IS 蒼き宙の向こうへ   作:虚無の魔術師

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第78話 海王流槍トライデント

『─────状況を伝える。先程、「隔絶区域(コードレス・エリア)」外周区に配備された観測装置と対空兵器全てが破壊された』

 

 

ISを展開して飛び出した一夏達。別行動していた鈴音とも合流し、上空を飛翔する少年少女達はオペレートをする千冬達の声を真剣に聞き入っていた。

 

 

『破壊される直前、侵入者と思われる存在を補足した。敵は一人。外周区に侵入して五分以内に全ての対空兵器し、今現在外周区にて送り込まれた無人機数百体と交戦────一分で全滅させた』

 

 

外周区に存在する数十の装置の破壊。意図も容易く行ったとしても、ISを扱ってない生身の人間に実現できるとは思えない。しかし、現実は現実。どれだけ疑おうと、目の前の事実が変化することはない。

 

 

『………撃破される前に無人機から送られた情報があります。敵は一人ではなく、複数と名乗っていました。そして、敵の名前はミナト。傭兵団 アルスターを率いていると口にしていました』

 

「傭兵団、アルスター?」

 

『─────最近名を馳せてきた傭兵グループや。何処の組織や国も所属しとらん、大金さえ積めば仕事をこなす何でも屋って話は広まっとる…………話によれば、国の依頼でマフィアとかを壊滅させたらしいで』

 

 

傭兵団。アナグラムとは違う、存在に思うところがある一同。傭兵団ということは仲間がまだ大勢いるのか、と思う一夏だったが、千冬が話し出したことで意識が引き戻される。

 

 

『ミナトは今現在、外周区東エリアで確認している。無人機による防衛で時間は稼げているが、今すぐ限界になりかねん。早急に向かい、奴を撃退しろ』

 

「────了解!」

 

『………分かっているとは思うが、敵は一人で無人機を屠れる程の実力者だ。気を抜くな、全力で相手をしろ』

 

 

そうした千冬の指示を受けた時には、彼等の目線の先で爆発が生じた。その場所へと降り立った一夏達は、砕け散った無人機を周りに散らした青年が立ち尽くしていた。

 

 

「───おっ、やっと強そうな奴等が来たか。しかもIS、いいね。退屈しなさそうだ」

 

「お前が、ミナトだな!?」

 

「おうよ、その通りだ。そういうお前が織斑一夏だろ?そして横にいるのが蒼青龍夜…………その他諸々。エリート様々だな」

 

 

七体のISに囲まれても尚、ミナトの顔に焦りや警戒は見られない。むしろ面白いと言わんばかりにやる気に満ちている。ミナトへの警戒を緩めない一同に、少し物静かな龍夜が重い口を開いた。

 

 

「…………お前ら、気を付けろ」

 

「分かってる。見た感じ、ただ者じゃないってのは理解できるさ」

 

「違う。奴のあの槍─────『神装』だ」

 

 

淡々と語る龍夜の言葉に、全員が驚いた。神装、それは八神博士が人類の選定の為に開発させた福音。世界を救うことも出来れば滅ぼすことの出来る、ISを超えた最強の兵器だ。

 

龍夜の持つエクスカリバーを除けば、存在するのは四機。目の前の男 ミナトが操るのは四機の内の一つ────、

 

 

「ミナト、お前のその槍は『海王流槍 トライデント』だろ」

 

「………へぇ、誰かと思えばコイツの事を知ってんのか。まさか、お前もか?」

 

「────エクスカリバー。それが俺の神装だ」

 

「ほぉー、アスナから聞いていたが、こう簡単に会えるとは、世界も広いなぁ。…………あぁ、アスナってのはトライデントの中にいる相棒だ。中々にシャイな奴なんでな、人前には滅多に出てこないんだ。そこは勘弁してくれ」

 

 

カンカン、とトライデントで肩を叩きながら言うミナト。腰に手を添えるという、余裕しかないその姿に、一夏達はより気を引き締めるしかなかった。

 

 

「本題に入る────俺達に同行しろ」

 

「危険だから隔離するってか?…………御免だな。オレ達は自由がモットーでね。他の大人や組織に管理される気は更々ない─────それに、オレは今仕事で来てるんだ。同行はその後で」

