自分でもイカれてしまっているのは分かる…何回木の幹に叩きつけられたのか、途中から痛みも消えていた(良く折れないな…いや、それとも途中で別の木に変えたのか?)まぁ、私の精神状態については…今はどうでも良い…ハッキリしてるのは、デネブから食らわされた血糊のせいで、開かれる事の無い私の両目…且つ、この状況で私が声一つ上げないと言う二点……結論を言えば、デネブからは当然の如く、私が意識を失っていると判断されると言う客観的事実のみ…
「…ふん、口程にも無い…まぁ、この場でお前の首を落とせばそれで終わる訳だが…それもつまらんな…」
「っ…」
地面に叩きつけられたのか、背中に受けた衝撃で少し息が漏れる……まぁ、冷静になってから思うのは…別に目が見えなくても結局はどうにかなるな、と言う事で有ったりする…これは、クレイモア…自分が半人半妖で、敵も同じ半人半妖であれば…何ならあるいは妖魔や覚醒者でも問題は無い、結局は同じだ…何を言いたいのかと言えば、今言った条件さえ揃ってるなら…私たちの場合目が見えなくても…妖気を感じ取れさえすれば、相手の位置はある程度分かるのだ……ただ、強いて言うなら…もう少しデネブが近付いてくれればな、と…
「っ…!」
デネブが近付いて来る…何とか、興奮を抑え込む…もっと…そうだ、あと少し…もう少し近くまで…
「!……」
腹に重みが加わる感触…デネブが私の腹の上に座っている…と言う事は次に来る攻撃は…まだだ…まだ抑えろ…意識を集中しろ、奴の攻撃するタイミングが分かる筈だ…コイツはかなり慎重な奴だ…攻撃する一瞬の隙を付かなければ、コイツには当たらない…そう、そうだ…腕を振り上げ…っ!今!
「がっ…!お前…」
伸ばした二本の指から伝わる感触にほくそ笑む…おっと、これで終わりにしてはいけないな…
「…これで条件は同じ…じゃないんだよな…お前は再生するからな…」
まぁ…別にデネブの様な防御型じゃなく、私の様な攻撃型でも眼球に関しては再生するだろうが…コイツの場合は少し事情が違う…コイツは…早いんだ…ほとんど一瞬と言っても良いスピードで、身体の失われた部位が再生してしまう…だから…やるなら徹底的に、だ…
「!…クッ…」
「おっと…悪いがこの指は抜かないぞ?抜けば、その瞬間にお前は一気に再生するもんな?」
下がろうとするデネブの眼窩に指を曲げて引っ掛ける…悪いが逃がさない…決して、何が有ろうとな…私はもう片方の手…左手を右の指が有る場所から少し下の方に向けて手を伸ばす…そして指が触れた部分を掴んで力を込めた…
「ぐうっ…!お前!?」
「コレはお前の首だな?」
このまま絞め落とす…それで、終わ…!
「がっ…!そう、だよな…お前も、そうするよな…」
今、私の首も掴まれている…と言うか、コイツ今両手で締めているな…?てっきり、私の指を抜くのが先だと思ったんだが、な…
「っ…お前の考えは分かる…!お前は、今…こう思った筈だ…"私の指を抜くのが先では無いのか"とな…ナメるなよ?このままお前を絞め殺せばそれで終わる…!」
「がっ…!はっ…!」
当然だが、片手で絞めるより両手で絞める方が効果は有る…そして…私たちクレイモアを殺すには…首を斬り飛ばさなければならないと言う先入観に囚われがちだが、実はそうでも無い…当然私たちにも、窒息死は…有るんだよな……くそっ…意識が、飛…ぶ…
「サーゼクス!早く止めて!テレサが殺される!」
「っ!待てサーゼクス!止めるな!」
私はその場で叫んだ。
「しかし「決着は、まだ着いていない」……」
「っ!もう我慢出来無い!私、行く「寝てろ!」……」
セラフォルーが立ち上がったタイミングで近くに居たヘレンに視線を向ければ、汲み取ったヘレンがセラフォルーを殴り付けて気絶させた。
「良いか?全員、この場を動くな…」
その場に殺気を飛ばす…腰を上げかけていた黒歌や朱乃の動きが文字通り止まった…ちなみに、小猫とアーシアに関しては私の殺気に当てられた様で…もう意識は無い様だ…クレアは自分の身体を抱き抱えて震えてはいるが、ちゃんと意識を保っている…
「大丈夫…テレサお姉ちゃんが勝つよ。」
この場ではその声は良く響いた…まさか、私の殺気で意識を飛ばさないどころか…平然としているとはな…と言うか、今マリアは多分とは言わなかった…さっきから、マリアが解説し私たちが納得すると言う異様な流れが出来上がっている…そして、今のは説明をした訳じゃない…
「マリア…何故あいつが勝つと思ったんだ?」
マリアが口を開いた…
「……分かんない。」
それは、ここまでで初めての言葉だった…
「くそっ…!しぶとい奴だ…!」
「っ…!っ…!」
目が見えない…その状態から更に目の前が黒く塗り潰されて行くのが分かる…苦しい…きっとこのままこの闇に身を委ねたら、楽になれるだろうと思った……だが!
