第74話 『
「────着いたな、それでは事前に確認を行う」
バス、というよりも大型の装甲車。外部からの攻撃を防ぐ耐久性を有した戦車に近い車の中で、千冬は席に座した一夏達へと呼び掛ける。緊張しながらも気を引き締める一夏や箒、二人とは違い気を緩ませることない龍夜たち、代表候補生。
「堅いねー。皆、あんまり力まなくても良いんだよ?相手はISじゃないんだし、リラックスしていこうじゃないか」
そして、千冬の隣の座席でゆったりとした教師
コホン、と咳き込んだ千冬が再確認を行う。それは少し前に聞いた任務についての情報と同じものだった─────
◇◆◇
「早速だが、君達には新しい任務を頼みたい」
世界の真実を教えられてから翌日、集められた一夏たちを前に時雨理事長はそう告げた。一夏たちと同年代、少し幼い少年は少し困ったような顔を浮かべている。
「まず任務の場所を話しておきたい。君達が向かうべき場所は─────『
「な───っ!?」
反応したのは、一夏や箒、龍夜を含めた日本人であった。各々の感情を顔に浮かべた彼等の様子とは裏腹に、外国人であるセシリアたちは意味が分からないと怪訝そうな様子だ。
それも無理はない。なんせ『
「『
「─────日本国内で唯一封鎖された地区だ。法も存在しない無法地帯とされている」
そう明言されているということは、実際に法が適用されない事態があったことを意味する。何より、平和な時代がよく聞かれる日本で、そんな単語を聞くこと自体が始めてだった。
ただ事ではないと理解した外国出身のセシリアたちに、時雨理事長がその地について、事のあらましについて詳しく語り始める。
「…………十年前の第三次世界大戦で、その地区は無人兵器と軍の激しい戦いの被害を大きく被った。地中等に不発弾が埋まっている可能性も考慮され、国によって正式に封鎖される予定だった」
無人兵器と人類の戦闘は激しく、守るべき町を破壊し尽くしてようやく撃退出来る程であった。その結果、町は最早修復できない程に破壊の残骸にまみれ、人間の住める場所では失くなってしまった。
だが、完全に封鎖される前に、一悶着起きたのだ。
「しかし、数年前。ある者たちがその土地で学校を再開させた。そこに集まった大勢の子供がその地区へと集まり、学校で暮らしていた」
「何故、ですか? 不発弾があるのは正式に公表されていたはずでしょう? それに、一般人が立ち入ることを国が許す訳が────」
「認可は既に取られていた。そんな危険な場所で学校が機能していたのは、時代の影響があったんだ」
忌々しい、と嫌悪感を口の中で含む時雨。少年は淡々としながら、己の知る背景を口にする。
「君達は、この時代になって女性が優遇されるようになったことは理解しているだろう? 当時は今よりも酷いことになっていた。男は女よりも社会的な立場は下、そんな考えがより強く浸透していた社会では差別も露骨なものになり、学校は女子を優遇するものばかり────悪いことに、男だからという理由で進学できず、高校にも行けない者も居たくらいだ」
今現在は、これでもマシなのだ。ある程度社会が落ち着いたのは時間経過によるもの、当時はもっと過激だった。
ISを扱える女性だけが学校に通い、男は社会奉仕に徹していればいいという意見すら出ていたくらいだ。当時テレビで熱心にそう訴えていた女性議員の姿に、龍夜は嫌悪と侮蔑を覚えたことは忘れられない。
「中でも問題になったのが、子供の放任さ。そういう社会の空気が広がったことで、親が子供を捨てるという行為も流行した。その結果、親に捨てられ、学校にも通えない孤児───『
数年前、それが社会問題となるほどの事態を引き起こした。
「行き場の失くなった子供たちが増えていき、国が対応に困っていたところに、何人かの大人たちが動いた。純粋に子供たちのことを案じた彼等は、行く宛のない子供たちの学舎を利用したいと提案し始めた」
「それが、さっきの学校のこと………ですよね?」
