「くっ…ハァ…ハァ…!」
「…私の疲れを狙っていた様だが…その様子だとお前の方が先に潰れそうだな。」
「ハッ…まだまだ潰れないさ!」
デネブを警戒していたつもりだったが…まだ甘かった様だ…こいつは本当に強い!間違い無く、ヘレンと組むより単独の方がこいつは実力を発揮出来る…理由の考察は色々出来るが、今の私にそんな事をする理由は無い…いや…余裕が無い。だがな…
「まだまだ私は底を見せたつもりは無い…侮って悪かった…ここからは全力で行く…!」
私は自分の頭から流れ出て来た血を舐め取り、妖力解放してデネブに向けて突っ込んだ。
「やっとか…あいつは本当にスイッチが入るのが遅い。」
「ここから反撃開始って事にゃ?」
「甘いな、そう上手くは行かんさ…さっきも言った通りあいつはデネブと相性が悪いんだ…命を賭けて…漸く五分に持ち込めれば良い方だ。」
「命って…!」
「黒歌、それが私たちだ…そもそも駆け出しにとっては妖魔でさえ最初は格上。自分を振り絞らなければ生き残る事など出来はしない。あいつは今までが緩かったのさ…あいつにとって本当の意味で格上と言えば私か、オフィーリアしかいなかった…はぐれ悪魔に苦戦した事はあった様だが…オフィーリアが単独で駒王町で狩る事が出来た様に…それはやはり大した実力では無かった…」
「……」
「黒歌、あいつは今、岐路に立っている…これから先奴が強くなるかどうか…それは今にかかっている…」
「そういう事よ。家族なんでしょ?最後まで見届けてあげなきゃ。」
「…あんな傷だらけで…勝てる方法なんて…あるの…?」
「…強いて言うなら…デネブは先も言った通り、私たちが組織預りになって最初に習う剣を実戦で使える様に昇華させただけ。」
「つまり…?」
「奇抜である事が隙になる私とはまた違うけど、だからこそ付け入れる部分があるって事よ。要するに基本の抜けてるあの子がデネブの剣を見て学べば攻略法はいくらでもあるって事…基本を詰めてるなら防御も所詮は教科書通り…それは決して悪い事じゃないけど、だからこそ基本に無い動きには弱い…そこを突けば勝てるわ。寧ろ…あの子には得意分野な筈ね。」
「…二人はもしかして…もう勝ち筋が見えてたりする訳…?」
そこで私はオフィーリアの方を見る…そこには自信に満ちた笑顔があった…なるほど…当然お前もか…私は黒歌の方に振り向く…
「「当然だ(よ)」」
本当に何時もそうだ…私はギアが上がるのが遅い…せめて自分で制御が出来れば良いのだがな…
「っ!」
胴を狙って繰り出された剣を自分の剣で受け止める…どうせ逃げる体力なんて無いんだ…致命傷になる攻撃は全て見極め、受ける…もう一本の首に向かう剣は…!
「グッ!」
「足りない部分はそうする訳か…」
妖力で強化した左腕で受け止める…見栄えなど今更考えるな…死ななければ…良い。…そら、身体が空いたぞ。
「っ!」
デネブの腹を蹴って距離を離し、そのまま追いかける…そうか、簡単な事だったな…原作で取り上げられなかった以上、デネブの剣は結局は何処までも基本に忠実だったんだ…なら、私ならは…!
「オオ…!」
突っ込んだ勢いのまま、腰だめに繰り出した剣はデネブの左の剣に止められる…もう一本は…
「そう来ると思っていたよ。」
「っ!」
首を斬るため振られた剣を横に曲げた首と肩で挟んで止める…
「漸く私の間合いだな…!」
「グフッ…」
右の膝を溝尾に入れる…ここまで流れる様な動作…今までで一番上手く行ったんじゃないだろうか…
「…私は剣よりこちらの方が得意なんだが…このままお前が気絶するまでやるか?」
「…いや…良い…こんなジリ貧な戦い…模擬戦レベルで続けたくは無い。」
「つまり?」
「…私の負けだ、それで良い。」
私は首を戻し、デネブから離れた。