「取り敢えず持って来たが、読みたいのは有るか?」
「どれ…」
ミリアが渡して来た本は三冊…と言うか、さっきまで読んでたの含めて四冊も持って来たのか…まぁ、私と違ってペースが早い方なんだろうな…良く考えてみたら、さっきの本もページが既に終わり近くまで来てた様に思う…そんな事を考えながらそれぞれ冒頭部分を適当に流し読み……ん?
「全部推理物なのか?」
「最初にお前が勧めて来たのがそれだったからハマってしまってな…何だ、気に入らないか?」
「別にお前の好みにケチは付けんよ。」
最も、私は元々そんなに読む方では無いがな…まぁ、三冊とも単発物の様だし、厚みもそれ程無い様だから読めなくは……良く見ると文面がやけに古めかしい…もしやと思い、裏表紙を開いてみた。
「……随分古いのにハマったんだな…」
「本屋で見掛けた最近のも悪くなかったんだが、不思議と…私はこちらの方が好みでね。」
西洋人系の見た目のミリアが、初版が昭和真っ只中に発行された日本の推理小説を読んでると言うのは…何ともまぁシュールとも言える…ある意味こいつらしいかも知れんが。
「…で、結局どれを読むんだ?」
……読むんだと聞かれてもな、さすがにその頃の推理小説となると私の好みからは外れる…とは言え、わざわざ持って来て貰って借りないと言うのも問題か…
「……じゃあこいつを貸してくれ。」
何となくで一冊を選び、他二冊をミリアに返す。
「ああ。」
まぁ、たまには普段読まないのを読むのも良いだろう…
「ミリア。」
ある程度まで読み進めたところで私はミリアに声を掛けた。
「ん?」
「……お前、意味分かって読んでるのか?」
「どう言う事だ?」
「いや、日本の歴史知識位は頭に入ってないと理解出来無い箇所が有るだろ?」
「……調べたよ。色々有ったんだな、この国は…」
まぁ、ミリアならそうするか…最も、前世では恐らく日本人だっただろう私は既に投げ出したくなってるんだがな…偉そうに言ったが、私自身思った以上に知識が欠けてしまっていたらしく…話の内容がまるで頭に入って来ない…
と言うか、この頃の小説だと当たり前の様に戦時中の話が出て来るんだな…
「ギブアップか?」
「!…何?」
「普段愛想の無いお前の顔が、今は三割増しで険しくなってるからな…」
「……そう言うお前は、随分穏やかに笑う様になったんじゃないか?」
「そうか?」
「ああ。」
まぁ、あちらとこちらでは文明レベルからして違う…こいつは器用だから、適応こそ比較的早かった様だが…それでもしばらくこいつからは何処か余裕の無さを感じていた…今のこいつにはもうそれが無い。本当の意味で、この世界に馴染んで来た証左だろう。
「そうか…なら、それも良いかも知れんな…」
「向こうに、帰りたいか?」
「さて、どうだろうな…大体、帰れるのか?」
「さぁな…」
私は、向こうでのミリアたちの事を原作知識としてしか知らない…故に、例え帰りたいのだとしても…私から掛けてやれる言葉は何も無い。
「愛想が無くても、感情は顔に出るんだな…お前は。」
「!…そんなに分かりやすいか?」
「最近な、何となくだが分かる様になった。……何、お前が気にする事じゃないさ…ところで。」
「ん?」
「お前はお前でずっと色々気を揉んでる様に見えるんだが…何か悩んでる事でも有るのか?」
「有るさ、色々な…」
それこそ、睡眠のほとんど必要の無い半人半妖の身体で無かったら…確実に睡眠不足で可笑しくなる程にはな…
「日中は良い…だが、夜になるとな…時々色々と考えてしまう…」
「色々?」
「ああ、色々だ…」
考える事が苦痛にはならない…本来、私に睡眠は必要無いのだから…
「……いつからだ?」
「さぁな、もう覚えていない。」
多分、初めてこの世界に来た時からずっと…今はあの頃の記憶も余程印象的な出来事でも無い限り、曖昧だからな…
「相当、根が深そうだな…」
「別に悩む事は悪い事じゃないだろう?」
「限度が有る…大体、一人で解決出来無い悩みならいくら悩んでも仕方無いぞ?」
「個人的な事さ、他の奴には頼れん。」
「……まぁ、以前も言ったが…愚痴くらいなら別にいつでも聞いてやる。」
「ああ、その時は頼む。」
……もしその時が来たら、な…