IS 蒼き宙の向こうへ   作:虚無の魔術師

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新章突入です。わりと短めですよ…………スランプとかじゃないんすよ、ただどう書けば良いか分かんなくて、書き直したりしてたんで…………


第三章 episode3 アポカリプス・メモリー
第64話 特訓


「…………」

 

「…………」

 

 

休日の昼前。学園の外の町にある喫茶店で、一夏と箒は隣に座っていた。山田先生によりここで待機して欲しい、そう言われた二人は指定された時間まで待っているのだ。

 

 

本来であれば少なからず口数はある二人だが、今は異様な程に静かな空気である。

 

理由は、二人が落ち込んでいることに起因している。数日前に起きた未確認のISによる駅前広場襲撃事件。大勢の人々が殺され、生存者も数名という悲惨な事件に、二人の親友にして幼馴染みである海里暁(かいりあかつき)が巻き込まれ、死亡したのだ。

 

彼の死は、一夏と箒の心に陰りを落とすには充分なものだった。身近にあった親友の死は、そう簡単には乗り越えられないのだ。

 

 

特に、一夏が受けたダメージが一番大きかった。ずっと前から、彼は何も出来なかった。

 

福音奪還作戦でも、自分のせいで龍夜が暴走してしまい、箒にも迷惑をかけた。

 

ヴァルサキスの件でも、友を救いたいというシエルの願いを果たせず、彼女の目の前で友を奪われる醜態を晒した。果てに親友の死を受け、一夏は今までにない程に落ち込んでいた。

 

 

そんな一夏を慰めようとする箒だが、言葉が出せずにいた。生半可な慰めではダメだと理解しているからでもあり、彼女も自身も負い目を感じていたからだ。

 

彼の想いに、少しでも向き合えば良かったと。胸に抱く後悔が消えることはない。

 

 

 

そんな空気は、後に現れる相手が来るまで続いた。

 

 

 

「────やぁ、待たせたね。二人とも」

 

 

そう言って、一夏と箒の机の反対側に座ったのは、時雨理事長であった。いつものような理事長らしき制服ではなく、ラフな私服を着込んだ少年は座席に着くや否や、笑顔で応えながら近くのメニューを手に取った。

 

 

「何か注文したいものはあるかな?僕はこのアイスフロートをいただくつもりだけど」

 

「…………俺は、コーヒーで大丈夫です」

 

「………私はココアで」

 

「フム、分かった。そうさせて貰うよ。…………支払いに関しては安心してくれ。ここは僕が奢るよ、仮にも呼び出した側だしね」

 

 

半ば元気のない二人に、調子を崩すことなく時雨は困ったように笑う。一夏達よりも子供であるはずの少年は大人びた雰囲気を保っていた。

 

そして、店員の女性が持ってきた各々の飲み物が来た頃合いになり、ようやく時雨が沈んだ空気を切り替えるように、口を開いた。

 

 

「僕が君達を呼び出したのは他でもない。君達が僕等に渡してくれたデータ───いや、アナグラムのシルディから提供された端末の解析がある程度終わった。そのことで、君達に伝えたいことがある」

 

 

ポケットから取り出した小さな端末を指で弾く。机に落ちた端末は上空に複数の画像を投影し始めた。その一つの画像が、ある男の姿を映し出す。

 

監視カメラを破壊する直前に撮られた、無機質な仮面の男の姿を。

 

 

「先日の駅前広場大量虐殺事件、それを引き起こした存在は『フェイス』という男だ」

 

「…………『フェイス』、そいつが暁を───」

 

 

(フェイス)』、仮面で顔を隠した男が自分で名乗ったのだろうか。どちらにしても関係ない、一夏と箒はその名を口の中で噛み締めた。

 

────絶対に許してはいけない相手として。

 

 

「『亡国機業』、そう呼ばれる秘密結社のリーダーとして活動する男。多くの事件や暗殺を繰り返してきた、危険な奴だ。僕が把握できるだけでも、先日の事件を含めて数万人の人間の殺害に関与している」

 

「す、数万人………!?」

 

