「────良くやった。作戦は完了、メルトグラムは撃沈し、『
数時間後、アルスターやメルトグラムとの戦いを終え、一休みした所で呼び出しがあった。会議室にて始まった話し合い、その最初は千冬からの二度目の労いであった。因みに一度目は生還した一同に対して行われたものだが、そこで素直に照れた一夏に食いかかった少女達の珍事があったことは省くとする。
「さて、本題に入ろう────お前達も気付いているだろうが、今回の事態はクインス・コーポレーションにより引き起こされたものだ」
「…………」
気付いている、というより確実だと考えている。何故ならアルスターの奴等がそう口にしたのを聞いたからだ。オマケに、界滅神機 メルトグラムを輸送してきたのもクインス社のヘリで間違いはなかった。
「アルスターへの依頼はまだしも、奴等はあろうことか保有していた界滅神機を投入し、『
「………別動隊?そんなものが居たのですか?」
「────お前達が戦闘していたと同時に、何者かと交戦し、全滅したらしい。命令の内容は、奴等の所持していたメモリーから照合したものだ。間違いはない」
これで、確定だった。
クインス・コーポレーションは明確に『
これでもう、彼女達の破滅は決定した。免れることのない事実だった。
「この事は国連にて通達されており、議会はクインス・コーポレーションに対する厳罰処分を検討している。少なくともこのままではクインスも倒産し、現社長も殺人未遂容疑で拘留されることだろう」
「ということは、これで問題も無事解決、ということですか?」
「…………ほなら、どれだけ良かったか」
セシリアの疑問に答えたのは、フユキの無愛想な声だった。明らかに不満を隠そうとしない彼の態度には、その場にいる少女達は皆疑問符を浮かべる。
自分達を脅かす敵が自滅してくれたのだ。むしろここは、普通に安堵してもいいだろう。にも関わらず、彼の顔にはそれらしい感情は見えない。それどころか、逆に腹を立てているようだ。
その理由は、組織の運営と同時に外部とのやり取りを担当するサクラから伝えられた一報が、大きく関係している。
「───先程、クインス・コーポレーションの現社長から私達に通信が届きました。秘匿回線から届いたその内容は、単純なものでした」
「……………」
「この件に関する謝罪の数々。一々回りくどい文章ばかりでしたが、要約すると簡単なものでした。この件を大事にしないでくれるのなら、『
これからは仲良くしたいから、ひとまず話し合いでもしよう、と。それが彼女達クインス社の考えらしいですね」
静かに微笑むレギオンのリーダー。彼女の前で、リーダーの一人である灰髪の青年はより一層、苛立ちを込めた舌打ちを吐き捨てた。
◇◆◇
一方で、『レギオン』の本部の一室。
「────一夏!箒!鈴音!新しい冷却水を!箱ごとでいい!!」
「っ!まだ熱が引かないのか!? もう沢山使ったぞ!?」
「口よりっ、まず手を動かしなさいよ! 状況が状況っての分かるでしょ!?」
張り詰めた空気が漂うその部屋で、少年少女は走り回っていた。充満する熱気は彼等の緊迫感によるもの、だけではない。それは、たった一人の少年の身体から生じたものだった。
「──────っ!!」
言葉にならない呻きを漏らす少年、
浴槽に流した冷却水は、彼の身体に触れた瞬間に数秒もせず沸騰し出す。それだけでも異質だが、今の状態でも落ち着いている方だ。最初に冷却水を使った時は沸騰を通り越して蒸発したのだから。
何故こうなっているのか、それは数時間前の戦いが起因している。
──────メルトグラムの撃破後、気を抜いた一同の前で幻想武装を纏っていた士が苦しみ始めた。幻想武装が薄氷のように砕け散り、その場にいたのは異常な熱を全身から放つ士の姿しかなかった。
