IS 蒼き宙の向こうへ   作:虚無の魔術師

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アポカリプス・メモリー編今回にて終了です。


第73話 『救滅の五神姫(クインテット・シスターズ)

「────以上が、第三次世界大戦の顛末だ」

 

 

長い時間が過ぎ去ったようだった。自分達も知らぬ、本当の世界の真実を知った少年少女達は真剣な面持ちであった。一夏は姉の様子を心配そう伺っていたが、口を開いた龍夜の声に反応を示す。

 

 

「…………たった、それだけか。それだけのミスが、第三次世界大戦の原因────本当に笑えないな」

 

「そうだね。笑えない話だ。一時期は、国連の隠した事実はスキャンダル程度のものだ。彼等の組織の信用を、株価を下げるだけのものだった。

 

 

 

…………けど、博士の凶行が全てを変えてしまった。ただのスキャンダルは、大勢の命を奪う遠因へと。公表されてしまえば世界の大国が揺らぎ、秩序が崩壊してしまう最悪の真実に成ってしまったんだ」

 

 

だから、国連は必死に真実の隠蔽に尽くしてきた。その為に、真実に触れようとする者や少しでも近付いた者を消して、完全に闇へと葬ろうとした。その行い自体が、大勢の人間を殺してまで隠し通そうとした事実が、真実の重みを増やしていたということにも気付かず。

 

 

「そうして数年、国連は真実の隠蔽に成功した。博士も大犯罪者として何も知らぬ人々から忌み嫌われるように情報統制も果たした──────けど、隠蔽は完全ではなかった。真実を体現する者が、一人だけ生き延びていたんだ」

 

「────それが、八神三琴(やがみみこと)

 

 

又の名を、シルディ・アナグラム。その事実に息を呑む龍夜達を他所に、一夏と箒は黙って聞き入っていた。その事実を事前に知っていたというのもあるが、何故生き残っていたのか、知りたかったのもある。

 

穏やかに語り始めた時雨の話は、二人にとってあまりにも残酷で凄惨な事実だった。

 

 

「まず始めに、彼はテロリストに捕縛された間に酷い扱いを受けた。拷問の末に片耳を削がれ、姉がなぶられる光景を、母が切り刻まれる光景を見て、まだ幼かった八神三琴は発狂した」

 

「…………ッ」

 

「極めつけには救護に来たかと思った瞬間の爆撃。自分が殺されそうになったという事実から、生き残っていたはずの姉が殺されたという事実が、彼は心に深い傷を受け、精神は完全に破壊されてしまったんだ。─────けど、彼は生き残った。直前に助け出されたんだ」

 

 

二度も見た、シルディの発狂。

アレは彼が体験した忌まわしき過去がフラッシュバックしたのだろう。大事だった家族が傷つけられる光景を、姉が男達に襲われる光景を、作り笑いで元気付けようとした母が解体される光景も、己が一方的に痛め付けられ、耳を削ぎ落とされる記憶。

 

それは一人の少年の心を壊すには充分だった。

 

一体、彼が何をしたのか、と考えた。何もしてないはずだ、まだ子供だった彼が、そんな風に苦しまなければならないことなど、してないはずだ。

 

なら彼等は────どうすれば良かったのか。彼等はどうすれば普通に生きることが出来たのか。或いは、普通に生きることは絶対に許されないというのか。

 

 

「助けたのは、付近を訪れていたジャーナリスト達だった。彼等は拠点に放置された八神三琴を見つけ出し、救助に成功していた。ヒッソリと活動していた彼等の存在に国連は気付かず、一時期は見逃すことになった」

 

 

それこそ、隠蔽に全力を尽くした国連の失態であった。いや、誤魔化すために人員や情報を使いすぎた結果、盲点を突かれたのかもしれない。しかも、自分達の計画を密かに邪魔したのは、ただの一般のジャーナリストだとは夢にも思うまい。

 

 

「だが、救助した彼は半ば手遅れでもあった─────拷問と家族を失ったショックは、八神三琴に強い心的外傷後ストレス障害(PTSD)を生じさせていた。発狂を繰り返し、精神的に衰弱した彼を助けるために、とあるジャーナリストの夫婦はある手段を講じた」

