「…悪いな、待たせたか?」
「いえ…大丈夫です…」
タクシーのドアを開け、私の方に顔を向けたルナの表情を見て少し言葉に詰まった…運転手の方に何かされた様な雰囲気は感じない…となると…
「本当に狭い所が苦手なんだな…」
「はい…」
取り敢えず頭を掻きつつ、タクシーに乗り込む…早く帰るか…オフィーリアが待ってるんだろうしな…と言うか、いい加減もう少し仲良くして欲しいものだ……まぁ正直、ミリアとオフィーリアがにこやかに会話してる姿なんて欠片も想像出来無いがな…そもそもオフィーリアが笑うのは相手をからかう時くらいで、素の時は寧ろあまり笑わなかったりするからな…
車内では特に会話も無く、無事に家まで辿り着いた(何か有ったら困るがな…)
部屋に入り、ルナを下に残して取り敢えず私は二階に上がる…(暇を持て余してるんだろうからせめて本でも読ませてやりたい所だが、携帯で調べた所…点字印刷の本は普通の文学本でも通常の本屋には売ってないらしい…難儀だな…こうなるとさっさと身体を用意してやるべきかね…しばらくは戸惑うだろうが、それでも目が見える様になれば当然出来る事も増えて来る筈だからな…)
「……」
オフィーリアに電話を掛ける…確かに私も暇では有るが、ああ言うテンションのあいつと会話するのは非常に面倒だ…本当なら掛けたくない…とは言え、こうして時折ガス抜きはしてやらないと…あいつの場合何をするか分からんからな…
『もしもし?……本当に掛けて来たの?』
「…お前が掛けろと言ったんだろ。」
……何で掛けたら掛けたで、複雑そうな反応をされるんだ…ハァ…切ってやりたくなったのを堪えて、私は続けて口を開いた…
「約束通り、愚痴に付き合ってやるよ…」
「ふぅ…」
結局オフィーリアとの会話の内容は本当に他愛も無い愚痴ばかりで、別段特筆すべき事は特に無かった…問題が有るとすれば、あいつが普通に三時間はぶっ通しで喋ってた事くらいか(仕事しろよ…)
「まぁ、悩みの内容も平凡と言えば平凡だし…丸くなったと言えば聞こえは良いんだがな…」
実際、今も自分の存在に悩む私からしたら少し羨ましくなるくらいにはあいつはこの世界に馴染んでいる…聞けば以前寿司屋で会っていた男…あくまで友人扱いらしいが、何とまだ関係が続いているらしい…しかもテレーズにも会わせてると言うのだから何ともまぁ…
「全てを打ち明けられないとは言え、友人まで居て一体何が不満なのか…」
何ともまぁ、贅沢な話だ…っ…
「眠い…」
気を抜くと同時に眠気が襲って来た…昼寝しても別に問題は無いと思うが、せめてルナの様子は見ておかないといかんな…やれやれ…
「ルナ、私はちょっと寝るから…何か用が有ったら起こせ。」
「え…あ、はい…」
「……別に遠慮せずに、起こしてくれて良いからな?」
「はい、分かりました。」
正直、本気でそう思う…一人で何かやらかすくらいならそうしてくれた方がマシだ…っ…駄目だ、本格的に眠い…とっとと寝るか…
「じゃあ、おやすみ…」
「はい、おやすみなさい。」
私はソファに寝転がり、目を閉じた……あ。
「すまん、一つ頼んで良いか?」
「あ、はい…何でしょう?」
「…出来れば夕方…!…いや、やはり良い…」
「……えっと、良いんですか?」
「ああ、気にするな…」
夕方には起こして欲しいと頼もうとして思い留まる…良く考えたら…こいつは時計は見えないし、外の景色も当然見えないから時間帯は分からんだろう…頼むだけ無駄だな…ま、夕飯時には誰か起こしてくれるだろうし…良いだろう…そう考えつつ、私は再び…目を閉じた。