「ああ、ボランティアとして一部の大人たちは子供たちの為の学校を作ろうとして居た。だが、世間はそれを許さなかった。女尊男卑の風潮かな、いや発展途上のこの国にはそんな学校を建てる余裕すらない────いや、過激な女性たちの反対が多く、認められなかったのが事実だね。困った彼等は苦渋の決断として─────封鎖された地区の学校を利用することにしたんだ」
子供たちを放ってはおけない、善良な大人たちの苦肉の手段であった。危険地帯であるが、過激な女性たちもそこであれば文句を言わないだろう。そう考えた彼等のやり方は正しかっただろう。
丁度、一年が過ぎた頃合いまでは─────。
「しかし、政権のトップになった女性議員───女尊男卑思想を持ち、世論の支持率を第一としていた女性議員の一人が、ある議題を持ち上げた。
彼等のいる地区を、『
差別思想に支配された上級階級が立案した、最悪な議題であった。親に棄てられ、存在価値の失くした子供たちを危険地区に隔離するという最低の発想。本来、大人は子供を守り、導くものであったはずだ。なのに、支配者としての優越が、社会の上に立ったという者達の傲慢が、普通であれば許されぬことを言い出したのだ。
そして、社会はそれを容認してしまった。
「当初、世論は賛成の流れが強かった。戦争への恐怖心と社会の空気に賛同するしかない状況が、同調圧力として子供たちを追い詰めていた。結果、学校にいた大人たちも殆どが急いで逃げ出し─────子供たちは、『
大人たちは逃げ出して、子供だけが隔離された。親のいない子供が社会問題であったから、その地区に集まった彼等をまとめて閉じ込めた。そこにあったのは世論のような、危険因子を排除したいというものではない。
自分達よりも圧倒的に立場の下の者を、自分達の近くから遠ざけたに過ぎない。生ゴミを別の場所へと投棄するように。
「なにそれ…………ほんと、笑えるわ」
「…………鈴」
「自分達で見放した子供たちを、邪魔だからって隔離したわけ。どんだけ自分勝手なのよ、大人たちは────ふざけんじゃないわよ!!」
少なくとも、全員が鈴音と同じ感情だった。そんな議題を持ち上げた大人だけが悪い、とは完全に言い切れない。誰もがそんな状況下にあった子供たちを助けず、見放した。そんな大人たちにも責任はある。
「封鎖されて数日、時間だけが過ぎ去る中、『
閉じ込められた子供たちにとって、大きな転機となることがあった。それはただ隔離される彼等にとって、希望を見出だすものであった。
「区の地下に工場が存在していたのさ。その当時まで稼働し続けていたそれは、八神博士が開発した無人兵器の拠点かつ量産用の工場として開発されていたんだ」
「…………っ」
「学校に通っていた上級生の一人が、政府にコンタクトを取った。量産されている無人兵器と交換に、自分達の生活を安定させたい、と。彼等は開発された無人兵器を国に引き渡し、食料等を受け取り、数年間その地域で過ごすことが出来た」
────凄いな、と一夏たちは素直に感心した。普通ならば、その兵器を使って自分達の安全を保障させるはずだが、彼等はそれよりも先に政府と取り次いで温厚に事を進めた。
まだ子供であった彼等の頭に過激なやり方は浮かばなかったのかもしれない。しかし、彼等にまた困難と呼ぶべき悲劇が降りかかった。
「だが、その事実を何処からか知った企業があった。『クインス・コーポレーション』、世界有数の兵器開発企業であったその企業の女社長は『
博士の無人兵器を商品として求めた『クインス』は『
大手の兵器企業『クインス・コーポレーション』がそこまでの荒事を起こしたのは明確な理由があった。会社の利益が落ちている、そして会社の立ち行きが危ういという事態が起きていたのだ。
軍事産業の大半を統括していた『クインス・コーポレーション』は、ある日ライバルとなる企業『エレクトロニクス機社』と競合することになった。
