「ハァ…」
「何溜め息吐いてるにゃ?」
「そりゃ、数日寝たきりだからな…気も滅入る…」
「アンタの自業自得だにゃ。」
……まぁ、そうなんだがな…何だかんだ言って…結局、最後は私が戦いたかっただけでは有るしな…
とは言え、それでも納得出来ん部分は有る…
「…いや、だが私はデネブを「何か勘違いしてる様だがな…そもそも、勝手に自滅の方向に向かってる奴にお前まで合わせる理由は無かったんじゃないのか?」よう、ミリア…見舞いに来てくれたのか?」
「他に有ると思うか?」
気は滅入るが、退屈はしない…こうして、代わる代わる会いに来るのが居るからな…と言うか、ミリアやヘレンは引っ越してるし…ミリアも用務員を辞めたから、今は通常の状況だとほとんど会う事も無いだろう……ヘレンはともかく、ミリアは引っ越しももう済んでると言うし…私に対する相談事はもう特に無いだろうしな…
「…ところで、デネブには会ったのか?」
「ああ…」
「…あれ以来、私は会ってないが…どんな様子だ?あいつも私と同じ状態だろ「ほら、テレサ…あ~ん」あー……美味い。」
「…そうやって…大口開けてりんご食ってるの見ると、病人にはとても思えんな…」
「…ま、そう見えるだろうな…最も、実は一昨日まで流動食だったんだがな…」
食事ガッツリ抜いてたせいで、イカれてしまった内臓が中々元に戻らなかったからな…しかも、結果的に体力は戻ってたとは言え…あいつと戦う前日にまともな物食ったのも良く無かったらしい…アレが見事にトドメになったそうな……最も、アザゼルの話だと…食ってなきゃ食ってないで、到底戦うどころの話じゃなかった様だが…デネブの場合はその体質故、内臓もある程度一定の状態を保てたらしいが、私は違うからな……仕方無いと言えば仕方無いが。
「…話を逸らしてしまったが、お前よりは元気だったぞ……身体はな。」
「身体は、か…」
「ああ。」
まぁ、確かにあのやり方で…あいつの精神が戻る訳無いよな…私との決着も、到底納得出来る物では無かっただろう…最も、あの状態のあいつではどう展開変わったとしても、私が死ぬか…そうでなければあいつが泥臭く、不完全燃焼な敗北する以外の道は無かった様に思う…要するに、結局あいつの納得する終わりは…私が死ぬ以外に無かったんだろうな…
「荒れてたのか?」
「……いや…寧ろ、俗に言う燃え尽き症候群に近い…ある意味では大人しいものだった…誤解してると思うが、あいつはあの敗北自体は受け入れてたぞ?」
「……そうなのか?」
「…『何を言おうと、結局負けは負け』…あいつはそう言っていたよ…」
「そうか……自害する可能性は?」
「無くも無い、が…私たちも四六時中あいつを見張ってもいられん…それに、誰か居たら居たで余計鬱々として来る様でな…早々に、引き上げたよ。」
「そうか…心配だな…」
「……あれだけやっといてか?」
「心外だな…そうは見えなかったと思うが、これでも私は…始めからあいつを殺す気は無かったんだぞ?」
……危うく、殺ってしまいそうにはなったが。まぁ、あいつが基本的に死なない限りは…多少無茶な事してもほぼ何度でも再生する防御型だったのもやり過ぎた理由の一つだろうがな…仮にデネブが攻撃型だったら、私ももう少し自重しただろう…
…ま、それはそうとだ…
「…正直言うとな、私には分かるんだよ…あいつが何で自棄になったのか…」
「……そうなのか?」
分からないだろうな、自分の道をきちんと歩けてる今のお前ではな…もちろん、今回はヘレンでもハッキリとは分かってないだろう…付き合いの長さも有るから、まともに言葉として定義出来無くても…何となくは分かるかも知れんが。
「ハァ…会ってやらないと駄目か…恐らく、今…本当の意味であいつの事を理解出来るのは私だけだ…最も、残念ながらまだ動けそうに無いがな…」
いや、本当に文字通り動けなくなってるんだよな…あいつとの戦いが終わった直後はまだ少しは動けてたんだがな……まぁ、要するに筋肉痛みたいものと思えばこの状況に納得出来無くは無いんだが(戦いが終わった直後とそれから三日の間は有った身体の痛みも今は無い…ただ、身体が動かないだけだ…)