全身から発熱し続ける士の治療を行うことになった一行。兎に角冷却水で身体を冷やすという作業だが、彼等は拒否するどころか快諾し、現在に至る。龍夜が箱ごと冷却水をぶちこもうかと考えた直後、心配そうに寄り添っていたゼヴォドが声をあげた。
「────皆さん!熱が引きました!」
呼吸が落ち着いてきたゼヴォドの額に触れる龍夜は、僅かに反応を示した。熱が引いた、訳では無さそうだ。触って分かる通り、彼の全身はまだ熱を持っている。しかし、先程のように外部に影響を与えるまでには至ってはいないようだ。
誰もが安堵した。どうやら命に別状はないらしい。これで一件落着、と言えるような空気ではなかった。
「─────『オブリビオン』とは何だ?」
そう問い詰める龍夜に、俯いていたゼヴォドはゆっくりと口を開く。隠し通せないと腹を括ったようであり、静かに語る彼の口調は苦々しいものであった。
「…………数年前、我々はある施設でそれを見つけました。全長5メートルに匹敵する未知の
神秘的なその物体が、自分達の扱うアイテムと類似したものと知った時は驚いた。何より、それがあまりにも素晴らしい力を有した兵器であることも。
「オブリビオンの能力は単純明快、幻想武装を強化するというものです。内部構造は不明ですが、オブリビオンは他の幻想武装の力を一時的に高めたり、周囲の幻想武装に力を与えるというものでした─────しかしある日、我々はオブリビオンの更なる力を知ることになりました」
喜びも束の間、彼等はその兵器の存在意義の全てを理解した。自分達がいかに甘い考えであったのか、そう簡単に力を得ることは出来ないという事実を、改めて理解させられた。
「オブリビオンの特殊なエネルギーを受けた幻想武装は、更なる進化を果たす。所有者本人の適正を底上げし、幻想武装をより幻想へと近付ける」
「────その代償に、所有者本人の命を奪うということか?」
「ええ、そういうものらしいです。幸いなことに、誰も使用したことがないので、私達にも正しくは分かりませんが」
それだけ危険なものでありながら、ゼヴォド達はオブリビオンの力を手放すことは出来なかった。一夏にも語ったように、彼等には手段を選べるような状況ではなかったからだ。
ISに、世界に対抗するためには、より強い力を得なければならない。だからこそ、捨て身の覚悟でオブリビオンの力を保持してきたのだ。もしもの時、どんな脅威をも打ち破る力を得なければならない日の為に。
「…………なぁ、ゼヴォド。本当に命を失うことになるのか? 士は今、落ち着いただろ? それなら、死ぬってこと自体大袈裟な話じゃ────」
「運が良かった。或いは、士が耐えられただけですよ。恐らくはあと一度か二度で、士は暴走します。今度こそ、命の保証は出来ません」
静かに告げる青年に、一夏達は何も言えない。言えるような空気ではなかった。達観したような口振りだが、ゼヴォド本人の様子は悲哀に満ちており、仲間の無茶を心から心配している姿に偽りは感じられない。
そんな彼等の元に、話し合いを行っていた千冬からある事実が通達される。─────
そして、数日後。
◇◆◇
講和会談が開かれ、組織のトップ同士が対面した頃。一際離れた廃墟の建物に一人の女性が入っていく。彼女はクインス社の秘書であり、本来であれば社長の隣に居なければならない人物だった。
しかし、彼女はある密命を受け、別行動していた。社長 九条アンナから与えられたある極貧任務─────とは無関係に、彼女は廃墟の上層に登り、そこにいる人物と合流した。
「─────遅かったな」
白一色のコートに身を包んだ男。トゲのような、刃のような鋭利な気迫を宿し、血の臭いを濃く放っている。血に濡れた日本刀を鞘に仕舞いながら、男はその場に崩れ落ちた兵士の死体を掴んでいる。
「ええ、はい。秘書という立場上、安易に離れられませんから」
