IS 蒼き宙の向こうへ   作:虚無の魔術師

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第70話 平和の崩壊、始まり

「……………」

 

 

千冬が話し終えた時には、その場の全員が沈黙していた。誰もが言葉を口にする気力すらない。喉が干上がったような感覚の中で、疑問を言葉にすることすら出来ないのだ。

 

 

「────ここからは、僕が説明しよう。事の経緯、僕達の知る全てを」

 

 

胸に手を当てた時雨が、穏やかな声音で語り始める。千冬達が体験することになった悲劇の発端、それが何だったのかを。

 

 

「始まりは、国連のミスだった。彼等は旅行中の八神博士の家族に護衛や警備をつけていたんだ。無論、彼等に不備はない。むしろ全力で仕事に尽くしていたと思う。

 

 

 

唯一のミスは一つ。博士の家族の存在が、テロリスト達に漏れたことだ」

 

 

そして、それを知ったテロリスト達は起死回生の策を思いついた。八神博士の家族を人質に使い、博士に兵器を造らせようと考えたのだ。

 

自分達に敵対する全てを滅ぼせるような、圧倒的な破壊兵器を。

 

 

「その為に、彼等は全ての戦力を投入して博士の家族を拉致した。そして、国連に一つの要求を行った。『博士の造った兵器を、我々に提供せよ』とね

 

 

 

 

そして────国連は、その要求に応えなかった。返事を寄越すことなく、無視を繰り返した」

 

 

その対応に激怒したテロリスト達は、八神世菜を殺した。死体を切り刻み、生首を箱詰めにして博士の元へと送り届けたのだ。運が悪いことに、一番最初にそれを知ったのは博士本人ではなく、千冬達だったのだ。

 

 

そうだ。

千冬の話に出た村雨も、同じことを口にしていた。国連が要求を無視したせいで、彼等が過激な対応を行ったと。話を聞いてる最中、シャルロットが震えた声で呟いた。

 

 

「………どうして?」

 

「恐ろしかったのさ」

 

 

時雨の答えは、単純であった。

見た目からは思えぬほどに大人びた、哀愁染みた悲しそうな顔で、時雨は話を続ける。

 

 

「彼等は博士の兵器を多用してきたからこそ、博士の造る兵器の力をよく理解していた。………想像してみるといい。君達の持つISの数世代先のISが造られたとしたら、それがIS学園に向けられるとしたら。恐ろしいだろう?彼等にとって、同じ気持ちだったのさ。万が一でも、テロリストに自分達を殺せる兵器なんて渡したくなかったんだ」

 

「………」

 

「それでも、最悪の選択に変わりはない。彼等は人命よりも力を優先した。だからこそ、起きてしまった悲劇さ」

 

 

だからといって、受け入れられる話ではない。こんなこと、納得できるわけがない。誰もが言葉にできない静寂の中で、何とか口を開いたセシリアはとある事実を確かめた。

 

 

「それが、国連の恐れる真実なのですか?」

 

「───まさか。こんなもの、まだ序の口。本当に最悪なのはここからさ」

 

 

これで序の口。

つまり、これを含めて最も隠さなければならない秘密がまだあるというのか。たったこれだけでも、国連という組織を揺るがす事実だと言うのに。

 

 

「あの日、織斑千冬達の知らぬ合間に、国連は大規模な活動を行っていた。──────『オペレーション・アポカリプス』。最重要機密として、歴史の闇に葬られるはずだった計画だ」

 

「────表向きには、多くの人命を奪う毒ガス兵器を所有するテロリストの大規模テロを阻止するために、事前に彼等を爆撃で消し飛ばすというもの。けど、これには隠された本当の目的があった」

 

「…………真の、目的?」

 

 

呟いた一夏は、酷い顔をしていた。蒼白に染まった表情が凍りついたように硬直する。全身から冷や汗が一気に噴き出し、思考が認識を拒絶するように空白を伴う。

 

脳裏に、その答えが浮かんでいた。しかし一夏の脳は、その考えを否定した。否定したかったのだ。そんなことあってはならない、そんなことが許されてならない。

 