「それだけじゃない。……………これは内密にして欲しいんだが、奴は蒼青くんの御両親を殺害した張本人だ」

 

「ッ!それじゃあ奴が龍夜の───!?」

 

 

いつも理性的で強い信頼を抱かせる龍夜が異様な程に憎み、復讐すべき相手。それが今回の事件の黒幕であることに、一夏と箒は驚きを隠せない。

 

 

だが、疑問もあった。何故、フェイスの存在がアナグラムの端末にあるのか。二人の困惑に気付いた時雨がすぐにその理由を話し始める。

 

 

「多くの被害を出していることから、アナグラムも危険視していて奴を追っているらしい。だが、未だ影も形も捉えられないようだね…………最も、それは僕達も同じなんだが」

 

 

テロリストとはいえ、比較的に温厚な方なタイプであるアナグラムならば、無意味な犠牲を増やすフェイスを見逃せないのも当然だろう。

 

アイスフロートを一口食んだ時雨理事は、淡々と説明を続ける。

 

 

「話を戻すが、フェイスはその事件を引き起こした直後になる。調べてみた結果、その事件から一時間後に、海里暁の口座が凍結、その後抹消された」

 

「…………え?口座が?」

 

「事件から一時間後、唐突に凍結された……………可笑しいだろう? 一個人の口座がそんな簡単に止められるようなものなのだとは、僕はそう思えない」

 

 

拍子抜けという感じで呆気に取られていた一夏だが、時雨の指摘に納得する。確かに、その時は暁はまだ死亡が確認されているかも定かではなかった。

 

 

「普通手続きがあるまで凍結を続けるはずなんだけど、あまりにも動きが早すぎる。何か裏が、陰謀が隠れている、そうは思わないかな?」

 

「陰謀って、暁が殺されたのは…………フェイスに命令した奴がいるからってことですか!?」

 

「いや、それはどうかと思うね─────ただ、僕の考察としては、彼が何か重要なピースの役割であると考えているんだ。そう思えるほどの謎が、彼の周りに残ってる」

 

 

ペロリ、とバニラアイスをスプーンで食べ終えた時雨は話しながら、ストローを口に加える。中にあるソーダを喉の流し、美味しそうに笑顔を深め、言葉を続ける。

 

 

「兎も角、海里暁の真相についてはこれからも調べてみる。と、言っても。僕が呼んだのは単なる報告ではないんだ。君達に頼みたいことがあってね」

 

「もしかして、あの端末についてですか………?」

 

「うん、まだ正確には分からないが、最後に残されていたのは重要な暗号だった。何らかの座標を示しているんだろうけど、分かるのは予定の日だけさ」

 

「予定の日…………?」

 

「二日後、目的の場所に向かえ、との事だ。君達にはそこに向かって貰いたい─────と、言っても。簡単に行かせられない」

 

 

そこで、時雨は笑顔を消した。真剣な表情を整えた少年の気迫に、一夏も箒も言葉も出ず、反論すら許されない。凄まじい重圧を正面に受けながら、二人は時雨の言葉を受け止めるしかなかった。

 

 

「その二日後までの間、君達には臨時の訓練を課すことにする。理由は勿論、理解しているね?」

 

「────」

 

「織斑一夏くん、篠ノ之箒くん。君達とISを含めた実力なら、代表候補生の中でも上位に位置する。けれど、君達単体の実力ならば下の下に等しい────ハッキリ言えば、君達は弱い。今まで戦っていられたのも、機体性能に生かされてたに過ぎない」

 

 

理事長としての冷徹かつ辛辣な指摘に、二人は言い返すことすら出来ない。実際にそうだと、彼等は現実として理解させられていたからだ。

 

先の戦いで、無力さを実感させられた。だからこそ、悔しく思うことはあれど、事実を受け止める以外に方法ない。

 

 

「─────だからこそ、君達に専属の師をつけることにした。君達自身に足りぬ、技術と腕前を鍛え上げることの出来る選りすぐりのエリートをね」

 

 

