【悲報】私ちゃん転生したっぽいけどこの世界ってばディストピア臭がぷんぷんストリーム! 作:鬼百合ぴょんぴょん丸
一つ言い訳をさせて欲しい。
何故推定前世の記憶持ちである私ちゃん様が、素直に幼女生活をエンジョイしちゃってるのかについてだ。
生まれた時から自意識があった私は、この世界がおかしいとすぐに思った。別にわかった訳ではないのがポイント。
何かにつけておかしいと反射的に思ってしまうし、そう思う理由もよくよく考えれば納得はできる。やはり我が同胞たる幼女達は、何度見ても私含めちょっと異常なのでは?と思ってしまう。
だけど目の前にある現実は変わらないのだから、おかしいのは自分の頭の方ではないかとも思ったりする。何せ、「前世の常識、今世の非常識」な事が多すぎた。
例えば私は、生まれてこの方親の顔を見た覚えがない。生誕直後は視覚がはっきりしなかった事もあり、気付けばこの施設にいた。
そこで初めて目にした人間こそがシスターマリーで、最初は彼女が自分の母親なのだと思ったりもした。
まぁかなり若過ぎるとは思ったけれど。
それ以外に年長者の姿が見えないのだから、消去法でそう考えるのも致し方なし。
しかし割とすぐに我が同胞たる赤子達の存在に気付き(私のママンは子沢山やな……)と現実逃避するのも空しく、ここが何かの施設で、マリーママンはそこの職員的な存在なのだと理解してしまった。
泣くわこんなの、だって赤ちゃんだもの。
信じたママンがただの美人なチャンネーだったショックにギャン泣きし、釣られた同胞たちが加わって泣きの大合唱。
主催は私。
なんだか初めて絆、感じちゃったね。
ちなみにシスターはあらあらと困り顔だったが、お世話に忙しかったのはロボ達だったので何だかもにょっとした。
そんなこんなでシスターに見守られつつ、人形達にお世話され、同胞たる赤子達とすくすく成長していった私ちゃんだったが、暇な記憶持ちの特権とばかりに今後の人生設計を立ててみたのだ。
ちょっとばかり早スギィ!な気もするが、漠然とバブバブしてるよりはずっと建設的だと思う。
とりま大前提として、生まれたからにはなるべく長生きしたい。
何故生きるのか? そんなのはただ生きたいからでいいじゃんってなもんよ。
生まれた意味とか、そんなの暇な人だけが考えればいいと思う。
短命であるよりは長生きの方がお得感あるし、充実した生を送りたいと願うのは生き物として真っ当なものだと思う。
「生きるのがつらたん」「人生は牢獄」「もぅマヂ無理。リスカしょ」とか、そんなネガティブマッハな意見は参考にしちゃ駄目だと思います。
健康に長生きする。
その為に必要なのモノ、それは――そう圧倒的なパワーッだね!!
いや、別に冗談ではなく。
生きる為、自分の身を守る為に、障害を排除する為に。ありとあらゆる苦難を乗り越える為に必要不可欠な要素。
それこそが筋肉。
筋肉イズパワー!
金? 権力? それも力ではあるが、本質からちょっと外れているように思う。
本当に必要なのは本質的な力、そう純粋な暴力こそが原初の魔法にして頂点!
筋、骨、肉が生み出す魔法の力、それこそがパワー!
パワーこそが世の全てを解決するのだ!