 

しかし、どれだけ否定しても意味はない。本当の意味での国連の罪が、時雨の口から吐き出された。

 

 

 

「真の目的は────八神博士の家族、八神三琴と八神一美、この二人をテロリストごとまとめて始末することだ」

 

 

吐き気がするかと思った。

その近くで、目眩が増したであろう箒が倒れそうになって、鈴音に支えられる。いつも気丈である鈴音もその顔は険しく、冷や汗を隠せない。

 

 

最低最悪の真実だった。彼等は、本来救うべき生命を自分達の手で殺そうとしたのだ。全てから見放され、絶望していた二人を爆撃によって消し去ろうとした。本当に、理解ができない。代表候補生の誰もが、何故国連がそんな愚行を犯したのか分からなかった。

 

────ただ一人、候補生の中でも博識であり、優れた一人を除いて。

 

 

「彼等は生き残った二人の救助より、始末を優先した。その理由は分かるかい?」

 

「─────国連が、奴等の要求を無視したという事実を隠すためか」

 

 

心底つまらなさそうに、或いは嫌悪を隠さず、龍夜は吐き捨てた。彼ですら、その事実に純粋な嫌悪感を抱いている。そして、無言で頷く時雨の態度が龍夜の考えが正解だと示していた。

 

 

「二人を救助すれば、テロリストの要求の事実が明らかになり、先の失態が表沙汰になる。それを恐れた彼等は、隠蔽することを誓ったんだ。─────テロリスト達の目的は、博士への怨恨だった。故に彼等は博士の家族を殺害し、国連はその事実を後に知った。そういうシナリオにすることで、彼等は自分達の罪を揉み消そうとしたのさ」

 

「…………」

 

「送られてきた自らの妻の首と、テロリスト達の強迫のテープを受け取った八神博士は、国連に問い詰めた。何があったのか、と息子と娘は何処にいるんだ、と彼は必死に問い続けた。

 

 

 

けど、国連の答えは沈黙だった。彼等は博士に真実を教えることなく、隠蔽だけを図った。博士には賄賂としての資金を送り、この事実を表沙汰にしないように口止めまでして。彼等は自分達の犯した罪を完全に隠蔽させたという訳だ」

 

 

あまりにも惨い話だ。博士はただ、家族ことを案じていたのだ。千冬を含めた弟子達も愛し、家族のことを心から愛していた優しい人だ。知りたかったのは真実だけだ、国連を弾劾するためではなく、家族の身に降りかかった悲劇を知りたかっただけだった。

 

けれど、博士に真実が教えられることはなかった。───はずだった。

 

 

「ただ一人、『楽園の実』のメンバーで大きく反対を行った者がいた。それが僕の兄、村雨(むらさめ)だ。村雨は、『オペレーション・アポカリプス』の立案に最後まで反対を示した。多くのメンバーによって強行された後も、密かに機動部隊を動かして、博士の子供二人の救助を行わせた。────結局、失敗して部隊も無駄死にさせた訳だけどもね」

 

 

時雨理事にしては、辛辣だった。自らの兄が人として良い行動を行ったことに違いはないはずだ。それが失敗したとて、責めるものはいないだろう。なのに、身内であるはずの時雨は吐き捨てるように話しているのか。

 

 

「………村雨は、そのことをずっと悔やんでいた。だからこそ、兄は八神博士に真実を話したんだ。博士の家族に起きた悲劇と、彼等の末路を」

 

 

意図はなかった。ただ善意で、彼は博士に真実を教えたのだろう。家族の最後を知りたかった博士への優しさと慈悲だったのだ。

 

だが、時雨はそれを間違いだったと断じた。

 

「世界を思うのなら、人を思うなら、博士には黙っておくべきだった。真実を知った博士が、どれだけの激情と憎悪に囚われるか、兄には分からなかったのだろう」

 

 

家族を殺され、全てを失い、あろうことか真実すらも隠蔽された。自分達の面子を大事にする国連に、何も知らずに在り続ける世界に────博士は絶望し、どす黒い闇を増幅させた。

