「…結局、ダラダラしてる内に夜になったか…」
「私も、ほとんどやる事無かったですね…」
「…いや、何か悪かったな…休みの日に呼び出して…」
「いえ、気にしないでください…」
……一日駄弁ってたせいか、こいつに対する不快感ももう薄れている…と言うか、アザゼルやグレイフィアの言った通り…わざわざ争う理由自体が無いからな……寧ろ、退屈はしなかった…真面目な話…動けないと本当に暇だからな…さすがに、見舞い客ももういい加減途切れてるし…
「取り敢えず…そろそろ夕飯ですね。」
「私…と言うか、そこで寝てるマリアが食い終わったらもう帰ってくれて大丈夫だぞ?お前、明日は確かシフト入ってるだろ?……あ、後悪いんだが…」
「分かってます。マリアちゃんはちゃんとお家の方に連れて行きますから…と言うか、帰る場所は同じですし…」
「ま、そうだな…そいつは割と素直な奴だろうから大丈夫だとは思うが、一応気を付けろよ?」
「…いや、さすがに何に気を付けたら良いのか分からないんですけど…?」
「まぁ、仮にも戦士で有るお前に気を付けろも何も無いとは思うがな…取り敢えず、あいつがまだガキなのは頭に入れておけよ?」
「それはまぁ、分かってますが「あ。」…マリアちゃん?」
マリアが急に目を覚まして、椅子から立ち上がり…そのままドアの方まで向かう……立ち止まった。
「どうしたマリア?腹が減ったのなら、これからフローラが「デネブお姉ちゃんが来るよ」……何?」
こいつの感知能力に疑いの余地は無い…しかし…私には未だ感知出来無い…
『フローラ…』
『すいません…私もまだ…』
『…いや、悪い…多分お前と私の感知可能範囲はそう変わらん筈だ…私が分からない以上、お前も分かる訳無いよな…』
とは言え、マリアが言ってるのなら…やはり間違いは無い筈だ…
「マリア、デネブは今…何処に居る?」
「えっと…屋敷の前だよ。」
「…何をしに来たんだ、あいつ…?」
「警戒、すべきでしょうか…?」
「警戒も何も…今、私は戦えんぞ…」
「私も…さすがに今回は剣を持って来てないです…」
「……不味いな。」
デネブの精神状態が分からん…何をして来るか…
「大丈夫だよ。」
「?…マリア、何が大丈夫なんだ…?」
「デネブお姉ちゃん、武器になる様な物…何も持ってないから。」
「……何も?」
「うん、何も。」
「…これは、何処まで信じて良いんでしょうか…?」
「フローラ、帰っても良いぞ。」
「っ…え?」
「私はマリアの言葉を……いや、デネブを信じる事にした。」
「…なら、私も残ります…」
「ん?」
「何も無いなら、居ても良いでしょう?」
「ふぅ……ま、別に良いがな。」
そもそも慌てても仕方無いのだ…どうせ、私は動けないからな…それに、仮にデネブがケンカを売りに来たなら…そもそも屋敷には入れない。確実に、グレイフィアが黙ってない…フッ…来てるな…この距離なら、もう分かる…
「っ…一応ノックぐらいしろよ……ふぅ…ま、今更無粋な事を言う必要も無いか…久しぶりだな、デネブ…少しは、頭が冷えたか?」
「……中々、無様な姿だな。」
「お互い様だろ?どう見てもお前…しばらくまともに寝れてないって分かるぞ?」
「…食事は、ちゃんと取ってたさ。」
「そうか……で、何の用だ?見舞いに来たって訳じゃないだろ?」
「……お前の首を取りに来た、と…言ったら?」
「…素手で、か?」
「私の剣の腕は…もう錆び付いているからな。」
「…ああ、あの戦いの時も…結局お前一本しか使わなかったな…」
確かにデネブの剣の腕は落ちた…ただ、それでも…あの時二本使ってたら、私が普通に負けてた気がするがな…
「…で、やるのか?」
「っ!テレサさん!」
「……お前は今、動けない様だな…」
「筋肉痛だとさ、情けない話だろ?その前だって、内臓ボロボロだったそうだ……再生するお前とは違うな。」
「……やめだ、動けないお前を殺しても仕方が無い。」
「…良く言うな。」
「何だ…?」
「どうせ、私が動けないのは察していたんだろう?にも関わらず、武器を持たずに来る意味が無い…錆び付いてようが、相手が動けない以上…殺すのは簡単だった筈だ…」
今のデネブが、普通に剣を持って屋敷に来ていればグレイフィアは止めていただろう…だが、結局それなら…ナイフでも隠し持ってれば済む話。
「……」
「もう一度聞く…何の用だ?お前は、ここに何をしに来た?」
「……ふぅ…お前なら、答えを知っているかと思ってな。」
「答え、か……ハァ…唯一の生き甲斐だった戦いを取り上げられ、気付けば仲間も進むべき道を見付け…どんどん自分の側から居なくなって行く……分からないんだろう?自分が、どうしたら良いのか?」
「っ…」
「図星か、デネブ…お前、多分この世界に来なくても…組織が無くなったあの時点で…何れは、結局同じ悩みに苦しんでいた筈だ。」
「…お前には、分かるのか?」
「デネブ……私の中に、お前の求める答えは無い。それは、結局自分で見付けるしか無い…そして、私も…未だ答えは見付けて無い。」
「…何?」
「私が…自分の道を歩けてる様に見えたか?違うぞ…私はな、未だに迷い続け…流されてるだけなんだよ…未来など全く、見えてない…私の時間は、今もずっと止まったままだ…」
「…お前、は…」
「私が他人に構うのは…自分の事が分からないからだ…先すら見えないから、誰かの為に動く…そうすれば、余計な事は考えずに済むからな…」
「……」
「デネブ、自らの足で答えを探しにここに来たお前は…私より遥かにマシだよ。お前なら、きっと自分の道を見付けられるさ…」
「…お前は、どうするんだ…?」
「知らん。これからも流されて、ただ悩み続けるだけだ…どうせ、答えなんて無いのを分かっていてもな。」
「……」
「これで満足だろ?もう帰れ…お前を、心配してる奴が居る…」
「……」
デネブが背を向ける…そして、ドアに手を掛ける…ふぅ…冷や冷やした…一目見て、デネブが私を殺す気が無いのは分かったが…それでも、私が選択を間違えていたら…結局は、殺されていただろうな…
「テレサ…」
「っ…何だ?」
「今は……私より、お前の方が憐れに見えるな。」
「っ…そうか。」
デネブがドアを開け、部屋を出て行った…