翌日…若干の不安はあったものの、いざ仕事を始めてみれば…
「……」
向かいに座るミリアをチラ見する…黙々と書類に向かってペンを動かす姿を見る限り、少なくとも問題は何も無さそうだ。時折やはり読めない漢字があるのか手が止まる事はあるものの、きちんと昨日購入した辞書を見ながら書類に書き付けて行く…この分なら後は仕上がりを見れば良いだろう…私は視線を自分の書類に落とした。
「…そろそろ見回りに行かなくて良いのか?」
ミリアにそう言われ、時計を見る…かなり集中していた様だ…
「そうだな、そろそろ行かないとならんな…」
そう言って腰を上げ…あ…
「今更だが一緒に回っても能率が悪い。地図を渡すから、二手に別れないか?」
「…私はまだ二日目だが?」
「お前なら出来るさ…オフィーリアだってそれくらいは出来てたしな。」
「……微妙な信頼のされ方だな…大体、私は奴の事は苦手だが、アレで仕事は出来る方だと思うんだが…」
用務員室を出る…
「何か聞きたい事があったら携帯に連絡をくれ…あー…今からだと休み時間に被って来るからまた女子が寄って「分かってるさ、昨日の様な失敗はしない」なら、良い。」
しばらく校内を回り、そろそろ授業が終わるな…と、思った辺りで携帯が振動する…ミリアからだ。
「…どうした?」
『例の男子二人を発見した…』
そこで私は首を傾げる…今はまだ授業時間だ、さすがに覗かれたからと言って授業すっぽかしてまで追いかける事は無いと思うんだが…
「…何処でだ?」
『屋上。』
「……特に問題を起こしてないなら私たちの出番は無いぞ?授業をサボってる事に関しては私たちの管轄外だ、後で報告はしなきゃならんだろうが。」
『いや…一人が見張りをしつつ、もう一人は屋上の柵から宙吊りになっている様だ。』
…少し考えただけでその行動の意味が見えて来る…やれやれ…とんでもない事をするものだ…
「そういう事か…全く、たかが覗きにそこまで命を賭けるか…」
もちろん、やられる側はたまったものじゃないだろうが。
『さすがに捕まえた方が良いんだろうが、下手に声かけて落ちられても困るだろう?』
「そうだな…う~ん…ちょっと待っててくれ、電話は繋げたままで良い。」
『分かった。』
私は校舎の影からそいつの姿を伺う…
「……事前に更衣室の窓の鍵を開けたは良いが、開けるのに手間取っているか…」
そこにはロープで宙吊りになりながら、手をバタつかせるバカがいた…
「なまじ、私が毎回吊るすから慣れてしまったのかね…」
さて、いつまでも見ていても仕方無い。とっとと捕まえなくてはならんな…
「…ミリア、そっちはどうだ?」
『…向こうはこっちに気付いてはいない。何時でも捕まえるのは可能だろう。』
「…こっちもバカを見付けた…私の合図でお前も動け…どっちかを捕まえれば何だかんだ仲間意識はある様だから、片方は大人しくなるだろうよ。」
『分かった…』
「そう緊張するな、あいつら丈夫だから妖力解放さえしなければ腹とかに蹴り入れた程度じゃ死なんしな。」
『そう言われてもな、加減するのは中々難しいんだ…』
「…そっちの奴は地に足付けてるからまだ楽だろう?こっちは宙吊りだぞ?しくじったら面倒な事にはなる…」
全く仕事を増やしてくれる…この後はサーゼクスには報告するが、さすがに停学にぐらいはしてくれないとやってられん…
「ほら、行くぞ?…3…2…1…行け!」
携帯を地面に置き、妖力解放しながら跳ぶ!
「!…テレサさん!?」
「……」
宙吊りになってるそいつの足に抱き着き、手刀でロープを切る…!
「うわぁ!?」
「っ!」
落ちる際にそいつの体勢を変え、地面に着地する!
「…ふぅ。」
「あわわわわ…!」
図らずも横抱きの状態になってるそいつの首筋を叩き、意識を奪う…
「やれやれ…」
そいつを地面に下ろすと携帯の置いている所まで戻る…
「…ミリア。」
『こっちも捕まえた。…気絶させてしまったが、構わないか?』
……さすがだな。
「目立った怪我が無いなら別に良い、ちょうど地図に載ってるだろ?保健室までそいつを運んでくれ…私もすぐに行く。」
電話を切り、意識を失ってるバカの所まで戻る事にした。