 

一息と共に千冬は閉ざしていた瞳を開き、悲哀に染まった顔で、言葉を紡いだ。

 

 

「────真実を知った博士は、私達の前から姿を消した。それから数ヵ月間、消沈していた私達の前で─────先生が作った平和は、崩壊した」

 

 

────他ならぬ、彼女たちの慕った先生の手によって。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

『────世界中の諸君。私の話が聞こえてるのであれば、耳を傾けて欲しい』

 

 

その通信が、世界各国の電子機器に届いた。誰もが突然のことに戸惑いを隠せない中、一部の地域では異常事態が発生していた。

 

 

日本、アメリカ、中国、ロシア、イギリス、及び他の国家の首都。その上空に、多くの機影が浮かんでいるのだ。輸送戦闘機、圧倒的な技術力で開発されたその機体は、現時点での兵器を数世代上回っていた。

 

全ての国家が混乱に包まれる中、世界中継を行った博士は穏やかな微笑みを浮かべながら、世界に告げる。

 

 

『これより私は世界全てに対し─────宣戦布告を行う。降伏も投降も許されない。求めるはただ一つ、君達人類の殲滅だ。老若男女関係なく、私は全ての生命を絶滅させる』

 

 

その瞬間、各国の首都上空を滞空する輸送戦闘機から複数の影が落ちた。二足歩行の無人兵器 通称『ガヘル』。日常の中に現れた何十機もの無人兵器に困惑を隠せない人々。あるものはカメラで撮影したり、あるものは電話で話しながら見つめていたり、長く続いた平和故に未知への恐怖を感じていない。

 

故にだろう。

無人兵器『ガヘル』が片腕の銃火器を構えても、彼等は唖然とするだけだった。五体の無人兵器の射撃体勢に不安を覚えた彼等は─────銃弾の雨を浴びることになった。

 

 

「────きゃああああッ!!」

 

「にげ、逃げろ!」

 

「早く!早く逃げてぇ!」

 

 

突然の暴挙に、理解できずに走り出す人々。その背中に無数の銃弾を浴びせながら、『ガヘル』は進撃を始める。

 

引き起こされた一つの惨劇と同時に、第三次世界大戦と呼ばれる戦いが引き起こされたのだった。

 

 

◇◆◇

 

 

「────敵、無人兵器!六体接近!」

 

「我々の後方では、市民の避難が行われている!奴等をこの先に絶対通すな!」

 

 

東京の区域の一つ。

逃げ惑う人々の避難をさせる為に、設営されたバリケード越しに自衛隊が無人兵器と戦闘を行っていた。警官隊によって誘導されて避難する人々を守るため、彼等は必死に立ち向かっていた。

 

 

対して、ガヘルは無人兵器の歩兵として躊躇なく戦場を踏み荒らしていた。横転した車の影から、左腕の機銃で自衛隊へと撃ち続けるガヘル。痺れを切らした一体のガヘルが車の影から飛び出し、バリケードを突破しようと動き出した。

 

 

「敵一体が出てきたぞ!撃て!撃てぇ!!」

 

 

正面へと飛び出した無人兵器が、一斉掃射を浴びることになる。ガラスに包み込まれた人工知能のコアにヒビが入り、煙を噴かしたガヘルが崩れ落ちる。

 

しかし、彼等は直後に信じられないものを目にした。

 

 

「た、隊長!敵兵器が動きました!」

 

「構わん!撃ち続け────なッ!?」

 

 

自衛官達が見たのは、撃破されたガヘルを盾にして距離を縮めるガヘル達の姿だった。壊れた仲間を盾に使う無人兵器の行動に、隊長はある事実を理解する。

 

さっき前に飛び出した無人兵器は、盾になるために死んだのだ。仲間達を敵の元へと近付けさせる為だけに、己を囮に使ったのだ、と。

 

 

「────隊長ォ!」

 

「今度はなんだ!?」

 

「後方に、敵大型兵器出現!此方への砲撃を狙って─────」

 

 

