ライザーがポケットから取り出したハンカチで私の顔を拭いて行く…
「…良し、綺麗になったぜ?」
「ああ、すまんな…」
「…そう言や、結局何でそんな状態になったんだ…?」
「ん?何だ、聞いてないのか?」
「…いや、電話した時はあんたに直接聞けって言われてな…まぁ、俺は元々部外者だしな…どうしても話せないってなら別に良いけどな。」
「……」
ライザーに話す義理はもちろん無い…と言うか、私個人のみの話なら別に話しても良いんだが…この一件はデネブの方の問題も有る…
…ま、それでも…正直こっちは煮詰まってる状況だ…出来れば第三者の意見を聞きたい…
私自身口にも出したが、現状デネブの心中を本当の意味で理解出来るのは私だけだ…あいつが自力で、本来のらしさを取り戻せるなら…あのまま放っておいても良い…と言うか、その場合は…最早これはお節介なんてレベルじゃないな…
……だが、もし…これから先もデネブが何の答えも出せないままだったら…多分次は、本当に洒落にならない何かをやらかす気がしてならない…そして、そうなれば…もう私にも止める事は出来無い…
「どうした?」
「っ…!」
ライザーの声が耳に届き、私は我に返る…取り敢えずライザーに視線を向けると、予想以上に深刻そうな顔をしたライザーの顔が目に入った……こいつ、こんな真面目な顔も出来たのか…
「…いや、ちょっと考え事をな…」
「……悩み事か?」
「ふぅ…まぁ、な…」
「…あんたが普段から色々悩む奴なのはもう俺も知ってるけどな、今回はマジで厳しい悩みみたいだな…」
「ああ、解決法は見付からない…おまけに、下手に放置出来る問題でも無い…」
「そんなにか…それ、あんたの話じゃないな…」
「ん?」
「あんたの身近な誰かの話だろ?」
「……何で、分かった?」
本当に驚いた…何故こうも簡単にバレた…?
「…普通自分の事って言うのは、ある程度なら放置出来るパターンがほとんどだ。そこまで深刻になる事は滅多にねぇだろ?」
「成程な…そうだな、一つ…お前に聞いて貰いたい…」
「…相談相手は俺で良いのか?」
「事情の知らない第三者に、意見を聞いてみたくてな…」
「最早藁をも掴むって感じだな…良いぜ、あんたに相談されるなんて光栄だ…話してみな。」
「すまん…」
私は今回のデネブとの一件を話した…
「あー…そう言う話かよ…ま、突然義務を取り上げられて…なまじ、変に自由を与えられたらどうしたら良いのかは分からなくなったりするよな…ましてや、そいつにとってここは異世界で当然勝手も違う…自暴自棄にもなるよな…ただ、一つ良いか?」
「何だ?」
「…仮にも殺されかけた相手をそこまで気に掛けるって言うのは…普通なら有り得ねぇぜ?」
「ま、そうだな…だが、コレは私の性の様でな…」
「…相変わらず面倒な性質だな…ま、その辺は良いか…俺がどうこう言う事じゃねぇしな…で、俺の意見だったか?…意見って言ってもなぁ…俺はもうこの世に生まれた時から道は確定してる様なもんだしなぁ…」
「ま、そうだよな…」
こいつはフェニックス家の中では三男で、家を継ぐ必要は無い…それでも…
「家の為に生きる、か?」
「自分で言うのも何だが、デケェ家だからな…俺みたいな奴にも仕事は色々回ってくんのさ…」
「成程な「ま、それでも言える事は有るかな」ん?」
「あんたにも言える事だけどな、別にあんたやそいつは何の力も無いって訳じゃねえだろ?じゃ、探せば出来る事はなんだって有るだろ…なら、結局それをただ我武者羅にやってみる以外にねぇだろ。」
「…そうすれば、何かが見付かると?」
「やるだけやって、目標の一つも見付からなきゃ今度は他の事をすりゃ良いだろ…俺もあんたもそいつも…人間と違って不老不死…時間は腐る程有るだろ?」
「…結局燻るだけで終わる可能性も有るだろ。」
「仮に百年や千年費やしたって、別に無駄にはならねぇだろ?それだって経験の一つにはなるだろ?」
「…その経験に意味は有るのか?」
「無いって言い切れるか?」
「……」
言えないな…何十年、いや…何百年と掛かるかも知れないが、確かにいつか…何かの役に立つのかも知れないな…
と言うか、こいつこうも色々考えてたのか…
「成程な…確かに、面白い意見だった…ありがとう。」
「役に立ったなら何よりだ……とは言え、そいつは割と強情な奴なんだろ?」
「まぁ、な…」
「なら、あんたから言っても…また殺し合いになるかも知れないぜ?」
「そうかもな…」
次にあいつを怒らせれば、勝つのは私かあいつか…そしてあいつが勝ったなら、私はきっと殺されるだろう…
「なぁ?」
「ん?何だ?」
「…そいつ、デネブって言ったか?」
「そうだが「会わせてくれないか」…本気か?下手に刺激したら、ただでは済まないぞ?」
「忘れたか?俺は、死なないんだぜ?」
「そうだったな…」
確かに、こいつにデネブを会わせたらあるいは…何かが変わるかも知れんな…
「分かったよ、連絡を取ってみる。」
取り敢えず机の上の携帯を手に取ってからふと気付く…
「…いや、何故だ?」
「ん?」
「何故お前がそこまでする?私への点数稼ぎか?」
「稼がせてくれるのか?」
「…今更だな。少なくともお前は、もうある程度私の好感度を稼いでるぞ?」
「そうか「ま、恋愛関係になるつもりは無いがな」…急ぐ気は無いさ…と言うか、無茶をしてあんたの周りの女共を敵に回したら…それこそただじゃ済まないだろうしな…」
「…なら、何でだ?」
「寧ろ、俺がその女に興味を持ったからだな…」
「…デネブを口説く気か?」
「まぁ、あんたには悪いとは思うけどな…」
私は…仮にそれであいつが幸せになるならそれも有りかと思った…こいつの場合、何だかんだ関わった女を不幸にする事は無いからな……まぁ、こいつは気が多いと言う問題は有るが…一度受け入れたなら暮らしやすいだろう…デネブが正直こいつの眷属と仲良くなれる気がしないと言う懸念も有るが、その辺はこいつの手腕次第と言う気がしないでも無い…
相棒のヘレンが幸せを掴もうとしてるんだ…どう言う形であれ、あいつも幸せになるべきだろう……まぁ、押し付け感も凄いんだが。
「…いや、あいつが幸せになるなら…それも良い。」
「…あんた、結局人の事ばかりだな…」
「ま、そうだな…」
確かに私は…改めて考えれば自分の事を二の次にするパターンは多い…だが、私はお人好しでは無い…ただ、自分の事に関しては時折希薄になるから…そちらにリソースを裂けてしまうだけだ。やはり歪だな、私は…ま、その辺も…私は結局どうでも良いんだがな。