「頼む見逃してくれよ!」
「駄目だ。」
あれからしばらくして、私と黒歌は一人の男を連れて交番を探していた…
大体一時間程前の事だ、私と黒歌の前を歩くセラフォルー達と男がすれ違った直後、セラフォルーが物凄い勢いでこっちに振り向いて視線を飛ばして来た……正直、私がアイコンタクトのみで会話出来るのは横に居る黒歌だけでは有るが、そいつが私の横を通り過ぎ様としたところでセラフォルーの視線の意味に気付いた。私の尻の辺りに伸ばされた奴の手を掴む。
「んなっ!?」
「まさかセラフォルーを出し抜くとはな…とは言え、女だと思って気を抜き過ぎだ。」
「…まさか、痴漢?」
「ダイレクトに触ったなら、セラフォルーがさすがに先に反応するだろ。」
黒歌の質問に私は掴んでいる男の手を見せる…
「あら…?コレ、あんたの財布…?」
「ああ。…お前、スリだな?現行犯だから言い逃れ出来無いぞ?取り敢えず今お前が持ってるコイツと…あそこにいる女から盗んだ財布は返して貰おうか?」
「おい!財布は返したじゃねぇかよ!?」
「それだけで済む訳無いだろ?スリは普通に窃盗だぞ?」
男から受け取ったセラフォルーの財布を投げ渡し、クレアたちの事をセラフォルーに一旦任せ、こうやって喚くバカを引き連れて私たちは街中を練り歩いている…全く、せっかくの旅行にもうケチが着いた…早い所このバカをどうにかしたい…
「…お前地元の奴なんだろ?私たちは土地勘が無いんだ、早い所交番に案内しろ。」
「嫌に決まってるだろ!?」
「…ねぇ?結局何も盗まれてにゃいんだし、今回は見逃してやったらどうにゃ?」
あの後全員の荷物を確認したが、結局財布を盗まれたのはセラフォルーだけで、私を含めた全員の持ち物が無事だった。……まぁ正直私らしくない事をしている自覚は有る…何でわざわざせっかくの家族との時間を潰してまで私はこんな事をしているんだろうな…?考えてみれば騒ぎを起こさない予定だったのに、結局私が問題を起こしている事になるんだよな…
「……仕方無いな、行けよ。」
私は掴んでいた男の手を離した。
「!……良いのか?」
「良いから私の気が変わらない内にとっとと行け。」
「ありがとう!この恩はきっと「何度も言わせるな、こっちはせっかくの旅行に水差されてイラついてるんだ…さっさとこの場から消えないと気絶させてでも交番に運ぶぞ」ああ!本当にありがとな!」
一目散に逃げて行く男を見ながら溜め息を吐く…やれやれ…無駄な時間を過ごしたな…
「戻るか。」
「そうね…」
今朝のは私の不注意だろうが、コレは純粋なハプニングだ…この後はさすがに何も起こらんとは思うが…何故か非常に嫌な予感がする…まさかコレが始まりだとでも言うのか…?