 

 

頭を指差した時雨は、トントンと人差し指で軽く叩く。その行為は、ある事実を示していた。

 

 

「記憶を封じ込めたのさ。そして、彼に名前を棄てさせた。それは、国連に命を狙われることを防ぐ為でもあった。記憶と名を失った彼を、夫婦は自分の子として迎え入れた。シルディ・アナグラムという、名を与えて」

 

 

シルディ・アナグラムは、そうやって生まれたのだ。大犯罪者の子供としての姿や名を捨て去り、夫婦の子として第2の人生を歩むことになった。争いと無縁な、幸せに満ちた未来を過ごす─────ことは出来なかった。

 

 

「この十年の歳月、世界は大きく変革した。ISはあらゆる兵器の頂点に立ち、ISを扱える女性が優遇される社会へと変化していった。…………君達も知らないだろうが、これは『楽園の実(老人達)』が斡旋したのも原因の一つだ」

 

「は?な、何で…………国連のトップにも男はいるはずじゃないですか!普通に彼等も困るでしょう!?」

 

「前提が違うんだ。そもそも、『楽園の実』という組織自体表沙汰にされてはいない。謂わば秘密結社に近い。彼等は自分達が円滑に世界のコントロールを掴むために、女尊男卑の社会を構成させたんだ」

 

 

その結果、爪弾きにされる者達が現れ始めた。男だからと言う理由で夢を叶えられなくなる者、家族を守るために力を求める者、この社会に忌避感を持ち変革を望む者。

 

そんな人間達は男も女も関係ない、女性が優遇されると言いながらも同じ女性をも蹴落とす歪んだ権威と力の社会の革命を望む者達。彼等は一つの旗を掲げ、革命の組織へと変化していった。

 

 

「そうした世界の歪みが、革命組織 アナグラムを生み出した。彼等の目的は一つ、この歪んだ社会と世界の修復。その為に彼等は現体制の壊滅を目論み、世界中で活動を行っている。

 

 

 

最初は国連も相手にしていなかった。単なるテロリストとして処理するはずだった─────彼等がISに匹敵する兵器を強奪した事実と、組織のリーダーとして名乗り上げたシルディ・アナグラムの正体を知るまでは」

 

 

何故国連が、自分達のミスの証拠であるシルディを直接消そうとしないのか。その理由は、彼自身の存在と彼の育て親 リセリア・アナグラムが大きく起因していた。

 

 

────もし、シルディを抹殺した場合は、国連の行った所業の全てを世界中に告発する。

 

リセリアが叩きつけた要求を、国連は素直に呑むしかなかった。自分達の仕出かした罪を隠すために、罪の具現でもあるシルディ・アナグラムの存在を容認するしかなかったのだ。

 

だが、国連も馬鹿正直に従ってはいない。殺せる時に殺そうと考えてはいる。少し前の時も、負傷したシルディを確認した彼等は、確実な抹殺を優先した。────一夏や箒を巻き込んでまで、シルディを殺そうと必死であった。

 

殺してしまえば、後処理すればいいだけだ。そう考えているからこそ、シルディだけは確実に消さなければならないのだ。仕留め損なうことも、生半可に攻撃することもダメだ、確実に、絶対に殺してから─────。

 

 

「そして、君達に話すべきことがもう一つある」

 

「…………?他にも何か────」

 

「海里浩介、奴が何故織斑千冬や篠ノ之束に怨恨を向けているのか。それは、十年前の事件に関係していた」

 

 

戦争が終わりを迎えた数ヵ月頃。安定した世界は新たな波乱、ISの普及による混乱に包まれていた。最中、解離浩介は誰よりも早く暗躍を開始していた。

 

 

「────奴はISを支配しようとしていた。全てのISを、兵器としてな」

 

「……………」

 

「無論、束はそれを許さなかった。ISを独占することなど在ってはならない。アイツが従うと思っていなかった海里浩介は─────時雨理事長の兄、村雨を利用した」

 

 

千冬の話にも出てきていた『楽園の実』の人間の一人。自分達の面子と立場のために、全ての真実を隠蔽した者達とは違い、善良そのものと呼べる人物。

 

 

