結局真面目に掃除をしようとしていた私はある事を思い出し、手早く終わらせた…
実は普段から週の何処かで休みの取れた奴が率先して掃除を含む家事をやっているのだ。割と綺麗好きな黒歌はもちろん元々比較的真面目な朱乃…更に言えば、ズボラそうなセラフォルーまで一人であってもきちんとやるらしい…色々釈然としないが、クレアやアーシアは言うまでも無い(と言うかクレアは私と二人で暮らしていた頃から普通に一人でこなしていた)
……要はだ、今私が真面目にやらなくても部屋はそれなりに綺麗なのだ…そうでなくても平日の日中は部屋に誰もいないのだからそもそも大して汚れない。
つまりここで私がサボっても何の問題も無い訳だ。…そう考えたら一気にやる気が無くなった。
「……寝るか。」
帰って来るのが不規則になりやすいセラフォルーと違い、学生組と黒歌は後二時間程で帰って来るだろう…それまでは寝る(夕食?基本的に飯を用意するのは私では無い)
実際口に出してみると名案に思えたそれを実行する為、掃除機を片付けた私は自分の部屋に来るとベッドに寝転がった…
「テレサー…起きてー…」
「ん…」
クレアの声が聞こえる気がする…
「起きてー…もう夕方だよー?」
「ん…むぅ…後一時間…」
正直…もう少しこの微睡みの中にいたい…
「いや長いってば…」
「珍しいですよね、テレサさんがこんなに寝起き悪いなんて…」
「…私と二人で暮らしてた時はたまにあったけど…」
「案外、色々あって余り寝られてないのかもしれません…出来れば寝かせておきたいですけどね…」
「でも…お客さん来てるし…ご飯も冷めちゃうよ…」
「……客…?」
私は目を開ける…目の前にクレアとアーシアの顔があった…
「あ、良かった…テレサ、お客さん来てるよ?」
私が上体を起こすのに合わせ、私の顔を覗き込んでいたクレアとアーシアが退ける…頭の後ろを書きながら欠伸をした。
「…わざわざ起こしに来てくれたのか…すまなかったな…で、客とは誰だ…?」
「ミリアさんと、オフィーリアさんです。」
「……何だ…あいつらか…」
私は起こしていた身体を戻すと目を閉じる…
「いやいや寝ないでってば。」
「…あいつらならそこまで気を使う事も無い…三十分ぐらいなら待たしても良いだろう…」
「わざわざ来てくれてるんですから待たしちゃダメですよ…大体、もう夕食出来てますから…」
「…むぅ…そうか…分かったよ、なら起きる…」
再び上体を起こし、ベッドから立ち上がろうとする私をアーシアが止める…
「待ってください…そのまま行くんですか?」
「どういう意味だ…?飯が出来てるし、二人が待っているんだろう…?」
「だってテレサ…髪、寝癖だらけだよ?」
「別に良いだろ…」
「ダメですよ。…クレアちゃん、私が直しますから先に行ってて貰って良いですか?」
「うん、分かった。」
クレアが部屋を出て行く…
「…アーシアも行って良いぞ?寝癖ぐらい自分で「後ろががっつり跳ねてますし、自分ではさすがに難しいと思いますよ?」…ハァ…分かったよ、なら、頼む…」
「はい。」
アーシアが何時も持ち歩いてるのか知らんが、ポケットから櫛を取り出して私に後ろを向くように促す…ふむ…
「…アーシア。」
「何ですか?」
「…日本語、上手くなったな。」
「……大体話せるようになってもう結構経つんですけど…ありがとうございます…」