なので身体を鍛え、圧倒的なパゥワァーをこの幼女ボディに宿すべく、全力で同胞達と遊んでいる私に一切の油断も妥協も存在しないのだ。
だから私が一見無邪気にエンジョイしているように見えても、それは必要な修行なのである。
別に遊ぶのたーのしー! って脳汁垂れ流してる訳じゃないので、そこんとこよろしくお願いする所存。
今日はそんな脳筋幼女ちゃんたる私の一日をご紹介しよう。
私ちゃんの朝はそこそこ早い。
大体日の出と共に起き上がって太陽光を摂取する事から始まる。
この施設における我が居城は六人部屋であり、ララ、ミィ、チー、レニ、ドジの五幼女と一緒に寝起きしている。
それぞれの渾名の理由は適当オブ適当というか、自己申告と周りのノリでたまに変わったりもするので、あんまり覚える意味はない。呼ぶ方も適当だし。
最後のドジちゃんだけドジっ娘だからドジと言ばれているが、何かイジメ臭いので私は「きみ」とか「あなた」とか呼んでる。
これもメッチャ他人行儀でアレだけど、(私は)特に困ってないので放置安定。
イジメ臭くても見た感じ呼んでる方に悪意とかなさそうだしね。
呼ばれてるドジちゃんがどう思ってるかは知らんけど。
それにドジっ娘とは言っても、周りのスペックが異常に高いせいでこの娘も十分おかしいし。
ただ性格的にちょっと引っ込み思案なだけで、それで遠慮がちなもんだから何かと反応が遅れちゃってるっぽい? あるいは考えすぎてるのか。
幼児ならもっと猿になってもええんやで?
そんなこんなで幼女ちゃん達を見守るお姉ちゃんポジション(自称)な立ち位置の私は、室長として寝起きを嫌がる駄々っ子達を床に放り投げ、きびきびと朝の支度を整える。おらあくすんだよ!
「おはようございます! 今日も一日元気いっぱいにいきましょう!」
「うえー」「ねむー」「zzz」「ふぁああ」「……ぅぅ」
未練がましくベッドに戻ろうとする幼女ゾンビ達を阻止しつつ、朝からプロレス(意味浅)に励む頃にはキャッキャッと幼女達も目が覚める。
そして洗顔やら歯磨きやらベッドメイクやら朝の体操やらを終えた頃には、朝食を報せるシスターマリーの「みんな~、朝ごはんですよ~」と恒例のくっそ眠たくなる声が放送される。
これで起きて集合できない幼女達にはお世話ロボが突入して音響爆撃してくるので、最悪な一日を迎えたくなければ時間前行動が安心安全の大正解だろう。
ちなみに私達幼女は部屋毎に班別けされており、六人六班36人が私を含む幼女達の総数だ。
そこにシスターマリーを加えた37名がこの施設内の人員全てで、あとは見分けの付かないお世話ロボ達がたくさんいる。
シスターはぶっちゃけ見守ってるだけなので、ロボが万能すぎる性能を発揮して幼女達の世話をしていた。
そんなこんなで定刻には幼女達は全員朝食の席に着いており、中には頭が爆発している寝癖幼女ちゃんも数名いたが、シスターは特に指摘したりもせず、厳かな面持ちで食前の祈りを捧げる。
「世界平和と人類の恒久的な存続の為に」
「「「せかいへいわと、じんるいのこーきゅーてきな、そんぞくのために」」」
「ラーレ」
「「「ラーレ!」」」
クソデカ主語のクソ長お題目だが、この施設の理念なのか毎食欠かさず唱和している。
それと最後の「ラーレ」だが私は「いただきます」だと解釈している。たぶん微妙に違うと思うが。
そして肝心の朝食メニューは、いつものパンとスープとミルク、以上! 終わり!
字面にするとやべぇシンプルになってしまうが、別にそんな悪い食事内容ではない。
まずは何といってもパンのおかわりが自由! これは素晴らしい!