女性権利団体の幹部でもあった女社長は、エレクトロニクス機社社長 アレックス・エレクトロニクスを勝手に敵視し、彼を失脚させようと汚い手段を多用した。結果、彼女の目論みは果たされず、あろうことかその事実を証拠に弾劾された彼女の企業は『エレクトロニクス機社』に莫大な賠償金を支払い、会社の評価も大きく迷走することになった。
その逆転のため、彼女は仲間から教えられた『
数世代も発展した無人兵器を手に入れ、競合相手であるエレクトロニクスに打ち勝つと。たとえ、どんな手荒な真似をしてでも。
「結果、多くの子供が負傷し───────彼等を束ねていた一人の少女が死んだ。政府とコンタクトを取っていた、リーダー格でもあった子だ。自分達に降りかかる理不尽、そして彼女の死を引き金に─────子供たちは兵器を使い始めた」
国も誰も守ってくれない、そう判断した子供たちは、兵器を扱うことを決意した。工場で量産された無人機と、自分達の扱える武装を手に入れた彼等はすぐに『
まだ幼い子供たちは年長者であり、今まで自分達を導いていた者へと従うようになった。その統率は殆どの子供たちへと浸透し、最終的に彼等は軍隊のような組織へと編成されていった。
「三人の学生が子供たちを率い、量産された兵器と無人機を使い武装蜂起を開始した。彼等は自分達を『レイヴン・レギオン』と名乗り、『クインス』との全面戦争を宣言した。それが、今現在『
同じ日本で起きているとは思えない、戦いに満ちた地区の話だった。政府はその地区に法は存在しないと認定したのは、二つの意図がある。
一つは女議員の、子供たちを殺して地区を奪ってもいいという考えのもと。もう一つは子供たちに抵抗する機会を与えようという、一部の善良な者の考えによるものだ。
これによって、『
「…………まさか私達にはその『レイヴン・レギオン』を鎮圧させるのですか?」
「そんな真似を僕が、君達にさせると思うかい?」
いつもは穏やかに笑っている理事長が笑みを消して告げた。同じ子供であり、理不尽に追い詰められた被害者達を、自分の教え子達の手で倒すことなど絶対に有り得ない。いや、あってはならない。そう明言するような表情を浮かべた時雨は、ふとにこやかに笑ってみせる。
「少し前から、『レイヴン・レギオン』のトップが国連に通信を送っていた。彼等の目的は、自分達の『自治権の確立』。謂わば、『
「そ、それって────」
「今日の朝 07:30を以て、僕たち『
つまり、国連は武装した子供たちの味方をすることにしたのだろう。それが善意ではなく、兵器が目的という点に目を瞑れば称賛ものだが。
「…………護衛?それなら他の軍を動かせば───」
「それが叶わない事態なんだ。他の国の軍部に良からぬことが起きているらしい。偶然とは言い難いが、他の国も警戒して軍を動かせない事態にある。学園の発言力を維持するためにも、僕たちは率先して動く必要があるんだ」
学園が動くこと自体、立場を向上させることが出来る。大きく活躍をしていけば、IS学園に外部からの干渉すら許さぬほどよ発言力を有することが出来るだろう。
「君達には引率として二人の教師に付き添って貰う。─────織斑先生と、霧山先生。受けてくれるね?」
「無論です」
「分かってますよ。生徒だけに向かわせるほど身勝手な教師じゃないですから」
後ろに並んでいた千冬と友華が同時に答えた。千冬は兎も角、友華が引率になるとは珍しい。彼女の世話になったことも少なくない一夏は感心しながら周りを見る。鈴は自分の担任と一緒に行動できることに嬉しさ半分戸惑い半分という様子だった。
幼馴染みの一人から目を離した一夏は、ふと険しい顔をした龍夜の様子に気付いた。何かを考えているのか、険しい顔で何かを睨んでいた友人に、一夏はふと疑問に思う。
しかし、彼は一瞬で表情を切り替え、いつもの様子のまま振る舞っているのだった。
◇◆◇
「………ここが、『
装甲車から降り、封鎖された区域への足を踏み入れる。張り巡らされた壁は内側にいる子供たちを閉じ込めるように並んでいた。
