あの日…ジーン、フローラ…そしてイレーネ…この三人がこの世界に来てから…それなりの時間が経った…
「おはよう……そうか、今日はお前らだったか。」
「おはよう…ああ、そうだ。」
「おはようございます……何か引っかかる言い方ですね…何かご不満でも?」
「邪推するなよ、フローラ…特に深い意味は無いさ…」
……ただ、私は未だにお前が苦手なんだよ…それだけだ…
三人はこの世界で生きる事に前向きだった。でだ、生活して行くにはどうしても金は要る…そして、働く事に異論は元々無く…この世界では基本、戦う必要が無いと言う事にも賛同はした…ただ…
「お前らもイレーネも…結局三人ともこっちで働いてるのは、何の因果なんだろうな…」
私がそう口にすれば、書類に目を落としていた二人が顔を上げ…キョトンとした目を私に向ける…
「何だ、突然…?」
「えっと…もう私たちがここで働き始めて半年経ってるんですが…今更じゃないですか?」
「ま、そうなんだがな…」
しかし…三人とも私と同じ駒王学園の用務員やってるのは何なのかとは思う……まぁ、本当に今更なんだがな…っ…
「外が騒がしいな…」
「ああ、またあいつらだろうな…」
「捕まえないといけませんね…と言うか、本当に何で退学にならないんですか?」
「以前も言ったが、文句はサーゼクスに言え…と言うより、今更退学にしても仕方無いと思うがな…あの二人も…もうすぐ、嫌でも卒業して…この学園を出て行く…」
「……本当に出来るのか?確か、元々進級すら危うい成績だっただろう?」
「やめろ、ジーン…そう言う事言うと、またあいつらがこっちに泣き付いて来るフラグになるかも知れないだろ…」
「嫌なら、もう見放してしまえば良いのでは?」
「お前が言うな…何だかんだ、一番お前が親身になって二人の面倒見てただろうが。」
「やる気が有るなら、私も邪険にするつもりは有りませんから。最も、あの二人元々別に頭は悪くないんですから…真面目にしてれば恋人だって普通に出来ると思うんですけどねぇ…」
そこで私はジーンに視線を送る…
『ジーン…』
『いや、私は何も言わないぞ…どうせ無駄だからな…』
……何だかんだ、私はミリアの次にジーンとは仲が良いと思う…こんな感じで、今ではアイコンタクトだけである程度話が通じてしまう程だしな(少し前まで、こんな事が出来るのは黒歌ぐらいだったんだがな…)確かにこいつは口数は少ないし、あまり笑ったりもしないが…それでもノリは良い奴なのだ……ちなみに、ミリアと同レベルに面倒見も良い上、滅多に見れないその笑顔のギャップにやられてる生徒は多いらしい…ただ、ファンの多くはほとんど女子だがな…
『しかし…』
『無駄だと言っている…あいつらはフローラに好かれたくて頑張っていたとか言った所で、どうせフローラが靡く事など無いんだからな…と言うか、未だに覗きはやめないんだからフローラの好感度が上がる訳無いだろう…と言うより…仮に覗きをやめていても全く意味が無いのも分かっているだろう?』
フローラは男女問わず人気が有る…ただ、私はオフィーリアと接していた事も有ってか、早い段階で気付いてしまった…こいつは、恐らく同性にしか興味が無い…幸か不幸か、本人にまるで自覚が無い様だがな…
「あの?お二人とも先程から何か…?」
「「何でも無い…」」