「…ま、幸い今…あいつの元には優秀な見張り兼、カウンセラーが居るからな…しばらくは安定してるだろうが。」
「……誰の事だ?」
正直、その定義に当て嵌る様な奴は私にはクレアしか浮かばん…最も、クレアは学校も有るし…ずっと見張らせるのは無理だ…と言うか、今のあいつは恐らくクレアにも会いたくないだろうが。あそこまで拗れた奴が相手だと、クレアの存在はもう毒にしかならんだろうしな…
「マリアさ…」
「……あいつか…才能豊かなのは散々聞かされたが、そんな素質も有るのか?」
テレサは元より、ガラテアを遥かに上回る妖気感知能力持ちなど…正しくチートだ……最も感知に関しては、妖魔の居ないこの世界ではあまり役に立たない能力では有る…まぁ、習った訳でも無いのに…自分の妖力を無意識下で完全にコントロールしてると言う事実で既にヤバいんだが…私ですら、妖力のコントロールには本当に苦労した…と言うか今でも、正直まだ粗が有る程だしな…
「ちなみに…」
「ん?」
「イレーネ曰く…大剣こそまだ持てなかったが、恐らく高速剣をすぐに物にするだろうとの事だ…」
「……つまり、既に完全覚醒した片腕のコントロールを物にしてると?」
ミリアが頷いた……いや…どんな化け物だ、それは。
「何でも、一度見ただけでやってのけたらしい…」
「……ガキ相手に大人気無いとは思うが、普通に嫉妬するぞ…何だ、その才能の塊…」
まぁ、最も…
「とは言え、この世界では結局過剰な能力だがな…」
「今の状態でもうアレだからな、将来的には本当にどうなってるか…」
要は、マリアは確実に早い段階で私たちの手に負えなくなる実力を手にするだろう…と言う事だ…
「まぁ、高速剣擬きが出来るのも不味いだろうが…」
「?…まだ何か有るのか?」
「……マリアは幻影まで出した…それも、妖力解放無しでだ…」
「まるで高野豆腐だな…」
「例えとしてどうかと思うが、まぁ…言えてるか。」
高野豆腐はスポンジより、遥かに吸収力は上だ…確かにダサい例えかも知れんが、他にしっくり来る表現が無い…
「ちなみに、妖力解放有りきの幻影ももちろん使える…」
「……剣さえ持てる様になれば、風斬りもすぐ使える様になるんじゃないか?」
「それがな…」
「今度は何だ?」
「新聞丸めて、剣に見立てた物で風斬り擬きを出した…」
「……要領はあいつの中でもう分かってるから、後は剣さえ持てれば…今すぐにでも普通に使えると?」
「そうなるな…正直、現状あいつに確実に使えないと言えるのは…ジーンやヘレンの使う旋空剣くらいだろうな…」
「アレはほとんど、特有の体質だから出来る技だからな……漣の剣はどうだった?」
「…使えなかった…オフィーリア程の身体の柔らかさは、受け継いで無かったらしい…」
とは言え、それはつまり…
「要するにそれは…結局柔軟をやって、身体が今より柔らかくなったら…普通に使えると言う事じゃないのか?」
「まぁ、そうなるだろうな…」
寧ろ、何が出来無いのか教えて…ああ、旋空剣は無理だったな…
「ちなみに、妖気を感じ取っての戦闘「お前とオフィーリアが嘗て戦ったと言う山…あそこで試しに隠れんぼやったら、五分と掛からず…私、ヘレン、イレーネ…それからフローラの全員を見付けた…私は幻影使っても、本体をその場で見抜かれて身体にタッチされた…次にあいつに目隠しさせて、さっきの面子全員で鬼ごっこやったら…そのまま普通にあいつが一時間逃げ切った…しかも、最終的に捕まった理由が…疲れて動けなくなったから、だ…スタミナが続く様なら、普通にまだ逃げれただろうな」……」
寄って集ってどんだけガチでガキ一人を追い込んでるんだと呆れるやら、改めてマリアの規格外さに感心通り越して…寧ろ恐怖するやら…
「ハァ…これから先も、私たちの苦労は続きそうだな…」
「お互いにな…ま、退屈はしなくて良いんじゃないか?」
「……最近、退屈だった頃を懐かしく思っているよ…と言うか、割と私ばかり苦労してる様な「ん?それに関してはちょっと違わない?」んん?何がだ?」
さっきから黙っていた黒歌が口を開く…何が違うと言うんだ?