 

「仕事?仕事ってなんだよ!」

 

「ここの連中の掃除だな。大人しく逃げるんならそれで良いんだが、抵抗するんなら手荒にやるしかねぇよなぁ?」

 

「…………交渉決裂、みたいだな」

 

「そういうこった。まぁ、こっちもそういう立場だから、そろそろやらせて貰おうか」

 

 

トライデントを手の中で回し、片手で握り直す。白蒼の三叉槍を振り払うと共に槍から撒き散らされた水が、足元に水面となって広がる。もう片方の手を前に突き出し、顔を覆うように翳す。

 

 

「─────神装、展開」

 

 

告げると共に、ミナトは足元の水を跳ね上げるように槍を振り回す。飛び散った水が空中で制止し、一斉にミナトの全身を包み込む。透明な雫が装甲へと変わり、蒼と白の神装が完全に展開された。

 

 

「アレが…………神装」

 

 

皆が息を呑む。龍夜の持つエクスカリバー同様、ISを進化した兵器。その真価を発揮する、強化外装を展開した戦闘フォーム。実際に目の当たりにして、誰もが更に気を引き締めた。

 

そんな中、両手で槍を構えたミナトが声高らかに宣言する。

 

 

「 さぁ、構えな!戦いは既に始まってるんだぜ!」

 

槍を振り払い、足元の水を全てを吹き飛ばす。空中に舞う水の雨が降り注ぐ中、ミナトは勢いよく一夏達へと突撃していくのだった。

 

 

◇◆◇

 

 

水飛沫が、盛大に飛び散る。

長槍が振るわれ、叩く度に大量の水が溢れ出す。宙を舞う水は散弾のように炸裂し、周囲のものを破壊していく。

 

 

あまりにも厄介、動くだけで迂闊に近寄れない。それがミナトに対する全員の評価だった。最初に斬りかかった一夏も、シールドエネルギーを水弾と水の斬撃によって大きく削られたのだ。

 

箒と龍夜が同時に左右から迫る。双刀と大盾に長剣。二つの得物による攻撃を、ミナトはトライデントを勢いよく振るい、纏めて弾き返す。槍に覆われた水が斬撃として遅れて二人に炸裂する。

 

 

「くっ!」

 

「…………ッ」

 

(更識楯無のミステリアス・レイディとは違う!コイツ、ナノマシンも使わず水を操ってやがる…………どんな原理でだ!?)

 

 

槍による攻撃に上乗せされた水の刃。衝撃にして数倍、威力にして砲弾クラスのその攻撃は、接近を許さない圧倒的な破壊の暴力と化していた。

 

 

そして、皆が戦術を切り換える。龍夜と箒の二人が弾かれてすぐ、ミナトも大きく吹き飛ばされた。鈴音の『甲龍』、唯一の飛び道具────衝撃砲が直撃したのだ。

 

 

「イテテ……何だ今の、見えたかったぞ?」

 

『─────』

 

「………ふぅん、衝撃を飛ばす武装か。砲身まで見えないとなると、少し面倒だな。それに数人遠距離のヤツもいる。衝撃砲は兎も角、他のヤツは流石に一人じゃ難しいかな」

 

 

廃墟に突っ込んだはずのミナトが、自分の扱うトライデントに語りかける。会話するように言葉を交わした後に、トライデントを矛先を変形させる。槍の中から放出した大量の水を槍先に渦巻かせながら、空へと突き上げた。

 

 

「10%、で行こうか─────『空域海雨(アマグモ)』」

 

 

螺旋を描く水を空へと撃ち出したミナト。上空の雲の中へ消えたかと思うと、周囲の空の雲が増え始め、大雨が降り始める。

 

土砂降りのような雨により、周囲一体に水が溢れる。その水面を槍で叩くと周囲に波紋が伝わり────それは離れた場所で複数の波紋となる。

 

もう片方の手から三つの水の宝珠を出現させ、ミナトは波紋の中へと放り投げた。水中に沈むことなく漂った宝珠を、周囲の水が覆い始める。形を変えていく大量の水の塊は────全身鎧の兵隊のような姿となっていた。

 

 