……最も、気付いて無いならそのままでいて欲しいと思う…オフィーリアみたいのが増えるのは私も御免だ…オフィーリアと違って基本的には真面目な奴だから、尚の事そう思う…要はオフィーリアと違ってガス抜きをした事が無いから、目覚めてしまったら…オフィーリアなんて目じゃない程の問題起こす気しかしないのだ……まぁ、あいつはあいつで生徒を食ってるから…仮にそうなった所で…今更と言えば今更と思わなくも無いが。同性同士なら妊娠も無い訳だから、表面化しなければ好きにすれば良いとすら思う……ただ、フローラの場合元々そう言う事をしてなかったんだから隠せない気もする…
……今こんな事を考えても仕方無いな…
「…今日は長いな、やれやれ…やはりこっちで捕まえるしか無いか……誰が行く?」
わざわざ三人で行く必要は無い…何なら一人で良い…基本、イレーネも含めて私たちのやり口は同じだ…手間は掛かるが、あいつらには最も効果的な手段を私たちは選ぶ…
「私が「あら、ジーンさんは前回も行きませんでしたか?」…そうだったか?」
「そうだな…と言うか、本当は忘れてないだろ?相変わらず生真面目な奴だ…別にお前だけ頑張る必要は無いんだぞ?」
……どの面下げて言ってるのかとは思う…ただ、こいつは律儀過ぎる…誰かがストッパー役やらないと、一人で必要以上に色々やってしまおうとする癖が有る…確かに私の心労は減ったが、いつもこれだと私も逆に心配になって来る…
「ジャンケンだ、ジャンケンで決めるぞ…」
「お前な…結局出て来たら意味無いだろ…」
「ただ待ってるのはどうも性に合わなくてな…」
「いや、書類書けば良いじゃないですか…そっちが私たちの本業ですよ?」
「お前もだフローラ…負けたのは私だぞ?」
「その…手伝ってあげようと思いまして…」
「ハァ…もう良い…三人で行って、さっさとあいつら捕まえて戻るぞ。」
まぁ、何だかんだ言いつつこの仕事は楽しい…あいつらが卒業したらそれはそれで多少退屈はしそうだが…それでもきっと悪くはない気分でいられるだろうな…
「お前な…いい加減にしろよ?見境無く手を出すから、毎回修羅場になるんだぞ?」
私は遂にやらかしたバカに呆れつつも言葉を掛けている…
「えっと…可愛かったから…つい…」
「ついじゃない…先ず名前で気付け…何で姉妹両方に手を出すんだ…そりゃすぐに発覚するだろ…」
「…名前聞いても忘れるのよねぇ…」
「猿かお前は…全く、いつかこうなるんじゃないかと思っていた…」
本当に、こんな奴の何が良いのかさっぱり分からん…
「その…あの子たち大丈夫だった…?」
「外だったしな…サーゼクスに言って、揉み消して貰ったよ…あいつらは停学にも退学にもならない…もちろん、警察が出て来る事も無いから安心しろ…」
「そう…なら、良かった…」
「良かったじゃない…少しは懲りろ…お前は腹刺されたくらいで死なないから良いが…危うく二人の将来が台無しになるとこだ…」
「…ねぇ、私の心配…してくれないの?」
「自業自得だろ?言っておくが、二人の記憶はもう消されてるから…お前との事は何も覚えてない…もう声を掛けるんじゃないぞ?」
「ハァ…分かったわよ「と言うか、お前もう親だろ?テレーズにばかり任せてないで、少しは子育てに協力してやれよ」…私じゃ、教育に悪いと…」
「戯言を言うな…何を言おうと、お前はもう親だ…少しは自覚しろよ…」
言ってて思うが、こんな奴が親で有るなど世も末だな…まぁ、子供に躾以外の理不尽な暴力を振るう親よりは…こいつの様な放任主義の方がまだマシとも言えるのか…?
