「…心配してる、ってだけじゃ…不足ですか…?」
「足りないなフローラ…そもそも心配、と言うのは一方的な押し付けに近い…と言うか、結局あいつじゃない私にそれを言うのは可笑しいだろう?足りない…私を納得させるには、それではな…」
記憶が無かろうと、あいつとサーゼクスの付き合いは確実に長い……もちろん、それがあいつの思い込み…あるいはそうだと思わされている可能性は有る…が、そうだとしても…サーゼクスがどう言う性格なのかは良く分かってる筈だ…そして、そのままフローラがサーゼクスを問い質した所で…どうせ奴は何も語らんと言う事も。
「……」
悩んでるな…このままこいつが折れるなら、それも仕方無いとは思うが…今のあいつには味方が必要だ…家族でも仲間でも無く、全てを共有出来る味方がな……ふぅ…考えが纏まるまで、もう少し喋ってやるか…
「そもそも…私が何でこんな事を言ってるか、分かるかフローラ?」
「…正直に言うと、分からないです…」
…頭の良いこいつでも、それはそうだろうな…
「お前はあいつに信用されたと言った…だが、信頼には至ってない。」
「そう、でしょうね「問題はそこだ」え?」
「あいつは脳筋の様に振舞ってるし、実際…行動も誰が見ても脳筋のソレだ…だが、あいつはアレでいつも色々考えている…基本、思考を本当の意味でやめる事は無い…更に言えば、頭の回転も早い…その結果、大抵はあいつが深く考えた末に出した行動が…周りには"脳筋"に見えると言う事になるパターンがほとんどだ…身体を共にしていた私ですら、完全にあいつの考えは読めん…」
「それは…でも、何となくは分かります…」
「…ま、あいつも無意識なんだろうが…毎回問題事を一人で解決しようとする癖が有るせいも有る…基本的に、周囲の連中の動きを計算に入れない…自分だけで動く事のみを念頭に置いて、最終的に出来ると思ったら…そのまま誰にも相談もせずひた走る…そりゃ、脳筋にだって見える…」
本人はいい加減自覚した様で…実際は全然だ…誰かが直前で止めないと、結局あいつはいつも…勝手に動く。
大抵、周りが気付いた時にはあいつはもう後戻り出来無いし…何なら、もう強引に詰めの段階に入ってたりするな…
「今回のデネブさんとの一件…少なくとも、ミリアさんやヘレンさんには相談すべきだった筈です…彼女は自分が戦いたいだけだったと言ってました…それも本音なのでしょう…でも、デネブさんの事を…本当はずっと気に掛けていた筈です…だから、同じ土俵に乗らないと自分の想いは伝わらないと判断したんだと思っています…でも、周りとの関係を切るのは可笑しいです…何より…デネブさんと付き合いの長いミリアさんや、ヘレンさんも…ずっとデネブさんの事を心配していたのですから、二人には…起こってる状況をちゃんと伝えるべきでした…」
「…そもそも、私は後から聞いたが…あいつはミリアに修行を着けて貰う気だったらしい…元々、あいつはデネブがまともな状態且つ…殺す気で向かって来ていたら、負けるのは分かっていただろうから当然だな……結局、自分で約束を反故にした様だがな…」
「ミリアさんに…ひょっとして、幻影を学ぼうとしたんですか?」
「恐らくな…ちなみにあいつが、風斬りを使った事が有るのは知ってるか…?」
「ええ…少し前に聞いた事が有ります…どうせなら、私にも相談しに来てくれば…きっと、何か教えられる事も有ったと思うんですけど…」
「元々…普通の戦いをする気が無かったからだろうな…いや、当初は本当にそのつもりだったんだろうが…まぁ、どっちみち…結局お前には何も聞かなかったかも知れないがな…」
「私はテレサさんに嫌われてますしね…」