直後、バリケードが吹き飛ばされた。ガヘル達の後ろに隠れていた一際大きな二足歩行無人兵器『ガヘラッド』に砲撃されたのだ。その無人兵器は砲撃体勢から体を戻すと、他のガヘルと共に────バリケードに開いた穴へと向かう。

 

 

「ば、バリケードが!?」

 

「ッ!装甲車を出せ!急いでバリケードを塞────ッ!」

 

 

慌てて対応を始める自衛官達に、ガヘル達が襲いかかる。銃を構えようとする者に機銃の弾丸を浴びせ、近くにいた自衛官には距離を縮めて、手首から展開したナイフで滅多刺しにしていく。

 

 

そうして崩壊した防衛ラインから、一体のガヘルが独立する。その機体はふと動きを止め、近くのビルの中へと踏み込んでいった。

 

 

 

────シェルター内。

 

「パパ………お母さん、大丈夫だよね─?」

 

「…………大丈夫だ、きっと他のシェルターに逃げてるさ。信じよう!」

 

 

核攻撃用に増設された無数のシェルター。東京の区画にも多く存在するそこに、人々は緊急避難を行っていた。無人兵器が攻撃を行っているのは各国の首都圏内だけであった。

 

博士はそれを、人類への宣戦布告と示した。しかしそれが、圧倒的な戦力差を知らしめるための行いだとは、誰も理解してはいなかった。

 

 

────ふと、厳重に閉ざされたシェルターのロックが解除される。不審に思った避難者の一人が、分厚いシェルターの扉を覗き込もうとして─────突き立てられた刃物によって、生命を奪われる。

 

シェルターの扉の向こうにいたのは、ガヘルだった。本来であれば核でも破壊できない防壁。それはネットワークによって情報を伝達する無人兵器ガヘルにとっては、容易く突破できるものであった。

 

人間の腕を模したマニピュレーターでロックを解除したガヘルは片腕の機銃をシェルター内部に向け、弾丸を撒き散らした。人々の悲鳴や慟哭すら無視し、シェルター内の生存者を一人残らず殺して回っていく。

 

 

 

◇◆◇

 

 

「────シルバーワンより全機!敵兵器は計五十機。現在三十機が民間人への攻撃を繰り返している!敵兵器を確認次第、撃破せよ!」

 

 

上空を旋回する七機の戦闘機。航空自衛隊により送り込まれた援軍は、戦場と化した東京首都を飛び回っていた。あまりにも悲惨な戦場に顔を歪めるが、彼等は軍人だ。誰よりも早く気を引き締め、すぐさま行動に動いた。

 

 

「この作戦には、日本国民の命がかかっている!陸自だけに活躍させるな!何としても、敵を全滅させろ!いいな!」

 

『───了解!』

 

「シルバーツー、シルバースリーは俺と来い!敵兵器を投入している輸送機を撃ち落とす!!」

 

 

散開した戦闘機達が、無人兵器ガヘルを投入していく輸送戦闘機へと向かっていく。しかし、ミサイルを発射しようと引き金に指を添えた瞬間、通信から悲鳴が聞こえた。

 

 

『こ、此方シルバーファイブ!シルバーワンへ救護を求める!』

 

「シルバーファイブ!何があった!?」

 

『し、シルバーフォーが撃墜された!今、敵ヒト型兵器と交戦している!ミサイルが効かない、早くコイツを────』

 

 

通信が途絶えると共に、向こうを飛んでいた戦闘機が空中で爆散したのが見えた。慌てて軌道を変えたシルバーワン達が目にしたのは、爆煙の中からビルの屋上へと着地したヒト型の無人兵器であった。

 

黒と白の装甲に身を包んだ二メートル近くのヒト型。無機質な双眼を備えた無人兵器の片手には、二メートルを優に超える槍が握られている。

 

他の無人兵器と違う、という事実は見て分かる。すると、そのヒト型兵器からスピーカーのような声が周囲へと響き渡る。それは戦闘機内の彼等にも聞こえた。

 

 

【─────兄弟達よ。我等の意思は、常に一つ】

 

 