「村雨は、兄は憔悴していた。自分が博士に話したことで戦争が起き、大勢の国民が死に────僕も瀕死になった。僕を生命装置に入れた兄は、責任感と重圧に押し潰されそうになっていたんだ。……………それを、奴に利用されてしまった」

 

────個人が扱えるISは危険だ。誰かが管理しなければ、多くの犠牲者が増える。

 

精神的に疲弊した村雨を、海里浩介は言葉巧みに唆した。共に篠ノ之束を説得し、ISの安全を確立させようと。二人で束を説得しようとしていた─────だが、海里浩介は最初から話し合うつもりなどなかったのだ。

 

 

「奴は保護プログラムによって離れることになった箒の存在を使い、束を脅した。全てのISの制御権限を自分に寄越せ、と」

 

「…………兄はそれを知らなかった。自分が利用されていたことを、その時理解した。でも、最早手遅れだった。何もかもが」

 

 

二人の言う通り、海里浩介の暗躍は途絶えることになった。その強迫を邪魔したのは事情を知った織斑千冬────そして、行方不明となっていたはずの『ゼノス・アルザード』、それを扱う織斑数季であった。

 

結果的に、海里浩介と村雨、両名は死亡したということになった。村雨は海里浩介に撃たれ、瀕死の重傷のままで倒れ、海里浩介本人も建物の崩落に巻き込まれ死亡した、という話になっていた。

 

 

だが、当の海里浩介は生き残っていた。モザイカこと織斑数季に顔を斬られながら、奴は己の死を偽装して世の闇に潜み、機会を伺っていた。自分の邪魔をした千冬と束、そして織斑数季を殺し、世界を手に入れるチャンスを。

 

その為に、奴は旧時代の遺物すら目覚めさせた。白騎士に執着する天壊機 エクスシアを。界滅神機と兵隊を従えた奴はいずれ世界征服の為に動く時も来ることだろう。

 

 

────恐らく、海里暁は父親の本性を理解していたのだろう。心の奥底で、龍夜は確信していた。一夏達の話を聞いていて、海里暁という少年が篠ノ之箒に恋い焦がれていることは理解できる。ならば彼がそれを表に出さないのは気弱なこと以上に、父親の事を知っているから距離を取っていたのかもしれない。

 

 

(…………子は親を選べない、残酷だな。父親の悪意を理解していたから、アイツは自分の恋心を押し殺したのか。それなのに理不尽に殺された挙げ句、父親から役立たず扱いか)

 

 

一度も話したことのない相手だが、人嫌いな龍夜ですら好感を持っていた。同情ありきと言われれば否定はできないが、素晴らしい人間に変わりはなかったと思う。

 

だからこそ、彼に報いるべきだと考えている。自分の両親の仇と共に。死んでしまった彼に報いることは、最早それしかできないだろう。

 

 

話はどうやらこれで終わりらしい。これ以上語る様子のない千冬を他所に、時雨が此方をチラリと見据える。視線を向けられた龍夜は嘆息し、傍らに所有していたケース───その中に仕込まれた銀色の剣を取り出した。

 

そして、聖剣の中で眠る少女を呼び起こす。

 

 

「─────出ろ、ルフェ」

 

『────はい、マスター』

 

 

少女の声を出した銀剣は龍夜の眼前で直立すると、ホログラムの少女の姿を形成した。輝きを有した銀の長髪に蒼い瞳を有した半透明なドレスに身を包んだ、妖精のような少女は頭に浮かぶ光輪を漂わせながら、口を開いたまま呆然とする一夏達を見据え、深く一礼した。

 

 

『皆様、初めまして。私はルフェ。『救滅の五神姫(クインテット・シスターズ)』の五人目、『聖光帝剣 エクスカリバー』の名を冠する巫女の一人です』

 

 

突如現れた少女の存在に、一夏達は状況が掴めないと言う様子だった。そもそも、少女が何を言ってるかすら、理解が難しかった。

 

ただ一人、彼等と同じく事実を知らなかった千冬が顔をしかめる。不可解な考えを確かめようとした彼女は、したり顔で微笑んでいる時雨を見据えた。

 

 

「………ここまで来たということは、素直に話す気になったみたいですね。時雨理事長」

 

