………よし、再来週に行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めようと思う」
「代表者……?ってことは、クラス長か?」
(…………クラス、長?)
半ば納得しようとしている一夏に対し、龍夜はその単語の意味を図りかねているのか顔をしかめている。実のところ、彼は個人的な事情により小学校と中学校をほとんど通っていない。一時期は通っていたが、あまりクラスとは馴染まず、前よりも他者との関係を強く拒絶していたからこそ、あまり学校生活には慣れてはいない。
千冬の話を聞くに、代表者はクラスのリーダーのようなもので、定期的な生徒会による会議や委員会へ出席し、前の話にあったクラス対抗戦ではクラスの標準的な実力を図る意味合いを持っているらしい。
聞き終えた龍夜は露骨に嫌そうな顔をするしかなかった。要するに仕事が多い役割なのだろう。出来ない訳ではないが、代表者になった時の時間の浪費が考えるだけでも歯がゆい。
すると、一人の女子が手を伸ばして声に出す。
「はいっ!織斑君を推薦します!」
「私もそれがいいと思います!」
複数人の推薦を聞き、千冬は黒板に一夏の名前を書き込んでいく。唖然としている一夏に、龍夜はこれは好機と確信した。
スッと手を挙げ、千冬から許可を得ると、席から立ち上がり、一夏の肩に手を添える。
そして、自分に出来る綺麗かつ爽やかな笑顔を浮かべながら、
「────良かったな、一夏。明るいお前に相応しい役割じゃないか。俺も心からお前にやって欲しいと思う。ということで織斑一夏に推薦します」
「いや、イヤイヤイヤイヤイヤっ!?」
明らかな棒読みと、適当な作り笑いに一夏は慌てて我を取り戻す。目の前の冷徹かつ容赦のないクラスメイトから、教卓に君臨する自らの姉に抗議の眼差しを向けようとする。
しかし、千冬は既に言わんとする事を理解してるのか、
「自薦他薦は問わない。だが、拒否権などない。選ばれた以上は覚悟してそれを受け入れろ」
バッサリと言い放たれ、反論できない一夏。そんな彼に龍夜は相変わらず不器用な笑みと共に親指を立てている。
一夏は本能的に悟った。コイツ、本心で思ってない。明らかに面倒な事を擦り付けようとしている。
────ならば、此方も対抗する。
そう決意した瞬間、一夏の思考は凄まじいくらいに回転していた。あらゆる恋愛事情に鈍感とされ、箒と同じく幼馴染みであり長い付き合いの親友からも『普通に頭良い筈なのに、どうして色事になると馬鹿になるの?』と言われる程ではある伝説の朴念仁、織斑一夏その人。
しかし、親友から言われる通り、彼は色事以外なら頭は良い方だ。単に顔や性格でモテるだけではなく、スペックもある方だ。そんな一夏の取った手段というのは───────
「なら!俺は龍夜を推薦しますっ!」
「─────!?」
バッ!と挙げられた手と共に放れた言葉に、元の席に戻ろうとしていた龍夜は息が詰まる。ぶっちゃけると、そこまで深刻ではないが、一夏の思わぬ反撃が衝撃となって叩き込まれた。
「そうだよね!織斑君と同じく!私も龍夜君に推薦したいです!」
「なら!私も!私も!」
ほら来たことか。
このまま勢いで一夏に任せようとしたが、一夏の推薦により気付いたクラスメイト達が次々と挙手していく。
拒否しようとするが、千冬からは『拒否権はない』と言われていたことを思い出す。
席に戻ろうとした足を止め、一夏の肩を両手で掴む。そして、隠れるようにしながらひそひそと話し始める。
(………おい、俺を巻き込むな一夏。犠牲になるなら一人で犠牲になれ)
(そう言うなよ!前に仲良くするって言ったよな!なら一緒に混ざってくれよ!それに、龍夜も天才だから代表者もいけるだろ!?)
