異世界艦娘~猫耳摩耶の、チートな冒険~ 作:摩耶様の下僕TNG
基地に戻ってから1ヶ月半後、あたしの自由な人生は再スタートを切る。
予定じゃ1ヶ月以内で基地を離れる筈だったが、戻って最初の1週間の面倒臭いイベントと、瑞鶴との新型使い魔テスト、そして、長門から"羽黒を強化したいから、あと1ヶ月は滞在してくれ"と、頼まれ、結局、何だかんだで出発が伸びた。
伸びたのは別に構わなかったんだが、残りの1ヶ月の滞在中、事件が起こる。
それは、長門の羽黒強化トレーニングで起こった。
長門の申し出の次の日の早朝から、そのトレーニングは始まった。次の日の朝から、羽黒は長門の指導の為に晩までみっちり受けることになるが、指導開始から2週間後、あたしはその指導を強制的にストップさせた。
最初の1日目こそ、彼女はその指導を楽しみにしてたが、一週間目が終わる頃になると、何か理由が有ったんだろう、その指導が嫌になった素振りを見せてた。本人が自ら言わなかったからその時は気が付かなかったんだけど、本音は行きたく無かったんだと思う。ただ、少しでも早く、あたしに追い付きたいと思う気持ちから、本音を圧し殺してたんだと思う。
そして、2週間目の半ば、羽黒の言動に異変が顕著に現れる。
2週目に入って3日、彼女が帰って来た時に、先週までとは違い、窶れてる様子だったから何となく、本人に聞いてそれが発覚する。
「何か疲れてるみたいだが、大丈夫か~っ?」
「はっ!自分は大丈夫でありますっ!」
「っ!?」
素の状態でそう答える彼女に、あたしは直ぐに気付く。
彼女の状態は、新兵がハイレベルな教練を受けると起こる症状...分かりやすく言えば、洗脳状態に陥ってた。
「あのポンコツ、やりやがったなっ!」
あたしは怒りを顕にする。
羽黒を指導すると言った時、長門から"トレーニング中は、あたしとの接触は一切禁止で頼む"と言ってたから、その指導内容は詳しく分からなかった。
まさか、うちの大事な妹をこんな状態に追い込むとは...。
「ようっ...見てるんだろっ?」
『既に手は打ってるよ。』
その声を耳にしたと同時に、あたしと羽黒は"あの応接間"に移動する。
あたしの目の前には、長いソファーに神様が座ってて、さっきまで部屋のダイニングの席に座ってた羽黒は、いつの間にか神様の膝枕で眠ってた。
「済まなかったっ!」
その声の方(あたしの後ろ)を向くと、長門が頭を床に着けるように土下座していた。
本当なら、今すぐコイツに有りったけの攻撃魔法をブチ込みたかったが、あたしもガキじゃないからそれは思い止まる。神様から"手は打った"と聞いて直ぐにあたし達がここに来た時、長門が土下座してたって事は、あたしが神様を呼ぶ前に、羽黒の状況を知った(又は知ってた)神様はコイツを呼び出し、説教したんだろう。
『君が怒る気持ちは痛い程分かる。だが、長門も良かれと思って行った事、出来れば彼女を憎まないで欲しい。この事は、見守っていた私にも責任は有る...。』
何時もの念話で、あたしと神様は対話する。
流石は神様、言わなくてもあたしが思ってる事は分かってたから、それ以上は言わない。それに、神様が"自分にも責任が有る"って言うんだから、羽黒がおかしくなった経緯は、長門では無く、神様から聞いた方があたしも冷静に話を聞けるだろう...。
『経緯と処置は、説明頂けますよね?』
『彼女には、既に処置を施した。目が覚めれば、指導中に受けた暗示や苦痛は消えて、元の彼女に戻るから心配は無い。』
『有り難う御座います。それをお聞きし、安心しました。』
神様の即応にあたしは、お礼を述べ安心する。
素の状態があんな変な状態のままじゃ、彼女が可哀想だ。それに、彼女を知る仲間...特に足柄と鳥海がそんな彼女を見てあたしに何言うか想像が付くし、実際言われたらこっちがたまったもんじゃない...。