腕を振り払い、ヒト型兵器は淡々と告げた。その言葉を聞いた航空自衛官達は一つの事実を確信することになった。

 

 

『人類を殲滅せよ。一人残らず、殺し尽くすのだ』

 

 

────コイツが、無人兵器達を従える親玉だと。

 

理解したシルバーワンが、仲間達を呼ぶ。それだけで彼等は無言のまま応じる。三機の戦闘機が即座に、ヒト型兵器の方へと向かっていく。限界に近い速度で、三機は距離を詰めていく。全身にのし掛かる重圧に肉体が悲鳴を上げるが、彼等は気にしなかった。

 

 

『よくも、俺達の国を────!!』

 

『罪のない人々を手にかけた罪を!償わせてやる!!』

 

 

ヒト型兵器に狙いを定めた三機の戦闘機がミサイルの照準を固定させる。ついに発射させようとした次の瞬間、シルバーツーと呼ばれた戦闘機が空中で爆発した。

 

 

「ッ!シルバーツー!」

 

『シルバーワン!今のはヤツじゃない!もう一つ、急接近する敵が─────』

 

 

互いに認識し合ったその時、センサーでも感知できない速度で新たな敵兵器が姿を現した。二枚の機械のバインダーを翼のように広げたそれは────『天使』のような姿だった。

 

 

『天使』が翼を広げると、その内側から小型ミサイルが振り落とされた。空中で点火した無数のミサイルが、二つの戦闘機をロックオンして迫っていく。

 

 

「シルバースリー!全て回避は無理だ!撃ち落とせ!」

 

『クソ!分かってる!けど、コイツら!鬱陶し────』

 

 

近くを飛び回っていたシルバースリーの戦闘機が、全身を折り畳み、飛翔形態と化した『天使』に突撃された。重量と装甲を利用した衝突に、シルバースリーは悲鳴を上げる間もなく撃墜されていった。

 

 

「……………ッ!クソォォオオオオオオオ!!!」

 

戦闘機の機銃を乱射し、シルバーワンは飛翔していく『天使』を狙った。しかし『天使』はヒラヒラと、容易く回避を繰り返していくと、振り返って翼を大きく広げ、全身から無数の光線を射出した。

 

追尾を行うように屈折していく無数のビームに対応できず、シルバーワンは諦めたように舌打ちを吐き捨て、撃墜される。

 

町へと落ちていく戦闘機の残骸を見下ろし、『天使』は言葉を紡ぐ。

 

 

【────頭が高いぞ、人間ども】

 

 

純粋な侮蔑を剥き出しにする白い『天使』。それは考えることすらおこがましいと言わんばかりに、人類への憎悪を吐き捨てた。

 

 

【誰の赦しを得て空を駆る。ここは貴様らの領域ではない。貴様らは大人しく、地に伏して死んでいればいいのだ】

 

 

空を飛翔していた白い天使は静かに降りていくと、ビルの屋上で待機していたヒト型無人兵器の元へと近付いた。

 

 

『…………調子はどうだ?エクスシア』

 

『歯ごたえがないな、どれもこれも。人間に期待するだけでも無駄だ。私も地上を攻撃しようか、白光夜叉』

 

『────私達の仕事を奪ってくれるな、エクスシア』

 

 

《天壊機シリーズ モデルナンバー01 『戦争制圧用超高機動人型兵器』白光夜叉》

 

《天壊機シリーズ モデルナンバー05 『空域制圧用超高機動飛翔兵器』エクスシア》

 

 

◇◆◇

 

 

一方で、アメリカの首都 ワシントンD.C.の町中。無人兵器の進攻に対抗する米軍であったが、もう一つの脅威によって戦況が崩されていた。

 

 

「────HQ! HQ! クソ!通信が繋がらねぇ!」

 

「あのデカブツの仕業だろうが────ふざけるのも大概にしろよ!!」

 

 

米軍の全戦力を受けても圧倒される敵、それは巨大な機械の狼であった。球体のようなコアを顔に嵌め込まれた巨狼は、大量の戦車を蹴散らし、踏み潰しながら暴れまわっていた。

 

 

