相変わらず、その小さな身体には確実に多過ぎると感じる量を笑顔で頬張るマリアに溜め息を吐きたくなりながらも…私はフローラが口に運んでくれる物を咀嚼する…
…元は、昼と同じ様に私の分をマリアに渡そうと思っていたのだが…
『でも、テレサお姉ちゃん…お昼の分を私にくれたから食べてないし…夜はちゃんと食べないと駄目だよ…』
……何処と無くクレアを彷彿とさせる顔でそんな風に言われたら、私も従わざるを得ない…まぁ、持ってって良いと言われたのに…一応ハッキリ断られて、困り顔のフローラの顔を見てるのも落ち着かないしな……まぁ、そう言いつつも私の顔とフローラの持つ食事の皿…マリアが両者に向けて物凄い勢いで視線を往復させていたのはこの際見なかった事にした(こいつは、頑張った…)
「はい。」
「ああ…あー……ふぅ…しかし、何か食べにくいな…』
私は途中で声を潜めた。
『え?……あー…私にも分かります…何度かあの子の視線が、こっちに飛んで来てますね…』
『食べたいなら食べたいと、言えば良かったのにな…』
『一応、あの子はあの子なりに気を使ったんでしょうし…』
『ここで私が、やっぱり食うか?…と、聞いても多分無駄なんだろうな…』
『…あの子は食べかけでも多分気にしないでしょうけど…それでも一度言い出した以上、拒否するだろうなって言うのは…まだ接した時間の短い私でも何となく分かります…』
『ハァ…変な所で頑固そうだものな…』
『何となく…貴女の家族の方のクレアちゃんに似てますね…』
『あの二人、割と仲良いそうだからな…影響は受けてそうだな…』
全く、あいつ相手なら良い影響も多そうだが…何もそんな所まで真似なくて良いんだけどな…
……結局、少しでも我慢出来る様にする為なのか…マリアは昼の倍以上の時間を掛けて自分の分を完食した(それでも、実は…明らかにペースは常人よりかなり早かったりするんだがな…)
飯も食い終わり、いい加減マリアを帰さないといけない時間になった(さすがに夕飯の後はこいつも起きてたな…今日最初に有った事が嘘の様に大人しかったが)
「あー…マリア、腹は減ってないのか…?」
「大丈夫だよ、テレサお姉ちゃん…」
…それは、大丈夫な奴の返事じゃないんだよな…と言うか、明らかに我慢してるのはその顔見てたら何となく分かる…寧ろ、この顔見てて…テレーズとオフィーリアは普段の食事が足りないのが分からないのかと問いたい……それとも、それだけこいつが…今、私とフローラに心を開いてる証左かも知れんが……ふぅ…取り敢えずフローラに言っておくか…
『フローラ…』
『何ですか?』
『帰りに何処か寄ってくれないか?』
……言ってから言葉が足りないのに気付いた…要は、何処かでマリアに飯を食わせてやってくれと言う事を伝えるつもりだったのだが…
『あー…私もマリアちゃんの事が心配なので良いですけど…でも、テレーズさんかオフィーリアさんに食べさせて良いか…一応確認した方が良いのでは?』
…さすがだな、今ので通じるか…
『まぁ、私がこれから確認しても良いが…』
『あ、いえ…それなら私が帰りに連絡しますよ…と言うか、私の方が良いんじゃないですかね…』
『ん?何でだ?』
『一緒に居る私の方が、実際にマリアちゃんの食べる量を正確に伝えられますしね…』
『……それも、そうか。』
確かに、その通りだな…
「さて、マリア……元気になったらまた会おうな。」
「うん…」
今のは割と自然に、と言うか…完全に無意識に出た一言だった…実は、言った私も少し驚いている…まぁ、ある種の納得も有るのだが…今日までろくに会話もした事が無かったが…今日一日だけで、私もかなりこいつに絆されて来ていたらしい…
「ふぅ…フローラ、こいつの事…頼むぞ?」
「はい、任せてください……テレサさん?」
「ん?」
「今日の事…後日ちゃんと、サーゼクスさんに確認しますからね?」
……律儀な奴だな、既に許可は出してるんだがな…
「好きにしろ…とにかく今日は、マリアの事に集中しろ。」
「分かってますよ…じゃ、また…」
「ああ……あー…次は、学園で会えると良いな。」
「え……もしかして、デレてくれたんですか…?」
何処でそんな表現を覚えたのやら…
「ハァ…余計な事を言ってしまったな…やっぱり私は、お前が嫌いだ。」
「酷いです…うう…」
どう見ても嘘泣きを始めるフローラ…?…服の袖を引かれる感触を感じて、下を見る…
「テレサお姉ちゃん、フローラお姉ちゃんを虐めたら駄目だよ…」
……いや、どう見てもそいつ泣いてないだろ?…とは、さすがにこの場では言えず…
「あー…悪かったよ、フローラ…」
「クスッ…良いですよ?」
いや、もう少し取り繕えよ…いくら何でも泣き止むのが早いんだよ…ハァ…やっぱりこいつの事は好きにはなれん。
「フフッ…じゃあ、帰りますね?」
「とっとと帰れ…じゃあマリア、待たな?」
「うん!……フローラお姉ちゃん、今ので良かったよね?』
『え…ええ、良い感じでしたよ?』
……いや、小声でもこの距離ならさすがに聞こえるからな?と言うか、要するにマリアは嘘泣きなのを分かっててあんな事を言った訳か…この性格の悪さ、クレアには無い物だな…まぁ、強かなのは良い事か…
『おい、フローラ……マリアに免じて、この場は許してやる… 』
『クスッ…どうも。』
「ハァ…ほら、とっとと行け。」
「ええ…では、また…行きましょうか、マリアちゃん。」
「うん。」
二人が私に背を向け、ドアに向かう……出て行った…ハァ…やれやれ…急にデネブが来た事も有り、正直少々疲れた…もう今日はいっそ、このまま寝てしまうか…