「あー…分かる分かる…確かにコレは妖気よねぇ…」
山に入って少し…漸く私たちにも二人分の妖気をハッキリ感じられる様になった……とは言え、クレイモア一人一人…それぞれ、妖気に特徴が有るのはもう知ってるが…それでもだ、まだ距離が有る事も有り…私ではあいつらと区別が付けにくい……テレーズなら、この距離でもある程度識別出来そうでは有るが…
「ミリア…ヘレンとデネブは仕事中なんだな?」
「ああ、来る途中電話して確認した…私とオフィーリアと違って簡単に抜けられる仕事じゃない上、更に言えば…今はちょうどたまたま二人とも隣町まで行ってるらしくてな、駒王町には居ないのも確認出来ている…」
とまぁ…こう言う質問をする必要も一応有る訳だ……最も、二人とも性格に多少難は有るが…何だかんだ根は真面目で、仕事はきっちり熟すタイプだ…この時間にこんな所に居るのはサボり以外に有り得ないから…先ず考えにくい可能性では有る…と言うか、それならガラテア程の感知能力なら分かるだろうしな…
「…で、二人ともそれぞれ反対方向なんだけど…どうする訳?」
「ちなみに、フローラはあっちだ。」
ジーンが一方向を指差す…
「念の為聞くが、合流しようとは思わなかったのか?」
「妖魔や覚醒者は居ない様だが、状況が分からなかったからな、先ずは山からの脱出を優先する事にしたんだ…」
「ふむ…」
まぁ、実際理に適ってるとは言える…全く未知の場所に居るのに、無理に仲間と合流した所で迷子が二人になるだけだからな…幸い、敵は居ないとハッキリ分かってる訳だし…先ずは出口の場所を確認するのが普通だろう…向こうの居場所は分かるんだから、合流はその後でも可能だしな…仮に私がこいつの立場でもそうするだろう…
「さて…そうだな、二手に別れよう…ミリア、ジーン…それにオフィーリア…お前らはフローラの方に行け、私はもう片方の方に「ちょっと待ってくれる?」何だ?」
「いや、何ナチュラルに一人で行こうとしてるわけ?」
「そうだな、相手が未知で有る以上…一人で行くのは危険だな…」
オフィーリアはまだしも、ジーンにまでそう指摘されるとはな…ただな…
「いや、しかし…ミリアとジーンはフローラと面識が有るだろう?知り合いの方が、話もしやすいじゃないか。」
「じゃあ私はアンタの方に行けば「あのな…お前、どうせ向こうに居た頃は多方面にケンカ売ってたんだろう?万が一因縁の有る相手だったら不味いだろうが…だったら、二人と一緒に行って貰った方がまだ良い」…まぁ…それは、そうかも知れないけど…」
オフィーリアがバツの悪そうな顔して、私から目を逸らす…私の知る限り、昔のコイツは口が悪いなんてレベルで済まされないからな…
「話は分かったが、そもそも前提が可笑しくないか?」
「ん?何がだ?」
「フローラとハッキリ面識が有って、確実に信用が得られるのは私とミリアの二人…つまり、どちらかが行けばそれで良い筈だ。だったら…一人がオフィーリアと共にフローラの方に向かい、もう一人がお前と行けば良いんじゃないか?」
「むぅ…」
「道理だな…と言うか、お前ならそれくらい分かる筈だが?」
「……」
「…成程、お前の性格が分かって来た…」
「ん?」
「お前…自分から危険な役目を負いたがるタイプだな?」
「……そんなつもりは無いが?」
「いや、合っている…コイツはそう言う奴だ…」
「そうね、もっと言うと…呆れる程のお人好しよ。」
「……」
私は、違う…
「ふぅ…ジーン、来たばかりで悪いが…お前にフローラの事を頼んで良いか?」
「構わないが、私はまだ詳しい事を何も聞いていないぞ?」
「説明はもう一人の奴と合流してからの方が良い…それと…」