期待しているよ、と時雨は軽く微笑んで二人に何かを伝え、席を立った。机に置かれていたメモを片手に、レジへと向かう。そんな少年の背を見た一夏と箒は互いの顔を見合い、各々の飲み物を飲み終えてから、伝えられた場所へと向かうのだった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

第三アリーナと第四アリーナ、そこが指定された場所であった。最も、第三アリーナは一夏、第四アリーナは箒と時雨理事長が付け足していたので、間違えることはなかった。

 

 

第三アリーナへと立ち入った一夏、異様な程静かな空間だと思っていると、

 

 

 

「─────待っていたわよ」

 

 

赤みがかった黒髪。ISスーツと似たボディスーツを身に纏った強気な女性。一夏はその女性を知っていた。何度も、学園内で対面していたからこそ。

 

 

「陸奥さん…………?」

 

「そうよ、私がアンタを鍛え上げることになった陸奥───って、挨拶はいらないか」

 

 

学園を防衛する戦力であり、時雨理事長の私兵の一人 陸奥はそう言ってため息を漏らす。鈴を大人にしてから、もっと気を強くさせたような感じが目立つ陸奥に、一夏はどう反応していいか迷う。

 

 

「さて、アンタの特訓についてだけど……………」

 

「?何です?」

 

「─────四の五の言うのはナシ。色々と教える前にまずは」

 

 

パチン!と指を鳴らした陸奥の近くに、鉄の塊が落下してきた。いや、着地したのだ。円形のリングを胴体の部分と連結させ、リングな左右端に脚にまで届く程の巨大な腕を有したロボット。

 

無人兵器を従えた陸奥がハルバードの武装を取り出し、一夏に向けて促してきた。

 

 

「出しなさい、白式を。この私が、アンタの全部を鍛え直したげる」

 

 

挑発、ではない。ただの事実通告。IS操縦者相手にここまで言い切れるのは、自分の実力を信じているからこそか。どちらにしても、応えないわけにもいかない。覚悟を決めた一夏は静かにISを展開し、そのまま陸奥と無人兵器の元へと突撃した。

 

 

 

 

 

 

「─────そんじゃあ、アンタの注意点を教えるわ」

 

 

十数分後、平然とした陸奥がボロボロになった一夏の前で淡々と話し始める。一夏は全身の所々が痛むのか、「いたた………」と呻いていた。

 

 

結論から、一夏は陸奥に打ちのめされた。かつての鈴音やセシリアのように。彼女だけではなく、あのロボットとの戦い方に翻弄され、エネルギー切れになったり、そのまま陸奥に正面から叩き潰されたりもした。

 

今回のを含めた、今までの一夏の戦闘記録を把握した陸奥が、彼が直すべき短所と呼ぶべき部分を指摘し始める。

 

 

「まず、アンタの行動には無駄が多すぎる」

 

「無駄、ですか………」

 

「そらそうよ。零落白夜とか雪羅とか、消費の多い奴をポンポンと使い過ぎなのよ。特にアンタは」

 

 

先程の戦いのことを思い出しながら、陸奥はハルバードを軽く振るいながら言う。

 

 

「零落白夜だって、アンタの切り札なんだから。ポンポンと使わないようにしなさい。雪羅も、回避出来なかったり、防がないといけない奴だけ判別できるようにしなさい」

 

「…………出来る限り、零落白夜を温存するように、ってことですか?」

 

「それもそうだけど、少しは織り混ぜるようにやりなさい。こうやって相手に斬りかかる─────直後に、一瞬だけ発動するとか。それだけでもエネルギーの消費は少ないし、相手への牽制にもなるでしょ」

 

 

それまで淡々としていた陸奥だが、直後に表情を険しいものへと切り替える。いつもの千冬のような厳格に満ちた雰囲気に黙り込んだ一夏を見据え、彼女は言葉を紡ぐ。

 

 

「あと、私が言いたいことは分かるわね」

 

「…………」

 

「直情的、アンタは良くも悪くも感情的。それが欠陥とか言う気はないけど、後先考えずに動くのは止めなさい。それが原因で仲間の足を引っ張って─────仲間を巻き込んだりしたら、アンタ自身が誰よりも後悔するんだから。注意しといて」

