「ハァ…」
「だいぶお疲れみたいね…」
「ふぅ……疲れもするさ、気を抜いてればこれだからな…」
結局懸念事項だった身内が特に揉め事を起こす事は無く、旅行中荒事に巻き込まれる事も無かった…これだけを見れば普通の旅行だったとも言えるだろう…昨日の日中は私もダラダラしてただけだしな……本当に、そのまま何事も起こらず今日を迎えたかった…そう考えながら、私はクレアとアーシアに手を引かれつつ…私たちの前を歩くシスター服姿の女の後ろ姿を見詰める…
『…で、結局ガラテアってどんな奴にゃ?』
声を潜めて聞いて来る黒歌に私は答えた。
『……分からん。』
『は?』
『ガラテアのNoは3、二つ名は神眼…正直ハッキリ分かる素性はその位だ…ガラテアは普通の戦士では無く、以前話した組織の監視役の一人だからな…元々、情報のほとんどが伏せられていたんだよ…まぁ、かなりの実力者なのは確かだがな…』
『……あの顔の傷に付いては?』
『アレか。ガラテアは例の北の戦乱後に組織を抜けていてな…素性を隠す為に自分で両目を潰したんだよ…あの世界で銀髪はまだしも、銀眼はさすがに誤魔化しが利かないからな…』
『…と言う事は、人間として生きてたって事?』
『ああ。いつからかは知らんが、向こうでも離反後にとある町の教会でシスターをやっていた…あー…その時は記憶喪失では無かったぞ。』
『性格的にはどうにゃの?』
『町の人間を守る為に町を狙う覚醒者と戦った…一人では勝てないと判断して、自ら自分の居場所を組織にバラしてやって来る追っ手と共に狩ろうとしていたんだ…その後、自分が殺されるのを覚悟の上でな…』
『……少にゃくとも、最後は人間の味方だったのね…』
『ま、結果だけ言えば上手くは行かなかったんだがな…』
『え?』
『まぁ、この場では関係無い話だ…』
今話すと少々長くなる…
『そう…で、結局彼女…どうするの?』
『その話なら私も気になる…結局、サーゼクスは何て言ってたんだ?』
私たちの後ろにいたミリアがこっちに来て、そう聞いて来る…ハァ…
『半人半妖としての記憶が蘇った時、それを受け止め切れずに暴走…覚醒者になったら困るから、取り敢えずは様子見…と言うか、しばらくこっちで監視してくれだとさ…』
要は、万が一このままあいつが覚醒したら斬るしか無くなるのだ…まぁ、記憶が戻ると同時にあいつが『ルナ』では無く『ガラテア』になるならそうする必要も無いがな……と言うか、私もさすがに今のあいつを斬れと言われたら後味が悪過ぎる…今のあいつはどう見ても戦う力なんて無いただの女だからな…
『と言うか、あいつはあの通り目が見えないからな…そこら辺のフォローもしないとならん…』
『てか、彼女は向こうに帰りたいと思うんだけど…その辺は?』
『事情はどうあれ、今のあいつは密入国者だ…諸々手続きに時間が掛かるから、しばらくはこっちで暮らすしか無いと納得させるしか無い。』
『世話するのはこっちなんだけどね…』
『嫌か?』
『……そんにゃに薄情な事言わにゃいわよ。』
『まぁ、時折グレイフィアをあいつの身の回りの世話に寄越すと言ってるから問題有るまい。』
と言うか、サーゼクスにそう約束させた。何が悲しくて全部こっちでやらないとならないのか…
『にゃら、本当に問題にゃいんじゃない?』
『……そう言えば、身の回りの世話で思い出したんだが…』
『ん?』
『いや、私たちは基本的にトイレには行かないし…生理すら来ないんだが、それで自分の事を普通に人間だと思ってるってどう言う事なんだ?』
……まぁ、生理の方はともかく…私は普通に催すから何とも言えんがな…
『不可解では有るがな、それとなく確認しても本人は何故か全く不思議がって無いんだ…下手に突っついて、記憶が戻っても困るから追求はやめたが。』
『やっぱり面倒事ににゃるかもね…』
『良い、もうあいつの世話に関してはグレイフィアに丸投げする…』
これ以上付き合ってられるか…