「はいはい…分かったわよ…」
「一応、お前は病欠扱いになってる…産休取ったと思って、しばらくは大人しくしてるんだな。」
「…ねぇ、私…親になんてなれるのかしら?」
「なれるかじゃない…なれ。あいつの親は、お前とテレーズしか居ないんだからな…」
「……分かった、頑張ってみる…」
「…なら、良い…っ…とにかく私は学園に戻る…これでも忙しいんだからな…」
「…帰るのか?」
「学園に戻るんだよ……テレーズ?」
「ん?」
「…本当にあいつで良かったのか?」
「…さぁな…あいつが私を選び、私が受け入れた…ただ、それだけの話だからな…」
「そうか…」
正直、両親二人共こんなだと…せっかく産まれて来た子供の将来が心配になって来る…これからも様子を見に来るしか無いな…
「なぁ?恋愛相談は私にされても困るんだが?」
何せ、未だ私もハッキリした答えを出せてないんだからな…
「って言っても、他の奴は少しさぁ…」
他は今の所恋愛経験自体無い…あるいは、一途なこいつの参考にはとてもならん例しか無いな…最も、私も大概だが…
「まぁ、分からなくも無いがな…で、本気なんだな?」
「ああ「お前の身体の事、打ち明けてるのか?」…その…まだなんだよ…」
外歩けば、人間のフリして何食わぬ顔で人外が当たり前の様に闊歩しているこの世界だ…異種族間の恋愛は自由だと、私は思う…ただな…
「…ヘレン、どう言う結末になるにしろだ…言わないと悲劇しか待ってないんだぞ?お前は半人半妖の不老不死で、向こうは正真正銘人間で…寿命も有る…」
駒さえ使えば同じ種族に出来る悪魔と違い、この世界では…私たちと同じになる方法は存在しない…まぁ、有っても使わせるつもりなど更々無いがな…仮に方法を見付け、広めようとするバカが居たら…私は見せしめに、そいつを八つ裂きにするだろうな…
「言ったって、結末は変わらないじゃんか…」
「言わないと…お前らはもっと苦しむぞ?」
「……分かってる、分かってるんだけどさ…」
「…と言うか、もう一度言うが人選ミスだ…私は何人の間を行き来してると思ってる?」
そもそも私の相手には同性も居るからな…
「良く修羅場にならないよな…オフィーリアはあんな事になったって言うのに…」
「そもそもあいつらは…その辺分かった上で私が良いと言い続けてる物好き共だ…今更修羅場になりようが無い。」
……まぁ、危なかった瞬間が一度も無いとは言わないがな…
「そうやって、開き直れたら…アタシも楽なんだけどな…」
「……ヘレン…一つだけ、アドバイスしてやる…」
「何だ?」
「…仮にお前の正体を知って、離れて行く様な奴なら…そもそもその程度の男だったと言う事だ…」
「!…そう、だよな…」
そう、人間同士のカップルだって同じだ…パートナーの事情を受け入れられないなら…最初からそいつらが結ばれるのは不可能だ…
「…ふぅ…じゃ、私は帰るからな…」
「ああ…姉さんと、デネブに宜しく…」
「…ああ、一つ言い忘れていた…」
「ん?」
「たまには帰って来い、だそうだ……デネブが寂しがってるらしいぞ?」
「……デネブが?」
「当然だろう?あいつにとって本当の意味で友人や、家族と言えるのは結局お前だけだ…ミリアでは、代わりにはならない。」
「分かったよ…明日にでも帰る。」
「じゃあな。」
この部屋に来る度、少々気が滅入る…本当に必要最低限の物以外何も無いからな…私ですら本を置いたりしてるからな…この部屋はいつも、何処か冷たさが漂っている…
「どうだ、最近は?」
「…お前はどうなんだ?」
「充実してるな…で、お前は?」
「…そうだな…ハッキリ言って、暇を持て余している…」
こいつ…ほとんど出掛けてないと言う話だが、休日の時間はどうやって潰してるんだろうな…
「…お前の場合、あいつらとは戦士としての世代も違うし…テレーズに関しては子育てに忙しいしな…何なら何か、趣味でも見付けたらどうだ?」
「趣味か…お前は何か有るのか?」
「私はせいぜい本を読むくらいだな…最も、悪くは無いと思うぞ、この世界の物語も。」
「成程な…」
「まぁ…私の場合乱読派で、ジャンル問わず読むから…これと言ってオススメ出来る物は逆に無いが…深く物語に浸りたいなら、ミリアに声を掛けろ。」
