「なぁ…これ、飲んでいいのか?」
「……好きにしろよ。」
部屋に入るなり、テーブルの上に有ったビールの缶に注目するヘレン…本当にこいつ何をしに来たんだ…?
「へへっ…どうせなら一緒に飲まないか?」
……良く考えたら、ヘレンは普通に酔っ払うタイプだった様な気が…まぁ、ビールなら大丈夫だと思うが…
とまぁ、そんな感じで…私は今、ヘレンに酒を飲む許可を出した事を後悔していたりする…
「だからよぉ…あんたはさ、あたしらに遠慮してる気がすんだよな…」
「あー…そうかもなぁ…」
ヘレンの言葉に私は雑な相槌を打つ…まぁ、これが言いたかったのは分かるが…何せもうこの話は五回目だからな、さすがに飽きて来た…
……正直、酔っ払いに何言っても無駄な様な気がするが…一言言っておく方が良いのか?
「ヘレン。」
私はヘレンの方に顔を向けずに、声を掛けた。
「んあ?」
「……私はな、踏み込んで欲しくないのさ…私とデネブは…違う。」
何だかんだ、こいつが私の事を気に掛けてるのは分かっていた…だが、私からすれば余計なお世話だ…正直、今更…と言う想いも有る…
「……あんた、本当にそれで良いのか?」
ヘレンの口調に違和感を感じて、そちらを見る……こいつ…
「酔ってたんじゃなかったのか?」
「さてね…てか、あんたそれで良いのか?」
「……ああ。お前にだって有るだろう?口出しして欲しくない事の一つや二つ?」
「言いたい事は分かるし、実際あたしにも有るけどさ…でも、あんたの場合…相当根が深そうに見えるけど?」
……ミリアにもそんな事を言われたかな。
「良いんだよ、この悩みは私だけの物だ…悩むのは私の権利だ。」
「義務になってたりしないか?」
「そうだとしても…お前には一切、関係が無い。」
「そんな寂しい事言うなよ…力になりたいとか、思ったら駄目か?」
「何故、そんなに私の事を気にする?」
正直嫌ってるとまでは言わないが、こいつとのファーストコンタクトは最悪だ…寧ろ私の方がこいつから嫌われていても不思議は無い……ミリアには友人だと言ったがな、少なくとも今日までほとんど絡んで来ないから嫌われているのだとばかり思っていたのだが…
「いや、だって…あんただって仲間じゃんか。」
「私はまた事情が違うのだがな…」
「結局は同じだよ、姉さんも…デネブだってそう思ってるさ…」
実際のクレイモアとの乖離…出自の違いすら私の悩みの一つなんだが、あっさり仲間だと言われたな…
「そう言ってくれるのはありがたいんだがな…それでも言えんな。」
「何でだよ?」
「悩みの大半は私の生まれが関係している…そうなると、お前にも助言は出来無いだろう?」
「そんなの聞いてみないと分かんないじゃんか。取り敢えず言ってみなよ…少なくとも、あんたの家族にだって言わないしさぁ…」
しつこいな…まぁ、こいつがそう簡単に諦める訳が無いか…ある意味、私以上に拗らせていたデネブを懐柔した程だからな…
「ハァ…分かったよ、確かに堂々巡りの思考にも飽き飽きしていたしな…」
「お、話してくれるのか…じゃあ、言ってみな「アホ、後日に決まってるだろ」いや、ここは語る流れだろ?」
「もう夜が明けるだろ?今日はそろそろ帰れ。」
「ちぇ…まぁ、仕方無いか…分かった、今日は帰るよ…で、いつ会う? 」
「わざわざ予定決めるのか?」
「あんたの場合、決めないと無かった事になりそうだしな…」
ちゃっかりしてるな…
「じゃあ今夜な…」
「今夜?随分急だな…」
「不服か?」
まぁ、今日は平日で明日も普通に平日なんだがな…
「いや、良いよ…会うのはここでか?」
「いや…今日からセラフォルーが出張でな、部屋が空くんだ…そこを使う。」
どうせ朱乃はこっちの部屋に来るだろうしな…
「分かった、今夜…隣の部屋でだな?ちゃんと来いよ?」
「……まぁ、約束は守るさ。」
「その間は何だよ?」
「あんまりしつこいと無かった事にするぞ?」
「何だよ、その変な脅しは…」
「約束は今夜隣でだ…何か文句が有るのか?」
「無いって…面倒臭いな…」
その言葉は…そっくりそのまま返したいな。
「まぁ、とにかく今夜隣でな。」
「ああ…深夜に来るなよ?」
「あー…何時ぐらいに来たら良いんだ?」
「……携帯の番号を教えろ、こっちの都合の良い時間に連絡してやる。」
「了解…ほら。」
ポケットから取り出した携帯をそのまま私に渡して来る…おいおい…
「何の真似だ?」
「いやぁ…実はあたし、まだ交換の仕方良く分からないんだよなぁ… 」
……ミリアは普通に使えてたな…と言うか、分からないからって普通に相手に携帯を渡すのか…別に見られて困る物は入ってないんだろうが…取り敢えず私はヘレンの携帯の番号を確認する…赤外線を使おうかと思ったが、こうなるとこのままコレに電話した方が早いな…電話番号を押していく…ヘレンの携帯が鳴った所で電話を切った。
「……番号の登録の仕方くらいは分かるだろ?それぐらいは自分でやれ。」
「おう、サンキューな。」
「良し、さっさと帰れ。」
「そう邪険にすんなよ。片付け位は手伝うぜ?」
まぁ、ビールの空き缶がテーブルの上に大量に残ってるしな…最も、袋に詰めるだけだから正直一人でも全く問題無いんだが…
「ふむ…じゃあ頼もうか。」
「あいよ。捨てるんだろ?どうすれば良い?」
「……そこのゴミ袋に入れれば良い。」
…と言うか、良く考えたら今日が缶を捨てる日だな…この後捨てて来るか。
……やれやれ…結局徹夜してしまったな…まぁ、途中からその気だったから良いと言えば良いのだが…