「…よう、久しぶりだな…」
「アンタのそんな姿を見せられるとは思わなかったな…」
その日の昼下がり、ライザー・フェニックスがやって来た。…そう言えば、何だかんだ一年以上会えていなかった…ここ最近、コイツはマジで忙しかったらしいからな…
「来るなりご挨拶だな、お気に召さないか?」
「…いや、状況聞く限りアンタが会ってくれるとは思ってなかった。こうして弱った姿見せてくれるって事は、俺をそんだけ信用してくれる様になったって事だろ?」
「……」
会いたくなかったが、グレイフィアに会えと言われたから会っただけ…そう言えば良いだけなんだが、何故か…その一言が出て来なかった…が、理由は私も分かっている…
(確かに、何だかんだ私は…コイツに対してある種の信用と信頼を向けている…)
グレイフィアにもチラッと言ったが、結局その通りなのだ。
「嬉しいよ…いつの間にか俺は、アンタにとって…そんな存在になってたんだな。」
「……」
調子に乗るな、ただその一言が…私の口から出て来ない。
「ハァ…そのキザな顔と口調、私に向けなくても良いだろ。」
苦し紛れに口に出せたのはそれだけ…で、奴の反応は…
「毎日…眷属の女たちに見せてるさ、でもな?」
「ん?」
「俺は…他ならぬアンタに会って、話をしたかった…」
「……そうか。」
それを言われて、こっちはどんな反応を返せば良いのか…
「やっと仕事が一段落したと思えば、アンタはこんな状態だからな…」
「そうだ、少なくともしばらくはお前の相手は出来ん……失望したか?」
「いや、久々にアンタに会えて良かった…最近は辛かったからな…」
「っ…」
不覚にも、奴の浮かべた儚げな笑顔に見蕩れた…どんだけ大変だったんだろうな…
「私では無く、眷属に癒して貰えば良かっただろう…」
「あいつらは皆、気を使ってくれたさ…妹もな。だが、やはり…アンタに会いたかった。」
「私の一体何が、そんなに癒されるんだかな…」
コイツと良いアザゼルと良い、サーゼクスもそうか…とにかく私に寄って来る男は、大体こんな奴らばかりだ…正直、訳が分からん…
「まぁ、見ての通り…せっかく来て貰っても私は相手が出来ん…」
「…話す元気も無いのか?」
「…それぐらいは出来るが、私は特に話題は無いぞ?」
何せ、しばらく部屋から外に出てないからな…
「じゃ、少し付き合ってくれよ…俺の方は色々話題も有る……あ、疲れたら言ってくれ…その時は俺も帰るさ。」
そう言って、ベッド横の椅子に腰掛ける…
「……見舞い品か?」
近くの机に置かれていた果物の入っている容器に目を向ける…ライザーが徐に手を伸ばし、りんごを手に取る…
「…良いぞ、食っても。」
「…いや、アンタのだろ?小腹空いてないか?せっかくだから剥いてやるよ…」
そう言って自分の懐に手を入れ、中から装飾付きの高そうなナイフを取り出した……いや、私は腹減ってるとは言ってないし、何より…
「お前、出来るのか?」
「…まぁ、見てなよ。」
ライザーがゴミ箱を手に取り、自分の膝の上に置く…そのままりんごにナイフを通した……ほう?
「結構器用なんだな…」
「まぁな…まさか、アンタに見せる日が来るとは思わなかったけどな…」
りんごの皮は途切れる事無く剥けて行く…やがて一度もちぎれず、皮は綺麗に剥けた…さて、ライザーは恐らく気付いてない様だが…
「剥いてくれたのは良いが、今この部屋に皿は無いぞ。」
「!…あ。」
やはり気付いて無かったな…やれやれ…
「…その状態で貰いに行く事も無いだろ?そのまま持ってろ…」
「ん?…っ…。」
私は取り敢えずベッドに寝ていた体勢から身体を起こす…横を向き、口を開けて…そのままライザーの持ってるりんごに齧り付いた。
「…ん?何だ?」
シャリシャリと音を立てて咀嚼していると、ライザーが今まで見た事も無い顔をしているのに気付いた。
「……いや、何でも無い…」
「…そうか。」
私の方もライザーの反応に微妙に困惑しつつも、続けて齧り付く…美味い…どうやら少し喉が乾いていた様だ…そう言えば、水差しも空だったな…食い終わったらライザーに入れて来て貰うか…どうも今はコイツも暇な様だしな…忙しい中、時間作って来てくれた奴に対する対応では無い気もするが…まぁ、動けないものは仕方無いと思う事にしよう…
「…手がりんごの汁だらけだな。」
「アンタの顔もな、今拭いてやるよ」
「……」
「っ!…何を…?」
「何だ…舐めとって欲しいのかと思ったが、違ったか?」
「…いや、アンタが自分からやってくれると思わなかったから驚いたが…悪くない…っ!もう、良い…その、歯止めが利かなくなっちまう…」
「…すまんな、元気なら相手してやるんだがな。」
……ちなみにこの時、ライザーの身体のある部分がしっかり反応していた。…この程度でそうなるとは、眷属ともしばらくシてなかったのか?マジでどれだけ忙しかったんだコイツは…