「えっと…正直、急に呼び出されてビックリしました…」
「…まぁ、私も昨夜色々キツい事も言ったからな…さすがに呼ぶつもりは…痛…無かったんだが…」
「…でもまぁ、私としてはお役に立てるなら良かったです…」
「っ…そうか…」
やはり…どうしてもこいつとは相容れる気がせん…まぁ、この場合妥協しないといけないのは私の方だ…と言うのも分かるんだがな…
「…ちなみに、ジーンには会えたか?」
「ええ。今朝、仕事の前に部屋に寄ってくれました…」
「…ひょっとして、ジーンは私がお前を嫌いな理由に気付いていたか?」
「っ…ええ…最も、帰って来てから冷静になって考えたら…私にも分かりました…」
「っ…」
まあこいつは決して馬鹿では無い…そりゃ気付くか…
「そこまで分かってて何で来た?」
「テレサさん、私…貴女が思ってる程、弱い女じゃないつもりなんですよ?…でも、私も急ぎ過ぎました…ごめんなさい…」
「っ…いや、アレは私が悪かったのさ…お前がどんなお題目掲げようとお前の勝手さ…ハァ…ただな?」
「何でしょう?」
「私の悩みは私の物だ…悩むのは、私の権利なんだよ…」
「っ…そうですか…」
「ふぅ…そうだな、普通のアドバイスをしてやる…人の悩みを聞くのは好きにしたら良い…ただ、全ての奴の悩みを一人で解決出来ると思うのは…ただの傲慢だ。」
「っ…はい「だがな」え?」
「聞くと決めたなら簡単に引くな…お前は、あからさまにそこの覚悟が足りてない…例え、どれだけ罵倒されようとそいつの闇を受け止める覚悟がな…」
「はい…」
「お前がその覚悟を持てない理由…何か分かるか?」
「…借り物の信念に縋ってるから、ですか?」
「…結局、お前の信念には中身が無い…ただ、耳障りの良い言葉を掲げてるだけだ…そうでなくても、元々単に目的が無くなったからそれに従ってるだけ…元々な、義務感で人の闇を暴きに行ったら…相手は分かるんだよ…余程の単純馬鹿か、本当に藁にも縋る思いの切羽詰まってる奴でも無い限りはな…要は、自分の語れる言葉を全く持ってない奴に相談事なんて、誰もしたくないものなのさ…」
「…ふぅ…分かりました、私には向いてない生き方だったんですね…私は、貴女の様に語れる物が無い…」
「おっと…勘違いするなよ?」
「え…?」
「私の場合、単に無駄に長く生きた経験が有るだけなんだ…結局、いつもただ説教臭くなるのさ…まぁ、所詮は…年寄りの戯言に過ぎん。」
「そんな…」
「お前に響いたと言うならそれはお前の勝手…どう受け取るかもお前の自由…私はな、語れる言葉は有っても…結局、いつも他人の抱える問題の解決は出来て無いんだよ…それでも上手く行ったとしたら…最終的にたまたまそいつが、自分で出した結果に過ぎん。」
「……」
「ふぅ…お前に向いてないかどうかなど知らん…お前には経験が足らないってだけだ…経験さえ積めたなら、将来的にそう言う仕事に就くと言うのもお前の自由…好きにしろ、お前の人生だ。」
「…う~ん…テレサさんの方が、そう言う仕事に向いてませんか?」
「ハッ…誰がやるかそんな物…これ以上色々背負いたくなどない。」
「…結局そう言っていつも背負ってしまう…貴女は、そう言う人なんですよね?」
「知らん…勝手に思ってれば良い…」
「はい!私は勝手にそう思ってますから!」
「急に元気になったな…気持ち悪い奴だ「酷くないですか?」知らんな…私はお前が嫌いだと言ったろ?」
やっぱり駄目だ…私は、こいつが好きにはなれん…
「私は…好きですよ、テレサさんの事。」
……所謂、そう言うニュアンスじゃないな…こいつは今、純粋に親愛の感情を私に向けて来ている…
「そうか…勝手に言ってろ。」
「はい、勝手に言いますね?」
「…ふぅ…ん?そう言えば、マリアが静かだな…」
「え…あら?寝ちゃってますね…」
「まぁ、こいつには退屈な話だったか…」
いつの間にか、椅子に座ったマリアが眠っている…こうやって見るとただの子供なんだがな…しかし…寝てるなら、チャンスか…
「フローラ…」
「何ですか?」
「ちょっと…そこに有る携帯で、アザゼルに掛けて貰えないか?」
私は横に有る机の上に置かれた携帯を指差す…
「…えっと…良いんですか?」
「…別に見られて困る様な物は入ってない…っ…真面目に動けないんだ…悪いが、早く掛けて貰えると助かる…」
「はぁ…分かりました…」
フローラが私の携帯を操作する…少しして、私に渡して来る…
「はい、どうぞ?」
「すまんな……もしもし?アザゼルか?…あー…忙しいのに悪いな…ちょっと、大事な話が有ってな…」
……チラッとマリアの様子を確認する…起きてはいない、よな…?
「ああ……マリアの話だ。今日で無くても良いが…出来るだけ、急ぎで調べて欲しい事が有る…」
私がしようとしてるのは…ひょっとしたらパンドラの箱を開ける行為なのかも知れん…到底私の手には負えん災厄の詰まった箱を、だ…ただ…それでもあの神話では、最後に箱の中に残った物は希望だったと言う…なら、私のやる事も最悪とは限らない…柄では無いが、そう信じてみるのも…たまには悪く無いだろう…