封鎖されているといわれながら、扉は開け放たれている。封鎖とは言うのは表向きであり、『クインス』が自由に立ち回れるように動けるようにしているのだろう。
そのゲートから立ち入った瞬間、冷たい雰囲気が肌を伝う。少し前に戦いでもあったらしく、火薬の匂いが辺りに充満している。
元々町だったのだろう商店街の街並みは爆撃を受けたような残骸の山と化していた。人の生活の痕跡すらない。それは十年前の戦争と、今起きている戦いによって消し去れてしまっている。
「…………話に聞いていた以上に酷いな。本当に人の住んでいる地域なのか?」
ラウラの疑問に答えられる者はいない。皆が予想していたよりも、状況は酷かった。紛争地帯と言われた方がもっと納得できる。周りに人の死体がないことが不思議なくらいだ。
少しの間歩き続けていると、龍夜とラウラが個人通話を繋げ合う。
『────龍夜』
『分かっている。俺達、視られているな』
歩いている最中、二人は残骸の中から自分達を見る視線に気付いていた。カチカチと小さな灯りが点滅し、それが周りへの合図として伝わる。前を先導していた一夏と箒が緊張を払拭しようと話している最中─────龍夜は二人を突き飛ばした。
【────CONNECT ON】
学生服の中に着込んでいたISスーツを展開し、龍夜は『白銀の聖剣』の鞘を左腕のガントレットへと装着する。プラチナ・キャリバー ナイトアーマー・フォーム。騎士鎧の姿に身を包んだ彼は大盾を身構えると─────炸裂した狙撃を受け止めた。
遠くの高台からの狙撃だと把握した龍夜は、内蔵していた外付け武装の一つ────装甲可変機銃・壱式を取り出す。背中のユニットと盾にケーブルを連結させ、エネルギーをチャージした機銃を変形させ、此方を狙った敵のいる高台を狙撃する。
ビーム弾が直撃し、崩落していく高台から意識を反らす。狙撃を行った相手は死んではいないが、恐らくマトモに動けないだろう。そう判断した龍夜は、唖然としている二人を見下ろした。
「さっさとISを纏え────敵襲だ」
慌てた様子で一夏と箒がISを展開する。既にセシリア達はISを展開を終え、各々の武装を身構えていた。唯一無防備な千冬と霧山はお互い狼狽える様子もなく、一夏と箒によって庇われていた─────本人たちは守られる必要など毛ほども感じていない様子だが。
その直後、残骸の向こうから何かが動き出した。無人機だろうか、砲台を搭載した二足歩行のソレが何体も現れる。航空用ドローンタイプの無人機も、同じように空を覆い始めていく。
ふと周囲へ意識を戻すと、何十人の武装兵士が集まっていた。白い仮面のようなヘルメットバイザーを装着し、軽武装な少年兵たち。しかし、侮ることはなかれ。
機関銃やアサルトライフル、鉈のようなブレードに盾など。戦力は普通の軍隊よりも過剰なくらいだ。
『─────外部の人間が、見放された大地に何の用だ』
『レイヴン・レギオン』、黒鴉の一帯。
武装した少年兵達のトップらしき人物が合成された声で問い掛けてくる。しかし、その声音には凄まじい敵意が滲んでいた。対応を間違えば、今すぐにでも襲いかからんとする勢いだ。
一気に緊張が走る一同。しかし一際落ち着いた千冬が、前へと踏み出し、言葉を投げ掛ける。
「IS学園所属の織斑千冬だ。我々は敵ではない、味方だ。お前達の援護の為に派遣された」
ザワッ、と彼等がどよめきが漏れる。IS学園、そして『地上最強』の織斑千冬。彼女の存在を認知した彼等から一瞬だけ警戒が緩む。
『────嘘だッ!!』
しかしそれも一瞬。一人の少年兵が張り詰めた声を響かせる。声を上げた一人は千冬たちを指差し、大声で喚き散らした。
『アイツらもそうやって、俺達を騙してきた!政府からの援助だって言って─────信用してた俺達を攻撃してきたんだ!そいつらもきっと「クインス」の手先だ!また俺達を殺しに来たんだ!!』
「ッ!千冬姉はそんな奴等とは違う!!─────いッ!?」
反抗的に怒鳴り返した一夏。感情的に動いた弟を拳骨で静めた千冬は、冷静な態度を崩さず、落ち着いた声で呼び掛ける。