「…ミリアに?」
「あいつは古い推理小説や時代小説にハマっている…事前知識として、この世界の歴史の知識は必須にはなって来るが、それでも一度ハマるとアレもコレもと同じ系統なら色々読み漁りたくなるくらいにはどっぷりハマるらしい…まぁ、私は残念ながら…あまり合わなかったがな…」
不思議と、こいつはかなりハマる様な予感が有る…まぁ、そうなってくれたら…私も毎回様子を見に行かなくても良くなるだろう…
「ふむ…そうか。」
「……イレーネ?」
「ん?」
「たまには散歩に出るとかで良いから、仕事以外でもうちょっと外に出る癖を付けた方が良い…私たちは一日中部屋に篭ってたって別に病気にはならんが、それでもやはり不健全だぞ?」
「分かっているさ…」
「…ま、次は初心者向けの小説でも持って来てやるよ。」
「ああ、楽しみにしている…」
「新しい仕事にはもう慣れたのか?」
「ああ…正直に言えば、毎日とても楽しいとさえ思う…」
ああ、顔を見ただけで分かる…こいつの今のこの顔…仮に組織の連中が見たら、気持ち悪さに卒倒するんじゃないか?……まぁ、私は綺麗な笑顔だとしか思わんが。
「古書店の店員…お前にとっては天職だったか。」
「お前たちと用務員やってるのも悪くなかったんだがな…」
「フッ…別に私たちに気を使う必要は無いぞ?お前の人生だ、好きにすれば良い…」
「……ありがとう。」
「私は別に何もしていないな、礼なら職場を探してくれたアザゼルに言うべきだろうさ…」
「いや、お前と出会わなかったら…こんな生活は考えられなかった…考えても見ろ、私はこの世界の文字すらろくに読めなかったんだぞ?」
「だから私に助けられたと?何言ってるんだかな…私は切っ掛けを作ったのはそうかも知れないが、結局お前は…最終的に自分で読み書きを覚えたじゃないか。それはあくまで、お前自身の功績だろう?」
「相変わらずだな、お前は…」
全く、どの口が言うんだかな…
「人はそう簡単に変わらん…お前だって、そうだろう?」
笑顔が増えた以外、こいつの性格に変化は無いと思う…と言うより、実は今の姿がこいつの素なんだろうな…
「ああ、そうだな…」
「……と、話が逸れたな…結局相談とは何だ?」
「そのな、今の部屋…引っ越そうかと思っていてな…あの部屋からだと、今の職場が遠くてな…」
「成程な…つまり、デネブの面倒を見て欲しい…か?」
「ヘレンが出てってから、あいつはどうも不安定でな…見ていてはやりたいんだが…」
「さっきも言った…お前の人生だ、どうしようとお前の自由で…デネブの事に関しては最終的に答えを出さないとならないのはデネブ自身で…そこにお前が必要以上に手を出すのがそもそも間違ってるのさ…ま、ご近所の好みだ…しばらくはこっちで様子を見ていてやるよ。」
「すまんな…」
「友人だろう?頼ってくれて良いさ…その分こっちも色々頼む事もあ…!…そうだな、すまないが早速一つ…頼まれてくれないか?」
「?…ああ、構わないぞ。で、何だ?」
「ハァ…あのなデネブ、気持ちが分かるとは言わん…と言うか、ぶっちゃけ今のお前が何考えてるのかなんて分からん…正直に言えばどうでも良い…一応自分の食い扶持だって稼いでるし、仕事以外は自堕落に過ごしていたとしても…結局はお前の人生だ、こっちに迷惑さえ掛けなきゃ好きにしろと言うさ…」
最も、聞けば最近のデネブは仕事の方も普通だと有り得ない様なミスを連発しておりそろそろクビになるかも知れない状況らしい…とは言え、だとしてもだ…それは結局こいつの問題で、ミリアに頼まれていたとしてもまだ生活詰んでる訳じゃないなら私も一々何かを言うつもりは無い…私は別にこいつの親じゃないんだからな。
「……じゃあ何だ…?お前はここに何をしに来た…?」
「大抵の事は私も黙って見逃す…この世界のルールの範疇を逸脱してないなら全てはお前の勝手、自由だ…ただな、半覚醒者のお前が…飯もろくに食っていないのは到底看過出来ん。」
「……それで?」
「今のお前は…飢えたら確実に人間を襲う…そうなれば、私はお前を狩らないといけないんだよ。」
「だから、何だ…?文句が有るなら…今すぐこの首、取ってみるか…?」
こいつ…!