餓えた鬼と書いてメスガキと読む(嘘)くらい、子供の燃費は最悪の一言だ。
なんといっても成長に必要な栄養素をぐんぐん取り込み、カロリーをじゃんじゃか燃やす小さな焼却炉のような存在だ。
なので食える時に食えるだけ食うのは必要不可欠である。屋内で禄に運動もしてない幼児にやったら子豚のような有様になるだろうが、私達はアホみたいな運動量をしているため、質も大事だがまずは何よりも量が必要だった。
そしてお次の味の方はまぁ、ちょっとコメントに困るくらい普通。
というか生まれてこの方これが主食で、味覚の基準がこれになっている。
そのせいでこのパンよりうまかったらうまい、不味かったら不味い、という風に舌が調教されてしまっていた。
胡桃やら豆やら、あとよくわからない物が練り込まれており、おかわりせずとも結構お腹に溜まる。わりと固めのパンなので噛んでると満腹感も出やすい。幼女達の中にはスープに浸して食べている者も結構おり、私も気が向けばそうしてる。
まぁバカみたいにおかわりするのは私くらいなものだが。
そしてスープ、これは日替わりで変わるので実質おかずみたいな物だ。基本は野菜スープみたいな奴で、たまにコーンスープが出てきた時は幼女達もテンション高い。コーンの甘味に餓えているのだ。
そして最後に謎の白い液体。たぶんミルク。
だけど私の記憶にある牛乳とかじゃない。味はほとんどしないし、喉越しもサラサラでほぼ水。記憶にある豆乳って奴だろうか?
ちなみに私の記憶にある味覚はあてにならず、絵と字を見て味を想像しているような状態だ。なので確信が持てない。
例えば『白い液体』の画像と『ケフィア』という字を見て、味を知らない者がそれを想像するのは正直無理ゲー。
考えれば考えるほど怖くなり、何だかこれの正体を突き止める勇気が出なくて。
以来私は、この謎の白液をずっと唯のミルクだと思う事にしている。
ちなみにこれもおかわり自由なので、何だかんだでゴクゴク飲みまくってるが。
ミルクならタンパク質入ってるっしょ。そうだね、プロテイン代わりだね!
そして朝食の後は二時間ほどお勉強の時間だ。基本は読み書き計算で、たまにシスターのお話が入る。
ちなみに読み書き計算を教えるのは専用の教育ロボがいる。シスターェ……。
私から見ればくっそ怪しい看守みてぇなシスターだが、幼女達からは好かれている。
どうにもポンコツ疑惑が抜けない胡散臭いシスターなのに何故? やはり幼女達も母性を求めているのか? ちなみにシスターマリーのおっぱいは無駄に大きかったりする。
美人でおっぱい大きくていつもニコニコしてるから、幼女達に好かれるのか?
それもなくはないだろうが、ここの幼女達は普通じゃあない。
親が恋しくて夜泣きしたなんて話は聞いた事がないくらい、私の記憶とは別物の、幼女の形をした何かだ。
そんな幼女達が、彼女に好き好きオーラを放つ理由。
それは彼女が――飴ちゃんをくれるからである。
コーンスープで大はしゃぎするような純粋無垢な幼女達である。
そりゃ好かれるよ。私だって媚びるもん。
普段の食事に関して、質も量も特に文句はないのだが、唯一不満を上げるなら圧倒的に甘味が足りない事だろう。
甘いデザートなんて御伽噺、スウィーツなんて伝説の存在だ。
そこへ与えられた純粋な甘味、砂糖の暴力。
そんな甘露の結晶たる飴ちゃん様を与えられた幼女ちゃん達は、そりゃもう即オチ2コマのエへ顔ダブルピース余裕ってなもんよ。かわいい。
シスターは頑張った子にはよく飴ちゃんをホイホイくれるので、そりゃもう真面目に勉強するし、テストなんか絶好のアピールチャンスになってる。
「みんな頑張ったね~。満点の子がなんとぉ……二十五人もいました! 良くできた子も、今回惜しかった子も、よく頑張ったので飴ちゃんをあげましょ~!」
とはいえ基本褒めて伸ばす方針っぽいシスターなので、全員が貰える機会も多い。
頑張れば飴が貰える。そう条件付ける事で幼女達を操っているのだ。
なんて悪辣な。
鞭役は全てロボに任せ、自身は飴役に徹することで幼い少女達の信頼を勝ち取る。
やはりシスターマリーこそ、この施設の――。
「しーちゃんはイチゴ味が好きだったよね? 満点おめでとー!」
「きゃーっ! いちごの飴ちゃん!! わたしらいしゅきーっ!!」
女神やな!!(手の平クルー)