「っ!…ふんっ!」
「っ…何処にまだそんな力が…!?」
指をデネブの眼窩から引っこ抜き、そのまま私の首を掴んでいるデネブの両の手首を掴み、砕く…さすがに緩んだデネブの手を私の首から外した…手首を離し、右手の方も首に掛け……足りない!
「グフッ!?」
デネブの首を締め上げたまま、地面に押し倒す…抑えていた妖力を解放…更に力を込めて行く…
「オォォォォ…!!!!!」
「っ!ふざけるな!」
既に再生したのだろう、見えないが…再びデネブの両手が首に掛かったのが分かる……惜しいな。悪いが、私の勝ちだ…
「っ!っ!…かっ…はっ……」
「…漸く、落ちたか…」
デネブの呼吸が止まった…力を緩め、しばらく待ってみるが…起き上がる様子は無い。
「あの瞬間、デネブの手を外せなかったら…先に呼吸が止まったのは私だっただろうな…」
コイツの手を外した事で私の呼吸は楽になった…だが、デネブの方はずっと絞められたままだったのだ…そうなれば、最終的にコイツの方が落ちる…
「ケホッ…ケホッ…くそっ…」
その場に足を投げ出して座る…もっと悪態ついてやりたいが、先にコイツの首を絞めたのは私だしな…文句も言えんか……あ。
「私の携帯か…」
血糊を袖口で拭き取り…目を開けたところで、私の視界に地面に落ちているソレが目に入る…
「さっき木にぶつけられた時に落としたのかね…」
と言うか、良く見ればその近くに大剣も有る…デネブの剣はここに落ちてるから、アレも私のだな…
「っ…」
ゆっくり立ち上がり、足をほとんどずりずりと引き摺る様にしながらそこまで向かう…デネブから通り過ぎようとしたところで視線を向けるが、動く様子は無い…
(殺してないよな…?)
途中、本気になり掛けたが…元々、私はデネブを殺す気は無かった…客観的に見ても異常な精神状態まで自分を追い込んだとは言え、そこだけは変わらない…
「……」
私が立ってるのはデネブの顔の横だ…その場に屈む……反応無し…ゆっくり、口元まで手を伸ばす…
「……呼吸はしてるか。」
止まった呼吸はちゃんと戻っている…良く見れば微かだが、胸も上下している…生きている。
「私の勝ちだ、デネブ。」
眠るデネブの顔を見ながら…もう一度、今度は口に出して宣言する…かなり酷い内容だったとは思うが、勝ちは勝ちだ…文句は言わせん……まぁ、デネブが納得してくれるかは知らんがな…
「っ…やはり迎えに来て貰わんと駄目か…」
とてもじゃないが、屋敷まで自力で帰れる気はしない…ましてや、デネブを運ぶのなんて絶対に無理だ…
「さっさとサーゼクスに連ら「その必要は無いわよ」…よう、グレイフィア…」
後ろから声が聞こえたので振り向けば…恐らく転移して来たのだろうグレイフィアの姿……おお…機嫌悪そうだな…
「そう怒らないでくれ…もう、こんな無茶は当分しない。」
「当分じゃなくてずっとって言って欲しいし、何なら…それは私じゃなくて黒歌たちに言った方が良いわね……ハァ…でも、安心したわ。」
「ん?」
「ここ最近の貴女…ちょっと怖かったからね…でも、今はいつもの貴女に戻ってる…」
「まぁ、前日に主治医の命令で一食だけだがまともに食ったし、何なら…睡眠も一応数時間は取ってるからな…」
まぁ、それでも付け焼き刃も良い所だろ……いや、あるいはそれがこの結果を生んだのかもな…デネブは本当に今日…ギリギリまでどっちも極限まで削っただろうしな…
「転移陣はこの先か?」
「ええ…残念ながら、少し歩いて貰うしか無いわね…あ、それと…」
「ん?」
「デネブは…貴女が運んでね?」
「……冗談だよな?」
「私はね、祟ると分かってる神に触れる気は無いの…」
「悪魔が"神"と口にするか…何の皮肉だ?」
まぁ、グレイフィアが言ってるのは"触らぬ神に祟りなし"と言う慣用句から来てるのだろうが…
「急に目覚めて暴れられても困るもの…だから、貴女が運んでね?」
「ハァ…分かったよ…」
どうやら私が休めるのは…もう少し先の事らしい…