「だが、予定通りのようだな。あの女社長は思ったよりも使いやすい。まさかここまで都合よく動いてくれるとは」
「これでようやく、お目当ての物に近付けますね。時間を掛けた甲斐があったと言えます」
「…………」
秘書の女性と言葉を交わす男。ふと、彼は死体を放り捨てると、怪訝そうな顔を崩さなかった。彼女が何か? と聞き返そうとする前に、男は口を開く。
「────いつまでその顔でいるつもりだ? どうせもう必要ないだろう、オータム」
瞬間、無表情になった女性は口元に笑みを刻んだ。引き裂いたように、今までの雰囲気をかなぐり捨てるように、粗暴で凶悪な笑顔を浮かべる。
その笑みを隠すように手を伸ばした女性は、自分の顔を掴んだ。ブチブチ、と千切れるように顔の皮が剥がれていき、全く別の女の顔が現れた。
「────あーっ、あー………この声で良かったか? ったく、ホントに面倒だったぜ。一々丁寧な口調でやんなきゃならなかったからよぉ。それもそうだが、何でアタシが変装までしなきゃなんねぇんだ? エスツー」
「…………仕方ないだろう。この時期に秘書が変われば、あの女は兎も角、国連や学園の連中に疑われるはずだ。あの女社長の責任にするには、こうするのが最善だった」
特殊な繊維の塊、人工皮膚を剥ぎ取った女 オータムは乱暴な口調と共に、己の顔を覆っていた人工皮膚を床に叩き付ける。地面に触れた瞬間、どういうわけかそれは数秒せずに分解されて消滅した。
顔の感覚を確かめるように頬を触っていたオータムは、その視線をエスツーという男────彼が引きずっていた死体へと向ける。
「それって、あの女が用意した私兵か。他の狙撃手も潰したのか?」
「ああ、他の死体の処分に少し手間が掛かった。………だが、練度もそこそこだ。全滅させるには骨が折れた」
「要するに雑魚に時間を掛けたってか! 情けねぇなぁ、エスツー! 私ならそんな雑魚ども、十秒で片付けられたぜ!」
「そうか」
あからさまな挑発、嘲笑、それらの笑いにエスツーは淡白に返した。無視というより平然とした態度に違和感でも持ったのか視線を向けたオータム。しかし、その瞬間。
─────金属の衝突音と、同時に発生した風圧が廃墟の一帯へと響く。エスツーは立ち尽くす姿勢から一瞬にて、腰に備えていた日本刀を抜刀し、そのままオータムの首を狙い斬撃を放ったのだ。
一方で、オータムはその刃を即座に受け止めていた。彼女の手ではない、背中から伸びた異様な程に長すぎる腕────否、脚が斬撃を防いだのだ。
不意打ちを防がれたエスツーは様子も変えず、感心したように目を細める。
「────今のを防ぐとは、思ったよりも衰えてはいないか。心配したぞ、そういう事ばかりしているから腕が鈍ってるんじゃないかと」
「ハッ! 私を舐めるなよ、エスツー! テメェに負けてから、テメェに勝つ為に鍛えてきたんだ! 一度だって衰えたつもりはねぇぜ!」
「流石は、我が弟子。俺が鍛えただけのことはある────だが、まだまだ甘い」
あ? とオータムが怪訝そうにした直後、彼女の背中から伸びた脚が静かに落ちた。間接部から先を綺麗に切断されており、オータムはエスツーによって斬られた事実を理解する。するしかなかった。
斬られた脚を粒子へと変え、オータムはただ純粋に笑う。自暴自棄とは違い、次こそは勝つという強い戦意を煮え滾らせながら。そんな彼女にエスツーは笑みを含みながら、言いたいことを口にした。
「二人の時ではその態度で構わないが、組織内では改めろ。お前は部隊のメンバーであり、俺はスコール同様部隊長を務めている。新参者に舐められるのも面倒だ」
「わーってるよ。………それより、さっさとやることやらねぇとな」
そうだな、とエスツーがオータムから投げ渡されたアタッシュケースを受け取る。ロックを解除しケースを開いたエスツーは内蔵されていたパーツを手に取り、他のパーツと接合させる。