海乱水機兵(シーランゾック)、遠距離のヤツを狙ってけ」

 

 

ミナトがそう命じると、三体の海乱水機兵(シーラン・ゾック)がフラリと揺れる。人形のような動きに気を取られた瞬間、弾けるように駆け出した。洪水に包まれた水面を走る水の人形を迎撃しようと、一夏が雪片弐型を振るうが─────白い一閃は水の人形を綺麗に滑り、通り過ぎた。

 

それだけではない、絶句した一夏に正面から突っ込む海乱水機兵(シーランゾック)。雪羅により受け止めようとするが、その腕すらも透き通り、一夏と白式を透明のように抜けていった。彼等の手段は、距離を取っていたセシリアやラウラ、シャルロットに固定されている。

 

 

「─────シャル!セシリア!ラウラ!」

 

「大丈夫!一夏達は、本体の相手をして!」

 

「────お仲間の言う通りだぜ? 敵を前に余所見は禁物だろーが」

 

 

咄嗟に叫ぶ一夏、その至近距離まで近付いてきたミナトが笑いながら告げる。振り返ろうとした時、一夏の視界には流水を纏う藍槍が振り上げられていた。

 

ザパァンッ!!! と、瞬時加速により離脱した一夏の目の前で、地面が、空間が破壊された。槍による一振、それに合わせた大量の水の質量と速度を重ねた、破壊の一撃。

 

何らかの細工をしている、なんて話ではない。ただヤツは、トライデントの能力で全ての水を支配下に置いているのだ。大気中の水分すら取り込みながら、槍を振るう瞬間に圧縮した水を瞬間的に放出し、より大きな攻撃を引き起こす。

 

 

原理を考えても意味がない。突破口はただ一つ、小細工無しの力押しのみ。いくら策を労しても、打ち破れるようなヤワなものではないのだから。

 

 

「────オラオラ!代表候補生ってのはそんなもんか!? 情けない所見せてくれるなよっ!!」

 

「クッ───そォ!」

 

 

高揚として叫ぶミナトの槍が、何度も振るわれる。片手では防げない、そう感じた一夏の直感は間違いではなかった。鉄すら削る流水の刃、その威力は雪片弐型を握る手に伝わる程のもの。

 

両手でも、何とか受け止められる。水が舞う剣戟の中で、トライデントを雪片弐型が衝突する。火花ではなくエネルギーの粒子が飛び散る中、ミナトは高揚を隠さずに笑みを刻んでいた。

 

 

「良いねぇ!やるじゃねぇか! やっぱその気になれば出来るんだな!その調子でやられてくれるなよ!?」

 

「────お前は! 何がしたいんだ!?」

 

「何が? 主語を付けないと分からんぜぇ、オイ!」

 

「どうしてこの場所を、『隔絶区域(コードレス・エリア)』を狙う! 何でここの人達の居場所を、彼等の幸せを奪おうとするんだよ!?」

 

「それが、依頼だからな」

 

 

あっけらかんと言った声だった。思わず力が緩んだ隙を狙った拳が、横から雪片弐型を殴り付ける。大きく弾かれた雪片にバランスを崩した一夏のシールドに水の一太刀が浴びせられた。

 

それから水面を滑るように移動するミナト。ホバーでもしているのか、足を動かさずに水面を進む彼がトライデントを振るい、水の斬撃を放ってきた。

 

 

「『隔絶区域(コードレス・エリア)』だっけ?事情は聞いてるぜ─────可哀想な話だと思うよ、オレもさ。だから極力殺したくはない」

 

「っ!じゃあどうして!」

 

「────生きる為には金がいる。金を手に入れる為には仕事をしなきゃならない。オレには数百人の部下がいるんでな、ソイツらを食わせてく為にも、こういう仕事もしなきゃならんのさ! それが傭兵ってヤツの生き様だからな!!」

 

「その為なら、ここの人達を殺すのも、仕方ないって言いたいのかよ!?」

 

「────生きる為なら、それも仕方ないだろうさ! この世界は弱肉強食、弱いヤツは強者に淘汰される!それが既に決められたルール、昔から変わらない人間の本質だろーが!