ミリアがジーンに近付き、耳打ちする…何を言ってるのかは分からん…少しして、ミリアがジーンから離れた。
「……頼めるか?」
「それくらいなら問題は無い…合流はこの山の入り口で良いな?」
「ああ。」
「…分かった、相手はどんな奴か分からん…気を付けるんだぞ?」
「分かっているさ…ほら、行くぞ?」
「っ…分かった、分かったから引っ張るな…」
全く、人を子供扱いするな…
「…で、何でお目付け役がお前なんだ?」
「…お目付け役が必要な自覚、ちゃんと有ったんだな。」
「……」
「そう、拗ねるな「拗ねてない」クク…いや、なら聞くがな…ジーンと会話が弾む自信、有るか?」
「……」
正直に言えば、無い…初対面とか関係無く、今の私に…あいつと肩並べて行動する自信は無い…
「私の知る限り、ジーンは悪い奴じゃないが…生真面目だからな…お前ここ最近、私たちの事含めて…色々有り過ぎて疲れてるだろ?」
「……分かるのか?」
「そりゃ分かるさ…と言うか、デネブですらお前を心配していたぞ?」
「……あいつに伝えてくれないか?言いたい事が有るならハッキリ言え、と。」
あの旅行中…ずっとあいつの視線が絡み付いていた…心配するのは勝手だが、正直余計に気が滅入った…
「…あいつは不器用だからな…その辺はちゃんと言っておこう…まぁ、そこは今置いといてだ…今のお前がジーンと二人きりだとキツいだろ?」
「……」
確実に…今も感じてる頭痛と腹痛が悪化するだろうな、とは思う…
「かと言って、オフィーリアと一緒だとそれはそれで全く気が休まらない…あいつが何をしでかすかと不安になってしまう……違うか?」
「そうだな…」
「だろう?だから、どうしたって私しか居ないと言う事だな。」
……本音を言えば、お前と居ても駄目なんだがな…まぁ、マシな方か…
「最も、他にも理由は有るがな…」
「ん?」
「知ってるだろう?私の頭の中には、歴代の多くの戦士のデータが入っている…つまり、私がこれから会う相手の事を知っている可能性は大いに有る訳だ…仮に話が拗れて向こうが暴れたとしてもだ、戦い方を知ってれば御し易くなる訳だ…何よりお前、正直口下手だろう?」
「…まぁな。」
今思えば、この世界に来たあの頃…私がもう少し社交的な性格だったら、あそこまで状況は拗れなかったかも知れないとさえ思う…結局私は運が良かっただけだ…下手すれば私は、今日この日を迎える事無く死んでいた可能性も有った…今なら分かる、サーゼクスにアザゼル…あの二人はあの頃何度も私と話し合いの場を持とうとしていてくれたのだと……ミカエルは知らんが。
「ハァ…分かったよ、基本的に説得はお前に任せる…」
「そうしてくれ…と言うか、一つ良いか?」
「何だ?」
「…この件が済んだら少し休め…顔色が悪い。」
「休め、と言われてもな…」
さすがに休養が必要な自覚は有る…正直、気を張ってないともう本当に倒れそうだ…とは言え、ルナとガラテアの事も有るし…どうすれば良いのか……と言うか、元から血色の良くないクレイモアに顔色もクソも無いだろうに…
「お前の家族でも、何なら私たちでも良い…他にはサーゼクスやアザゼルだって居るだろ…とにかくだ、もう少し…人に頼る事を覚えろ。」
「……分かっている。」
……例の妖気の持ち主…そいつの所まで近付いている…いや、分かる…私は足を止めた。
「誘ってるな…」
「向こうにも、もう私たちが山に入って来たのは分かってる筈だ…賢いやり方だ、敵になるとしても情報を持っている私たちに出会った方が都合は良い…あちらは、中々強かな相手らしいな…」
……なまじ頭が良いとなると、本当に会いたくない…敵対した時、抑える自信が無い…っ?