カチャカチャ、と部品を繋げている合間、オータムは秘書の姿を演じている時に聞いた────九条アンナが画策したとある任務の内容を思い出し、笑いながら口を開いた。
「聞いてくれよ、エスツー。あの女社長、ここに兵士なんて用意して、何企んでたと思う?」
「…………講和の妨害か」
「そうさ!けど、ただ妨害するんじゃねぇ!わざと自分を撃たせるつもりだったんだよ、あの女! そして撃たれた自分を見せて、『アイツらが私を殺そうとした!』って被害者面して訴えるんだとよ! 笑っちまうよなぁ!」
その為の狙撃手。敢えて自分自身を撃たせることで、『レギオン』を正面から批難できる材料を作る。到底自分達の不備を謝罪しようとする大人のやり方ではない。オータムが馬鹿笑いし、エスツーが浅はかさに呆れを伴うのも当然だ。
「─────なら、俺達もその企みを利用するとしよう。特大の火種を、作る為に」
組み立てを終え、スナイパーライフルを固定具の上に乗せるエスツー。片眼を完全に覆うような小型の装置を取り付け、エスツーは遠くに見える講和の会場────そこで話し合う、二人を補足するのだった。
◇◆◇
「─────!────!」
「────、───────?」
「────ッ!」
「───、───。───、─────」
急遽用意された為に簡素な会場にて、論争が繰り広げられていた。怒りを隠しきれず弾劾するように怒鳴るフユキ・スイゲツ、彼を窘めながらも淡々と対応するサクラ・レナーテ。そして、今回の騒動の原因でありながら、非を認める素振りすらなく、堂々としている九条アンナ。
警護の為、離れて聞いていた一夏達にはその内容が良く分からなかったが、龍夜が開発した小型デバイスの諜報(後でバレて説教を受ける予定)で全てが判明した。
────要約すると、九条アンナはこの件を穏便に済ませることを条件に『
話を理解した一夏は、はぁ? と理解できないという風に顔をしかめ、他の一同は呆れて言葉が出ないと言った感じだ。龍夜の方はと言うと、呆れと言うよりもどうやって追い詰めるかという考えの方が大事だった。
ふと、そんな風に思案に暮れてる龍夜を他所に、一夏は会議の行われている方を見る。会話の内容は聞こえないが、激昂するスイゲツを落ち着かせながら、自分は激情を吐き出さないように溜め込むサクラに、感心するしかない。
自分も彼女のように我慢強くならなきゃな、と決意を深めた。元より感情的になりやすいのが自分の悪い所だと、自負はしている。どうやったら落ち着けるのか、彼女に聞いた方がいいか。
(……………ん? 何だ、今の)
唐突に、一夏はソレに気付いた。
講和の最中、卓上に置かれたガラスのコップに光が点滅した。いや、遠くから映る向こう側のビルの上層で、何かが日工を受け、反射したのだ。
カチカチ、と点滅するように輝く光を感じ取り、一夏は嫌な予感を直感的に察する。それにいち早く気付けたことが、幸いだったのだろう。
──────突如、ガラスのコップが砕けた。
勢い良く撒き散らされる透明の破片に、全員の意識が集中する。撃たれた、そう脳が判断しようとする前に、一夏は違うと心の中で否定した。嫌な可能性を頭に浮かべていた彼は、その変化に囚われずに済んだのだ。
確かに、コップが撃たれたのは事実だ。だが、狙いはそのコップではなく、その場にいた人間の一人だ。一夏は、即座にISを展開し、叫ぶ。
「─────サクラさん!!」
レギオンのリーダーの少女が一夏の声に、それが意味する事実に、即座に反応する。席から立ち上がろうとした彼女だが、ふとその場に倒れ込む─────一秒以内のラグが出来たように、遠方から放れた弾丸がサクラの右脚を撃ち抜いた。
「お、おおおおっ!!」
