梅雨
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皆さんは、梅雨の季節を如何お過ごしでしょうか?
私は好きですよ。特に深夜の小道なんかが最高のスポットです。
ポタッ、ポタッ、ピチョン──
適度な雑音と共に、深夜のお散歩。普段では考えられない人通りの少なさは、まるで自分がこの街を独り占めしてるような気分になりません?
晴れ時に自転車で駆ける爽快感も素敵ですが、雨の日ならではのゆったりとした歩みは、普段見過ごしていた新しい景色を発見する良い機会にもなります。気まぐれな寄り道も、新しい出会いがあったりして、なかなかに楽しいものですよ。
ポタッ、ポタッ、ピチョン──
ただ、大通りから大きく外れた裏道はあまりオススメできません。この蔓延防止のご時世でも開いてるお店って、人目につかないような路地裏にあることが多いんです。そこのお客さんが酔い潰れてるとね、風情も全くありゃしません。
ポタッ、ポタッ、ピチョン──
だから狙うは、大通りから一歩ズレた横道なんです。
暗くて、人通りがなくて、殆どの人が覗きもしないような、街から浮いた小道。
雨音は悲鳴を緩和してくれるし、雨は証拠を流してくれます。
私は梅雨、好きですよ?
日常
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小説内の「いつもと変わらない日常」は、殆どがフラグだ。その表現を入れることで、次の展開とのギャップを印象づける。使い古された……とまではいかないが、比較的ありふれた定型句。僕だったら、あまり使わないかもしれない。
しかし、日常をありのままに伝えるために使わざるをえない時だって存在するはずだ。
さて。僕は、今日もいつもと変わらない朝を迎えた。
食事をして、歯を磨いて、服を着替えて──行ってきます。
返事はないが、それも僕の日常だ。肩を竦めて、刃こぼれした包丁をホルスターに収める。
鳥の声すらない無音が物寂しい。通学路の死体を跨いで、僕は足を早めた。
警察学校
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僕と彼女は幼馴染だ。おまけに警察に入るという目標まで一緒だった。
仲の良い僕らは、同じ候補生の中でも注目の的だ。男女の仲にはならなかったが、僕にとって彼女はかけがえのない存在だった。共に頑張る親友がいなければ、この厳しい訓練に耐えられなかっただろう。
今日はやっと結果発表の日。彼女もそわそわしつつ、座って待っている。
やがて部屋に入ってきた男は、複雑そうな顔で僕を見た。
「お前だけ合格だ」
告げられた言葉の意味は分からない。ただ、漠然と彼女と離れ離れになる事だけは理解できた。
僕は尻尾を力無く振ると、警察犬訓練士に引っ張られて部屋を出た。