私の右腕に二つの丸い凶器を押し付け、しがみついて来る朱乃に溜め息を吐きつつ(悪魔の力全開の様で、引き剥がすには妖力解放以外無さそうなので諦めた…怪我をさせたくは無いしな…)露天風呂まで向かう…
来て早々…既に湯に浸かっている連中が私たちの事を見て揉め始めて、また溜め息を吐いた…
「良い加減にしろ…朱乃はまだ良いにしてもお前らが率先して騒ぐってどう言う事なんだ?……そこで静かに湯に浸かっているガキ共を少しは見習え。」
「「だって…」」
「クレア、アーシア…それに小猫。そんな隅に居なくても良いだろ?こっちに来い。」
「「あっ!ズルい!」」
「黙れ。」
歳だけ無駄に重ねても、中身は子供のままの女共を一蹴し…ソワソワしつつもこちらをチラチラ伺っている三人を呼びながら、一瞬気の緩んだ隙に朱乃の身体に収まっていた腕をさっさと引っこ抜き湯に浸かる……むっ…少し熱いな…まぁ、温泉ともなればこんな物か…
呼んだ三人がゆっくりこっちにやって来る……全く、全員まだ子供の癖に遠慮ばかり覚えて行く…まぁ、それでも普段は私もあんまりこいつらの相手をしてやってないしな…そう言う理由も有るか……大部分はそこで未だにグダグダ喚いている年長者三人のせいも有る気がするがな…
『……』
小猫とアーシアが私から肩幅分くらい空けてそれぞれ隣に陣取り、クレアが前に…ハァ…
「ひゃっ!?」
「キャッ!?」
「わっ!?」
横二人の肩をそれぞれ抱く様にして、引き寄せ…クレアを開いた私の両の足の間に座らせる…
「子供がそう遠慮するな…せっかくの機会だ、もうちょっとくっ付け……あ、そこの馬鹿三人は放置して居て良いからな?」
更にヒートアップする三人を尻目に三人の温もりを堪能する…いや、本当に落ち着くな…馬鹿三人と違ってこいつらは私に邪な気持ちは持ってないからな…たまにはこう言うのも悪くない。
それからしばらく温泉に浸かって、私は一人…先に湯から上がる…やれやれ…この身体は温泉も長時間は駄目か…全く持って難儀な物だな…
その後全員が戻って来てから運ばれて来た昼食を頂く… …また量が多いが、まぁ食えなくは無い…味は文句無しだしな。
飯を食ってからは、私は特に何もせずボーッと過ごしていた……まぁ、今はまったりするにはちと向かない状況だがな…何でちゃんと部屋を分けたのに、オフィーリアたちもこの部屋に居るのか…
「おい。」
「ん?」
旅館の部屋に良く有るテラスに置いてあった椅子に腰掛けて居た私は、私は取り敢えず向かいの席で本を読んでいたミリアに声を掛けた。
「戻って来たのは良いが、お前らは何でこっちに来る?部屋は分けただろ?」
「……邪魔か?なら、私たちは戻るが?」
「別に邪魔って程でも無いが…」
ミリアは元より、残り二人も比較的大人しいしな…部屋の中は大人数が居る為に少々手狭では有るが。
「なら良いじゃないか。」
そう言ってまた本に目を落とすミリアから顔を逸らし、部屋の中に目を向ける…
「おっしゃ!上がりだぜ!」
ヘレンがそう叫び、持っていたトランプを場に捨てる…今は、何のゲームをしていたんだったか…?
「なぁ?」
「ん?」
今度はミリアの方から声を掛けられ、そちらに顔を向ける…
「暇なら、私になんて構わずあっちに混ざって来たら良いじゃないか。」
「……無理だろ。」
実は私も少し前まであちらに居たが、人数が増えたので抜けた…トランプのゲームは大人数でも出来るのが売りだが…ベストはやはり四人か、有っても五人くらいだろう…どうしても一人一人の手札の数が減って来るしな…
今だってデネブとオフィーリア、それに朱乃とセラフォルーは入ってないのに、それぞれの手札の数がかなり少なめになっている様だ…あれ以上入ったらもうゲームは成立しないだろう。
「何なら本でも読むか?私の荷物に何冊か有るが?」
「……お前、給料まだ入ってないんじゃなかったか?」
少なくとも今読んでるのは私が以前貸した物では無い…本自体は、既に私に返却されている…
「アザゼルに頼んで、何冊か見繕って貰ってな…」
「お前もすっかり、読書家だな。」
「普段特にやる事も無いからな…元々嫌いでは無いが。」
「まぁ良い、なら一冊貸してくれ。」
「ああ。」
ミリアが持っていた本を閉じた。