「確かにそれは違うだろうな…」
「いや、だから何がだ?」
「お前の場合、毎回ほとんど自分から一人で背負いに行ってるんだよ…おまけに、事態を大事にするのも大抵お前自身だ…」
「そんな事は「今回のデネブとの一件…それからお前、前に一回家出したそうだな?しかも携帯まで破壊して、物理的に繋がりを絶とうとしたとか?」……」
まぁ…デネブの件はともかく、そこ言われると反論はしにくい…
「後は相当前の話みたいだが、仮にも悪魔の貴族に派手にケンカ売ったとか聞いたな?…今は和解してるらしいが。」
「……和解と言うかだな…まぁ、その…あいつは今では…アザゼルと同じセフレだ…」
最近は色々忙しくて会えてないが…まぁ、聞いたらあっちも今はそんな感じらしいがな…
「……ま、とにかく…結局お前はいつも自分から首突っ込んでると思うが?」
……いや、スルーか…別に良いが。
「…まぁ、どっちみちマリアの事に関しては私一人でそもそもどうこう出来る事でも無い…と言うか、実はあんまり会話した事が無いんだよな…」
「そうなのか?」
「クレアとアーシア、小猫…それからギャスパーとも仲が良いとは聞いてるが…本当にそれくらいしか知らん…」
「…まぁ、嫌われてはいないと思うぞ?」
「何故だ?」
「結局、今回お前の勝利を最後まで信じていたのはあいつだけだ…お前の家族はデネブに首を絞められた辺りで全員狼狽えたし、私たちの方もどっちが勝つとあの時点ではまだ判断出来ていなかった…その状況で、あいつは…お前が勝つと、断言していたよ…」
「その…悔しいけど、あの時…私たち皆、アンタが負けると思ったにゃ…でも、あの子だけがハッキリとアンタが勝つと言い切ったにゃ…」
「ふむ…」
確かに少し、会話してみたくはなったか。
「ちなみに、あいつは親である筈のテレーズとオフィーリアとは一定の距離を置いてるのに、黒歌にはベッタリなんだが…それも知らないか?」
「黒歌?」
「ええ、それは本当…セラフォルーは私が猫で、母性が強いから自然とあの子が惹かれて来てるんじゃないかって…言ってたけど…」
……まぁ、あくまで推論の域を出ん…そこら辺は、本人に聞かないと分からんか…
「まぁ、心根は今の所確実に善の方向に寄ってるが…少々扱いにくい所も有る…」
「あの子、自分の気持ちはほとんど何も話してくれないのよね…変に大人っぽい所が有るって言うか…毎回あからさまに、こっちの顔色を伺ってる節が有ると言うか…」
「…例えば背伸びしてるとか、単に大人ぶってるとかじゃなくてか?」
「まぁ、場の空気に関しては私たちの中で一番読めてるな…そして、何より…子供特有の無邪気さがほとんど無い…まだ教えてない事も有り、常識的な所が色々欠けてる部分を差し引くと…口調こそ幼げだが、時折まるで…大人と会話してるかの様にも思えて来る事が有るからな…」
「……」
「何考えてるにゃ?」
「…いや、実は私と同じ様な存在だったりするんじゃないかと思ってな…」
「…つまり、中身はあいつらの子供に転生した…前世の記憶持ちの大人では無いかって事か?」
「……やはり、無理にでも確認した方が良さそうだな。」
そうだったらそうだったで、私が居るんだからそこは今更だが…実は悪意の有る奴だったら不味いからな……まぁ、それはそうと何か忘れてる気が……あ。
「すっかり話が逸れたが、あいつがデネブのカウンセラーやってると言うのはマジなのか?」
「マジだ…デネブも今の所、何故かマリアとは色々と話すらしい…カウンセラーと言うか、最早マスコットの様な物だ…ほとんど一緒に居るだけでもあいつの精神安定に貢献している……まぁ、あいつの悩みそのものは聞けてない様だがな…」
改めて話だけ聞いてると、最早クレアの上位互換だな…
「…ま、心を開いてるのを良い事に…デネブに何かする訳じゃないなら悪意は無い、と言えるかもな…」
まぁ、まだ根拠としては薄いがな…と言うか、戦闘に関して何の知識も無かった奴…しかも子供が…ひたすらに戦闘の解説してたとか、それはどう考えても普通の子供の姿じゃないからな…いくら聡明だと言っても違和感は有る…
「!…悪いな、そろそろ帰る…この後仕事なんだ。」
「あー…午後からのシフトなのか…分かった、じゃあな。」
「ああ。」