「…甘いと言われるのを承知で、それでも敢えて言わせて貰う…私は、お前を殺したくない。」
「…何故だ…?今の私を生かしておいて、お前に何の得が有るんだ…?」
「損得の話じゃない…」
「なら、何だ…?」
「…お前は私にとって大事な友人の一人だ…所詮これはエゴで、何処までも押し付けでしかないのは分かっている…それでも言わせてくれ…私に、友人を殺させないでくれ…」
「っ…馬鹿が…!」
「っ!デネブ!?」
ソファに寝転がっていたデネブが立ち上がり、私の胸倉を掴んで床に引き倒す…そのままのしかかって来たデネブがいつから持っていたのか、その手に持った包丁を私の首に当てた…
「……ふぅ…何の真似だ?」
「文句が有るなら!口で言ってないで、さっさと掛かって来たらどうなんだ!?」
「ハァ…あのな…」
そうだな、今なら思う…確かに私はお人好しなんだとな…全く、どうしてこんなどうしようも無い奴を放っておけないのか…私は身体を強引に跳ね上げ、デネブの額に向けて頭突きをする…っ…包丁で首が斬り裂かれたが、知らん…今はどうでも良い…
「っ…お前…!」
「今のお前は何だ?この程度の反撃でせっかくの武器は落とす…と言うか、そもそもこんな物でクレイモアで有る私を殺せると思ってたのか?」
包丁を当てられた時の感触…それだけですぐに分かった…こいつはもう、剣すら満足に振れないだろうと…
「何が掛かって来いだ…今のお前では私を殺すなど、到底無理な話だな…」
「っ…お前に何が「知るか…私はお前じゃない」…だったら「デネブ」何だ!?」
「どうせ仕事ももうクビになりそうなんだろ?さっさと辞めろ…で、心身共に鍛え直せ。」
「……何だと?」
「然るべき場を用意してやる…あの時有耶無耶になった決着を着けよう、デネブ。」
「……お前、は…」
「私の話は理解出来たか?じゃあ試合の日は一ヶ月後だ…言っておくが、当日もこんな状態だったらさすがに私ももうお前の事など本当に知らん…望み通り、私がお前の首を取ってやるよ。」
さっき殺したくないと言っておいて、舌の根も乾かない内にこんな事を言ってる自分に嫌気が差す…だが、それでも…言わせたのはこいつだ…
「……」
「じゃあ私は帰るからな…と、忘れていた…ほら、先ずはこの金で飯を買って来るんだ…」
「要ら「言っておくが、食わずに人間を襲ったら…その時はお前を殺すのは私じゃない…ミリアとヘレンが、お前の首を取りに来る」なっ…!?」
「分かったらとっとと行くんだな…ああ、もう一つ伝えないとな…」
「何だ「ミリアは…もうここには帰って来ないぞ?」…何をした…!?」
「人聞きの悪い事を言うな…別に私は何もしてないぞ。あいつはな、もうお前を見放したんだよ…」
「……」
「ふぅ…後は伝える事は無いか…デネブ、一ヶ月後…また会おう…私を失望させるなよ?ああ、後必要な金はまとめて口座に入れておくから…忘れずにおろすんだぞ?じゃ、私は帰るからな…」
「テレサ…その血の跡…」
「すまんな…ちょっと色々有って…じゃ、納得しないか?」
「話してくれるなら聞くにゃ。」
「そうか…実はな…」
「そう、デネブが…」
「分かってると思うが「分かってる…襲いかかったりとかしないから安心して」助かる…ああ、それと…私はしばらくここには戻らん…」
「デネブと顔を合わせたら不味いもんね…」
「そう言う事だ…すまんな…」
「良いにゃ…私もデネブの事、心配だったし…」
「……ふぅ…大丈夫だ、あいつはきっと元に戻るさ…」