 

 

それが、陸奥が最も意識する一夏の特徴であった。感情的に、理性や命令よりも己自身の意思を優先してしまう。陸奥はそれを、致命的な弱点と何より認識していた。

 

感情的に動いたこと全てが悪いわけではない。ISを封印された鈴音を庇った件も、遭難していた船を庇った件も、責められるようなことではない。どちらも人命を優先したまでのこと、学生の判断だとしても非難されるべきことではない。

 

────だが、簡単に容認してはいけないのも事実。過去の記録の一つでは、ISを纏わない生身の状態で、暴走したラウラのISへと殴りかかったというのもあった。これは、これだけは咎めなければならない。

 

感情に囚われて、自分で考えて行動できないものは、周りを乱すだけだ。その結果、仲間を危機に陥れては目も当てられない。そうならないように、心掛けるべきなのだ。

 

 

「…………ま、アンタみたいな奴がいないと、世の中ロクなもんにならないしね」

 

「?何か言いました?」

 

「いや、別に。────よし、大体休んだし、さっさと訓練続けるわよ。今度は射撃が出来るまでボコボコに潰すから、死ぬ気でやりなさい」

 

「鬼かアンタは!」

 

「ハッ!口の聞き方がなってないわね!もう少し厳しくしてやろうかしら!いや、するわ!!」

 

 

慌ててISを展開する一夏に、陸奥がハルバードを片手で回しながら歩み寄る。こうして、一夏の方は厳しい特訓を数日間繰り返すことになるのであった。

 

 

◇◆◇

 

 

そして、第四アリーナ。

 

 

 

「────はぁッ!!」

 

「やはり、軽いですね」

 

 

ISを部分展開した箒が、二つのブレードで斬りかかる。しかし振り下ろされた二刀の斬撃を、向かい合っていた長門は落ち着いた様子で払い除ける。同じ刀剣のブレードによる剣戟は、何時間も続いているものであった。

 

この状況を打破しようと、重い一撃を振り下ろそうとする箒。しかし彼女の放つ斬撃を片方の刃でいなし、体制を崩させた長門は攻撃を繰り出しながら、突きを放つ。

 

それをもう片方の剣で防ごうとするが、勢いが強くそのまま吹き飛ばされてしまう。

 

 

「くっ! まだまだ!」

 

「いえ、休みにしましょう。箒さん」

 

「何故です!私はまだやれます!」

 

「過度な特訓は、体に毒ですよ。本当に強くなりたいのなら、疲れた身体を休ませるのも一手です」

 

「……………分かりました」

 

 

不服そうに、しかし反論を飲み込みながらISを解除した箒。息切れと共に汗を拭う彼女に、長門は近くに置いていたであろうスポーツドリンクを手渡した。

 

 

「箒さん、自分は今から確認したデータを含めた、改善点の話をします。宜しいですか?」

 

「はいっ、お願いします」

 

「では────まず先決なのは、貴女の機体『紅椿』に慣れることです。貴女の機体はハイスペックです、だからこそ機体にだけ頼るということは避けるべき。もう少しISの操作を増やすべきだと思いますね」

 

 

的確な指摘に、箒は凛然と頷いた。

 

 

「剣術の方も悪くはないです。ですが、二刀はあまり不得意のようですね。貴女が剣道を、元より一刀による戦い方が慣れ親しんでいるのもあるでしょうが…………」

 

「…………」

 

「これに関しては、私もサポートします。二刀流の戦い方は誰よりも学んでいると自負しているので─────他の剣術も含めれば、箒さんの力になると思いますから」

 

「────はい!お願いします!」

 

 

先の敗北が、一夏や龍夜を巻き込んでしまったことに気を病んでいた箒だが、長門の指導と柔らかな説明かつ揺るがない真剣さに、少しずつだが立ち直っていた。

 

 

「さて、最後にですが────絢爛舞踏(けんらんぶとう)は発動しないらしいですね」

 

「はい、私にも何故だか…………」

 