 

 

 

 

オマエにだって心当たりはあるんじゃねーの!? この世界が、そんな風に出来てるってことくらい!」

 

「──────ッ!!」

 

 

心当たり、ではない。直感的に脳裏に浮かんだのは、一夏が子供の頃から共に過ごしてきた親友のことであった。

 

 

『はは、一夏は凄いや………それに比べて、僕は駄目だね………』

 

 

臆病で気弱で大人しく、誰よりも怖がりで────誰よりも優しかった親友。しかし、彼は殺された。あの事件で、黒いISによる無差別攻撃で、亡くなってしまったのだ。

 

悲しかった、親友の喪失は決して忘れられない痛みとなって遺った。許せなかった、あんなに優しかった親友を奪った理不尽も。

 

 

────その親友の死を、親友の父親は嘲笑った。弱かったから、出来損ないだから死んで当然と。むしろ殺してくれたことを感謝したいくらいだとすら吐き捨てた。

 

その日から、一夏は思うようになった。暁を殺したのは、あの黒いISだけではない。弱肉強食を是とし、弱い人を平然と踏みにじるようなこんな世界が、親友を奪ったのではないか、と。

 

 

「戦ってるのに考え事かぁ!? 気ぃ抜き過ぎだぜェ!!!」

 

 

咄嗟の隙を、ミナトは見逃さなかった。雪片から槍を離したかと思えば振り回してくるミナト。槍の石突の部分を真下から突き上げるように放ち、一夏に不意打ちを叩き込む。

 

両手で握っていた雪片弐型を打ち上げられた一夏の無防備な胴に、ミナトが掌を向ける。足元の水を吸い上げ、圧縮した全てを砲撃として────一気に放出した。

 

 

荒れ狂う激水の奔流を避けきれない一夏。行動が間に合わないと感じたが、突然真横から突き飛ばされる。奔流から免れた一夏はギリギリで自分を助けた相手にすぐに気付いた。

 

 

「────龍夜っ!」

 

「ッ!!!」

 

 

形態変化により、騎士鎧(ナイトアーマー)の姿へと変わった龍夜が銀光盾で水流の奔流を受け止めていた。だが、押されている。この盾の本質は攻撃を防ぐ以上に、エネルギーを吸収することにある。吸収出来るのはエネルギーであり、純粋に水を利用した攻撃だけは、ただ防御することしか出来ないのだ。

 

何とか受け止めていた龍夜だが、違和感を感じ取った時には手遅れだった。洪水の如く奔流の動きに意識を向けたと思えば、奔流の中から─────投擲されたであろうトライデントが銀光盾の一部を抉り、龍夜に炸裂した。

 

 

「ぐう、がッ────!!」

 

「龍夜さん!?」

 

「龍夜っ!────クッ!邪魔だ!」

 

 

ISのシールドを貫通したトライデントは、少し離れた場所で突き刺さる。騎士鎧の外装と僅かに脇腹を抉られた龍夜が、激痛に顔を歪める。その様子は仲間達、主にセシリアとラウラの二人を激しく動揺させるには充分すぎた。

 

 

「一人、ダウンか。いや、意識だけでも奪っておこうか──────なっ」

 

 

思い切り振り下ろされた青竜刀が、龍夜を追撃しようとするミナトの身体を貫通した。まるで水を斬ったかのように平然としたミナトは振り返り、奇襲を仕掛けた鈴音を捉える。

 

 

「無視してんじゃないわよ、私がいるってのに!!」

 

「そっか。じゃあお前を倒すことにするよ」

 

 

気にすることなく手を伸ばすミナト。彼に呼応するようにトライデントが震え、勢いよく飛び出した。掌へと吸い込まれようとした藍槍だったが───────当然柄を掴まれ、強引に動きを止められる。

 

 

「…………?」

 

「誰が───好きに、させるかッ」

 

 

脇腹を抉られてダウンしていたはずの龍夜がトライデントを両手で掴み、動きを止めていた。エクスカリバーの能力により傷は塞がっているのもあり、龍夜は全身の重さを用いて、トライデントを無理矢理にでも押さえ込んでいた。

 

 

「………へぇ、驚いた。あの傷でダウンしてなかったとは、流石に甘く見積もり過ぎたかな」

 

 

