保護者である筈の私が迷子になると言う、到底笑えないハプニングは有ったが…幸いその後は何事も無く旅館には戻って来れた。
旅館の受付に聞いてみると既に食事は出来ているらしく、部屋に置いて有ると言うので私とクレアはオフィーリアと別れて部屋に戻った。ちなみに部屋割りは…
銀杏の間…私、クレア、黒歌、小猫
楓の間…朱乃、セラフォルー、アーシア、オフィーリア
金木犀の間…ミリア、ヘレン、デネブ
…と、なっている(部屋の名前こそそれぞれ花の名前が付き、別の部屋の体裁だが…身も蓋も無い話をすれば部屋の造りは全て一緒の様だ…)
……改めて考えるとセラフォルーとオフィーリアを一緒の部屋にするのは非常に不安だが、部屋もある程度広さが有るとは言え、五人は少々手狭に感じるからな…とは言え、あの三人の方にオフィーリアを入れるのは不安通り越して最早危険を感じるレベルだ。
…一応、万が一オフィーリアに何かされそうになったらすぐ駆け付けてこっちに引き取って拘束しておくから連絡しろ、とは…セラフォルーには言ってある…(セラフォルー自身は普通に今は友人の感覚でいる様だが、ふとした拍子にスイッチの入ったオフィーリアが襲いかからんとも限らない…)
最も部屋自体は他にも空いてる様だから旅館側に事情をある程度話してオフィーリアだけ反省を兼ねて一人部屋に変えてもらうと言う手も有る…まぁ、コレに関しては事が起きてしまってからになるだろうな…セラフォルーもいよいよ耐性は着いてる様だから(時々、今でもセクハラスレスレのスキンシップをされるらしい…)今更あまり取り乱す事も無いだろうが。
さて、それで今は…
「やはり多いな…旅館の食事は…」
昨日も食ったが、やはり一人前の量が多い…私は一般的な量しか入らないからこの量はさすがに辛い…と言うか、朝食でもここまでの量が出るとは思わなかった…
「多いなら残しても良いんじゃにゃい?この後出かけるなら、お腹キツキツだと辛いわよ?」
「そうも行かんだろう…」
昨日着いてすぐに出された夕食を食って何も無かったのだから、食事の方に特に悪意の無い事は既に分かっている…だったら無闇に残す気にはなれん。
「多少苦しくはなるかも知れんが、私は体質柄消化は早いからな…別段問題は無い。」
不味いなら拷問も良い所だが、さすが旅館を名乗るだけ有って味は野菜ですら絶品だ。コレで残すのは贅沢と言うものだろう…
「あー…そう言えばあんたって「当然ろくに食べる物の無い頃も経験してるからな、最もあの頃はそれ程食べる必要も無かったからそこまで苦労した記憶も無いが」…そう…」
「あの…せっかく美味しい物を食べてるのに、何でそんな深刻な話になるんですか…?」
「ん?あー…悪かったな、小猫…」
黒歌は逃亡生活も長かったし、ある程度極貧生活も体験して…且つ色々有ったからもう吹っ切れてる節が有るが…小猫にとっては姉と別れた頃の事で有る事もあって、まだトラウマ物の記憶になるよな…(最も、手の止まってるクレアの方を見ながら言ってるからクレアを気遣ってる面の方が強そうだが…)
「ごめんにゃ、白音…」
「いえ、良いですけど…」
……一緒に暮らす様になった事も有り、小猫から黒歌に対して蟠りは消えつつ有るが…どちらかと言えば今の様にまだ小猫の方に何処か遠慮が出る事が多い…そんな事を考えてたら隣から服の袖を引っ張られた。
『テレサ…』
『ん?どうした?』
隣に座っていたクレアから小声で話し掛けられたので私も小声で返す…
『黒歌お姉ちゃんと小猫お姉ちゃん、もうちょっと仲良くならないかな…?』
小猫の場合、突然スイッチが入った様に今までの分を埋めるかの様に黒歌に甘えに行く事が有るが…基本的には今の様に何処かよそよそしい態度を取る事も多い…そこをクレアは気にしてるんだろう。
『大丈夫だ、二人は元々実の姉妹だからな…』
そう言ってクレアの頭を撫でる…そもそもの話、この話も二人には小声でもこの距離なら聞こえてしまうんだがな…まぁ聞こえてた所でいきなり改善もされないだろうが。
コレに関しては焦っても仕方の無い問題だ、離れてた期間がそれなりに長かった。未だ一緒に暮らし始めた時よりその頃の時間の方がとにかく長いんだ…そう簡単には関係は変わらない。
なまじ自分より歳下のクレアがあまり周りに甘えたりしないせいも有るのだろう…仮にもう一人…この場にそう言う存在が居たら、自然と自分もそうしたいと思うのかも知れないが。
……結局その後は微妙に気不味くなりながらも私たちは食事を終えた。