「う~む…」
「さっきから何唸ってるにゃ?」
「…いや、ここまでスルーして来たんだがな…改めて考えたら、マリアの事がどうも引っ掛かるんだ…」
「引っ掛かる……あー…うん、漠然とだけど何が言いたいかは分かるにゃ…要するに、違和感を感じてるのね?」
「ああ…ただ「でも、その違和感がにゃんにゃなのか分からない…って、とこにゃ?」…そうだ、もうあと少しの所まで来てるんだがな…」
何か、何かが可笑しいんだ…むぅ…もどかしい……あ。
「…もうこんな時間か。黒歌、お前もそろそろ仕事休めないんだろ?帰って良いぞ?」
「……一応聞くけど、大丈夫よね?」
「もう身体がろくに動かん以外、特に問題は無い…と言うか、忘れたのか?ここはサーゼクスの屋敷だぞ?最悪グレイフィアが世話してくれ…ん?」
「どうぞ、入って良いにゃ。」
「…どうですか、具合の方は?」
「…身体は動かんが、既に痛みは無いし…もうまともな飯も食える…悪くは無いな。」
「そうですか…ホント、元気になって良かったです。」
そう言って笑顔を浮かべる女に溜め息を吐きたくなる…何せ、コイツは素でこれが言えるんだよな…
「…ふぅ…と言うかフローラ、今回の一件…お前はミリアやヘレンと違ってほとんど関わり無いだろ?別にこんなに頻繁に来なくても良いんだぞ?」
と言うか、用務員の仕事のシフトの都合も有るから…時間はズレたりするが…コイツは休日だったら普通に朝から来て夕方まで居たりするし…仕事の日だって、夕方の仕事終わりにやって来たりすると…そのまま夜まで居たりするからな…
「…あの…そんなに私の事、嫌いですか?」
「そうは、言ってない…」
とは言え、コイツの場合100%善意なのは分かってるからなぁ…ただ…やっぱりどうにもコイツの事は苦手だ…二人きりになったりすると、何となく落ち着かない気分にはなる…と言うか、何故コイツはいつもこう、精神的距離をグイグイ詰めて来るのか…
『黒歌…』
『…いや、帰るにゃ。ここからはフローラに任せるにゃ。』
……とは言え、黒歌は私とは逆にフローラと一番仲が良く、信頼も大きい…私が苦手にしてるのは分かってても、残るとは言わない…まぁ、そもそも…この場合私を世話する人間が二人居ても効率が悪い訳だから黒歌の反応は至極当然とも言えるのだが……最も、そこが分かっていてもどうしてもコイツと二人きりになりたくない私は続けてアイコンタクトを飛ばす…
『黒歌…あいつと二人きり…私は、嫌だ…』
『そもそも、にゃんでそんにゃに苦手にゃ?』
『……分からん。』
とは言え、正直苦手理由に関してはハッキリコレと示せる物は特に無い…強いて言うなら、私はとことんこいつと相性が悪いんだろうと思う…まぁ、どうにも会話が弾みにくいとかも理由の一つだとは思う……ちなみに、コイツがオフィーリアと同類で有る事については私も黒歌も…別に危惧はしてない…黒歌もこいつがそうで有る事に気付いてはいるが、本人に自覚が無いのは分かってるし…仮に目覚めたとしても、友人かどうかと言うのは関係無く、相手が嫌がってるのに無理矢理手を出す奴じゃない、と言うのも共通意見だ(オフィーリアの場合は…仮に例え振られても落としに掛かるから、そこら辺があいつとの大きな違いだな…と言うか、実際あいつはただヤリたいだけのドクズだ…)
「あの…そんなに嫌ですか…?私、帰った方が良いですか…?私は…本当にテレサさんが心配だから、来てるだけなんですけど…」
……コイツは、善人の筈…ただ、時折こうやってこちらの罪悪感に付け込んでくる…っ…黒歌が肘で小突いて来た……ハァ…分かったよ…
「分かった、悪いが世話を頼めるか?」
「!…ええ!」
……どうして他人の世話をする事になって、そんな満面の笑みを浮かべられるんだかな…普通に面倒だろうに……やっぱり私は、コイツとは合わん…
「その…私、明日はちょうど休みですから…ここに泊まりますね?」
「いや、そこまでしなく「お願いするにゃ、私は明日仕事だから…朝から来れにゃいし」……」
まぁ、こうなると私からの拒否はもう通らん…と言うか、さっきから言ってる様に私は動けないから…逃げ場は元々無いんだよな…
「ハイ!任せてください!」
……まぁ、本当にただ真面目で …そして、責任感も強かったコイツは…向こうで、ろくな抵抗も出来ずにあっさり殺されてしまった事実を…私は知っている…そして、クレアにとって…コイツもジーンと同じく生きていて欲しかった存在だった事を…あそこは、良い奴から先に死んで行くを地で行く世界なのだ…
「…さてと…テレサさん!お腹、空いてませんか?」
「…そうだな、何か貰えるか?」
だから、ただ私の世話をするだけでこうして満面の笑みを浮かべていると言う状況…少なくともそれは良い事なのだろうと思える……唯一問題が有るとすれば、この世界には"戦士クレア"が居ない事か…どうせなら、見てみたいがな……命を脅かされること無く、彼女が仲間たちとただ笑い合う姿を…この世界のクレアでは、やはりその代わりにはならないのだ…
「テレサさん?」
「!…ん?」
「どうか、しましたか?」
「…何がだ?」
「その…暗い顔をしていたので…」
「…いや、別に何でもないさ…」
そして本来なら、クレアが担って居ただろうポジションに私は居るのだ…何も感じない、と言う訳には行かない…ふぅ…コレも、こいつを苦手にしている理由の一つなのだろう…どうしてもコイツと居ると、気持ちは下がっていく…
コイツの距離が近過ぎるせいだ…お前は、私に"クレア"のポジションを押し付けている……まぁ、コイツは無意識にやってるんだろうし、そこに文句付けても仕方無いんだろうけどな…