感心したらしく、顎を擦りながら笑うミナトに鈴音は突撃した。青竜刀の連結を解除して、二刀のまま斬りかかる彼女に、ミナトは両手を伸ばし────銃のような構えを取る。

 

 

「双対・水連弾!」

 

 

二本指の先から、圧縮された水の弾丸が撃ち出される。それも左右から、タイミングをずらして連続で。サブマシンガンのような弾幕、しかしただの銃弾程度とは言い切れるものではない。

 

最大限に圧縮し撃ち出された水弾はシールドを容赦なく削っていく。衝撃砲を展開し、即座に迎撃した鈴音の動きを予測したミナトは新たな動きに出る。

 

 

「アクシオン─────!」

 

 

両手を広げ、足元の水へと押し当てる。掌に触れる水全てを支配し、操り、形作る。周囲の水が変化したように浮かび上がっていく。それらは水の竜と形を完全に変えた。

 

 

「────サーペント!!」

 

 

大量の水竜が、鈴音へと殺到する。直に数で圧倒できる、そう感じたミナトは自分の考えが浅はかだったことを理解する。

 

最初は対応できていた鈴音に、周囲の水竜が牙を剥く。しかし、それらのサーペントは一夏と箒の二人が迎撃する。一人ならばいざ知らず、流石に三人は対応されてしまう。

 

ほぉ、と笑みを深めるミナトに、箒はビーム砲『穿千』を放つ。二つの高出力のレーザーはミナトの身体を貫き、彼の身体が水のように崩れ、水面へと溶けた。

 

 

「っ!消えたのか!?何処に────」

 

「─────いやぁ、見事見事。お前らのこと見くびってたな。考えを訂正するわ、うん」

 

 

戸惑っていた一夏達の目の前に、ミナトは立っていた。瞬間移動、そう言っても過言ではない程の現象。その真意をミナトは誤魔化すことなく、普通に語り始めた。

 

 

「オレのトライデントは水を操る。けど、水を操るなんてチンケなもんだけじゃねぇのさ。オレ自身も水に変化して移動したりも出来る─────トライデントもな」

 

 

掌を水面に向けると、水から生えてくるようにトライデントが伸びてきた。視界の隅では龍夜が押さえていたはずの槍が消えたことに、驚きながらも此方に向かってこようとしていた。

 

 

「まぁ、水を操る能力だが、この範囲や威力に制限はない。ただ水を撃ち出すことも出来れば、海を作るレベルの量を操り、一気に放つことも出来る。最も、その気になれば国一つは消し飛ばせるんだがな」

 

 

水面の上で、ミナトが槍を振るう。振るう度にトライデントは流水を纏い始める。少しずつ、確実にエネルギーを蓄積している。誰もがそう理解できる中、ミナトが先程までの軽快とした笑みとは違い、真剣な戦意を伴う笑みを向けてきた。

 

 

「その一つを、お前達に披露してやる。オレが本気を見せる一端として、な」

 

 

そう告げると共に、ミナトは槍を片手で握り直す。振り上げたトライデントを勢いよく振り下ろし、水面を抉るように一閃した。

 

 

「絶技! 『大海乱』ッ!!」

 

 

瞬間、水面が膨張する。一瞬にして視界を覆い尽くしたのはミナトが生み出した────大きな津波だった。街中で津波とは何を言っているのか、と思うが、事実だ。ミナトが放った斬撃を肥大化させたような大津波が、一夏達の目の前まで迫ってきていた。

 

 

逃げる、という選択肢はない。あれを放っておけば、『隔絶区域(コードレス・エリア)』全体があの津波に呑まれてしまう。咄嗟に迎撃しようとした一夏達だったが、突如彼等の背後から二つの影が飛び出してくる。

 

 

 

「────『重奏・音波超撃』!!」

 

「────『灼焔の息吹(カガルギ)』」

 

 

幻想武装(ファンタシス)を纏う二人、ゼヴォドと士。各々が幻想武装の能力を最大限に引き出した一撃を放つ。ゼヴォドは『セイレーン』の音を蓄積した砲撃、士は『サラマンダー』の炎と熱を伴う破壊熱線。その二人は大津波をぶち抜き、大爆発で津波を蒸発させた。