「─────チッ!」
「……え?待って?舌打ちした?舌打ちしたよな?そんな露骨にする?普通?」
面倒事に巻き込んでくれた同級生へ躊躇無く舌打ちを吐き捨てる。された本人は冷や汗をかきながら問いかけてくるが、龍夜は真顔に徹していた。
尚、本人が最初に切り捨てたようなものなのだから犠牲にされるのは仕方ないのだろう。だが、龍夜からすれば巻き込まないで欲しいというのは本音でもある。
「待ってください!納得がいきませんわ!」
「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表なんていい恥さらしですわ!わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を1年間味わえとおっしゃるのですか!?」
「───」
セシリアは気付かない。近くにいた一夏だけが、気付いていた。龍夜はセシリアに対し、半ば見下すような───いや、憐憫の目を向けていたのだ。
「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります! わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来たのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」
「………実力、か。なるほど、それも一理ある。ならば、代表者に相応しいのは入試首席である蒼青という事になるだろう、オルコット」
「っ!だ、大体!文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとって耐え難い苦痛で─────」
「……………はぁ」
心底、鬱陶しいと言う溜め息がクラスに浸透していく。セシリアも捲し立てるのを止め、思わず振り替える。
溜め息の主は、龍夜。
本格的に面倒そうな様子を押し殺し、自らの髪をかき分ける。しかし、瞳には挑戦的な意思が存在していた。セシリアの言い分に頭が来ていたのか、不機嫌そうな一夏を制止ながら、彼は言う。
「無意味、時間の無駄だな。このままだと話し合っても決着はつかない。そうだろう?セシリア・オルコット。…………ならば決める方法は一つだ」
静かに、かつ確固として。
自分に突きつけられた指先と、その言葉の意味を汲み取るセシリア。
「────決闘、ということですわね?」
「流石エリート。話が早くて助かる…………お前も、それで良いだろ?」
「あぁ、四の五の言うよりはわかりやすい」
応じるつもりのある一夏に頷いた龍夜は、静観していた千冬に目線を移す。決まったか、ほくそ笑む彼女が口を開く。
「ISの勝負で決めるか、面白い。織斑と蒼青、オルコットの三人夜代表決定戦を行うとしよう。アリーナの使用申請は私が出しておいてやる。日時は一週間後の月曜。放課後の第三アリーナだ。三人はそれぞれ用意をしておくように」
他の生徒達も異論はないらしい。
千冬もこの方針で進めると決めたらしく、山田先生も慌てながらもノートにメモを行う。
そんな最中、セシリアが自信に満ちたように龍夜と一夏に声をかける。
「それでは、お二人はハンデはどのようにしますの?」
「ハンデ?」
「当然でしょう?仮にも私は代表候補生、実力も経験も私の方が上ですから…………少しくらいの慈悲は差し上げますよ?」
それを聞いた龍夜はハンッ、と鼻で笑う。
「ハンデ?不要だ」
「…………何ですって?」
「俺は強くなる為にここに来た。全力のお前を倒せないで、強くなれる訳がない。
ま、ハンデしたいなら勝手にしてくれも良い。俺に負けた時の言い訳にも出来るだろ?」
明らかに、これは挑発だ。
龍夜はわざとセシリアを煽っている。彼女の全力をさらけ出そうと、彼女に馬鹿にするような事を言い放つ。
言葉通り、本気のセシリア・オルコットを打ち倒すために。
「私を、馬鹿にしていますの……っ!?」
「好きにとればいい。一々話すのも時間の無駄だ。俺がどう言おうと、お前からすれば変わらない」
「ッ!!良いでしょう!その代わり!わたくしが貴方を叩き潰して、奴隷にして差し上げますわ!!」
「────結構、そちらこそ。俺を失望させるなよ?」
余裕の態度の龍夜に、セシリアは敵愾心剥き出しに睨み付ける。
だが、あ、とセシリアの表情が変化する。
何かに気付いたらしく、徐々に顔が青ざめていく。怪訝そうな龍夜だったが、真後ろに立つ気配にようやく気付いた。