「…考えが微妙に似てるのに、絶対に相容れないと言う結論に一度至ると中々そこを受け入れるのは難しいからな…仕方無い…と、話が逸れてしまったがな…頭の回るあいつは結局、肝心な事をお前に話してないのさ…仮に、そのままサーゼクスに話を聞きに行ってもサーゼクスが何も語らない所まで…あいつは分かっていた筈だ…」
「…つまり私は…」
「ただあいつに言いくるめられただけ、と言う事だな…」
「……「とは言え、慎重なお前は私に先に話を聞こうとした」…でも、それは…マリアちゃんの事が有ったからで…それが無ければ、私はそのままサーゼクスさんの所に行ったと思います…」
「…マリアの事を気にしろ、多分そう言ったのは…あいつじゃないのか?」
「そうです…」
……成程な。
「…やはりあいつも、心の何処かで…味方を欲しているのかもな…」
「え…」
「さっきも言ったが、お前がそのまま聞きに行っても恐らくサーゼクスは何も語らん…お前に冷静になる時間を与えたのは、この状況を期待したんじゃないかと思ってな…まぁ、どうせ無意識なんだろうがな。」
「……」
「ま、どちらにしても…お前が先に私に話を聞こうとした…それに関しては正しい。」
「…そう、なんですか?」
「サーゼクスは恐らく、嘗てのあいつに口止めされている…それが、何も語らん理由だ…逆に言えば、今のあいつに何も言わないのも…それが理由だ。」
「……一つ、良いですか?」
「何だ?」
「何故テレーズさんも、そこまでサーゼクスさんの事を信じられるんですか?」
「成程…そこは気になるよな…ま、あいつと違って一応私は客観的な理由が有るがな…」
「理由、ですか?」
「元々あいつは、この世界の外から来た…言わば観測者…つまり、本来ならこの世界がどうなって行くのか…その記憶が有る…今は、多くが失われているがな…」
「…その辺も、聞いた事が有ります…ちなみに、私たちの世界の記憶も有るそうですね…」
「そっちも残念ながら最近は忘れて来てるみたいだがな…ま、要するに…あいつはこの世界の未来を知っていたのさ…サーゼクスもあいつと長く付き合う内に、何処かでそれを知った筈だ…なら、普通サーゼクスはどう言う行動を取ると思う?」
「そうですね、どんな手を使っても味方にすると思います…そして、最後はテレサさんの知ってる事を全て聞き出すと…あ、そう言う事ですか…」
「結局あいつは…テレサの生活を援助する以外、ほとんど何もやってないからな…そこは一応、味方と判断出来る要素でも有る…と言うかだな、極端な話…最終的にサーゼクスよりアザゼルの方が裏切る可能性は高い…だから、サーゼクスを疑ってる場合じゃないと言う事も有るな…アザゼルの考えは私は元より、あいつも読み切れて無いだろうからな…逆に言えば、アザゼルの動きが分からない内は…慎重派のサーゼクスは迂闊な事はしないだろう、って事にはなる。」
「…つまり、アザゼルさんの動きによっては…」
「サーゼクスも動く可能性は有る…だが、それを今言っても仕方無いって事さ…ま、私の本音を言えばな…私も全面的にサーゼクスを信用してる訳じゃないって事だ……あいつは、本気で信頼してるだろうがな…」
「……」
「さて、そろそろ考えは纏まったか?…今のあいつには、味方が必要だ…家族でも仲間でも無く、な。」
「テレーズさんは…違うんですか?」
「私か?私は…あいつより優先するものも有るからな…これから先、状況次第では…残念ながらあいつの敵になる可能性は有る…まぁ、その前にあいつが思い詰めた末…全員を敵に回すかも知れないな…」
「そんな…」
「だから、そうならない様に今のあいつには味方が必要だ…再度になるが聞く、フローラ…何故お前はあいつの為にそこまでしようとする?」
少し、喋り過ぎた。オフィーリアが待ちくたびれそうだし、そろそろケリを着ける…さぁ、フローラ…私を納得させてみろ…