「ん……ああ、結局あのまま寝れた訳か…」
部屋の窓から日差しが入って来ている…時計を見れば八時を指している…取り敢えず身体を起こして、伸び…を…ん?
「身体が動く…何だ、あっさり回復したな。」
前日まで、ろくに動かないどころか…無理に動こうとすると激痛の走っていた身体は多少の違和感こそ有るが、ちゃんと動く…痛みも無い。
「ふぅ…起きるか……っ…」
ベッドから出て、立ち上がると目眩がしてふら付いた…まぁ、しばらく寝たきりだったしな…むぅ…屋敷の中を歩こうかと思ったが、この分だと一度ベッドに戻るべきか…正直、誰かが手伝ってくれないと動くのは厳しそうだ…ん?
「良いぞ、入って来い。」
ドアがノックされたので、取り敢えずベッドに腰掛けてから返事をする……座っていても若干の気怠さを感じる…すっかり身体が鈍ってしまった…元通りに戻すのは時間が掛かりそうだな…
「……ハァ…やっと起きたわね。」
「ん?やっと?」
部屋に入って来たのはグレイフィア……いや、ここ最近は確かに散々迷惑を掛けたとは思うが…そんなに皮肉めいた事を言われる程か?と言うか、午前八時ならそこまで遅くないとは思うが…
「…その様子だと、状況は分かってない様ね…」
「何がだ?」
「貴女、三日間眠り通しだったのよ。」
「……は?」
「えっと、確かフローラとあの子…マリアが来てくれて…あの日はデネブも来たんだったかしら?その後…貴女は私と少し話した後眠ったのかしら?」
「…ああ、そこまではちゃんと記憶に有る…その後、私は目覚めなかったのか?」
「ええ…こっちがいくら声を掛けても貴女は起きて来なかったわ…あの日から今日までの三日間…そのまま、ね…」
「冗談…では、無さそうだな…」
「そんな冗談、面白いかしら?」
「いや…」
まぁ、正直面白い話では無いな…
「ちなみに、二日目はルナとガラテアが貴女の様子を見に来たわ…ま、貴女は完全に寝てたけどね…」
「何だ、それは残念だ…」
あいつらは色々忙しいだろうに、わざわざ来てくれたのか…とは言え、起きていても私は特に話題は無かっただろうがな…
「他に何か動きは有ったか?」
「いえ、何人か貴女の所に来てくれたけど…特別他には何も無かったわ…ちなみに、デネブは来てないわよ?」
「そうか…」
あいつ、結局どうしてるんだろうな…正直に言えば心配だ…
「…で、もう起きれるの?」
「ああ。もう身体の痛みも無いし、問題は無い…と、言いたい所なんだが…しばらく寝ていたせいか、身体が少々不調の様でな…立ち上がるとふら付いてしまうんだ…」
「…そう。なら、今日の朝食は持って来るわね?」
「ああ、頼む……ちなみに、今日は誰か来るのか?」
「……」
「どうした?」
「ある意味、運命なのかしらね…」
「どう言う意味だ?」
「今日はね、ライザーが来るわよ。」
「……本当か?」
「ええ…貴女が寝たきりになったって聞いて…すぐに行こうとしてたけど、忙しかったみたいでね…今日やっと仕事が片付いて、様子を見に来る事になってるわ。」
「……グレイフィア、断れないか?」
「…逆に聞くけど何故?少なくとも、仲は悪くないんでしょう?」
まぁ、悪くはないだろう…と言うか、身体の付き合いは有る相手だ…致してしまった当初はともかく、今となっては特に後悔も無い……ただ…
「あいつにこんな情けない姿を見せたくなくてな…」
「…今更?てっきりライザーは、貴女の弱い所もそれなりに知ってるから…今みたいな付き合いが出来てるんだと思ってたけど…」
「……」
まぁ、否定はしない…改めて考えたらアレだけボコボコにして、見下してもいた相手とそう言う関係になってしまった事自体が既に問題では有るが…もう、私はそこら辺受け入れてしまっているし…有る一点を除いて、ライザーに対して隠し事の様な物は特に無い…だがな…
「アザゼルはまだしも…歳下だぞ?こう、歳上の余裕の様な物を見せておきたいじゃないか…」
「…貴女って、そんなに見栄を気にするタイプだったの?」
「煩いな…」
私だって元は男でも、こうして女として生きて来て長い…歳下の男にこう、情けない姿を見せたくないだとか…そんな風に思ったりもするさ…
「少なくとも幻滅される事は無いんじゃないかしらね…寧ろ、好きな女性の弱ってる所を見せられて喜ぶんじゃないかしら。」
「それだと私が惨めだろ…」
「そんな状態になってるのは誰のせいかしら?結局、自業自得でしょ?」
「……」
そうだがな…
「ライザーは貴女の様子を見る為に、わざわざ忙しい時間の合間を縫って会いに来ようとしてるのよ?追い返すなんてとても出来無いわ…サーゼクス様からもちゃんと客人として出迎える様に言われてる…追い返すなんて、とても出来無いわ…」
嫌味か…二回も言わなくて良いだろ…
「……良し、分かった…なら、私は今から逃げ…っ!「立ち上がっただけで足が縺れたわね…そんな状態で何処に行く気かしら?」…くっ…頼む…」
「却下よ…有りのままを見せれば良いじゃない…ライザーが男として、どれ程の甲斐性を持ってるのか確認する良いチャンスだと思わない?」
「あのな…私はあいつとそう言う関係になるつもりは無いぞ?」
「肉体関係に至ってるし今更だと思うけど…そもそも、ライザーも今では本気で関係を発展させる気は無いんじゃないかしらね…眷属との兼ね合いも有るし。」
「……」
まぁ、表面上…あいつらとの関係も私は良好だったりはする…ちなみに何処まで本気なのか、何れ私も含めた全員でヤリたいとか言われてたりもする……さすがに御免こうむるが。
「ま、とにかく…そろそろ私は行くわね?朝食を持って来るから暴れたりしないで、大人しくしてるのよ?」
「……分かったよ、静かにしてるさ…」
ま、さすがに今は暴れる体力なんて無いがな…やれやれ…これなら今日も寝てるべきだったか…何でこんなタイミングで起きてしまったんだ私は…