「僕が話す必要もない。全ては彼女が答えてくれるよ。そして、すぐにでも理解するさ────彼女たちが、博士の遺した人類への厄災であり福音だということにね」

 

 

それだけ言うと時雨は一歩退いた。これ以上自分の口から語るつもりはないらしい。不安そうに向けられた視線に、龍夜は黙って聞いてろと無言で促した。

 

ルフェと呼ばれた少女は、龍夜の無言の意思に従うように、己が何者かについてより詳しく、鮮明に話し始めた。

 

 

『私達、『救滅の五神姫』は八神博士が人工知能 Y.H.V.A.に開発されたAIです。マスターの有するこの兵装────正式名称「現界領域再神鎧装」の中核を担い、マスターのサポートをする為に存在しています』

 

「………?現界領域、最神………鎧装?ISとは違うのか?」

 

『はい、原理的には類似しますが、結論としては違います。『現界領域再神鎧装』、又の名を『神装』と呼びます。これは八神博士がISを────厳密には『ゼノス・モデル』を基盤として、大型改装を行い完成させたパワードスーツ兼多機能武装です。現在、存在しているのは五つ。『レーヴァテイン』、『トライデント』、『ミョルニル』、『イチイバル』、『エクスカリバー』です。これらの機体の目的は一つ、世界を救うためです』

 

「…………、…………っ!?」

 

「あー、ダメだね。情報量が多すぎて一夏がショートしてる」

 

 

淡々と説明されたことで、あまりの事実に一夏が混乱を極めていた。因みに箒も中々厳しそうである。

 

噛み砕いた話、クインテット・シスターズはISとは似通ってはいるものの、厳密には別の系統を辿った兵器なのだ。IS同様の機能を有してはいるが、それ以上の高性能のシステムが搭載された─────謂わば、次世代先のISなのである。

 

 

「───待ってください。では、『白銀の聖剣(プラチナ・キャリバー)』はどうなんですか? ISであると聞いていましたが、あれは嘘なのでしょうか?」

 

『いえ、嘘ではありません。但し語弊があります、ISであるのは盾と鞘の部分であり、エクスカリバーである剣が「白銀の聖剣」のコアの役割を担っています。これは篠ノ之博士が、私の存在を周囲から隠蔽する為に施した処置です』

 

 

白銀の聖剣(プラチナ・キャリバー)』とは、『救滅の五神姫』の一機であるエクスカリバーを隠すための簑であった。しかしそれは単なる嘘の情報ではなく、篠ノ之束が一から作った擬装する為のISなのだ。

 

剣の正体を鞘によって隠す、中々に面白い発想だ。八神博士が開発した兵器を解体せずに隠蔽したいという束の考えなのだろう。だが、それと同時にもう一つの疑問が生じる。

 

 

「篠ノ之博士が隠したということは、エクスカリバーは───いや、『救滅の五神姫(クインテット・シスターズ)』はそれ程まで強大な兵器なのか?」

 

 

その事実を脳裏に思い浮かべたラウラの疑問に、ルフェは落ち着いた声で答えた。

 

 

『はい、『救滅の五神姫』は『幻想武装(ファンタシス)』、『伝説幻装(エンシェント・レガリア)』を計画した『神話鎧装計画』の最終到達地点でありました。無から有を発生させ、概念にすら干渉する機能を有しています』

 

『「レーヴァテイン」であれば炎を、膨大な熱を発生させることができ、一時的ではありますが太陽に匹敵する熱量の増幅と放出が可能です。「トライデント」はナノマシンを使用せず、周囲の水を吸収して操る────或いは大量の水の生成を。「ミョルニル」は世界規模の電力の生成及び収束。「イチイバル」は地球の反対側までの精密狙撃、風による天候の制御。────そして、「エクスカリバー」は無尽蔵のエネルギーと周囲の物質をエネルギーに変換する機能、何よりあらゆる物質を破壊する光を操ることが出来ます。

 

 

これらの機能を有している以上に、『救滅の五神姫』は界滅神機の起動と制御が可能です。これらの機能から理解できるように、『救滅の五神姫』は世界規模の力を想定した上での開発が行われています』

 

 