 

青い外装に包まれたゼヴォドと赤と灰色の外装に覆われた士が、降り立つ。かつては一夏達と敵対していた二人だが、今は自身の背中を見せる程に彼等を仲間として信用していた。

 

 

「一夏、箒。待たせてしまい、申し訳ありません」

 

「ゼヴォド!………来てくれたのか!」

 

「はい─────あの水の人形を倒すのに、少し尽力していましたので」

 

 

そう言うゼヴォドの言葉と共に、セシリア達が此方へと向かってきていた。ミナトの襲撃から助けに来るまで時間が掛かったのは、彼女たちを助けていたからだろう。

 

 

「さて、これで形成逆転だな。侵入者。テメー一人で、俺達全員を相手に出来る、ワケねぇよなぁ?」

 

「ああ、流石に九人を同時に相手するのは厳しいな…………呼んでおいて良かった」

 

 

あ? と不機嫌そうな士だが、突然近くの地面が破裂した。いや、何らかのビームが着弾したのだ。それも数発。ミナトに近付こうとした士を牽制するような意図が見えた攻撃だ。

 

 

センサーを起動させた龍夜は、ビームの放たれた方角に浮かぶ三つの影を見ながら、その反応に目を剥いた。

 

 

「─────三機とも、ISだと!?」

 

 

飛翔する機影、その内一つが動き出す。空中で一回転すると、人の姿が背中の装甲に覆われ、別の姿へと可変する。装甲に装備された二つの主砲から極太のレーザーを放ち、一夏達への攻撃を繰り返す。

 

 

慌てて回避すると、その三つの影は地面に降り立つ。まるでミナトを護るように、彼等───いや、彼女達は一夏達の前に立ち塞がっていた。

 

一つは、青紫色の機体を纏う少女。先程可変し、攻撃した機体だ。今は変形を解除し、元の姿へと戻っている。背中に大きな装甲を移動させ、両腕にはカニの爪のような武装を展開している。

 

 

もう一つは、赤紫色の機体を纏う少女。赤という色合いを含めて、好戦的な雰囲気を感じさせる形状をしている。全身にはトゲやブレードらしき刃が所々に展開されており、腰から伸びる尻尾はステゴサウルスのように、トゲで覆われた鉄球が繋がっている。

 

 

そして、最後の一つは、透明な機体に身を包んだ少女。先の二人とは違い、ミナトと同年代と思われる。ガラスのような盾と白と水色の槍剣を持ち合わせており、荘厳な騎士らしさも重ね持ったISでもある。

 

 

「…………ミナト様。合図を出すにしても、もう少し早くしてください。此方としても心労が耐えません」

 

「悪いな、シルフィ。満足したんで、そろそろ本気でやろうと思ってな」

 

「ニヒヒ! ボスばっか楽しんでズルいよねー!アタシらもやりたくてウズウズしてたんだぜー!なぁ、ネナ!」

 

「………(コクコク)」

 

「なら全力でやりな、ニカ、ネナ。本気でやる価値はあるぜ、コイツらは」

 

 

仲間の少女達と話し合いを終えたミナトがトライデントを構える。一斉に構える一夏達に、堂々と告げた。

 

 

「───さぁ、第二ラウンド始まりといこうか!!」

 




トライデントの能力について簡単に解説。


水を操るし、水を支配する。ナノマシンも使用せず、自由自在に取り込み、制御する。

普通に攻撃する際も、水を纏うことで威力を増大させる。分かりやすい話、通常攻撃に水属性を付与する。水自体も刃のようになっているため、威力や攻撃範囲も大きくなる。


エネルギーに関してだが、ほぼ永久機関。無数の水をトライデントの中に蓄え、攻撃の際に使用することで消費する。しかし、攻撃の直後に使用した水を戻すことも可能。空気内の水分や周囲の水をも、エネルギーとして吸収することが出来る。



アスナ

トライデントの中にいる巫女(所謂人工知能)。彼女が周囲の水を操る能力の中枢でもある。ミナト曰く臆病で物静か、人見知りらしい。


いやー、傭兵団すらISを所持してるんだなー。凄いなー。一体何処の国や組織が横流ししたんだろうなぁー(棒読み)
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