「…まぁ、正直に言えば…特に話題は無いんだがな…」
「ま、そうでしょうね…貴女しばらく外にも出てないし…テレビとかも全く見ないものね…」
「……そもそも、部屋に置かれてないが?」
「別に見るなら持って来たけど、貴女結局見ないでしょ?」
「まぁ、な…」
基本、世の中の出来事は新聞読んで知るのが私のパターンだしな…そもそも家にも現状、テレビが無かったりもする…(いや、家族の誰かが見るなら置くんだが…クレアも含めて、特に見たいと言う奴が居ないんだよな…)
「そう言えば、新聞とかは取って無いのか?」
「……ここ、人間界じゃないの忘れてない?」
「あー…」
そりゃ、この屋敷には届かんよな…
「ま、どっちみち私の身体が動かないから読めんのだがな…」
「欲しいなら持って来るけど、何なら読んであげましょうか?」
「…そりゃありがたいが、そんな暇有るのか?」
「……あら?冗談のつもりだったけど…まぁ、私もやってあげたいのは山々なんだけどね…」
「ふぅ…お前が忙しいのは分かってるし、それに…私らしくない事を言ってるのは分かってるさ…何だかんだ、今までお前にそんな頼みをした事は無いしな…」
「…ま、貴女とは長い付き合いでは有るけど…正直、こうやって普通に話せる様になったのも割と最近の事だしね…」
「当初はお前がかなり突っかかって来たしな…」
「だって…最初はサーゼクス様が貴女にアプローチ掛けてて…嫉妬してただけなんだけど、貴女の生活状況があまりにも酷いんですもの…そりゃ色々と言いたくもなるわよ。」
「…正直、私はお前と会った頃の事に関してはもう曖昧になって来てるんだが…そこまで酷かったか?」
「いや、だからってまさか…全く覚えてない訳じゃないでしょう?…ハァ…私は、忘れられないわ…サーゼクス様がよっぽどご執心だから一体どんな女かと思って会ってみれば、認めるのも癪だけど…同性の私から見ても絶世の美女…でも、いざどんな奴か改めて調べてみたらまさかの路上生活者…さすがに目を疑ったわよ…一応お金は有るのに、一体何でそんな生活してるのか…思わずその場で怒鳴りつけたのを…今でも、私は忘れられないわよ。」
「あー…そうだったそうだった…」
と言うか、考えれば考える程…昔は顔を合わせる度に散々コイツに怒鳴られたり、色々お小言を言われた記憶しか無い…お陰で、しばらく私はコイツが本当に苦手だった…コイツの場合、こっちが言い返そうものなら…説教の時間が十倍になるからな…かと言って、実力行使で勝てるかと言えば…今程コイツが強く無い事を加味しても普通に無理…まぁ、戦争も実質終わって戦いに出る事の無くなった今のコイツにすら、私は勝てる気がしないがな…
「…改めて考えると、ろくでもない事ばかり浮かぶんだが…」
「路上生活もそうだけど、食事もろくに摂った形跡が無いんですもの…いくらそんなに必要無いって聞いたところでこっちは気にするし、怒りもするわよ…」
「面倒だったからな…」
「これだもの…本当に当時、何しに貴女の所に来たんだか忘れちゃったわよ…」
「……いや、この話続けるのか?」
「他に話題有るのかしら?」
「……」
無い…無いが、一応私にとっては黒歴史なんだがな…
「何考えてるのかは大体分かるけど…貴女の場合一回、色々振り返った方が良いと思うわよ?」
「何故だ?」
「…貴女、自分で落ち着いたとか思ってる?」
「……まぁ、何だかんだ色々やらかしてる自覚は有るさ…」
「正直、昔の貴女の方が問題は少なかったかも知れないわね…」
「…昔は、しがらみが無かったからな…変に気を使わんで済んだな…」
「でも、今の生活の方が健全では有ると思うわよ?」
「楽では無いけどな…」
「でも、それは普通に生きてたら…誰もがする苦労よ。と言うか、貴女の場合ずっと一人では生きられないと思うけど?」
「……何故だ?」
「貴女、一人だと寂しいんでしょ?」
「……」
否定の言葉は浮かんで来なかった…結局、その通りだからな…
「そもそも、貴女…自分でお金は稼げても生活力は無きに等しいものね…いえ、まともな生活する気がそもそも無いと言うのが正しいのかしらね…」
「ふぅ…ま、当時の私は食事をごっそり削れたからな…まぁ、半覚醒した今もある程度は削れるがな…」
「…ハァ…先ずは削るとか削らないとか…そこの考えを良い加減改めたらどうかしら?…良い?貴女は当時…結局戦争には参加してないし、今は…停戦協定が結ばれてる…普通の生活、すれば良いのよ?」
「ま、そうなんだがな…」
とは言え、その"普通"の定義がもう私には怪しいのだがな…この世界に来るまで、私はどんな生活してたのか…そもそもどんな奴だったのか、そこら辺がとにかく曖昧だ…ま、今更な話だが…っ…
「…あら?眠くなった?」
「ああ…」
「じゃ、もう良いわね?私は行くから…おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ……あー…ありがとな?」
「…今日は妙に素直ね?」
「ま、たまにはそんな日も有るさ…」
正直、今日はもう疲れた…さっさと寝るか…私はグレイフィアが部屋を出て行くのを見送り、目を閉じた…