と言うか、そうなってくれないと困る…何せクレアがあいつに懐いてるからな…殺したら、私が恨まれる…
「…でも、ここに帰らないって…これからどうするつもりにゃ?…まさか、また昔みたいに「心配するな、もうそんな事はしないさ…そうだな、誰かの家に泊めてもらうさ」…それなら良いけど…でも…」
「何だ?」
「テレサ変わった…少し前までなら、きっと一人で何とかしようとしてたと思うから…」
「あいつらどいつもこいつも…揃いも揃ってもっと自分に頼れって、言ってくれるからな…なら、大いに頼らせて貰おうと思ってな…」
そもそも…デネブの事を頼んで来たのはミリアだ…そしてヘレンにも責任は有る…少なくともあの二人には、全面的に協力して貰わないとな…
「じゃ、すまんがもう出「ちょっと待つにゃ!」ん?」
「その服、着替えないと騒ぎになるにゃ。」
「…あ、それもそうか…」
「すまんな…まさかそこまで事態が拗れるとは…」
「ま、仕方無いさ…私もあそこまでデネブが荒れてると思わなかったからな…と言うか、悪かったな…」
「ん?」
「私が勝手な事を言ったせいで、部屋に戻れなくなって…」
「…あー…それなら構わないぞ?私はあの部屋の家具はそもそも何も持って行く気が無かったからな…」
「本は良いのか?」
「引っ越すのを決めた時から、一つずつ手放したからな…もう、何も残ってないぞ。」
「……つまり、もういつでも動ける状態だったのか?」
「ああ…と、私は今日このままビジネスホテルにでも泊まるが…どうする?お前も来るか?」
「そうだな、今日は一緒に行くさ…」
「……明日は、ヘレンの所か?」
「…まぁ、どうせまた恋愛相談されるだろうがな…」
「…聞こうと思ってたんだが、お前的にはどう思う?」
「ヘレンの恋愛についてか?良いんじゃないか、好きにすれば…私は別に良いと思うぞ?ほとんど先入観だけで無条件迫害されていたあっちと違って、こっちではお前らは何はばかる事は無いんだからな…異種族恋愛、大いに結構じゃないか。」
「そうか「大体、そんな事言ったら私やオフィーリアなんて肩身が狭いと思わないか?」…お前らの場合はさすがに、もう少し自重すべきじゃないか?」
「私の場合、肉欲に負けて自分から手を出したパターンは無いから…本当ならノーカンだと思うんだがな…」
「…まぁ、その辺…私から言える事は別に無いが、な……言っておくが私はノーマルだ、手は出さないでくれよ?もちろん、ヘレンにもだが。」
「分かっているさ…」
「…ところで例の頼み、この結果を予想しての提案だったのか?」
「……いや、さすがにたまたまだったんだが、こうなるとお前には本格的に手を貸して貰わんとならないが…良いか?」
「まぁ、もうOKを出してしまったし…私にも原因が有るから構わないが…あくまで仕事に影響の出ない範囲でお願いしたいんだが?」
「心配せんでも、私も仕事を休む気は無いからな…と言うか、デネブにああ言った手前…私がそれで仕事休んだら、何かやる前から負けた気がして来るだろうからな…」
「自分で自分の首、締めてないか?」
「そこまで酷い状況じゃないさ…そもそも話したと思うが、昔の私は用務員とハンターの二足の草鞋だったんだぞ?正直、今更だな。」
「それなら良いんだがな…」
「…さてと…取り敢えずホテル行くより先に、腹ごしらえでもしないか?」
「そうだな、行くか。」
と、そこで携帯からメール専用の着信音が鳴る…誰からだ…?