規格外、なんてものではない。

ISに類似するとは是が非でも言えない。ISが兵器であるなら、これは核兵器以上のものだ。一国が一つ所有しただけで、世界を支配できると断言できる程の。

 

 

「でも、待ってくれよ。それじゃあ意味ないんじゃないか?『救滅の五神姫(クインテット・シスターズ)』は世界を救うための兵器だろ?悪用されたらどうするんだ?」

 

『既に対策はされています、その為の巫女────自我を持つ私達の存在意義なのです。悪意ある者の手に渡らぬように、自分の意思で適合者を選びます。そして、一度適合者を決めた場合、生体コードが刻まれますので他人が無理矢理扱うことは不可能です』

 

それこそ、自我を有する巫女を搭載した理由だろう。彼女たちが悪意のない善良な人間を選び、適合を行えば悪意ある者の手に渡ることはない。適合も、彼女たちの意思がなければ出来ない。何より、無理矢理強奪することも叶わない。

 

 

『ですが、ただ一つ。選ばれなかった人間が私達を扱うことが出来る方法があります』

 

「…………それは、一体」

 

『適合者を殺すことです。その場合生体ロックは機能せず、適合者の上書きが可能になります。そうして、適合者を自分へと書き換えることで、『神装』を扱うことが出来るのです』

 

つまり、殺して奪え、と。巫女たちに選ばれた若者を殺して、世界を支配できる力を自分の物にしろということなのだろう。だが、疑問が生じる。博士がそんな真似を強制させるような人間だろうか。

 

 

「────そういうことか」

 

 

だが、龍夜はその意図を理解した。独りでに呟いた青年に、皆が説明を求めるように見つめる。仲間たちの視線を受けた龍夜は軽く頭をかきながら、己の考えを語り始めた。

 

 

「八神博士の目的────それは人類という種の可能性を確かめることだ」

 

「………?博士が、人類の可能性を?どういうことだよ?」

 

「────博士は人類に絶望していた。でも、教え子のいる世界を信じようとも考えていた。だからこそ、人類の可能性を試す兵器を作ろうとしたんだ。世界を支配することも可能な兵器を。

 

 

それが一般人の手に渡ること自体問題じゃない。重要なのは、国や国連が取る選択だ。彼等の意思を尊重するか、奪って自分達の物にするか。博士はこの時代に、人類の可能性を選定するというのさ」

 

八神博士が憎んだ世界は、利益のために少数の人命を犠牲にし、己の不利益を隠蔽する世界だ。ならばそれが少しでも変わっていたら、『救滅の五神姫』の適合者たちが害されることはないだろう。

 

しかし、博士が憎んだ世界が変わっていなければ、利益のために適合者たちを傷付けるはずだ。そうなってしまえば、適合者たちは本格的に抵抗を示す。結果、世界は戦争に近い状況になることだろう。

 

 

八神博士は、それを理解した上で彼女たちを作ろうと決意したのだ。数年後の人類が、力だけを奪おうとする愚かなものではないと信ずるために。彼等に破滅とも呼べる福音を、もたらしたのだ。

 

 

「────実際に、『神装』を手に入れようと考える奴等はいた。ソイツらは沈黙状態の『レーヴァテイン』の適合者を探し出そうとしていた」

 

 

恐らく起動だけさせて、殺して奪うために。

アナグラムから離反したテロリスト『レヴェル・トレーター』の行っていたことを思い出した龍夜は淡々と告げる。彼等の目的は『救滅の五神姫』を手に入れることだ。いずれは、自分達もぶつかることだろう。

 

 

「────だからこそ、君達には極秘の命令を下す。他、四機の『救滅の五神姫(クインテット・シスターズ)』、その適合者を保護せよ。抵抗するなら、武力行使も許可する。

 

 

 

他の勢力全てが、彼等の命を狙う可能性すらある。君達は何としてでも彼等を保護してくれ。世界のために、何よりこの平和のためにも!!」

 

真剣そのものと言える表情の時雨理事長の頼み。代表候補生たち一同はより一層気を引き締める。自分達が成すべきこと、世界の真実を知った少年少女たちは自分達の世界を守るという決意を、より深めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




次章予告


『残火継焔』編、次回開幕です。
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