…………あ、と小さな声が漏れる。全身から冷や汗が吹き出るが、もう遅い。
「────さっさと席に戻れ、馬鹿者」
盛大な爆音が、廊下にまで響いた。
◇◆◇
本日の授業は全て終了して、放課後となってから。
校舎から離れた場所にある学生寮、その廊下を龍夜は歩いていた。その手で、部屋の番号を示したホルダーの付いた鍵を弄りながら。
龍夜は少し前、この鍵を渡された時の話を思い出す。厳密には、織斑千冬と山田先生からの話を。
曰く、龍夜と一夏の部屋は別々。つまりルームパートナーは女子という事になる。もう何ヵ月かで個室になるらしいが、それまでは女子と生活する事になる。
それに関しては一夏は当然だが、龍夜も驚きを隠せなかった。同年代とはいえ、女子と生活するのは流石に不味いのではないか。いやそもそも、男子二人にすることも出来たのではないかと。
龍夜の疑問に、千冬は平然と答えた。
理由としては一夏がIS学園に入学する手筈が出来た後から、龍夜が適合者として見つかったこともあり、手続きの書類などが白紙に戻されたらしい。なので、結局このような形になったとか。
もう一つ理由があるしく、学園の理事長が許可を出したらしい。
『────まぁ、良いんじゃないかな?話に聞くと、織部君の方は幼馴染みと同じ部屋だから問題ないだろうし、蒼青君も女子に手を出すような性格ではないようだ。今更変えて手違いがあっても困る。彼等には少し、我慢して貰おうじゃないか』
────とのこと。
正直、アッサリ過ぎると二人して思ったが、お偉いさんが決めたのなら否定する理由も、必死に拒絶する程の価値もない問題だ。ここは素直に受け入れるべきだと、腹を括った。
因みに、というかやはり、一夏のルームメイトは幼馴染みの篠ノ之箒であった。彼は気付いていなかったらしく、何ら気にした様子もなく自分の部屋へと入っていった。
その後、怒声と共に一夏が慌てて部屋から飛び出してきた。安堵する彼のすぐ近くのドアから木刀が突き出したのを見て、何が起こったのかを全て察した。
そして、無視することにした。
あの容赦のない攻撃で幼馴染みの箒だと言うのはわかる。どうせシャワーを浴びたばかりの彼女と対面してしまったのだろう。一夏がそういう色事に関して運のないタイプなのだな、と心の中でメモをして────扉の前で幼馴染みを説得するクラスメイトを尻目に、自分の部屋を探していく。
少し先を歩いて、ようやく目的の部屋に辿り着いた。部屋の番号も間違えてはない。鍵を掴み直し、部屋の中へと入る。
扉の鍵を閉め直し、玄関で龍夜は声をあげた。
「─────誰かいるか?いるなら返事はしてくれ」
流石に一夏の二の舞にはなりたくない。すぐに部屋の奥へと入らず、様子を伺うように誰かいるかを確かめる。反応はすぐには返ってこなかった。しかし、少し経ってから反応はあった。
「…………うん」
という小さな声。そして部屋の方から此方を確かめるように、覗き込む少女の姿があった。
青よりも水色の髪に眼鏡をかけた、内気に見える少女だ。オドオドとしたように、玄関に立ち尽くす龍夜に視線を向けている。
失礼、と荷物を片手に部屋へと入る。やはり男だからか、初対面の相手だからか警戒しているのか、少し距離を取る様子の少女に龍夜は嘆息する。
そして、髪をかきながら、自分の名を告げた。
「────蒼青龍夜だ、よろしく」
「………」
少女の反応は薄い。無いよりはマシかもしれないが。だが、無視するつもりはないらしく、ボソリと呟いた。
「…………
「そうか、よろしく頼む。更識」
それだけ言うと彼女は無言で頷き、背を向ける。共同で扱うであろうパソコンのキーボードを叩き始めるその後ろ姿には、龍夜に対する興味は何一つ感じられない。
(まぁ、馴れ合う義理もないしな)
自分にとっても都合はいいと思い、荷物をベッドの近くに置く龍夜。ベットに向かって自分の身を投げ、スマホを弄り出す。
スマホの中で退屈そうにしていたラミリアの話をイヤホンで聞きながら、静かに眠りに就く。
波乱に満ちた学園の初日は、こうして幕を下ろした。
無駄や無意味なことを嫌う龍夜がわざわざセシリアを挑発したのは、本編でも言った通り、決闘をさせる為です。最初は面倒だと思っていましたが、わずか数秒でセシリアと戦う方が強さに近付くと考えてのことです。
次回はどんな話にするかはまだ未定です。それでは!
龍夜の専用機もそろそろ出すべきかね…………