【悲報】私ちゃん転生したっぽいけどこの世界ってばディストピア臭がぷんぷんストリーム!   作:鬼百合ぴょんぴょん丸

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第六話 やはりパワー! パワーこそが全てを解決する!

 

 

 

 四歳になった私ちゃん達を取り巻く環境は、ちょっとずつ変わっていった。

 まずレクリエーションで全員参加のものが減り、その分チーム毎に別れた内容が増えた。

 全員でわちゃわちゃするのではなく、集団単位で競い合うのがメインになっている。

 

 遊具も増え、当たっても痛くないゴムみたいな棒とかボールとか、それを使ったサバゲ―みたいな事もするようになった。

 その戦場はもっぱら最近解放された森林エリア、というか施設裏手にある雑木林で行った。

 

 迷子や行方不明者は今の所ロボやシスターに捕獲されているので、幼児には危ないんじゃないかという私の心配は杞憂に終わっている。

 あとついでに、障害物が多くて生傷や擦り傷もやばいのではとも思ったのだが、ここの幼女達は普通じゃなかった。

 ちょっとやそっとの事じゃ怪我をしないという極めつけの異常さを披露してくれた。

 

 どんなに受け身の達人だろうが、地面に頭からスライディングしたり跳躍しながら空中戦しといて、擦り傷一つできないのはおかしいと気付くべきだった。

 

 ぷにぷにと太腿と二の腕を触ってみる。

 うーむ、この珠のようなぷにもち幼女肌がガンダムばりの装甲してるとは思わんやん。

 

 まぁ幼女達の異常は今に始まった事でもないので今更だ。 

 それよりも重大な事、それは飴ちゃんの供給量が増えた事にある。

 

 最も勝利数の多いチームには、優勝の飴ちゃんを各自一個ではなく五個も貰えるようになったのだ。かつてない大盤振る舞いである。やはりマリーは女神。やマ神。

 特に撃破数の多かったMVP幼女ちゃんには、更に追加で飴ちゃん五個倍プッシュ! きたぜ、ぬるりと……!

 勝つしかないだろ……っ! こんなの……! どうあがいても乗るしか……!

 

 しかし私が成長しているように、同胞幼女達の成長も著しい。チームでの勝利こそ安定しているが、MVPは狙って獲れるようなものじゃなかった。

 とはいえそこそこ獲得できているので、飴ちゃん獲得ランキングがあるなら確実に上位に入ってるはずだ。

 

 そして何より、飴ちゃん十個でケーキ様と交換できるという神サービスが始まったのだ! 

 それを知った幼女達の意気込みといったらもう、幼女の皮を被った狩人そのものだった。

 

 今の私達にとって飴ちゃんこそが全てを支配する通貨であり、この世で最も信用できる黄金となった瞬間である。

 むしろ食べられないし甘くもないクソ重軟弱ゴールド君はもっと飴ちゃん様を見習って?

 

 そんな訳で現在の施設では、飴ちゃんを沢山持つ者こそが偉くて強かった。

 飴ちゃんは寂しがりやさんだから、強き者の元により多くの飴ちゃんがやってくるのだ。 

 これぞ資本主義の本質である。知らんけど。

 

 そしてチーム戦以外でも、何かとペアでの行動を指示されるようになった。

 はい、二人一組になってね~とシスターに言われた時には、謎の頭痛に頭が割れそうになった。うっ頭ガッ!

 

 そして私の相方になったのはルームメイトのドジちゃんである。

 何故か私ちゃんに対してはシスターからのお願いという形の強制だったので、特に拒否権とかはなかった。まぁ別にいいのだけど。

 

 ただ最近、ドジちゃんの方から距離を取られてる可能性が微レ存。いや嘘。めっちゃ避けられとる。どぼじでごん”な”ごどずる”の”ぉおおお!

 

 そんな人間関係の拗れとかくっそ面倒なので、ダイレクトアタックしたった。

 私のだいしゅきホールドから逃げられると思うなよ?

 

「はけー! はくのだー! 私のことが嫌いなのかー!?」

 

 するとドジちゃんはあたふたしながら、やがて諦めてぽつぽつとその内心を語り始めた。

 やはりパワー! パワーこそが全てを解決する!

 

「……しーちゃんの方こそ、わたしのこと嫌いじゃないの?」

 

 はにゃ? 別に嫌いじゃないよ?