「何の真似だ…?」
頭にコツンとミリアの拳が当てられた…殴られたと言う程のレベルでは無い…要は小突かれたのだ。
「今さっき言った事をもう忘れたのか?お前一人で気負うな、私も居るだろう?」
「…そうだな、もしもの時は…頼む。」
「ああ…最も、そこまで不安がる事は無いかも知れんぞ?少なくとも向こうは馬鹿じゃない…話は通じる筈だ。」
「だと良いがな…」
面倒なのは悪意の有るタイプだった場合だ……具体的に言えば向こうで覚醒し、人間を食料として見る事に何の躊躇も無くなった元覚醒者の奴とかな…そんな奴なら殺すしか無いが、あの世界では…何故かそう言う奴に限って普通に強い…ミリアと二人掛りでも勝てるか分からん…
「とにかく進むぞ…ここで立ち止まっていても仕方無い。」
「ああ。」
向こうは動く様子が無い…やはり私たちを待つつもりの様だ…歩みを再開したが、私の動きは緩慢だ…最も、横に居るミリアもそうだ…ああ言いつつも、コイツも不安には感じてるらしい…
「ミリア…」
「ん?」
「もし、私が斬れと言ったなら…迷わず背後に回って首を飛ばせ…お前のスピードなら、確実に向こうに何もさせずに殺れる。」
私は卑怯だ…自分で殺れば良いのに、ミリアに手を汚させるなど…だが、コイツは私より速い…私では、悟られる…
「テレサ…」
「何だ?」
「気にするな、お前が殺れと言うなら殺るさ…お前の判断を、私は信じる…」
「……すまない。」
「良いさ。」
近い…もうすぐ姿が見える筈……見えた…っ…
「!…驚いたな…お前、テレサか?」
私の顔を見た向こうが驚く…最も、私も少し驚いている…まさかコイツに出会う事になるとは…だが、良く考えれば当然かも知れん…すっかり存在を忘れていたが、コイツもクレアに影響を与えた人物…何より、ジーンと同じくクレアにとってはコイツも命の恩人だ…違いが有るとすれば…コイツは、クレアと別れた後も生きていた…
「久しぶりだな、イレーネ……フッ…なんてな、悪い…私は、お前が知るテレサとは別人なんだ…」
そう、私たちの目の前に居るのはNo.2…高速剣のイレーネ…テレサの討伐に来た奴と言う事も有り、思わず身構えてしまったが…幸い、斬り掛かって来る気は無い様だ…と言う事はコイツは片腕を失い、組織を離反した後のイレーネと言う事か…何にしてもまだ気は抜けない…つい、変におどけたのが良くなかったのか…今、私は向こうに圧を掛けられている…クッ…今の弱った私にこれは辛い…気を抜くと、このまま倒れてしまいそうだ…
「話が見えんな…一体、何が起こっている…?」
「落ち着いてくれ…私たちは敵じゃ…違うな、組織の追手とかじゃない…」
「…組織は、もう無いんだろう?」
……そこまで知っている…と言う事は、更に後…原作のラストでクレアと再会した時のイレーネと言う事になるのか…あるいは、その後の可能性も有るが…
「取り敢えず、私たちと一緒に来てくれないか?お前の知りたい事も、そこで教える…」
「分かった…お前たちの事を信じよう。」
圧が消えた…そこで力が抜け、その場に座り込…
「…しっかりしろ、お前も戦士だろ?」
確かに有った筈の距離がゼロにされた…イレーネにあっさり懐に入られ、右手を掴まれた事で辛うじて…私は立てている…
「すまん…」
「仕方無い…そこのお「ミリアだ」…ミリア、お前も手を貸せ…コイツ、支えてやらないともう歩くのも無理そうだ…」
「ああ…ほら、私の肩に…」
「悪い…」
くそ…いくらイレーネに圧を掛けられたのがトドメになったにしてもコレは変だ…何故か身体に全く力が入らん…どうしてしまったんだ私の身体は…