一瞬にして、瞬時加速を発動。倒れそうになるサクラの元へと飛び出した一夏は機体の装甲を一部解除し、サクラを安全に受け止められるようにした。そして、彼女を抱き締めながら、地面を転がる。
カン!カン! と、複数の銃弾が、展開されたバリアによって弾かれる。彼女の姿を包み込むように抱き締める一夏の認識では、彼女の頭や心臓を撃ち抜く位置を狙った狙撃だ。
「─────龍夜ぁ! 頼む!!」
「っ!任せろ!!」
一夏の前へと飛び出した龍夜が腰に装着していた持ち歩き可能のアイテムを、レーザーガンへと変形させる。今の狙撃で、位置は把握できた。追撃が放たれるよりも先に、龍夜が放ったレーザーが廃墟のビルに直撃し、一気に爆裂した。
◇◆◇
「…………ふむ、一早く反応するとはな。思ったよりも成長してるじゃないか、織斑一夏」
「それよりどうすんだ? 外したみてぇだが、これじゃあ作戦失敗じゃねぇか」
「いや、撃ったという事実があればいい。現に、レギオンのリーダーは脚を撃ち抜かれた。それだけで、奴等が勝手に誤解してくれる」
爆発から離脱した二人。背中から伸ばした機械的な虫のような脚を操るオータム、彼女の機械脚を掴みながら淡々とスナイパーライフルを破壊し、破棄するエスツー。彼は遠くで狼狽している女社長を睨み、告げた。
「九条アンナ、お前は自分を狙撃させることで被害者を演じることを画策した。ならばその逆の構図になれば、誰が疑われるかは明白だろう?」
言い終えると共に、彼は空を見上げた。青空に浮かぶ雲、その一つが不意に消えたのを境に、エスツーは端末の画面を指で押した。
瞬間、新たな脅威が、彼等の目の前に現れることになった。
◇◆◇
混乱に包まれた講和会議の場。
間一髪、一夏によって助けられたサクラの元に千冬や皆が駆け寄る。混乱しながら何かを喚いている女社長に、何かを知っていると察した鈴音やラウラが詰め寄ろうとしたその時。誰かが叫んだ。
「ッ!高エネルギー反応!─────これは、ミサイル!?」
空に浮かぶ、雲を切った白い物体。
「っ、龍夜!アレが何か分かるか!?」
「やってる!────ルフェ、データ解析を……………なッ」
千冬の指示を受け、即座にエクスカリバーに搭載された高性能センサーを稼働させる龍夜。数秒もせずにミサイルの全貌を解析した龍夜は青ざめる。それがどういうものか知っているからこそ、想像の余り顔を蒼白にさせたのだ。
飛来する巡航ミサイル。それは、かつての戦争でも恐れられた最悪の兵器の一つだった。
「─────O.D.クラスター………!」
かつて白騎士事件にて、白騎士が迎撃した最強最悪の破壊兵器。爆裂した残骸は空中から周囲に撒き散らされ、地上全てを破壊する。大量破壊、OVER DESTROYの名を冠するその兵器は博士の死によって闇に葬れたはずの、禁忌だった。
何故、あんなものが────そう考えた千冬は思考を振り切る。それよりも先にと、声を荒らげながらも叫ぶ。
「────オルコット!撃ち落とせ!あのミサイルは分離前に破壊すれば問題ない!」
「っ!分かりました!!」
迅速に、セシリアが展開したスターライトによる狙撃が行われる。放たれた閃光は空を貫き、クラスターミサイルを一撃で撃墜、空中で自壊させた。
爆発と共に砕け散るクラスターミサイルに、一同が安堵する。しかしそれが余りにも安易な考えだと、すぐに思い知らされた。
「────ッ!クラスターミサイル、分離した装甲が高速で飛翔!?まさか、アレが本命だったのか!?」
「セシリア!撃て!ビットを使ってもいい!!」
「ダメです!速すぎます!間に合わ─────」
ロケットのように加速した表面カバーが空中で破裂、そして無数の小型爆弾を辺りに撒き散らし、爆裂を繰り返した。呆然と見届ける一夏達、彼等はようやくミサイルの狙いが自分達ではなく、『
─────火種は今、生じた。世界を大きく揺るがす混乱の一つとなる騒乱が、始まるのだった。