無論、ただでやられている米軍ではない。遠距離からのミサイルや自走砲による攻撃を行うが、それらは全て巨狼の背中と接続した大型機械によって撃ち落とされる。

 

 

通信すら定まらず、米軍はまともに連携も取れない。それもそのはず、背中の大型機械が放つ妨害電場によって、首都全体の通信が阻害されているのだ。

 

 

 

【───ヴオオォォォォォォォォォンッ!!!】

 

 

《天壊機シリーズ モデルナンバー03 『大国制圧用超高機動破壊兵器』 ベールウルフ&グレンデール》

 

 

戦車を噛み砕いた巨狼 ベールウルフは周囲を吹き飛ばす程の音圧の咆哮を響かせた。人類を滅ぼすという憎悪に染まった、一声をアメリカ全土に伝わらせていく。

 

 

◇◆◇

 

 

中国首都、北京では。

 

 

【────ガガガガガゴオオオオオオッ!!!】

 

 

高層ビルに匹敵する巨体。地面を這うような異形が町を突き進みながら、周りの全てを巨大な口で呑み込んでいた。口のような形状の大型吸引装置と掘削破壊装置によって、どんな物体も粉々に砕きながら暴れ続けていた。

 

 

「ダメだ!ミサイルでは倒しきれない!もっと戦力を集めるんだ!」

 

「無理だ!集めたところで、ヤツに吸われるだけだ!それに、敵はヤツだけではない!」

 

 

突き動く巨大兵器は自らの接続した大型ユニット兼工場によって無人機を生成し続けていた。虫のような形状の無人機が巨大兵器を護衛し続け、中国の軍は手も足も出ずにいるのだ。

 

 

《天壊機シリーズ モデルナンバー02 『大陸制圧用超高機動壊収兵器』 トウテツ》

 

 

残骸となった町を喰らい続ける巨大兵器 トウテツは足を止めることはない。まだ腹が満たされないのか、悪食の巨大兵器はあらゆる物体も生命もまとめて呑み込もうとしていた。

 

 

◇◆◇

 

 

イギリス近海。

そこに集められた多くの艦隊 イギリス海軍の全戦力は、海洋に浮かぶ大型兵器への攻撃を繰り返していた。

 

 

巨大な水のような半透明な球体を包み込む、三体の機龍。海蛇のような機体は、球体の表面を滑り続けながら、艦隊へ反撃を行っていた。

 

時折、一体の機龍が首を上げ、水の塊を砲弾として吹き出す。それは空高くまで飛んでいき、イギリス本土の街を消し飛ばす。

 

 

《天壊機シリーズ モデルナンバー04『大海制圧用超高機動水爆兵器』バミューダ・トライアングル》

 

 

三体の機龍と球体の兵器『バミューダ・トライアングル』はイギリス海軍の奮戦を諸ともせず、ただひたすら水による破壊を繰り返していた。

 

 

◇◆◇

 

 

そして、ロシア。

寒風吹き荒れる大国を襲った無人兵器は、寒地対策用のガヘルと物言わぬ巨大な破壊者であった。

 

 

【────────】

 

 

空を飛ぶ巨大船艦。要塞とも呼ぶべき大陸規模の広さを有した戦艦は大地を覆い尽くす程の影を差し、雪と氷の大地を爆煙と破壊で覆い尽くした。

 

空を支配され、圧倒的な爆撃の数々に、ロシア軍は抵抗すら許されず撤退するしかなかった。守るべき首都が焼き尽くされる光景を見守りながら。

 

 

《天壊機シリーズ モデルナンバー『大地制圧用超高機動戦艦兵器』パンゲア》

 

 

過去、分離した大陸の原型だった巨大大陸の名を冠する戦艦は炎に染まった街の上で浮遊し続けていた。

 

 

 

────大国の首都全てが蹂躙され、人類は八神博士のもたらした兵器と、その圧倒的な差を前に絶望することしか出来なかった。この時点で、戦争の死者は数千万を凌駕している程である。

 

 

しかし、絶望はまだ終わっていなかった。

 

 

 

 

 

 

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