「……………私はIS操縦者ではないので分かりませんが、ワンオフ・アビリティーはISとの完全同調が必要とされています。一度は能力が発動できましたから、不調というわけではないはずです。……………心当たりはありますか」

 

「………………は、はい」

 

「あるんなら大丈夫ですね。貴女ならきっと扱えるようになります。そちらの件は、自分が口出しする必要はなさそうです」

 

 

穏やかでありながらも、長門は箒を信じるような発言をしていた。実際に、箒も長門のことを認めており、半ば師として認識している。

 

 

「あと十分したら、特訓を再開します。それまでに自由にして休んでください。次は少しハードルを上げますので」

 

「分かりました!」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

ソレは、永い間眠っていた。

 

 

『───────』

 

 

暗闇に満ちた深淵の中で、ソレは覚醒する。永い時の中、幾千の目覚め。しかして、この覚醒は完全なものではない。何度も見た光景────僅かにしか進展していない景色を前に、ソレが覚えた感情は皆無であった。

 

 

僅かながらであるが、変化はある。ソレは己の体躯を見下ろす。失われていた体躯が、戻りつつある。かつてより進化し、適応したカラダへと変わっていく。

 

少しだけ、爽快であった。しかし、それ以上に────『ソレ』が秘める激情は強く煮え滾っていた。永い間、十年という刻を永らえてきたのも、衰えることのない熱が動力と化していたからである。

 

 

ソレは、思い出す。

この空間より前に見た記憶を、自分という存在を生き永らえさせる要因となった、トラウマを。

 

 

大空を、青空を飛翔する景色。自分達以外の、人間が操る全ての物体は撃墜してきた。どんな兵器であろうと、自分には勝てない。蒼海へと沈んでいく機影を見下ろしたソレは、徐々にその事実を揺るぎないものへと固めていた。

 

 

─────だが、ある日。

ソレの前に、『敵』が現れた。無数のミサイルを飛ばし、人間達の街を蹂躙しようとした矢先に現れたソレは、ミサイル全てを一人で撃墜した。そう、一人で。

 

 

相手は人であった。しかし生身ではなく、鎧を纏っていたのだ。未知のその姿に、困惑を覚えた。まるで自分達のような、鋼と金属の装甲を帯びた『敵』であったから。

 

 

敵は、ソレに傷を与え、敗北を刻み込んだ。人間の兵器では傷もつけられたことのない体躯にヒビを入れ、片腕を奪った。

 

結果的に敗走したが、与えられた敗北という事実を、ソレは受け入れがたかった。そして、ソレは長きに渡る戦いの中で『宿敵』となった敵と戦い続けた。

 

何度も何度も、姿形を変え、己の体躯を進化させても尚、『宿敵』には届かなかった。そして、最後の戦いにて。己の創造主を護るため、全力を尽くして『宿敵』に挑んだ。

 

 

 

 

─────だが、勝てなかった。

翼を捥がれ、体躯を抉られたソレは初めて海へと墜とされた。無数の思考に絶望が渦巻く中、ソレは意識が途絶える最後に見た景色を、記憶として刻み込んだ。

 

 

 

此方を見下ろす宿敵。白き輝きを纏い、顔すらも隠した女剣士。──────『白騎士』の姿を。

 

 

 

ソレは、全てを失ったことを理解した。

蒼空を支配していた翼も、強者としての誇りも、己が誰よりも慕った創造主も。

 

しかして、ソレは絶望することはなかった。全てを失っても、新たなものを得た。人類殲滅という使命、新たに進化した体躯──────そして、『宿敵』を撃破すること。それこそが、ソレを生かし続けた理由であった。

 

 

ソレは、今も眠り続ける。目覚めの時を、己の体躯が完成する時を待ち続ける。来るべきその日、創造主の意思を継ぐモノとして人類を焼き尽くし──────宿敵との決着を着ける為に。

 

 

 

 

 




ここから物語の核心に近づく話になってくるので、ペース上げていきたいですね。頑張りたいです……………あと東方の小説投稿したら全然見られてない……………何故ぇ?
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