「我々は『クインス』の人間ではありません。IS学園はあくまでも中立、一企業に利用される道理はないので、安心していただきたい」
『…………私は幹部ではない。侵入者を迎え入れる権限はないが、条件がある』
「それは?」
『─────今貴方達の纏っているISを解除し、全て此方に引き渡して貰おう。それが貴方たちを入れる条件だ』
それはつまり、戦う手段を棄てろと言うことになる。彼の言うことに従うわけにはいかない。ISを失った学生は何も出来ない生身の人間へと変わる。それに、ISを奪われた自分達に危害を加えてくる可能性もありうる。
「…………それは不可能だ。ISの価値は貴方たちも理解していることだろう。安全の証明とは言え、全てを引き渡すことは出来ない」
『─────ならば交渉決裂だ。君達には大人しくここから立ち去って貰う。それが嫌だというなら、ここで徹底抗戦しても構わないが?』
会話をしていた兵士が手を挙げると、他の兵士たちと無人機が一斉に身構えた。咄嗟に候補生たち全員も各々の武器を構える。硬直状態、いや一触即発といった状態が何秒か続いた──────その瞬間。
「待て待て待て待て!止め、止め!撃ち方止め!や、撃ち方ちゃうわ!構え止めや!─────止め言うとるやろ!さっさと止めんかい!アホォ!!」
慌てた様子で兵士たちを呼び止める声が後ろから聞こえてきた。若い男の声を聞いた兵士たちは慌てた様子で構えを解く。その理由は単純、兵士の一人が飛び膝蹴りを受けて吹き飛ばされたからだ。
ゼェ、ゼェ、と荒い呼吸を整えたのはフード付きのパーカーを着込んだ薄い灰髪の青年だった。他とは格段に立場が違うのだろう。彼が人混みをかけ分ける必要もなく、兵士たちが道を開いたのだから。
『フユキさん!?何故ここに───いや、ここは我々が対応しますので─────』
「アホ!ソイツら本物や!サクラが呼んだ外部からの増援やっちゅうねん!」
『さ、サクラさんが────!?』
大声でガーッ! と兵士たちを叱り飛ばす青年。しかし取り残されたように立ち尽くしていた千冬が軽く咳き込んだことで、彼も慌てて彼女の元へと駆け寄る。
「ホンマすんません!うちの舎弟たちが勝手な真似をしてまい─────」
「いえ、此方こそ。…………それよりも、貴方が話に聞いていた『レイヴン・レギオン』の幹部 フユキ・スイゲツで間違いありませんか?」
「……………そうです。自分が、フユキっす。出来の悪い後輩たちのやらかし、ホンマすんません」
関西弁が目立つ灰髪の青年────『レイヴン・レギオン』を動かす幹部の一人 フユキ・スイゲツが深く頭を下げる。思わず驚きを隠せない一夏たち。組織を設立し、武装蜂起を行った主要人の一人とは到底思えない。
だが、自分達にはそう見えないだけで組織を束ねる人材の一人なのだろう。彼が動いたとき、部下である兵士たちは文句や不満を一つも見せなかった。向けられるのは、一夏たちへの疑心暗鬼の視線だ。
「アイツらのことに関しては後で色々と詫び入れますわ。ホンマに、こっちは助けて貰う立場なのに…………」
「その件はもう大丈夫です。そちらとしても、色々と話しておきたいでしょう。場所を移しても良いのでは?」
「敬語の必要はないですよ────此方も止めるからな」
「そ、そうすか………………なら、こっちも遠慮なく」
千冬の様子を伺うように丁寧な態度で受け答えしていたフユキだが、彼女が通常の様子を保っていると理解した途端、肩の力を大きく抜いた。
「いやぁビビるわ。まさか地上最強がIS操縦者六人、七人も連れてくるとか、最初は戦争仕掛けに来たと慌てたんやで?」
はぁ、と本心からの一息を漏らす。
軽く頭をかいていた彼は一夏たちに背を向けると、気負う必要もなくなり気楽な態度で彼等に声をかけた。
「着いてきい。自分らの拠点に案内したるわ」
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