あれから…結局特に何事も起こらず半月程が過ぎた…
「まさか私がこんな仕事をする事になるとはな…」
「感慨に耽ってないで座ってくれないか?見ての通り片付けないといけない書類が多いんだ…」
ミリアが私の職場を同僚として訪れていた…
あの後、魔王一同とミリアたち三人の顔合わせは済んだ。私とテレーズ、オフィーリアという前例があった為、比較的スムーズに事は運んだ(最も、身分が堕天使預かりと言う事もあり多少揉めはしたが…)
そして迎えた今日…
「随分多いな…」
「早く慣れろよ?コレは寧ろ少ない方だ… 」
「……」
そこで口を閉じると奴はペンを取り、書類に向き直った。
駒王町で三人を迎え入れると決まった後、問題なのは三人にどういう生活をさせるかという事だった…
……昔なら私の様に賞金稼ぎも出来るが、今は駒王町に狩るべきはぐれ悪魔はほぼいない。比較的信用の得てる私はともかく、三人は基本的にまだ外部に出る事は許されなかった…つまり、この時点でハンターの道は閉ざされたわけだ…
戦闘でも一級クラスの実力を持つ私たちの様な者をただ遊ばせとく理由は無い…
最低でもその有り余った力を活かせる仕事を、とは…普通なる訳だが…
「…何か…質問はあるか?」
「…特にはな…いや…この字が読めんな…悪いが教えてくれないか…?」
「ん?どれだ?」
ミリアの場合…回転の頗る早い頭がある為、そちら方面の仕事が良いのでは無いか?と言う意見が出た。
……最もいくら回転が早いとは言え、まだこの世界の常識も浅いミリア…将来を見据えるにしろ、必然的にそう言うのを教える役が必要になって来る…
そこでこの仕事が回って来てしまった…
「しかし…良かったのか…?」
「ん…?何がだ…?」
「いや…私がこの仕事をしている事だよ…」
ヘレンは運送業務、デネブには建築の仕事が回って来た…両会社とも悪魔がトップに着いてるところとは言え、従業員の大半は人間である上、ミリアがおらず…その癖二人を別々にするのは非常に不安でしか無いのだが…その辺はさすがに二人を信じるとしようか…
「…少なくともオフィーリアは喜んでいたよ、毎日出なくても済むようになったからテレーズに長く着いてられる…とな。」
「…お前はどうなんだ?」
「ん…私か…?」
私は書き終えた書類を纏めて持ち、底をトントンと叩き、きっちり揃えられたのを確認して机に置く…次いで、自分の肩も軽く叩く…
「別に私は文句は無いさ…人が増えたお陰で、何かあったら私も仕事を代わって貰えるからな…最も、実際にそう出来るまでは教える事もそれなりにあるかも知れんが。」
「……」
「どうした?」
「いや…実際には迷惑をかけているんじゃないかと思ってな…」
「……多少、安心する言い方をしてやろうか?」
「ん…?」
「少なくとも、ヘレンやデネブ…比較的長い付き合いにはなったが…オフィーリア…こいつらよりはずっと気が楽だ…」
「…あの二人は仕方無いとして…オフィーリアも、か…?私の知っているあいつとは印象が明らかに異なるし、アレで真っ当に生きている様に見えたが…」
「想像着くだろ?確かに丸くなったが、あいつは基本的にトラブルメーカーなんだよ…本人にどの程度自覚が有るのかは知らんが…」
「そうなのか…」
「だからな…お前が同僚なら私も肩の荷が降りるんだよ…」
「……」
「さてと…書類は一段落したか?」
「ん…ここまでなら出来たが…」
「見せてみろ…んー…ま、ここまで出来てれば十分だろ、何も今日中に終わらす必要も無いしな…何ならこの後も続きをやるからな。」
「続き?この後何かやるのか?」
「ああ…フッ…そんなに身構えるな。大した事じゃない…学園の見回りに行くだけだよ。」
「見回りだと?」
「だから一々身構えるな。ほら?学園って言うのは学生や教師…それなりに大人数が共同で過ごす事になるだろ?その場合、特に何も無くても建物周りが傷んで来てな…」
「…成程な、その箇所を確認して回るのか。」
「そうだ、話が早くて助かるよ…要はその箇所を確認、メモして後で業者に修理を頼んだり、直せるなら自分で直すのも用務員の仕事でな…ま、習うより慣れろ、だ…行こうか?」