 じゃあ好きかと言われると、若干もにょるけど。

 

 この世界に生まれて、私が唯一愛してるのは飴ちゃんで、崇拝はケーキ様。

 ロボちゃん達は、いつもお世話してくれてありがとうの感謝の念。

 シスター? ああうん、あの飴ちゃんくれる人ね(酷)。

 

 そして同胞たる幼女達の事は身内というか、自分の半身のように思ってる。

 私はきみで、きみは私。同じ幼女、そこに何の違いもありはしないだろうが!

 

 だから好きとか嫌いとか、そういう次元で考えた事がなかった。

 逆に、なんで私が嫌ってると思ったのか。

 

 そう尋ねると「なまえ、呼んでくれないし……」と悲し気に返されてしまった。

 

 あっ(察し)。原因これかぁ……距離感、感じちゃってたのね。

 でもでも私らに名前ないじゃーん! 適当な渾名だけっしょー! とか爆笑して揚げ足を取れる雰囲気じゃなかった。

 

 お、おおぅ……空気が重い。とはいえ、しょうがなくない?

 私ちゃんきみの事ドジって呼ぶの、心理的に抵抗あんだけど?

 

「きみはドジって呼ばれるの、イヤじゃないの?」

 

 私がそう言うと、なぜかドジちゃんは綺麗なお目目をまん丸にした。

 その鳶色の瞳と明るい茶髪は、カラフルな幼女達の中では地味な方に入る。

 

 とはいえ幼女達の平均値がおかしいだけで、彼女もまた絶世の美幼女。

 むしろ他の幼女達にはない儚げな雰囲気を好む者は多いのではなかろうか。

 

「わたしがドジなのはほんとうだから、イヤってわけじゃ……」

「自分の事、卑下するのよくないよ」

 

 私ちゃんの頭がおかしいって自虐はあれよ、天才と何とかは紙一重的なアトモスフィア。

 私ちゃんだって同胞と同じく美幼女でかわいくて、そしてパワーもつおい。

 周りの天才幼女達と比べちゃうと凡でしかないが、私ちゃんだって中々イケてるという自尊心がある。

 

 ろくな名前もなかった私達。

 あの優し気なシスターですら、最初は個の区別を付けていなかった。

 私達が自然と渾名で呼び合う様になってから、初めて私達を個として認識した節すらある。

 

 ならば適当に付けられたこの渾名こそが、自らを証明する真名と同義である。そこに違いなんて殆どないだろう。

 

 まだ何者にもなれず、何者にでもなれる私達の可能性。

 それをまだ幼女である同胞が、勝手に狭めるのは正直見ていられなかった。 

 

「じゃあ私が新しい渾名、つけてもいい? これから私達パートナーになるんだし。私ちゃんが呼びたいようにするね!」

「えっ!?」

 

 相手に許可を取っている様に見せかけてその実決定事項。お願いしている様で強制してる。人間社会ではよくあるよくある。

 とはいえ無理矢理は良くないので、ちゃんと受け入れてもらう必要がある。

 

「お願いー! 変な渾名は付けないから! 拒否権は認めるからー!」

 

 彼女は最初「ふええ……(ドン引き)」状態だったけれど、やがて観念したのか「……いいよ」と頷いてくれた。ぐへへっ、勝ったな。

 

「うーんと、それじゃあねー……シトちゃん」

 

 あまり掛け離れた音だとこれまでの呼び名から脈絡がなさ過ぎて、うまく馴染めないかもしれない。

 なのでドジから可愛くない濁点を抜いて、トシ。男臭くて草。新選組副隊長とかやってそう。

 

 そこで反転して、シトにしてみた。

 天使みたいな幼女だし、あと考えるの得意そうだから。使徒、思考する者という意味を込めてシトちゃん。

 

「私のしーちゃんとちょっぴりお揃いでシーシト、いや語感的にシトシーコンビって感じでどうでしょう!?」

「……いいの? しーちゃんはそれで」

「? 私ちゃんがダメな理由とかあります? シトちゃんは同じルームメイトですし、コンビにもなったんですから、これからもっともっと仲良くなりましょう!」

 

 シトちゃん呼びを定着させるべく早速既成事実を積み上げていく。

 拒否権はあると言ったな? 嘘じゃないけど嫌がってる様子はないので、奴さんはお亡くなりになりました。

 

 シトは「シト……シト……」としばらく確認するように呟いていた。しとしと湿ってきたな?

 けれどやがて、それまでの曇り顔が嘘のように晴れ渡る。

 

「うんっ、わたし……ドジじゃなくて、シトが良い!」

 

 そしてシトは、太陽のような笑みを浮かべた。

 四歳になった私に出来たパートナーは、そんな笑顔の素敵な女の子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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