「……マジか。」
「どうした?」
「それが、ガラテアからだ…」
「いつもの近況報告、じゃないのか?」
「…いや、別にいつもって程、頻繁にやり取りはしてないぞ?」
ルナもだが、あいつらはあいつらで色々忙しいからな…
「ふむ…で、何だ?」
「いや、日本に来るつもりらしい…」
「ん?そうなのか?」
「ああ…正直、来て貰っても相手は出来無いんだがな…」
ちなみにルナとガラテア…一悶着有ったが、結局あの二人の分離自体は幸い無事に済み…二人は故郷に帰って行った…あれ以来、時折メールでのやり取りはしていたが…まぁ、それとは別にこうして何かと…あの二人はこっちにやって来る(結構暇なのか?)
「まぁ、今回は仕方無いんじゃないか?」
「そうだな…いや、どうせなら…この際ガラテアにも少し手を貸して貰うかな…」
「あいつ…戦えるのか?」
「まぁ、そこら辺は元々…私も期待してない。ただ、あいつは戦士としては古株らしいからな…口頭で何かアドバイスでも貰えればと思ってな…」
「成程な…」
私はガラテアに今回の顛末を書いて、送る…まぁ、さすがにすぐに返信は来ないだろう…これから飛行機に乗ると書かれていたし…取り敢えず携帯をしまう…
「さて、何を食いに行くか…?」
「そうだな……ふむ…にしても改めて考えたら、燃費は良くないと言う印象だった半覚醒…裏を返せば、人並みに食えると言うのは良い事なのかも知れないな…」
「ま、幸せな事だろうよ…体質的には不安定では有るから、喜んでばかりもいられんがな…」
実際、時々イレーネの事が羨ましくも思える…贅沢な話だとは思うがな……あ、そう言えばフローラも半覚醒はしてなかったか…どうしてもイレーネの印象が強いな…
「まぁ、いざ分離したら…何故か同時に半覚醒したガラテアに関しては…少し不憫とも思えたが…」
「いや、あれはあれで順応してただろ?もちろん、戸惑いが無かった訳では無いだろうがな…」
一つの身体に二つの意識…あの後結局ルナの記憶は戻らず、何故あの状態だったのか分からないまま…消え掛けていたガラテアの存在定着の代償(だと思われる…)でそのままいきなり覚醒まで一直線に向かい、ガラテアが自分で妖気を調整しての半覚醒と言う結果になった…
「まぁ、アレは結局最後まで良く分からない話だったな…」
「分からないと言えば、ルナが握っても損傷の無かったと言う杖の事も気になる…多分、素材は…」
「私たちの大剣と同じ…お前は、そう睨んでるんだろう?」
「…と言うより、他に考えられないだろ?」
「まぁ、な…」
結局実物を見せられた訳じゃないから、何とも言えんが。
「事前に来ると言ってくれれば、持って来て欲しいと頼めたんだが…」
「いや、新しい身体に入ったルナはもう盲目では無いし…ガラテアはそもそも必要無い…持って行く理由が無い以上、空港で止められるんじゃないか?」
「それもそうか……ん?」
ちょうど視界に入って来たラーメン屋の看板…ふむ。
「ミリア…ここにするか?」
「そうだな、悪くないか。」
正直普段はあまりこの手の店に入らないから、新鮮だ…味に期待させて貰うとしよう。