「こちらのお洋服はいかがでしょうか?」
「あの…そう言われましても…」
「良いんじゃないか、それも試着させて貰えば。」
店員がほとんど総出で入れ代わり立ち代わりで、私たちの元までやって来るのを私は半ば投げやりな気持ちで見ていた…
結論から言えば、店内では想定していた様なトラブルは起きそうも無かった…何せ、モール内のどの店舗行っても女性店員が競う様にやって来て私たちを囲むからな…
もちろん、明らかにそう言う目的の男の視線は時折チラホラ感じるが…これでは到底近寄れないだろう…と言うか、どう見ても彼女同伴で店に来てる男の方までそう言う視線を向けて来てるのは命知らずとしか言い様が無い…正直私の知る限り、この世界だと一般人女性ですら並の男だと歯が立たないレベルだと感じてるからな…
あ…早速一人、連れていた女から鉄拳制裁を食らってるな…にしても結構な頻度で思うが、この世界の男共は全員馬鹿しか居ないのか…まぁ、それだけ…ああして店員に囲まれてるルナ(と言うか、肉体はガラテアの物だが)が綺麗だと言えばそれまでなんだが…
実際こうして離れて見てる限り、店員は職務に徹してるから何とか耐えてる様子だが…一部客として来てる女性陣はもう既に何人か落ちた節が有るしな(一緒に居ると騒ぎに巻き込まれそうなので、ルナの相手はもう店員に任せる事にした…)
「あの…貴女は、良いんですか…?」
最も、今みたいに離れていても…何故か一部物好きがこうして私に声を掛けて来てるんだがな…あの輪に入れなかったにしても、何も私の所に来なくても良いだろう…
「私は着飾るのには全く、興味が無いもので。」
「そんな…それなら、私に任せて貰えませんか!?」
「……」
いくつかの洋服店を回ったが…何と言うか、先程から私の所に来るのはルナの方に来てるのとは別のベクトルで面倒な奴らばかりな気がする…正直、もう疲れたぞ…私の事はあいつのおまけみたいな物と思って欲しいのだがな…
……ま、無理も無いとも言える…私の元になっている「テレサ」も相当な美人だしな…多少見た目は弄ってるが、基本的に顔はほとんどそのままだしな…
「ハァ…ではお任せします、適当に見繕って貰えますか?」
もうそろそろ断るのも面倒なのでそう返事を返した。
「はい!少々お待ちください!」
店員が物凄い勢いでその場から姿を消した……私が見失うとは、相当だな…やれやれ…それにしてもだ、昔の私なら何が有ろうと絶対に断っていただろう事を考えれば本当に丸くなった物だ…まぁ、一緒にこの手の店に来る度に私を着せ替え人形にする"家族"が居るからいい加減慣れてしまったとも言える…
と言うか、普段はそうでも無いのに今回ここまでの騒ぎになってるのは確実にルナのせいだが……ま、良いか。ルナが着飾ってるのに、私がラフな格好だと逆に悪目立ちするのが目に見えてるからな…ならば、私も多少なりとも釣り合うようにコーディネートして貰うとしよう…
しかし…私は一体いつ、帰れるんだろうな…こう言うのはとにかく長いと相場が決まっている…ハァ…とっとと帰りたい…