駒王町に戻るまでの数時間…あいつの事を気にしていたが、特別目立った問題は起きず無事に我が家で有るマンションまで帰って来れた。取り敢えずミリアたちは部屋に戻り、私とオフィーリアだけでテレーズに今回の一件を報告する…
「……またお前は妙な事に巻き込まれているな…一度お祓いにでも行った方が良いんじゃないか?」
「……」
相変わらず体調は思わしくないらしく、顰めっ面でそう言うテレーズにすぐに反論の言葉は出て来なかった。とは言え…
「そうは言うがな、元々はここまで酷くなかったんだ…」
ここ最近、どうにも色々な事が起き過ぎている…当初は暇で仕方無いとか思ってたのにな…
「…ハァ…で、ガラテアの話だが…」
「何か思う所が有るか?」
「……別にガラテアの監視に付いて不満は無い。と言うか、今の私じゃ何も出来無いしするつもりも無いが。」
「じゃあ何だ?」
「そうさな……いや、私がこの場で言える事は特に無いか。」
「言い掛けといてやめるな、何だ一体…」
「多分今夜辺り進展が有ると思うが、そんなに聞きたいのか?」
「何か有るなら先に言え、後から知る方が面倒だ。」
「……そうか。なら、ガラテアの事なんだが…」
そして、私はテレーズからとある仮説を聞かされる…
「……ほう?」
「合ってるかどうかは…先も言った様に今夜分かるだろうさ…と言うか、お前なら気付いても良さそうなものだが?」
「まぁ、そうかもな…さて、そろそろ戻る…じゃあな、養生しろよ?」
「ああ。」
「すみません、ご迷惑をお掛けして…」
「気にするな……正直、慣れてるからな。」
「そっ、そうですか…」
三年間は盲目のまま暮らしてはいても…やはり環境が変わると出来無い事はあるものだ…実際何をするにしても、やはり介助は必要になる…
「まぁ、窮屈な思いをさせる分…こっちで出来るだけの事はする…何か有ったら言え。」
「そんな…突然転がり込んだのに、こんなに良くして頂いて…」
「気にしなくて良いにゃ、家族が増える方が楽しいにゃ。」
「その、ありがとうございます…」
初めこそこいつに警戒はされたが、今はこいつの精神状態も安定している様だ…この分だとあまり執拗に監視しなくても良さそうだな……ま、後は出来ればテレーズの予想が外れてくれると良いんだがな…最も、正直それも見込めない様な気はしているがな…
……やがて慌ただしい時間も過ぎ去り、明日は普通に平日なのでクレア、アーシア、小猫を寝かせ…そして今日は朱乃とセラフォルーも自分の部屋に行って貰っている(朱乃はともかく、セラフォルーには居て貰った方が良いんだが…明日からまた出張だと言うから無理強いは出来ん…)
「…で、どう言う事にゃ?」
「いや、テレーズの方から一つ聞かされた話が有ってな…もう少し待て。」
「何を待ってるにゃ?」
「正確には誰を、だ。」
「?」
テーブルの上に置かれたビールの缶を開けて口を着ける…っ…来たか。
部屋のドアが開き、一人の女が部屋から出て来る…
「にゃ?眠れな「黒歌」ん?」
私は話し掛ける黒歌を遮り、その女に声を掛けた。
「初めまして、で…良いのか?……ガラテア。」
「え!?」
シスター服から黒歌に借りたパジャマに着替えたその女が口を開く…
「記憶は共有してるから自己紹介は必要無い。いつ、私の事に気が付いたんだ?」
「いや、気付いたのは私じゃない…まぁ、取り敢えず座れよ…そう警戒しなくて良い。」
「説明して欲しいんだけど…一体どう言う事にゃ?」
「簡単に言えば…こいつの身体には二つの意識が宿ってるのさ。日中はルナ、そしてルナが眠りに付く夜間にはこいつ、ガラテアが目覚める……そうだな?」
私の言葉にガラテアは頷き、胡座をかいて座る…
「難儀なものさ、この世界に来た日からずっとこの状態だからな…」
「と言いつつ…そこまで不便さを感じてる様にも見えないが?」
「三年もこれなら嫌でも慣れるさ…最も、私の活動出来る時間はそう長くないからな…未だにこの世界については分からない事だらけだが…」
「それでもどうにかなってる様に見えるのは、ルナの方にこの世界の知識が有るからか?」
テーブルの上の未開封の缶を手に取り、ガラテアに差し出す。
「ああ。最も、自分の事も分からない奴みたいだがな…それでも、お陰で助かってるが。」
ガラテアが缶を受け取り、封を開けて口を着ける…
「あー…そっか、あんたとテレーズも元は…」
「ああ。だからテレーズもすぐに思い当たったのさ。」
「何の話だ?」
「私も元は他人と身体を共有していたって話さ。」
「……詳しく聞かせて貰えるか?」
「構わないが、先ずは今後の事を話しても良いか?お前だってずっとそんな生活するのは不便だろ?」
「……それもそうだな…しかし、方法は有るのか?」
「さて、お前と私では色々事情が違うからな…まぁ、何か考えるさ。」
取り敢えず純粋な記憶喪失よりはマシだが…どうしたものかね…