『ハァ……で、本当にあいつとやんのか?』
『ああ…改めてすまんな、苦労掛ける…』
『…まぁ、約束果たしてくれんなら…俺は良いけどよ…』
『分かっている…ケリが着いたら、一晩でも二晩でもお前に付き合うさ……寧ろ、一生分搾り取られるくらいの気概でいろよ…と、お前は不老不死だからこの言い方は適切じゃないか…ま、今言っても皮算用だし…終わった後、私がすぐに約束を果たせる状況に無いだろうがな…』
『……果たせる状況以前に、お前…実は死ぬつもりじゃねぇのか?』
『何も自分から死ぬつもりは無いさ…』
篭手を嵌める……すっかり馴染んだな…まぁ、寝る時は元より、食事の時も着けていたから当然か…
『…で、どうなんだ私の身体は?主治医の意見を聞かせてくれ。』
『…んなもんになったつもりはねぇよ…たくっ…まぁ、結論だけ言えばな…戦うどころか、とっととベッドに押し込みたいところだな…』
『んー…?誘ってるのか?』
『馬鹿か…人間だったらとっとと入院させてるって意味だよ…あのな、お前の身体…今この瞬間も少しずつ自己崩壊してんだよ…完全に半人半妖の身体の再生スピードを上回る勢いでな…』
『ほう…そんなに酷いのか。』
『もうちょい慌てろよな…ちなみにデネブも同じだな…まぁ、あいつにもしたアドバイスだがな…早めに決着着けろ…長引くと最悪勝手に覚醒するか、あるいは肉体が崩壊して二度と元に戻らねえ。』
『全力の戦闘に耐えられる具体的な時間は?』
『テメェ…人の話聞いてなかったのか?ハァ…初めから全力で行くな…そうでなくても、多分…数時間もてば良い方…精神の方も相当に終わってるから、極端な話…普通に妖力身体に回しただけでも覚醒するだろうな…絶えず気を張ってろ…人間のままでいたいならな。』
『成程…なら、問題無いな…今のあいつ相手に気など一切抜けんからな。』
『…その集中力だって、大してもたねぇと思うぜ…?』
『アザゼル…』
『ん?』
『感謝する…お前のお陰で、装備も間に合った…』
『ケッ…趣味でちまちまやってたのを急げと言われて急いだだけだ…本当にゼロの状態から言われてたら、到底間に合わなかっただろうよ…』
履いたブーツの調子も悪くない…と言うか、最早履いてる意識すら無い程に軽く、履き慣れたせいも有るだろうが、そこを差し引いてもお釣りが来るくらい私の足に良くフィットする…これで、クレイモアを蹴り飛ばして…ガードの上からでもある程度のダメージを与える事が出来るくらい硬さも有るのだからとんでもないな…本当に、あいつは天才だよ…
『つか、本当に良かったのか?俺はあいつにお前と同じ物を渡した…戦士としてのレベルは確実にデネブの方が上なんだろ?勝ち目は、相当に薄いと思うぜ?』
『言った筈だ…もし、あいつが恥も外聞も無く手を貸して欲しいとお前に頭を下げるなら…その時は全面的に協力してやって欲しいとな…あいつはあの日の時点で既に錆び付いていた…多少鍛え直した所で、どうせ一ヶ月では私には勝てん。』
『…じゃあ、何で一ヶ月とか言ったんだ?もっと長く時間取りゃ…』
『ふぅ…駄目なんだ、アザゼル…あいつはもう追い込まないと…それこそ放っておいたら覚醒するか、自害でもしかねない状態だったからな……まぁ、あそこまできっちり自分を追い込むとは私も予想外だったがな…』
『…で、だからお前を自分を追い込んだと…何でそこまであいつの為にやった?』
『それももう言った筈だがな…もう今ではあいつの為じゃない…私が、あの状態のあいつと戦いたくなったのさ…同じ領域に行ってな…』
『ハァ…前から思ってたけどよ、お前って…本当に大馬鹿だよなぁ…』
『その私に、力を貸すお前も大概だろう?』
『バーカ。報酬は確かに魅力的だったけどよ、結局は俺もお前の為じゃねぇ…俺の趣味の一環だ。』
『趣味か……』
ドアをノックする音が聞こえた…
「良いぞ、入って来い…今回は妙に律儀だな?ホテルで私がシャワー浴びてる時は、勝手に入って来る癖に…」
「その時も一応声は掛けてるだろ?「待ってろと言っても結局入って来るだろ…お陰で、ただ洗うだけなのにいつも無駄に時間が掛かってる」…ハァ…一応今日は真面目モードってやつなんだ、お前もどうせなら合わせろよ。」
「そうかい…なら、こっちも無駄口は叩かんさ…一つだけ聞かせて貰おう…デネブの様子はどうだった?先にあいつに会ってきたんだろう?」
「…お前とほぼ同じ状態だよ。お前ら的には絶好調とか、全盛期と言った所か?」
「あいつ、ある意味では全盛期には程遠いとは思うけどな…まぁ、散々自分を追い込んだ事で…マイナス要素はある程度打ち消されてるんだろうがな。」
「その辺はお前も同じだと思うけどな……そろそろ時間だぜ?もう出られんのか?」
「いつでも良い…何なら、この部屋に今デネブが駆け込んで来ても対応可能だ。」
「やめてやれ、フラグになるだろ…万が一にもここで始めたら、サーゼクスがさすがに泣くぞ…」
「グレイフィアもブチ切れそうだな…さすがにデネブとグレイフィア二人まとめて相手したら絶対に勝てないな…」
「分かってんなら早く行こうぜ…テレサ?」
「ん?」
「…良く似合ってるぜ、その装備…」
「…今更か?もう見慣れただろ?」
もう何日身に付けたままだったと思ってる…しかも、その間…ずっとお前と一緒に居たのに…
「…皮肉なもんだよなぁ…ボロボロの今のお前だからか、一番似合って見えるんだよなぁ…」
「フッ…惚れ直したか?」
「…今すぐにドレスに着替えてくれたら、口説きたくなるくらいにはな…」
「……それなら、普段と特に変わらないじゃないか。」
『…趣味にしては物騒な物ばかりだな…改めて考えれば渦の団への警戒にしてもこれは過剰だ…お前、何処かと戦争でもする気か?』
『…別に作るだけなら何もねぇだろ…?』
『…そうかもな。』
「…来たか。」
あいつの姿が視界に入る……成程、今の私たちは周りからはこう見えてるのか…パッと見は問題無いが、確かに良く見ると肉体の崩壊が始まっている…そして、クレイモアとは違う、背中の大剣以外全てアザゼルの作った装備…私と、同じだ…
「言葉は要らん…やるぞ、デネブ。」
「来い…私のこの首…取って見せろ。」
私たち二人は、同時に背中の剣を抜いた…